おーくたんとようじょさん いちのじゅうのいち
「セイッ」
「せーい」
「ハッ」
「はっ」
「ふんぬっ」
「ふんにゅ」
「クワッ」
「ぬわっ」
豚のような顔をした男と幼い女の子は、奇声をあげながら体を動かしている。
足を肩幅に開き、右手を勢いよく突き出したり、足を振り下ろしたり、手足を外に振り払ったり。
豚のような顔をした男は鬼気迫る様子で行い、幼い女の子は柔らかな手足を振り回している。
それらを見守る影がひとつ。
「そろそろ頃合いじゃな。今までの訓練はこれのためにあったのじゃ。次はこれを投げる訓練をしようぞ」
影はそう言うと懐から木の枝を取り出し笑った。
「さぁ、どれだけ遠くに飛ばせるか、見ものじゃな」
先に豚のような顔をした男が力を込めて木の枝を投げ飛ばす。
戻ってきた木の枝は幼い女の子が投げた。
男と少女が木の枝を交互に投げることはしばらく続いた。
その後、影は満足して帰っていった。
「ねぇねぇ、おーくたん」
「はいはい、なんですか、ようじょさん」
「はいはいっかいでいいのよ」
「はいはいそうですね、ようじょさん」
二人は背中合わせに地べたに座っている。
「きょうはいっぱいなげたね」
「たくさん投げましたね。彼の方も満足される程に投げましたからね」
「うん。たのしかったね。またやろうね」
「そうですね。また、彼の方が来たらやりましょう」
「いつきてくれるかなぁ」
「十二が巡ったときでしょうか。ワンワン大佐ですからねぇ」
「そっかぁ、ワンワンさん、またきてね」
幼い女の子は天に向かって言葉をかけた。