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 スヴェトが真っ暗な地下の廊下から小さな鉄の扉に向かって話し始める。


「もはや見るも情けない姿をしているが、昔はいい研究者だったんだ。とても熱心で。だが、…。」


 スヴェトの視線の先、小さな鉄の扉にはのぞき窓が開いている。その奥には薄汚れ、やせ細った哀れな男がよだれを流しながら壁に縋り付くように気絶していた。


「私は彼を信頼していた。ホワイティを助けようと、彼にも協力を頼んだんだ。だが、彼は私を裏切った。」


 俺はスヴェトの顔を見る。口角が長く割れていき、食い占めている歯がむき出しになっている。見る間に犬歯が鋭く伸びていき、暗い中でも青い瞳が茶に染まっていく目の色に、ヴェトの怒りの大きさを感じた。


 声を掛けようとして、なんと言っていいか分からずにためらっていると、車いす上のホワイティが動かないはずの腕でスヴェトの服を引いた。幽体の姿も肉体に重なるように現れ、座った状態では届かないスヴェトの切れ上がった頬を幽体の手で撫でる。気が付いたスヴェトも幽体の手に添えるように自分の頬に手を当てる。茶の目もそっと伏せ、深く息を吐くと、顔も目の色も元に戻っていた。かがみこんで自分の服の裾を握るホワイティの手をとり、握りなおしていた。


『スヴェト、私のことはいいわ。怒るのも仕方ないけど、彼は今罰を受けている。今は抑えて、ダンのために役割を果たしましょう。』


 スヴェトがうなづくのを見て、ホワイティが俺を振り返る。


『ダンは席を外してくれる?アーロンも。彼はダンや子供たちの研究をメインにしていたの。あなたも聞きたいだろうけど、専門的なことはスヴェトに任せた方がいいわ。私は彼が嘘をついていないか、隠し事をしていないか探るし、スヴェトのストッパーにならないと。』


 ここに研究者を閉じ込めているのがこいつにとっての罰なら仕方ない。しかし、俺について話すというのに、俺を外すというのが悔しい。俺が反論しようとすると、ホワイティがアーロンに俺を連れて行くよう促し始めた。

アーロンは眉を顰めて射殺すほどの冷たい視線を元研究者を睨みつけている。睨まれている元研究者は恐怖でか、呼吸もしづらいようで必死で目を逸らし堪えるような鶏みたいな声をあげている。

そんなアーロンにホワイティが視線の間に割って入り、今にも飛び掛かりそうなアーロンを止める。


『アーロン、私たち先に祈ってきたの。あなたも、会いに行ってあげて。』


 アーロンははっとしたように目を見張り、スヴェトを見る。スヴェトもアーロンを見てうなづいた。

 俺だけが置いてけぼりで、何のことを話しているのか分からず憤る。


『ダン、アーロンについててあげて。終わったら迎えにいくから。』


 アーロンは元研究者にきつい視線で一瞥すると、疑問でいっぱいの俺を乱暴に折れていない方の腕を握り、大股で歩き出す。アーロンの足の長さで大股に歩かれると、俺は走らなければひきずられてしまう。俺は文字通り引きずられ、地下を後にした。






 俺はアーロンに何度も話しかけ、並走しながら腕を離すように再三訴えた。最後は折れた方の腕まで痛くなるから手を離せと訴え、ようやく離してもらえた。そのころには既に建物の外に出ており、アーロンの足は施設の裏にある、森へと向かっていた。


「なぁ、二人はなんのことを言ってたんだ?俺に分からないこと、何を話してたんだ?」


 問いかけてもアーロンは何も言わない。俺がついて来る確認はするが、早く行きたいのだろう。無言で俺を促してくる。無口なのだが、短い期間でなんとなく言いたいことは伝わってくる。といっても急かす、黙れ、やめろ、くらいしか分からないのだが。


 何を言っても無言を貫くアーロンの背中に、わずかに焦燥のようなものが見られたので、大人しくついていくことにした。

 たどり着いたのは少しも森に入った先、少しだけ開けた場所。森に周囲を囲まれ、木々に隠されたような場所で、その地面はぼこぼこと掘り返された形跡が見られる。土の上に、わずかに草が生え始めている。そして中央には俺と同じくらいの大きさのシンプルな石碑。

 石碑にはいくつか名前が彫られているようで、石碑の根元には、枯れた元は花束のような束がいくつか並んでいた。


「なんだここ?」


 アーロンは石碑にゆっくり近づいている。肩がすっかりと落ち込み、もとより落ち窪んだ眼窩がさらに色を増し、強面の顔を暗く、そして青ざめさせている。はっきり言って森の中でこの顔を見るのは怖い。

 俺もアーロンに並んで石碑を見るが、彫られている文字が名前のようであるのは分かるが読めない。

 アーロンは長い腕を伸ばし、とある名前をなぞる。よく見るとアーロンの指は震えているようだった。


「・・・ミーシャ…。」


 本当に小さな声で、囁くよりもため息のように吐き出された声は頼りなげで、アーロンの声なのかどうかさえ一瞬疑った。だが、それでも確かに拾ったその声は人の名前だった。

 アーロンの顔を見ると、強面の顔から雫が滴っている。俺は仰天してしまった。

 びっくりしておののいていると、アーロンは力が抜けたように膝まづき、見る間に声をあげて男泣きを始めてしまった。

 この年のおっさんのこんなあわれな姿を見たのは生まれて初めてで、何をどうしていいやら、何がおきたのやらわけも分からず俺もパ二クってしまった。


「お、おおおお、お、アーロンんんん!どどどど、どうしたっ!」


 おいおい泣き始める四十越えのおっさんを前に、夜の森で訳も分からずオロオロする俺は、毛布もティッシュも今は持ってない。ワタワタを腕を振り、悩みまくった後、うずくまってしまい俺の三倍はありそうな亀のようになってしまったアーロンの背中をただひたすらさすってやった。


 しばらくそうしてさすってやりながら考えていて、ミーシャってアーロンが呼んだ名前と石碑、ホワイティが言ったことを思い出し、なんとなく事情が読めてきた。


 ああ、そうか、ここが、そうなのか。




 俺はゆっくり石碑を振り返る。変わらず彫られている文字は読めない。そもそもあの子たちの名前を俺は聞いてなかった。

上から数えていき、読めない、だが、確かに誰かの名を記したものだろうそれを指でなぞる。

それも20を数えた辺りで、まださらに続く列に嫌気を覚えてやめた。


「そっか、あいつもここにいるのかな。」


 拘束服を着せられて何も出来ない俺の世話を焼いてくれた小麦色の肌の少女を思い出す。

 いつの間にかいなくなってしまった少女。他にもいなくなってしまった子供たちのことを思い出す。


「ひょっとしたら、俺も、ここに刻まれるところだったのかな。」


 ここにいたときは何度も死にかけた。もし本当に死んでいたら、この寂しい森の中に人知れず埋められていたのかもしれない。この石碑に俺の名前も刻まれていたのかもしれない。


 少しだけ胸に刺さる痛みと冷たい風のように吹き込む虚しさは、いつの間にか腹の底にたまっていた憎しみと撹拌されたのか、ひんやりと冷めた水を湛えたカップを抱えたような心地になった。

 ただ、アーロンが情けない声で息子を思って泣いているのを聞いていると、その冷めた水もどこかぬるまっていくような感じがして複雑な気分だった。でも悪い気はしなかった。


 それからはもう何も言わず、すすり泣きに変わり始めたアーロンの背中をたださすったり、ポンポンと叩いて慰めることにした。









 ずいぶんそうしていて、夜も白けてきた。健康優良児で夜更かしなどしたことのない俺は、もう眠過ぎて、アーロンの背をさする手もおざなりになってきたころ、ホワイティではなく、スヴェトが俺たちを迎えに来た。


「ん~。ホワイティはどうした?」


 スヴェトがやや疲弊して暗い顔をしているように見え、嫌な予感がした。アーロンも少しは落ち着いたようで、赤くなった目、というよりは血走りすぎて余計恐ろしい顔になっていたが、心配げにスヴェトを見ている。


「かなり頑張ってくれたんだが、疲れたらしい。先に車に乗せて帰ってもらった。町のホテルでしばらく療養して孤児院に帰るそうだ。」


 俺は聞きたいことをぐっとこらえる。が、スヴェトは視線を落とし静かに話してくれた。


「話は聞けたし、必要な情報も受け取った。やつはもう用済みだから、私自身の手で、手を下してきた。ダン、アーロン、まだ、あいつのことが憎いだろうが、もう、忘れてやってくれ…。」


 スヴェトの声は震えていた。俺は、まだ悔しい思いもあったが、一晩中付き添ったアーロンの様子と、元とはいえ婚約者だった相手を殺してきたという、辛そうなスヴェトの顔を見ると、どうしようもない気持ちになり、ただ、小さくうなづくしかなかった。


「すまん。アーロンにとっても憎い敵だっただろうが、忘れることもできないかもしれないと思うが。もう楽にさせてやってくれ。…アーロン。」


 スヴェトはゆっくり近寄り、じっと固まっている恐ろしい顔のアーロンのそばに立つ。まだ少し鼻水の出ている顔は決して男前とは言えない。だが、スヴェトはそっとアーロンの肩を抱いてやっていた。


「帰って眠ろう。疲れただろう。」


 そういって手を離し、俺とアーロンを見た。俺たちは三人並んで施設を離れた。






 スヴェトの小屋に戻ると、珍しくスヴェトはアーロンを招き入れた。まあ、眠すぎて途中歩けなくなった俺を背負ったままのアーロンを、そのまま帰すわけにもいかなかったのだろう。

 俺はいつものマットで寝ていたのだが、目が覚めるとアーロンとスヴェトの関係は少し変わったようで、二人は暖炉の前で小さく丸くなるように、一緒に身を寄せ合って眠っていた。

俺は、二人を起こさないようにそっとしておいた。





 腹が減った俺が、食事を作ろうとして失敗した煙で二人が起きてくるまで。

 












「研究所に移る?」


 俺が作った朝食もどきは二人の手により捨てられてしまい、スヴェトが手早く作ったサンドウィッチを珍しく三人で囲って座り、若干窮屈になった小屋の中で食べる。


「ああ。ホワイティのこともそうだが、お前の研究もはっきりいって途中でしかなかった。本格的に研究を続けようと思うがここでは無理だ。さすがに機材もないし、ここで出来ることは限界に来てる。」


 俺はスヴェトが作り直してくれたサンドウィッチからすっぱいキャベツをこっそり抜こうとして、ぼたりと膝に落とす。


「え、じゃあここは?スヴェト、ここを出ていくってこと?」


 俺の落としたキャベツを拾い上げ、サンドウィッチの上ににそっと戻しながらスヴェトが肯定する。


「じゃ、じゃあ俺は?スヴェト、つ、ついてっていいんだよな?」


 いつか、ここを出なくてはならなかったが、こんな唐突とは思わなかった。またスヴェトと急に離されると思って、こんなに自分が動揺するとは思わなかった。しかし、スヴェトは首を横に振る。


「研究をするにははっきり言ってダンは邪魔だ。定期的にサンプルは取らせてもらう必要はあるから会うことは出来るが、私についてくることは出来ない。」


「そ、そんな…。」


 突然のことに頭が真っ白になる。確かに自分の世話で手を焼かせている自覚はある。だが、はっきりと邪魔と言われて傷つくくらいにはスヴェトを信頼していたし、好きだったのだ。

 茫然としていると、スヴェトがそっと頭を撫でてくる。

 

「すまん、ひどいことを言っていると分かっているんだが、やはり研究所のような場所にはお前を連れて行きたくはないんだ。あの施設のような場所ではないとはいえ、お前はもう少し広い世界や学ぶ場所へ行った方がいいと思ってる。学校へ行ってみたくないか?」


 その言葉にはひどくそそられた。スヴェトとの暮らしは苦しかった心を癒してくれた。退屈ではあったが、森の中で走り回るのも悪くなかった。だが、やはり物足りなさは感じていた。そして、いつまでもここにいては故郷へ帰ることも叶わない。


「す、スヴェトは、さ、さびしくないんか、俺、すっげぇ寂しいぞ。」


 思わず口走った言葉は日本語になってしまった。なんか、自分でも情けないことを言っている自覚はあるが、ようはそこが一番心配だった。


「もちろん、さびしいさ。子供を産んだことはなかったが、私の人生でこんなに毎日が楽しくて、騒がしかったことなんてなかった。」


 俺の言葉を正しく読み取ったらしいスヴェトの目に涙が滲んでいるのを見て、スヴェトの本心を知った。思わずスヴェトの胸に頭を突っ込む。胸というよりは胸筋の方が発達しているような硬い胸元を持つスヴェトでも、俺の石頭の突撃は答えたようで、ぐ、と呻いていた。それでもやさしく頭をなで、背中をさすってくれるスヴェトの優しさに俺の目も熱を持ち、雫をこぼした。


「ホワイティを連れてきてくれた人に、ダンのことを頼んでみた。今はもう政府の動きも落ち着いてきているし、他の子供たちと一緒に学校も用意してくれる。条件が整えば家族の元へも帰れるよう手配もしてくれるそうだ。研究を続けられればお前の成長も叶う。」


 目を上げると目尻に皺を深くして笑う優しい顔が俺を見下ろしていた。





「...俺は、。」


 すっかり存在を忘れていたアーロンが、急に口を挟んできた。小屋の中が手狭に感じるほど巨体なのに、先ほどの会話で真っ白になった頭はアーロンの存在を締め出してしまっていた。


「俺は、反対だ。」


 アーロンはまだ赤い目に、眉間にこれでもかという深い皺を刻み、さらに悲哀の色を乗せて俺の頭を抱くスヴェトを見ていた。


「だが、ダンの体のことも、お前のための薬も、ここで研究するには限界だ。機材も場所もここには足りない。分かっているだろう?」


 スヴェトは説得しようとするが、アーロンはぐっと拳を握りしめているようで、筋が浮かび上がり、関節が白くなるほど力を入れている。


「分かっている!だが、研究所になんて、行くな…。俺が、俺がなんとかするから…。」


 アーロンの気持ちも俺には分かる。研究所と聞けば、思い出すのは俺のいた施設だけだ。スヴェトだって、同僚の裏切りに合い、見せしめに人狼の実験台にされたのだ。

 研究をやめろとは言えないが、研究所に戻ってほしいとは思わない。


「しかし、研究には金がかかる。協力者や仲間の手も必要だ。機材の手配も、個人でするには厳しい。どこかには所属しないと。」


 スヴェトはアーロンを説得しようとするが、アーロンは首を振り俺がなんとかする、という言葉を繰り返す。そして、足早に身支度を整え、準備が出来たら連絡する、といって小屋を去っていった。


 俺とスヴェトはぽかんとその様子を見送ってしまった。


 一体何をしようというのか分からないが、スヴェトの言葉を聞かず、唐突に去っていったアーロンをなんと言って引き止めればいいか俺たちには分からなかった。スヴェトも複雑そうな顔をしていた。






 去っていったアーロンのことは連絡すると言っていたので、しばらくそっとしておくことにした。


 俺がおつかいしていたので、しばらくの日用品は十分に足りていた。この小屋を去ることに決めた俺たちは、引っ越しの準備を始めた。


 スヴェトはこれまでにまとめた資料をパソコンに取り込んだり、廃棄したりしていた。必要なものは箱や紐でまとめたり、本や嵩張るものは一か所にまとめたり忙しなく作業していた。

 俺は俺で荷物をまとめたり、家具を動かしたりした後に掃除をしたり、スヴェトの手伝いをしていた。学校へ行くと聞いて多少ながら浮かれていた。通っていた時は何が楽しくて学校なんてあるんだろうと考えていたが、完全に自由のない生活を強いられて、どれほど学校生活が楽しかったのかを何度も思い出していたからだ。


 数日音沙汰のないアーロンのことは心配ではあったが、珍しく外へ出来てたスヴェトと燃やした資料で作った焚火でマシュマロを焼いたり、キャンプファイヤーをしたり、意外と音痴なスヴェトの民謡を笑いながら聞いたりと二人でのんびりした時間を過ごした。


 

 すっかり片付いた小屋の中、前日夏にしては珍しく冷えた夜だった。久々に薪を付けたストーブの掃除を任された俺は、スヴェトが外へ出かけている間、煤と灰で真っ黒になりながらストーブの掃除をしていた。


 すると外から車の音がしてきたため、アーロンが戻ってきたのだと思い外へ出たのだ。


 

 しかし車はアーロンの愛用の紺のジープではなかった。黒の傷だらけのトラックと埃塗れのセダンだった。一目で嫌な予感をした俺は小屋に戻り、荷物の影に隠れた。


 外で止まった車からは荒々しい男たちの怒声が響く。はっきり言ってスヴェトの頼んだ引っ越し業者でないのは間違いがない。


「ーーーー!ガキがいるはずだ、探せ!」


 狙いは俺?どういった関係のやつらなのかが全く分からない。しかし、どうやら狙いは俺で、スヴェトは関係がなさそうでほっとする。

 小屋のドアが乱暴に開けられる。三人の大柄な男たちの一人に見覚えがあった。


 俺はアーロンにもらったナイフの手を伸ばし、じっと息をひそめる。スヴェトが戻ってくる前になんとかしなくては、と必死でアーロンに教えてもらったことを思い出す。


「おい!ガキ、どこにいやがる!なんでこんな箱ばっかりなんだ?よそへ移る気だったのか?」


 せっかく片づけた荷物を男たちは荒らしていく。いらいらし始めるが、俺は男の一人が近づいてくるのをじっと息をひそめて待つ。


「ったく、ボスも厄介なこといいやがるぜ全く。なんであんな野郎に執着しやがんのか訳分かんねぇぜ。」


 ぶつぶつ文句をいうチンピラの足が目の前に来たとき、俺は手のナイフを教わった通りに男に切りつけた。うぎゃあ、という汚い悲鳴を無視し、男たちの隙間を縫って出口を目指す。窓は張り板をしてしまったので出ることが出来なかったのだ。

 森に逃げ込んでしまえばこっちに勝算があった。


 しかし、出口の外にはもう一人巨漢がいた。なぜこの国の人間はこうもでかいやつばかりなのか。

 チンピラの悲鳴に俺のことに気づいていたらしい男は短く太い足を振り上げ、俺をサッカーボールのように蹴り飛ばした。段ボールの山に突っ込む俺はナイフを手放してしまう。


 罵声を浴びせられながら掴み上げられ、顔に数発拳をもらう。しかしこの程度の殴打には慣れていて、男のへぼいパンチを笑ってやる。床に叩きつけられた俺は三人がかりで殴られ、蹴られ、必死で身を縮こませいた。

 蹴りが止み、出口で俺を最初に蹴り飛ばした男が急かすように何か言う。頭に食らったせいで音が遠く感じる。服を掴み上げられ外へと運ばれる。

 どかっとおそらく車のトランクに入れられ、視界が闇に閉ざされる。

 数か月ぶりの狭く息苦しい暗い部屋。ただし今回はガソリン臭い上に暑い。




 俺はチンピラに襲われて攫われた。


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