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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第77話:管理者

ぬおー!

また、予約投稿ミスったー(-_-;)

13日の朝分です(T^T)

「さてと、どうしたものか……」


 管理者の神殿で、水槽を眺めて呟く。

 こいつはまだ良い。


 普通に広い水槽を、自由に泳いでいるだけ。

 アクアリウム……憧れるよね。


 取りあえず水槽内に置けるものを集めて、この際アクアリウムをやってみるか。

 取りあえず、場所を移動。


 砂利も何も敷いてない、無機質な水槽を泳ぐ魚。

 薄く縦長のフォルム。

 先頭の1本が、棘のようにえらく長く伸びた背びれを持っている。

 

 色は鮮やかな緑だが、光を当てると微妙に青や黄色に輝く。

 ……マルコは、これを俺に食わせようとしたんだよな?


 もしかして、嫌われてる?


 そんな事を思いつつ、水槽を手に持って新しく作った小屋に向かう。

 虫かご小屋の隣。

 うん、ここは水槽小屋にしよう。


 取りあえず、砂利……

 管理者のタブレットには……ある訳ないか。

 ん?


 イベント商品?


 アクアリウムセット?


 ……善神様、また覗いているのか?


『何故、わしと決めつける!』

「じゃあ、邪神様?」

『ふっ……』

「ほら、善神様じゃん!」

『……お主ら、妙に仲が良くないか? 邪の! 裏切ったな!』

『自分の胸に手を当てて、考えろ』

「自分の行いを振り返ってみてください!」


 突っ込みが、ハモった。

 ぐぬぬという唸り声が聞こえる。


「まあ、それは別としてお心遣い有難うございます」

『気にするな、必要なもので特にそちらに影響が無いようなものは、管理者の空間限定で置けるようにしよう』

「やっぱり、善神様じゃん」

『ぬぅ』


 あっ、黙ってしまった。


「感謝は本当にしてますから」

『ふんっ』


 拗ねてしまった……

 まあ、いっか……


「まあ、良いとはなんじゃ!」

「いきなり現れないでください、アー、ビックリ……」

「嘘を吐くな」


 目の前には、顔が白いベールで包まれた男性。

 椅子に座っているので、背格好は分からないけど。

 若いような、年寄りのような、男性のような、女性のような声。

 善神様だ。


「で、何をしに来たんですか?」

「それはお主、あんまりじゃろ? 一応、これでも唯一無二の絶対神の1人なんじゃが」

「唯一無二なのに、ここには2人居るんですけどね?」

『帰るぞ?』

「邪の!」


 善神様の後ろに、仮面の男性。

 善神様の襟を掴んでいる。


「こないだ、お主が来たからわしも来たかったのじゃ」

『分かった、分かった……たく、本当にお前は成長をせん』

「昔からお前はいつも、わしのやることにケチをつける」

『ならば、ちゃんとすれば良いだけだろう』


 そしてそのままドナドナされていった。

 有難う邪神様。


 カブトに運ばれて、塩湖に。

 マハトールの住んでいる山の麓。

 一応、砂浜も作ってある。


 藁葺の小屋も。

 

 何故マハトールの住処の近くにって?

 塩には邪を祓う力があるからね。

 これで、さらにマハトールの訓練も効率が良くなるだろう。


 えっ?

 普通に塩のかかった料理も食べられる?

 ミネラルは大事?


 そうか……

 水全部、聖水と入れ替えるか?


 まあ、良いや。


 湖の中を覗き込む。

 

 バシャバシャと魚たちが集まって来る。

 集まって来るのは良いけど、その見つめないでくれるかな?

 いや、照れるとかじゃなくて……

 

 怖い……なんでもない。

 そんな一斉に、全員で死んだふりをしなくても。


 その場にいた魚たちが、腹を上にして体を水面に漂わせる。

 軽いホラー。

 隣の国の川の景色で見た事ある。


「良いから、普通にしてろ」


 俺が手を叩くと、パシャリと音を立てて自由に泳ぎ始める。

 さてと……

 食べたかったな、魚。


 でも、こんなに懐かれてると食べづらい。


「はぁ……刺身食えると思ったのに」


 ポツリとそう呟いた瞬間に、水面がバシャバシャと波を立てる。

 やばい、怒らせた?


 と思ったら、魚たちが一斉に湖から飛び出してくる。

 そして、周囲でピチピチと飛び跳ねる。


 活きのよさをアピールするかのように、精一杯に飛び跳ねる。

 水がいっぱい散って来て、ちょっと迷惑。


 数匹は、息絶えたかのようにピタリと身体を止めて、口をパクパクさせながらこっちを見てくる。

 目が合う。

 そして、意識が伝わってくる。


 まるで、「僕の身体を食べなよ」と言っているよう。

 いや、食べないからね?


「もう、お前らを食う事は無いから」


 あれだけピチピチいっていたのに、ピタリと全ての魚の動きが止まる。

 そして胸ヒレを綺麗に動かして、湖に戻っていく。

 ポチャン、ポチャンとこっちを振り返りながら湖に入って行く。


 そして、湖から顔だけ出してこっちを見つめてくる。

 もう良いから、お前ら散れ!


 溜息を吐いて、神殿に戻る。


 それから水槽を持って、湖に戻る。

 クコとマコを連れて。

 トトはまだ家事が残っているらしく、後で弁当を持ってきてくれるらしい。


 取り出したるは、カヌー。

 それに乗って、いざ大海原へ!

 湖だけど。


 クコとマコを乗せて、湖の真ん中に進もうとオールを持ったら船が勝手に進んでいく。


「わあ、お魚さんだ!」

「凄いいっぱい」


 ……

 まあ、良いけどさ。

 楽だし。

 

 水面を泳ぐ魚たちがカヌーを運んでくれる。

 そして中央に到着。


「マサキおにい、水槽持ってきてどうするの?」

「お魚捕まえる?」


 クコとマコの言葉に、過剰に反応した魚たちが水面に上がって来る。

 いや、良いから。


「普段通りにしてろ」


 俺の言葉に、魚たちがおずおずと水中に戻っていく。

 そして、水槽を水中に半分くらい沈める。

 上から覗き込む。


 うん、結構よく見える。


「覗いてごらん?」

「うわぁ!」

「綺麗」


 水槽の中を覗くと、水中を泳ぐ色とりどりの魚たちが。

 箱眼鏡を作る余裕が無かったので、取りあえず水槽で代用してみた。


「うわっ」

「おいっ」


 クコが身を乗り出しすぎて、落ちそうになったのを慌てて掴む。

 クコがホッとした様子で、溜息を吐く。

 それから、こっちを見てにっこり。


「ありがとう、マサキおにい」

「気を付けろよ」

「うん」


 そんなやり取りを横で見ていたマコ。

 何やら思いついたらしい。 


「うわっ」

「お前もか!」


 マコが思いっきり上半身をカヌーの縁から出して、落ちそうになるのを慌てて掴む。

 全く。


「きゃー」

「ちょっ!」


 今度は、クコ。


「落ちるー」

「おいっ!」


 マコ……

 交互にカヌーの縁を越えようとする2人を掴むのに、汗だくになってしまった。

 っていうか、こいつらわざとだろう。


「キャハハ!」

「面白ーい!」


 わざとだった。

 まあ、良いけどさ。

 落ちても、溺れることは無いだろうし。


 そして後から合流したトトと一緒に、サンドイッチを食べる。

 中身は卵とマヨネーズ、それに白身フライ。

 えっ?


 慌てて戻ると、水槽の中に居た魚は……ちゃんと居た。

 良かった。

 じゃあ、この魚は?


 普通に食糧として、過去に俺が購入したもの?

 そうか……

 なら、良いけど。

 

 取り敢えず、戻ったらアクアリウムを作るかな?

 ……あれっ?

 さっきより、ポイント数が値上がりしてないですか?

 善神様?


『タイムセールじゃったからの?』

「そんなこと、一言も書いてなかったじゃないですか!」


 渋々、割高なポイントを使って色々とこだわってみる。

 うん、満足!


 周囲が静かだ。

 周りを見渡すと、すでに真っ暗。

 クコもマコも寝てしまったらしい。


 まあ、良いか。


――――――

「こっちこっち!」

「どうしたの?」


 ヘンリーが皆を連れて、ホテルの屋上に連れて行ってくれる。

 それから、何やら合図のようなものを送る。


「おお!」

「うわぁ、綺麗!」

「凄いな!」


 それに合わせて、ラーハットの屋敷から何かが打ちあがったかと思うと、大輪の花を咲かせる。

 花火?


「折角殿下が来てくださったので、お父様や滞在中の貴族の方が協力して、魔法使いの人を集めてくれたんだ」


 ああ、魔法か……

 この世界の花火は魔法と。

 なるほど……


 花火の簡単な知識はあるから。

 マサキに頼めばなんとかなるかな?


 色が少ないけど、一応赤と黄色くらいはある。

 それと魔法だからか、花火っぽい火魔法が複雑な動きをしている。

 ようこそ、ラーハットへと文字を描いたり。

 消えない。


 ジャスバン伯爵家を宜しくお願いします?


 偉く個人的なメッセージが込められた花火に、一斉に火魔法が放たれてかき消される。


「はっはっは! ジャスバン伯爵家か! 面白いな」


 おそらく抜け駆けしただけだろうけど、周囲の迅速な対応もあってかすぐに消された。

 その後に、うわーという文字が打ち上げられていた。

 

 セリシオのハートをガッツリと掴むことに成功したようだ。

 あなどれないぞ、ジャスバン家。

 うちのクラスに、関係者は居ないと思うけど。

 もしかしたら、学園に……


 居ない?

 居ないか……


 同行していた蜂が教えてくれた。


「調べましょうか?」

「いや、良いよ。お祭りだから」


 気を利かせてくれたけど、別にそんなにこっちは気にしてないし。


「綺麗……」

「そうだね、ガンバトールさんもかなり気合入れたみたいだね?」


 ソフィアが目を輝かせて呟いていたので、さりげなくガンバトールさんをアピールしておく。

 子供の同級生とはいえ、うち以外はみんな格上の家。

 少しでも、良い印象が伝わるように。


「ヘンリーやるじゃん!」

「えへへ」


 ジョシュアに褒められてはにかんでいるけど、チラチラとエマの反応を伺っているのが丸わかりだ。

 自然と、セリシオやディーン、クリスがヘンリーから距離を取ってこっちに近づいて来る。

 ベントレーは、1人で勝手に屋上の手すりに座って花火を眺めている。

 落ちても知らないぞ?


 様になってるけど。


 むしろ落ちろ!


 まあ、落ちたところで下には、蜘蛛たちがスタンバイしているけど。

 彼等の上司である土蜘蛛を慕っているベントレーを、蜘蛛たちは悪からず思っているからね。

 心配そうに見上げつつも、いつでもネットで受け止める準備は出来ていると。


 ただ、花火を見て目を細めて黄昏ている彼が落ちる絵が、全く想像出来ないけど。


「殿下?」

「なんで、分かった?」

「ふふ……殿下の靴の音は特徴的ですからね? 爪先に金属が使われていますし」


 ベントレーを驚かそうと、ゆっくり近づいていたセリシオだったがすぐにバレて、つまらなさそうな表情を浮かべている。


「流石に、それで落ちたらシャレになりませんよ?」

「うっ……すまん」


 いつもの人の食った感じとは違う、低く落ち着いた声で窘めるディーンにセリシオが頬を掻いている。

 どうやら、ディーンはセリシオのブレーキ役としても優秀らしい。


 僕に絡んでくるときは、そんなに全力で止めてくれない癖に。

 あっ、あいついま、こっち見てニヤリと笑いやがった。


 そんなこんなでソフィアは僕の横に居るし、セリシオ達はベントレーと同じように手すりに腰かけようとして……あっ、いつもは口を出してこないビスマルクさんが、手すりに手を掛けたセリシオの肩に手を置いて首を振っている。


「チッ」


 王子なのに、舌打ちしたよこの子?

 本当に、大丈夫なの?

 王様、頑張った方が良くない?

 側室とか、作っても良いと思うよ?


 もしかして、隠し子とか居ないかな?

 セリシオよりも年上の。


 ジョシュアも僕の横に来て、花火を楽しんでいる。


「ファイアーワークスマジックって、初めて見た」

「そうなの? まあ、僕も初めてだけど」

「凄いですね……」


 ファイアーワークスマジックと言うらしい、その火魔法のアートは時に激しく、時に優しく輝いてラーハットの街を照らしている。

 道行く人々が皆、上を見て感嘆の溜息を吐いている。

 時折、海に向けて撃たれた魔法が闇に消えていくのですら、儚く美しい。


 輝くような星々が煌めく空と、夜の闇に包まれた海の間を火の筋が走れば、水面に反射されたそれがぼやけて余計に幻想的に見える。

 意外と、真面目に魅せる魔法も考えられているらしく、過去の人達の試行錯誤が見て取れる。


 そして、ふとヘンリーの方を見れば、少しずつエマとの距離を詰めているようだった。

 何度も肩を叩いて話しかけようとして、その手を止めて行き場をなくしている。


 それを何度か繰り返して、ようやく肩を叩こうとしたときに不意にエマが振り返る。


「すっごい、綺麗だね!」


 無邪気な笑みを浮かべて、ヘンリーに向けてニッコリと微笑むエマにヘンリーがピタリと止まる。

 それから、本当に嬉しそうに笑うと大きく頷く。


「あれっ? ヘンリー? ソフィアは?」

「えっ?」

「あっ、居た居た! ねえねえ、物凄く綺麗じゃないこれ? うちの領地でも見た事あるけど、海や街を照らす火魔法って凄いね」

「う……うん」


 どうやら、ヘンリーをソフィアと勘違いしていたらしい。

 僕の横に要るソフィアを見つけて、走って駆け寄ってくると興奮したようにまくしたてる。

 ソフィアも、直前のヘンリーの表情を見ていただけに、なんとも申し訳なさそうにヘンリーをチラチラ見ながら曖昧に応える。


 そんなソフィアの様子を訝し気に見たあと横に僕が居るのを見て、エマが「あぁ!」と何かに納得したような表情を浮かべる。

 それから、ニマニマとイヤらしい笑みをソフィアに向ける。


「ごめんね? お邪魔だった?」

「えっ?」


 エマの言葉に、意味が分からないといった表情を浮かべるソフィア。

 でも、エマはそんなことお構いなしとばかりに、ソフィアの反対側に居たジョシュアの方に向かって行く。


「ほらっ、邪魔しちゃ駄目だよ」

「えぇ?」

 

 そして、ジョシュアの腕を組んで僕たちから離れていく。

 心底困惑した表情のジョシュアを、これだからお子ちゃまはとばかりに溜息を吐いたエマが引きずっていく。


 そして、その向こうで悲しそうな表情を浮かべているヘンリー。

 なんで、この子はこんなに持って無いんだ。

 今だって、僕の横に立っていたらエマと2人っきりになれたのに。


 名残惜しそうにこっちを何度も振り返るジョシュア。

 その表情はどうしようという、困惑がありありと浮かんでいる。


 完全にやらかしたって顔だけど、ジョシュアは何も悪くない。

 そして、僕とソフィアがお互い顔を見合わせたあと、ゆっくりとヘンリーの方を見る。

 駄目だ……暗い。

 花火が光を放った瞬間ですら、表情が見えないくらいに影が差している。


「ヘンリーさん、大丈夫ですか?」

「ヘンリー……」


 僕とソフィアがヘンリーに近づいて行くと、ヘンリーが泣きそうな表情を浮かべてこっちにゆっくりと近づいて来る。

 あー、これはかなりネガティブな愚痴を聞かされそうだ。

 そうげんなりとしていたら、遠くから「あーーーー!」

 っという、雄叫びが聞こえる。

 そしてエマが凄い勢いで近づいて来る。


「ヘンリー! 邪魔しちゃだめだって! あんたもこっち来なさい」

「えっ? ええ?」

 

 そしてヘンリーの腕をガッシリと組んで、エマがジョシュアの方にヘンリーを連れて行く。

 あっ、めっちゃ嬉しそう。

 まあ、相対的にジョシュアの顔が悲壮感たっぷりになっているけど。


 彼の場合は、エマとの2人っきりの状況を邪魔されたというより、完全にヘンリーの障害になってしまっているのに、逃げられそうにない現状に悲観しているのだろう。

 ジョシュアも良い奴なんだ。


 そして……セリシオが物凄く嬉しそうに笑っていた。

 あいつ、王子の癖に性格悪いぞ?

 いや、王子だからか?


 そして、その横に居るディーンも、全く同じようなイヤらしい笑みを浮かべていた。

 あぁ……

 そこは気が合うんだね、君たち。


 ちょっとイラッとしたから、蚊を捕まえて彼等に送り込んどいた。

 何故か、刺されたのはセリシオだけだったけど。


 ディーンはちゃんと虫よけのポーションを服用していたらしい。

 あの子、割と潔癖なのだろうか?

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