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炎の魔法使いを追って  作者: oga
魔法使い
5/15

ケース1 その4

 翌日の夜、ロウは缶ビール2本とビーフジャーキーを購入し、事件のあったアパートへとやって来た。

101号室のドアをノックすると、ムロが顔を出す。


「あれ…… 昨日の刑事さんではありませぬか」


「ちょっと近く寄ったんで、一杯どうすか?」


 最初は困惑していたムロだったが、ビールで乾杯し、隣の小島恵子の話になると、途端に饒舌になる。


「あの胸ヤバいっしょ。 パフパフされてぇ~」


「ムロさんって、巨乳好きなんすね」


「何を言うか、少年。 男はみんな巨乳好きなのだよ」


 会話がヒートアップし始めた所で、ロウが立ち上がった。


「ちょっとトイレ借りていっすか」


「んだよ、早く済ませてこいよ」


 廊下に出ると、チラと壁の方を見やる。


(この隣が黒焦カズオの部屋……)


 壁にはグラビアのポスターがセロテープで止めてあり、下の部分が一カ所、剥がれ欠けていた。


(……)


 更に、トイレに入ると、気になる置物が窓際に置かれていた。

アニメキャラクターのフィギュア、サボテン、そして、竜の頭。


(……間違いねーな)


 トイレから出ると、突然、座っていたムロの胸倉を掴み、叫んだ。


「やっぱりてめーが黒焦カズオ殺しの犯人だろ!」


「なっ……」


「お前は隣の小島恵子にそそのかされて、ダンボの魔法を使って黒焦カズオを燃やしたんだ」


「ふ、ふざけるなァッ」


 腕を振り払い、息を整える。


「はあっ、はあっ…… 一体、どうやって私が隣の男を殺したと言うのだ!?」


「お前と小島恵子は共犯だったんだよ。 だが、お前を部屋に招き入れれば、他の住人に気付かれる恐れがある。 だから、この部屋の中から、魔法を使ったんだ」


「ばっ、馬鹿を言うなっ! ダンボで人体発火は起こせまい」


「それが、おこせんだよ」


 ロウはおもむろに廊下へと出て、玄関に立てかけてある杖、トイレのドラゴンヘッドを手にして戻ってきた。

丸い玉をクルクルと回し、外す。

そして、ドラゴンヘッドに付け替えた。


「こいつで、魔法の威力がかなりアップするハズだ」


「……は、ははは、ははははは」


 突然、その場で笑い始めるムロ。


「確かに、そいつは威力をかなり増幅してくれるよ。 でも、どうやってこの部屋から隣の男を狙うんだっ! 壁に阻まれているだろうがっ」


「しらばっくれんじゃねーよ!」


 ロウは、グラビアのポスターを思い切り剥がした。

グラビアアイドルが真っ二つになり、壁には直径5センチ程度の、小さな穴が一つ開いていた。


「……!」


 ムロの顔が引きつる。


「お前は魔法をコントロールして、小さな球体にして飛ばしたんだ。 200℃の熱の球体をな」 


「……ぐうっ」 


 ムロは、観念したかの如く、その場に崩れ、一言も発することが出来なくなった。









 事件の経緯として、やはり、小島恵子は隣人のムロと共犯だった。

小島恵子はムロをテンプテーションの魔法で誘惑し、操った。

他者を巻き込み利用した殺人として、小島恵子には重い罪が科せられることとなった。

ムロの罪については、現在審議中である。








「動機は、黒焦カズオの浮気、かぁ」


 エドが手を頭に組んで、呟いた。


「サッキュバスでも嫉妬、すんだな」


 ロウがパソコンで報告書をまとめながら、言った。


「で、お前の両親を殺した犯人の手掛かりは掴めたのか?」


「……いんや。 ただ、弱い魔法でも工夫次第で人体発火は起こせるっつーのは分かった」


「やっぱり、資料を漁るより、現場に出た方が得るものはでかいか」


「……」


 急に黙り込むロウ。


「何だよ、同意しないのか?」


「……同意したら、仕事振るつもりだろ」


「……バレたか」


 フン、と鼻で笑うと、再びキーボードを打ち始める。

すると、電話が鳴った。


「はい、シンジュクク警察署です。 はい、はい…… ロウ先輩、また焼死体です!」


 ロウは、椅子から転がり落ちそうになった。


「またかよっ」


  

     


続く


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