冒涜的な日々からその後
しっかりと千字以上は書いたのは結構久々です
あの事件から数日経った後だった。
探偵助手鈴木直之の基に一通のラインが届いた。
「直之、面白い話があるから今から会わない?」
それは従兄の卓郎からだ。
直之はそのラインを見て、少しため息をついた。
(こいつまた生活に困っているな…)
直之はそう思ったが、あとが面倒くさいので了承した。
卓郎が待っていたのは、格安のファーストフード店だった。
その安っぽい店には不釣り合いな時代錯誤した格好をした鈴木卓郎がそこにいた。
もちろん、いつものように偽のブランド品で身を包んでいる。
警察に引き渡したら、何かもらえそうだ。
「よぉ!直之!元気か!」
直之は卓郎にいい思い出はない。
この間会ったときは偽のブランド品を売りつけられたからだ。
直之は従兄とは言え、それが偽のブランドだと知っていたため、それをその場でゴミ箱にその時は光の速さで買わずにそれを取り上げて捨てた。
今回もそうだと思った。
ところが想像と違った。
「なお、直之!この間親にもらったチケットで美術館行ったら、ものすげー面白いことがあったんだ!」
直之は少し驚いた。卓郎が美術館に行くとは思わなかったからだ。
「へぇ~それはどんなのことなんですか?」
その言葉に馬鹿げた答えが返ってきた。
「あのな、おれがこの美術館におにぎりを買って行ったら、急に意識が飛んでな。そしたらよ、誰もいない美術館にいたわけだ!出口も閉まっていて、変な絵画の連中に襲われたり、でっけぇしゃべる本の爺さんとか居てだな。まぁ、黒歴史を見せつけられたが、おれの活躍で無事に帰れたぜ!」
その話はにわかに信じ難かった。
だけど、直之自身もそのような事件を体験していた。
人が決して知らない世界を知ってしまったから。
これは本当かもしれないと彼は思った。
卓郎が活躍したことを除けば。
「奇遇っすね。僕もこの間似たような体験をしたんですよ」
「!?お前もか!!」
「はい、僕もとある人を探していたら、急に意識が飛んで、気が付けば見知らぬ外国人の女の人と首輪で繋がれていて、周りには知らない人ばっかでした」
「何それ、うらやましい…」
「何言ってんですか?お嬢様みたいだったけど、顔は外国人にしては普通でしたよ。と言うか、こっちは気が付いたら、知らない場所。知らない人たちで犯罪に巻き込まれたと思いましたよ!」
「いや、直之探偵助手じゃん」
「何言ってんですか!おまけに女子高生名探偵を名乗る変な女の子も居て、ちょっと可愛いからっていい気になって!」
「へぇー、その女の子って可愛かったのか?」
その言葉に直之は少しドキッとなった。
「いや、何言ってるんですか!」
「いいじゃないか、女子高生名探偵に探偵助手!ぴったりのコンビじゃないか」
「いいいいいいいいいやいやいや!僕はあんなの一緒にしないでくれ!」
直之はパニックになりつつも、それを否定して続けた。
「それにあの場所は猫が馬鹿みたいに居て、何となく不愉快な場所でしたよ!それに仕舞いには顔が触手まみれの変な化け物に襲われて大変でしたよ!これがその証拠です!」
直之は聞かれてもないのに、カバンから一本の化け物から盗った槍を卓郎に見せた。
ただ、直之が使いやすいように短く折りたためるようになっていった。
「・・・これは?」
「化け物が使っていた鎗です!」
鎗は短く折りたためるように改造されており、一見すると単なる棒のようになっていた。
しかし、直之はその先端のふたを取り外しており、明らかに物騒な刃がギラついていた。
それを見た卓郎は少し引き気味にこう言った。
「あのな…直之…。いくら人を信じさせたいからって、そんな物持つなよ…。おれお前の言うこと信じるから」
どこともなく同情的だ。
その言葉に直之は恥ずかしくなったのか、槍をカバンにしまった。
「すみません・・・」
「気にするな」
しばらくの沈黙の後、直之は付け加えるようにこう言った。
「あの後、パーティに行きましたよ。楽しかったです」
「よかったな」
こうして二人は食事を終え、別々で会計を支払いそれぞれ帰路についた。
彼らがまた宇宙の冒涜的な存在と関わることがあるかもしれない。
それでも彼らは平凡な日常に戻ったのであった。
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