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炎の魔法使いを追って  作者: oga
ファイアガン
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ケース3 その3

 放心状態のロウを無理矢理ムロが引き剥がし、その場から離脱。

電車でキョウコを病室へ送り、一旦、ロウはムロのアパートに身を隠すこととなった。


「……ニュースになってますな」


 テレビを付けると、美術館が火事に見舞われたニュースで持ちきりとなっている。

犯人の火炎放射器の男は、後からやって来た警察官を振り切り、逃走中らしい。

ふと、ロウが立ち上がった。


「……タバコ、買ってくら」


「危ないですよ! さっきの男、ロウ殿を追っているんじゃ……」


「関係、ねーよ」


 ムロを振り切り、コンビニへと向かう。


「……」


 ロウは、自問自答していた。

本当に、火炎放射器の男の言うとおり、自分が両親を殺したのか。

そうだとしたら、自分はこの世にいていい存在ではない。

人差し指をこめかみに当てる。


(俺がファイアガンを使えるのが、何よりの証拠……)


 人気の無い路地裏で、ロウは引き金を引いた。


「ファイア、ガン」

 

 しかし、何も起こらない。


「……MP、切れ?」 


 どうやら、自分のMPでは一日一発しかファイアガンは撃てないらしい。

そこで、疑問がよぎる。


(オヤジとお袋を殺すには、2発、ファイアガンを撃つ必要がある。 何か引っかかる……)


 ファイアガンは火球を作りだし、撃ち込む魔法。

2人同時には、殺せない。

違和感を覚えたロウは、ある人物の元へと向かうことを決めた。


(妹のトキコなら……)


 






 就職してから、ロウとトキコは別々な場所に住んでいた。

お互い、連絡を滅多に取らないが、ラインだけは知っていた。


「今日の夜、どっかで会えねーか?」


 ロウが事情を説明。

すると、電話越しにこんなセリフが返ってくる。


「……兄さんには言ってなかったけど、私、健康診断で魔法が使えることを教えてもらったのよ。 カイジョっていう、どんな鍵も開ける魔法なんだけど……」


 いつどこで覚えたのか、本人も分からないらしい。


「まさか、俺の失った記憶も……」


「かも、知れないわ。 とにかく、落ち合いましょ」


 約束を取り付け、都内の焼き肉屋で合流することとなった。



 






 ロウが合流予定の焼き肉屋に入り、店で待っていると、数分後にトキコが現れた。


「久しぶり」


 容姿はあまり変わっていない。

今は介護の仕事をしている、とのことだ。


「さっそく、使ってみる?」


「ああ、勿体ぶっても仕方ねーしな」


 トキコが、ロウの頭に掌をかざす。

そして、魔法を唱えた。


「カイジョ」


「……!」


 ロウの脳内で、映像が流れる。








 かつて住んでいた、アパートの一室。

そこに、父親がいた。

父親は、ロウ (亮)に向かって一冊の本を差し出した。


「これに、ファイアガン、という護身用の魔法の術式がのってる。 私の身に何かあった場合、家族はお前が守れ」


 父親は高名な魔法使いで、特別な魔道書を持っていた。

それを狙った男がいる。

父親はいざという時のために、ロウに魔法を教えた。

そして、その日はやって来た。

夜中、突然部屋に男が押し入り、火炎放射器を両親に向けた。


「逃げろっ」


 ロウはトキコを連れて家から飛び出し、追っ手をファイアガンで返り討ちにする。

東京へと逃げ、両親を亡くしたショックを和らげる為、記憶を封印した。

これが、事の全容であった。








 


 焼き肉屋から出ると、男が立っていた。

手には、火炎放射器を持っている。


「……」


 ロウは、人差し指を男に向けた。


「ファイアガン!」






終わり

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