第3回目②
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宇宙空間でも、人間は15秒間生存できる。
逆に言うと15秒後には確実に死ぬというわけだ。
その15秒の間に、いったい何が起きるんだろうね?
まず、息を吸うことができない。
……なんてレベルじゃない。
真空によって、体中の穴という穴から体内の空気が分子レベルで外に引きずり出されるんだ。
空気をたくさん吸って溜めておけばいいと考えたそこの君。
そんな状態で宇宙にいたらどうなるか、教えてあげよう。
大気圧が無くなると、内側に残った反発力で体は若干ながら膨張する。
けれど、膨張するのは体だけじゃない。
肺に残っている「空気」も膨張する。
血液と違って、肺はほぼ外気と直結しているから、真空の影響をもろに受けるんだ。
結果、胸いっぱいに満たされた空気は肺を破裂させてしまう、と。
真空に引きずり出されるのは体内の空気だけじゃない。
体内にある血液が真空の影響を受けることはないが、体の外に出てしまえば話は別だ。
汗や唾液。
今言ったように肺が傷ついた場合は喀血するし、無重力だと上半身の血圧が高くなるから、眼球の毛細血管から染み出て血涙が出ることもある。
そういった類は、無論真空の影響を免れない。
体液は瞬時に沸騰し、直後に凍り付いて気化熱が体温を奪う。
皮膚が粟立つ、とは言い得て妙だね。
寒さを自覚する頃にはもう終わりが近づいている。
呼吸ができず脳に酸素が回らなくなり、意識を失うんだ。
あとは骨の髄まで凍り付き、氷像となって宇宙を漂うのみさ。
ジャスト15秒だ。
いい人生だろう?
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