第3821157回目②
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もちろん、よく覚えているとも。
苦痛も何もない、初めての「普通の転生」だったのだから。
そこは密林の世界。
途方もなく広い樹海の只中だ。
密度の濃い植物たちでほとんど完全に日差しが遮られているのに、気温はかなり高かったし、湿気も多かった。
ただ、その時の私はふわふわとしていてね。
しばらくは夢見心地だったんだ。
ついに幻覚もここまで来たかと笑いそうになった。
けれど、指に触れる大きな樹木の手触りは紛れもなく本物で。
待てど暮らせど死が訪れる気配はない。
温度、気圧、酸素濃度。
大量の植物が繁殖しているということはオゾン層も形成されていただろう。
少なくとも「人間が生存可能な」世界がそこにあった。
転生初日に私がしたことは、日が沈むまで泣き喚くことだったよ。
はは。
その通り、すぐに泣いてもいられなくなった。
真っ暗闇の中、日が出ているうちに動かなかったことを後悔したよ。
鬼が出るか蛇が出るか。
何が起こるか分かったもんじゃない。
泣きべそをかいている場合じゃなかったってね。
そうさ。
やっとこさ生き残ることができたんだ。千載一遇の世界。
私はその世界で、持てる全能力、全神経を集中させて生き残ろうと決めた。
無論、サバイバルの知識なんて当時は持ち合わせていなかったけど、とにかくやれるだけのことはやったさな。
そもそもが生態系も何もかも地球と異にするのが異世界。
常識が通用するとは思っていなかったが、私が人間である以上、必要なモノは自然分かってくる。
最初の晩、私はなるたけじっと動かず、感覚を鋭く尖らせ続けていたが、特に何が起こるわけでもなく夜は明けた。
動物の鳴き声一つ聞こえなかった。
そして行動を開始した。
どう行動するかは日が昇る前に煮詰めていたが、さて。
問題だ。
君ならどう動く?
……。
そうだな。まずは拠点の確保。
私もそう動いた。まずは腰を据えねばな。
そしてこれが間違いだった。
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