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俺は特攻隊員として死んだ  作者: Saisen Tobutaira
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到着

すぐに靖国神社が見えてきた。周りの隊員達は嬉し涙とも悲し涙ともわからない涙を流していた。靖国神社の門をくぐると白衣を纏った老人に声をかけられた。


「名誉ある死を光栄に思う。ワシがお主らの魂を連れて行く」


「一同、敬礼っ」


隊長の号令で俺達の小隊は老人に敬礼をした。どうやらこのご老人が魂を連れて行ってくれるらしい。


「今日も靖国は美しいな」


「おう、俺らもここに祀られるのか」


「桜の季節になると晴子さんと赤子が会いに来るんだ」


「そうか、楽しみだな」


皆、靖国神社に祀られることを誇りに思っていた。美しい桜が咲き乱れる頃に晴子さんと赤子が会いに来る。俺は出撃前夜、晴子さんと約束した。早く会いたくて仕方がなかった。


「では……皆一つだけ願いを叶えよう。もちろん生き返らすことはできぬが」


ご老人は口を開き、一人一人に尋ねていった。家族の未来、日本の未来、愛する人の未来、皆が思い思いの質問をしていた。残念ながら質問の答えは質問者にしかわからない仕組みになっていた。質問の答えを聞いて喜ぶもの、ショックを受けるもの、反応は様々だった。


そして俺の番が来た。


「お主は何を望む?」


「日本が負けることはわかっています。戦後どのように日本が変わっていくのかを知りたいです。できるだけ遠い未来の日本に行ってみたいと思っています」


「すまんがワシの力じゃそう遠くに飛ばすことはできん。それでもよいか?それに時間も長くないぞ」


「はい。ありがとうございます」


「では、いくぞ」


ご老人の声が耳に入ってすぐ宙を舞う感覚に包まれ、目を瞑った数秒後に激しい風を感じた。高鳴る胸とともに目を開けるとニューヨークの空にいた。


アメリカじゃないか……日本を知りたいのに


俺は最後の願いすら叶わず老人を恨んだ。


あれっ


違和感を覚えた。ニューヨークの割には道行く人はアジア人、いや、体格は少し大きいが日本人ばかりだ。それに看板は日本語で書かれている。


なぜか故郷のような懐かしさを感じる。


東京都という看板が目に入った。


もしや


ニューヨークと思っていた場所は、未来の東京だったのだ。東京とわかった途端、皇居と靖国神社を血眼になって探した。


あった


俺はひとまず安心した。皇居があるということは国体は守られている。それに靖国神社も健在だ。


俺は安堵に包まれていた。

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