第3回目①
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人間が生身のまま宇宙に出ると、どうなるか知ってるかい?
体が内側から破裂する、全身が凍り付く、真空中で血が沸騰する。
所説あるようだけど、実際のところ、どうなのか?
私が答えよう。
人は普段、地上で「大気圧」という空気からの圧力の中で生活している。
その空気の重さに押し潰されずに済んでいるのは、体の内側から外側へ「反発する力」が働いているからだ。
もし大気圧がなくなってしまうと、内側に残った反発力で体は膨張し、自壊してしまう……というが、そんなことはない。
実は、人の体ってのは思った以上に頑丈でね。
航空機を操縦する人になんかは、時に10Gもの重力がかかる。
または、海底に潜水する人も同じだな。大気圧の10倍以上の圧力がかかったりする。
それでも潰れたりすることはない。
なら、たかだか1気圧程度の力で体が爆発することもないってわけだな。
顔が少しむくんだ感じになるのが精々さ。
また、宇宙の温度はほぼ絶対零度の極寒だが、だからと言って宇宙に出るとすぐに凍り付くなんてことはない。
体が冷えるには、体から熱を奪う物質が必要だ。
伝熱の原理は知っているかな?
宇宙には空気も何もないから、熱が移動する先がない。
つまり、いくら宇宙空間が寒くても、そもそも体温が下がることはないのさ。
暗黒星雲のど真ん中にでも転生した場合は話が別だがね。
富士山の頂上で水を熱すると、80℃くらいで沸騰するという話は聞いたことがあるかな?
これは、気圧が低いと沸点が下がるためだ。
山頂は空気が薄いというだろう?
では、気圧をゼロにする……つまり真空になるとどうなるか。
沸点と融点が限りなく近くなり、結果的に水は「一瞬で沸騰し」「すぐに凍り付く」ことになる。
しかーし。
血液も同じことになるわけじゃあない。
というのは、気圧がゼロになっても、血液は血管から「血圧」という圧力を受けているからだ。
圧力があれば沸点は変化しない。
つまり、血液が沸騰することもないというわけだな。
結論を言おう。
人が宇宙に出ても、内側から破裂することも、凍ることも、血が沸騰することもない。
どうだい、案外行けるじゃんと思うだろう。
私も、初めて「地球型惑星」の地面を踏みしめたとき、そう思ったものだ。
15秒後には氷像になっていたがね。
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