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俺は特攻隊員として死んだ  作者: Saisen Tobutaira
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行きつけの

「ここのお店美味しいんです」


俺は普段、一人でよく行くお店に晴子さんと入った。日本好きなマスターは俺のことを可愛がってくれており、今日もサービスしてくれた。


「可愛い姉ちゃん連れてるね。彼女かい?」


俺は返事に困ったが、正直に話した。


「俺の一方的な片思いです。今日が初めてのデートなんです」


「おーー!初デートにうちの店選んでくれたのね!ありがとね。ほら、ほら、サービス」


「ありがとうございます」


俺の一方的な片思いという言葉を聞いた晴子さんの顔は少し赤らんでいた。俺にはそれが嬉しかった。


マスターは日本でかつて、化学の先生をしていた経歴の持ち主だ。そのため日本語も流暢だ。俺は一人ニューヨークに来た寂しさからか、マスターと日本語で話すと心が温まる。今日はデートということもあり、いつもは口達者なマスターは気を使ってあまり話しかけてこない。


「よく来られるんですか?」


「寂しくなるといつも来ます。マスターと話しているとなんだが落ち着くんです」


「マスターいい人そうだし、それに日本語もお上手。私も時々、顔出そうかな」


「ぜひそうしてください。きっと、マスター喜ぶと思いますよ」


俺達は何気ない話をずっとしていた。これといって面白い話はなかったと思うが、お互いに楽しんでいた。遠い地で同じ国の人と過ごすのは、日本で過ごすのとは別物だ。例えようのない温かみを胸に感じていた。そしてなぜだか、故郷の日本に帰りたい気持ちが強くなった。


「私、来月日本に戻るんです……」


「えっ、そうなんですか?」


「もうすぐ講義も終わるのでね」


「日本に戻ってからは何されるんですか?」


「家の手伝いですかね……」


晴子さんと離れるのは嫌だ。俺は完全に惚れていた。晴子さんの帰国とアメリカの情勢とが相まって、俺も講義を受け終えたら日本に戻ろうと決めた。


「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」


「こちらこそ、晴子さんとお食事できて楽しかったです」


俺は晴子さんの住むアパートまで送り、帰路についた。この地とはもうすぐお別れか……


少し寂しいな


日本に戻ったら何をしようかと考えながら、足を進めていた。

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