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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第48話:B級冒険者ジャッカス

長いです……15000文字程(;^_^A


 俺の名前はジャッカス……ゴホン。


 私はジャッカス。

 ベルモントの街の冒険者ギルドのB級冒険者だ。

 実は冒険者になって、まだわずか2年と少し。

 冒険者としては異例の早さでの出世だ。


 俺が冒険者になったのは33歳。

 今年の9月で36歳になる。

 冒険者になったのは遅かったが、B級冒険者としては平均よりも若い。


 冒険者の門を叩くときは緊張した。

 受付に行くまでに、見ない顔ということで周りがザワザワもした。

 冒険者ギルドの中は流石魔物を相手にするような人達が多く居るだけのことはあって、それなりに強そうな連中がうじゃうじゃ居る。

 正直、ちょっと怖かった。


「冒険者登録ですか? その歳で?」

 

 受付嬢の姉ちゃん……女性が驚いていた。

 すまない……マルコ様に言われて言葉遣いを勉強しているところだが、すぐには直るものじゃない。

 これでも、大分マシになった方なのだ。


 女性が大声で叫ぶものだから、背後でガタッと椅子が動く音が聞こえる。

 そして、近づいてくる足音。

 わざと聞かせるかのように、大きな音を立てて近付いてくる。

 

 背後に感じる気配。

 2人か……

 嘘だ。

 気配なんて分からない。

 単純に足音が2人分だっただけだ。


 肩に置かれる腕。


「おいおい、おっさん本気か?」

「仕事でも首になったか? だけど、おっさんにはちょっと遅すぎたんじゃねーかな?」


 肩を強引に組んで来た戦士っぽい男が、イヤらしい笑みで声を掛けてくる。

 隣の男も、どうやら戦士のようだ。

 2人の言葉に対して、あちらこちらの周囲の冒険者から嘲笑が漏れるのが聞こえる。

 居た堪れない。


「チッ!」


 つい、舌打ちしてしまった。


「おいおい、おっさん大丈夫か? まだルーキーにもなってないくせに、生意気なんじゃねーの?」

「俺達で入団試験してやろうぜ!」

「ちょっと、貴方達何勝手な事言ってるの? うちに入団テストなんてそもそも無いですし、団でも無いですよ」

「いいじゃねーか、エンラちゃん地下の訓練場貸してくれよ」


 だが、よほど嘗められていたのか奴等は怒るでもなく、面白いものを見るかのような視線を向けて来てのたまっている。

 もう一人も、楽しくなってきたといった様子だ。

 ちょっと後悔。


 あと、受付嬢はエンラちゃんと。

 こんなおっさんでも庇ってくれるなんて、いい娘だなと純粋に思った。


「エンラさんか……すみません手間を取らせてしまって。私には、どうしても冒険者にならないといけない事情がありまして」


 そう言って、マルコ様から渡された手紙を差し出す。

 そしてそのままエンラちゃんに渡す。

 彼女は手紙を受け取って、封蝋を確認して固まる。


「これはマルコ様の!」


 この嬢ちゃん……女性はいちいち声がでか……大きい。

 マルコ様の名前が出た途端に、さらにガタガタと椅子が動く音が聞こえる。

 そして、近づいてくる複数の人の気配……もとい足音。


「ほう、マルコ様の紹介か」

「ってことは、さぞや見込みがあるんだろうな?」

「いや、もしかしたら便利な冒険者が欲しいだけかも」

「ああ、マルコ様ならそういった手駒を作るのも考えられるね。だって、あの子本当に賢いから」


 俺に絡んでいた2人を含めて、さらに大人数に囲まれる。

 熟練っぽい人達ばかりだ。

 戦士風の人達だけではなく、魔法系の人達も。

 初老の男性から、若そうな女性まで。

 

 ただ、それぞれがかなり出来るのが分かる。


「えっと、マルコ様の紹介?」

「マジで?」


 そして、私に絡んで来た2人もかなり怯んでいる。

 やっぱりマルコ様って凄い人なんだなと改めて感じる。

 あんな小さな子供なのに、ギルドの冒険者たちに広く知られているなんて。


 強面の冒険者達の表情もどこか柔和なものになっているし。


「ちっ、それじゃあしゃーないわ。なんか困った事があったら言いなよおっさん」

「ああ、昇進依頼の手伝いくらいならしてやるから」


 俺に絡んでいた2人は毒気が抜かれたのか、穏やかな声色で嬉しい事を言ってくれる。

 っていうか、マルコ様本当にすげーわ……

 違う、マルコ様は本当に凄いお方だ。

 思わず興奮してしまった。

 手紙一つで、ギルドの冒険者全員が味方になってくれるなんて。


「じゃあ、取りあえず冒険者証を作っちゃいますので、こちらに記入を……文字の読み書きは出来ますか?」

「ああ、必要最低限の事は学んできたので、大丈夫ですよ」

「流石ですね」


 何が流石なのか分からないが、褒められているのは嬉しい。

 必死にマルコ様に文字の読み書きを習った甲斐がある。

 頭から湯気を立てながら。


「戦闘技能の方は問題無いと思いますが、武器は?」

「ああ、これでお願いします」


 そう言って、背中を指さす。

 エンラちゃんは指の先にある、背中に背負われた大剣を見て頷く。

 心なしか目がキラキラとしている。


「なるほど、ベルモントといえば剣ですよね」


 どうやらベルモントの関係者が剣を持っていることで、出来ると思われてしまったようだ。

 何も出来ないけど。

 マルコ様より弱いし。


「文字の読み書きも出来るってことは、やっぱりベルモントの家人か?」

「危なかった……もう少しでベルモントを敵に回すとこだった」

「良かったなお前ら、この人があまり気にしてないみたいで」


 周りの雰囲気が途端に穏やかなものになる。

 皆マルコ様の事が好きな仲間だと思ったら、徐々に親近感が湧いてきた。

 うまくやっていけそうで、一安心。


「規定により、たとえどのような経歴をお持ちでもF級からのスタートとなります。とはいえ、実際にはある程度の実績があれば、研修期間を飛ばして昇進依頼へと一気に進むことができますが、以前は何を?」

「いえ、特にこれといった実績はありませんので、通常の冒険者と同じ扱いで大丈夫ですよ」


 俺……私の言葉に対して、ウンウンと頷くエンラさん。


「流石マルコ様が推薦されるだけのことはありますね。大概の冒険者、特に歳の召された方は色々と小さなことを大きく言われる方が多いので」

「ははは、そうなんですね? そんな事をしても、すぐにバレてしまうのに」

「貴方の場合は、違った意味でバレそうですが」


 なにやら意味深な事を言っているが、本当に言えるような立派な経歴なんてないから。

 元はゴロツキだぜヒャッハーなんて、絶対に言えないしな。

 

―――ーーー

「納品はこれで良かったかな?」

「えっと、万寿草です……ね? えっと、これは?」

「依頼にあった万寿草だけど?」

「あっ、はい……ありがとうございます」

 

 依頼通りの仕事をしたのに、何やら驚いた様子のエンラさん。

 もしかして、間違え……いや、大人の方のマルコ様の貸してくださった蜂様と蟻様が間違えるわけないし。


「状態は特上……下処理も完璧、保存用に適度に濡らした布で包んであるし……もしかして、薬学の知識もあるのかな?」

「あの?」

「あっ、すいません。大変状態が良いので、優で報告しておきます」

「有難うございます」


 独り言のように呟いているエンラさんに声を掛ける。

 ちょっと驚いた様子だったけど、優ということは問題は無いどころか良かったらしい。

 一安心。


 依頼の達成状況によって、評価が変わるらしい。

 これは主にギルド内だけのことで、この評価が可だから依頼主への値引きが行われたり、優だから報酬が増えたりすることはない。

 ただ、ギルド内で使われる評価ポイントというものに影響があるらしく、この評価ポイントが一定値を超えると昇進試験が受けられる。


「優というか……もはや、これ専門職として指名依頼とれるレベル……」


 なにやらボソボソと言いながら、報告書を上司に持っていくエンラさん。

 流石蜂様、蟻様、マルコ様だ。


 この薬草も蜂様が低空飛行で見つけて、蟻様が土を掘り返し根の土を取り払い、ひげ根をある程度間引いて、葉の痛んだ部分を噛み切ってくれていた。

 そして、蜂様が布を湿らせて運んできて、蟻様が包んだのを納品しただけだ。

 それなのに、この高評価。

 なんか、ちょっとだけ優越感。


――――――

「それでは、ポイントがたまりましたのでE級冒険者への昇進資格を得ました。内容は魔物討伐ですが、受けられますか?」

「えっ? ああ、お願いします」

「はいっ、あのジャッカスさんへのE級昇進依頼は、フォレストウルフの討伐です」

「えっ?」

「ですから、フォレストウルフを1頭狩って来るという内容ですが……何か問題でも? もしかして、戦闘が苦手とか……あり得ますね。薬学の知識が豊富そうですし」

「いや、これ……」


 エンラさんが、私に提案した依頼の内容だけど……

 私の鞄にはそのフォレストウルフの牙と爪、それから毛皮が入っている。

 春風花を採取しているときに襲われたから、殺されたのだ。

 そう、殺したではなく殺された。

 誰に?

 一緒に花を採取していた、蟻様と百足様に。


 私はその死体から素材を剥ぎ取って、鞄に詰めただけ。

 勿論、剥ぎ取り方は蟻様が教えてくれた。


「これは……フォレストウルフの牙と爪と皮ですね。しかも、とれたてほやほや」

「ちょうど、春風花を摘んでいたところ、襲われましたので」

「はあ……おめでとうございま……す? 取りあえず、サブマスターに聞いてみます」


 そう言ってその場から離れていくエンラさん。

 受付の後ろにはいくつか机があって、いろんな職員が座っているが一番最後部の男性に話しかける。

 そして、少しして笑顔でこちらに〇を作るエンラさん。

 可愛い。


 パタパタと足音を立てながら、走って戻ってくる。

 途中でちょっと歳のいった女性の職員に注意されて、歩き出したけど。


「おめでとうございます。これで、ジャッカスさんもE級、見習いから冒険者に昇進です。魔物討伐の依頼も解除されますので、頑張ってください!」


 胸の前で両手を組んで、キラキラとした目を向けてくるエンラさんにちょっと照れてしまった。

 照れ隠しのため、つい出来るだけ優しく微笑んでありがとうと言うだけで背一杯だった。


「流石ですね……E級なんて通過点に過ぎないって感じですね」

「いや、嬉しいものですよ。ランクが上がるというものは」

「……大人の余裕」


 まあ、目の前の20に届くかといった少女からすれば、大人というかおっさんですからね。

 当然の反応ですね。

 新しくなった冒険者証を受け取ると、後ろから不穏な気配が。

 そして、当然のように組まれる肩。


「なんだよおっさん、勝手に昇格してんじゃねーよ!」

「折角俺達が手伝ってやろうと思ったのに」


 そう言って嬉しそうに話しかけてきたのは、私が初めてこのギルドを訪れた時に絡んで来た二人組。

 まあ彼等からすれば、私はまだまだルーキーで弟分のような存在なのだろう。

 でも、純粋に私の昇進を喜んでいるようで根は良い人達なのだと思う。


「いえ、私もそのつもりでしたが、たまたま採取依頼中に襲って来た魔物が昇進依頼のターゲットだったもので」

「へえ、なんだったんだ? ゴブリンか? ボーンラビットか?」

「フォレストウルフですね」

「えっ?」

「はは……おっさん……いや、E級なら立派な冒険者だな。ジャッカスはマスターにも目を掛けられてるのか」

 

 どうやら、フォレストウルフというのはD級目前の冒険者が狩れるようになる魔物らしい。

 そんな魔物をズルして提供したことに、ちょっと引け目を感じるが呼び方がおっさんから名前に変わったのは純粋に嬉しい。


「じゃあ、今日は昇進祝いに俺達が飯奢ってやるよ!」

「その代わり、E級依頼初達成の時は、何か奢れよな」


 なんだかんだでこの2人とは仲良くなれそうな気がする。


――――――

 そんなこんなで2年、気が付けばB級冒険者にまで登りつめていた。

 勿論、殆どマルコ様の配下の虫様達のお陰ですが。


「おい、無死角(フルサイト)のジャッカスさんだ」

「あれが、ジャッカスさんか……ぱっと見、隙だらけだな」

「ああ、でも無死角ってくらいだから、あの状況でも常に気配探知張ってるんじゃないか?」


 私がギルドに入ると、周りの若い子達が羨望の眼差しを送って来る。

 少し気恥ずかしい思いではありますが、これもマルコ様の評価に繋がるかと思えば嬉しい事ですね。

 いつの間にか、2つ名まで付けて頂いて以前の私から想像もつかないような日々です。


「すみません、何か手頃な依頼はありますか?」

「あっ! ジャッカス様! 丁度いいところに!」


 私が受付に居るエンラ嬢に声を掛ける、彼女がホッとした表情を浮かべ立ち上がって手招きしてくる。

 何やら問題があったようですね。


「何か問題でも?」

「はいっ、昨日ベルモントの北にあるジャジャの森に採取依頼で入ったF級冒険者パーティの雷竜の使徒の皆がまだ戻って来てないんです」

「昨日ですか?」


 ジャジャの森というのは、薬草の材料になる草花が豊富に咲き乱れている初心者御用達の森だ。

 入り口の付近であれば、魔物もそんなに居ないので特にこれといった危険はないはず。


「ジャジャの森なら、そこまで危険は無いかと思いますが」

「はい……普通なら。それが、昨日同じ森に居た同じくF級パーティの天光神槍の子達が雷竜の子達が森の奥に入って行くのを見たらしく」

「その、雷竜の子達が受けた依頼というのは?」

「霞草の採取です」

「なるほど……」

 

 霞草というのは、森の至るところに生えてはいるが。

 採取が簡単ということで、入り口付近の草は割と根こそぎ刈られている事が多い。

 もしかしたら、思った程集まらなくて捜し歩いているうちに奥に入っていったのかな?


 だとしたら、ちょっと危険かもしれないですね。

 いくら安全な森とはいえ、深部に向かえば魔物の数も増えてきますし。

 道に迷って森の奥深くに入ってしまえば、熊のような大型の魔物も居ますしね。


「明日には緊急依頼として、出そうかと思っていたのですが」

「それは遅すぎますね。彼等はまだ若い……体力もありますし、森の奥で闇雲に歩き回ってより深部に向かった可能性もありますし」

「その……今日であれば依頼とはならないので、報酬は……」

「ふう……構いませんよ。緊急依頼となれば、その報酬の半分を彼等が負担することとなりますしね?」


 そうなのだ。

 もしも、身の安全が疑われた場合、ギルドの判断で救援の緊急依頼が発動されることになる。

 その危険度によって報酬は変わってくるが、パーティの意思に関らず半額が対象パーティの負担となる。

 勿論、普通であればそんな事にならないように、達成目標日数と緊急自体とみなされる日数を自己申告で設定する。


 ただジャジャの森での採取依頼ともなれば、普通は日帰り。

 であれば、その3倍の日数が経っても戻ってこないのは、緊急事態に他ならない。


「その代わり、彼等が無事であったならば、貴女が報酬にとびっきりの笑顔を用意してくださいね?」

「ジャッカス様……」


 私は受付嬢に優しく微笑むと、そう添えて踵を返す。

 B級冒険者として、後進の身の安全を確保するのも大事な仕事ですしね。

 マルコ様に下賜された剣を背中に担いで、ギルドを足早に去る。


――――――

「エンラちゃん、なんかあったの?」


 ジャッカスが去った後で、冒険者の1人が受付でエンラに話しかける。

 特に依頼を受けた様子でも無いのに、すぐにギルドの外に向かったのが気になったのだろう。


「いえ、雷竜の使徒の子達が昨日から戻って来ないので、ジャッカス様に救援を」

「ええ? 緊急依頼?」

「いえ、それは明日出す予定でしたので」


 どこか頬を赤く染めてポーっとした様子のエンラに、話しかけた冒険者が首を傾げる。


「まあ、ジャッカスさんが出たんなら大丈夫でしょ?」

「私も、そう信じてます」

「大丈夫だって! ジャッカスさんの救援達成率って異例の100%だからね? 今じゃ無死角(フルサイト)以外に救命者(ライフセーバー)とかって呼ばれてるし」

「ええ、本当に凄い方です」


 そんな言葉を交わしながら、2人は今しがたジャッカスが出て行ったばかりの扉を眺めていた。


――――――

 ジャジャの森に入ってすぐに、一匹の蜂が近寄って来る。

 マルコ様が使役する蜂様の一匹だ。

 この一匹で、B級冒険者の自分を簡単に殺す程の実力を持っている。

 彼はまだ小さい部類に……痛いです。

 

 いきなり刺された。

 幸い毒は注入されなかったので、単純に刺されて痛いだけですが。

 申し訳ありません。

 彼女はまだ小さい部類に入る。

 

 どうやら、すでに件のパーティは見つけているらしく迷いの無い様子で、ちょっと早くないですか?

 緊急事態?

 分かりました。


 本気で走っているのに、蜂様が遅いといってこっちに戻って頭の周りを一周してまた飛び去って行く。

 不意にバランスが崩れそうになる。

 咄嗟に上半身に力を入れて体勢を持ち直すと、凄い勢いで地面が滑っていく。


 足元にはたくさんの蟻様達が、私の靴の下に潜り込んで地面を凄い速さで駈って行く。

 あの、顔にバシバシ小枝が当たっているのですが?


 ああ、有難うございます。

 顔に小傷が出来る度に、横を並走する蝶様が回復効果のある鱗粉で癒してくれる。

 色々と心にも傷が……黙れ?

 すいません。


 余計な事を考えていたら、蜂様に怒られた。

 蟻様に運ばれること2時間……かなり胃の中の色々なものが込み上げて来ている。

 もはや景色がどうとかってレベルじゃない。

 あれからさらに速度を上げたため、眼球に小枝が刺さって声にもならない悲鳴をあげたりもした。

 それも、蝶様がすぐに癒してくれる。


 新手の拷問かと思う時間を過ごし、どうやらようやく目的地付近に。


 蜂様がいけとばかりに後頭部に突っ込んでくるが、ちょっと待ってください。


「うげえええええ」


 木の裏で色々と吐き出した。

 胃の内容物を不満と一緒に。


 いえ、貴方様方に不満なんて何一つございません。

 ただ自分の身体の貧弱さが不満なだけでございます。


 カチカチと歯をならす蜂様と蟻様に青白い笑顔を向けて、耳を澄ませる。

 人の息遣い。

 何かに追われて隠れているようだ。


 場所は……有難うございます。


 蜂様が案内してくる。


 草を掻き分けてその場所に到着。


「ひいっ!」

「シッ! 声を出さないでください」

 

 茂みの奥に居たのは10代前半と思われる男の子が2人と女の子が1人。

 男の子の1人と、女の子はあちこちに擦傷を負っているが、もう1人の男のは非常に危険な状態だというのが見て分かる。


「あのっ……」

「私はジャッカス。貴方方と同じ冒険者ですよ」

「ジャッカムグッ」

「だから、声が大きいですって」


 名前を名乗った瞬間に、女の子が大きな声を出しかけたので慌てて口を塞ぐ。

 どうやら、彼等が隠れる理由となった存在に気付かれてしまったようですね。

 何やらゆっくりと大きな足音が近づいて来るのが聞こえます。


 これは、ちょっと厄介な。

 場所と足音が判断するに、相手はグレイトベア。

 それもつがいですか……


「雷竜の使徒の皆さんですね? あっ、声は出さないように」


 私の言葉にコクコクと頷く2人。

 もう1人は横になった状態で、か細く息をしている。


 このような状態で良くもまあ、逃げおおせたものですね。

 疑問に思っていたら、少年が布袋を見せてくれる。

 というより、布袋を不安そうに眺めていた。

 

 どうやら、魔物避けの魔石が中に入っているようですが……

 残念ながら、魔力が尽きかけていて大分効果が薄くなっている様子。

 まあ、そのお陰でグレイトベアもゆっくりと近づきつつも、ちょっと足取りが重いようだ。


 少しだけ助かりました。

 この子を治療する時間はありそうですね。


 倒れている子は背中に4本の太い爪による傷跡があり、地面に広がっている血から腹部も傷つけられている様子。

 いつ傷を負ったのかは分かりませんが、非常に危険な状況だというのは素人目にも分かる。


「この方を」


 私の言葉に、蝶様が素早く反応して傷を癒してくれる。

 徐々に呼吸が落ち着くのを見て、ホッと一安心。


「ヤン……」


 男の子の1人が、泣きそうな様子で淡い光とともに出血が収まる仲間を見て泣きそうになっている。

 とはいえ、危険はまだまだ去った訳じゃ無いんですけどね。


「この魔道具に魔力を込めたのは?」

「私です」


 私の質問に、少女が答えてくれる。

 どうやら、彼女は魔法職のようですね。


「まだ魔力はありますか?」

「ごめんなさい……もう殆ど残って無いです」

「そうですか……」


 意外とこの魔道具はコストパフォーマンスが悪い。

 いや、普通の魔法使いであれば一日くらいは軽く効果が発揮できるし、その間にある程度の魔力の回復は出来るのですが。


 彼女の魔力量を見る限り、短時間で何回も補充していた様子。

 顔が大分青白いところを見ると、その魔力も尽きかけ。


「10分……10分程効果を延長できますか?」

「出来ますが……たぶん倒れます」

「ふふ……十分ですよ。10分あれば、なんとかしてみせますから、ゆっくりと休んでください」


 私が微笑みかけると、彼女は頬を染めて頷く。

 青白い表情とのコントラストが、少し美しいと感じたのは不謹慎でしたね。


「あの、ジャッカス様?」

「貴方は万が一に備えて2人を守ってくださいね? まあ、万が一が起こるなんて文字通り1万回に1回の確率だと思いますが」

「はいっ!」

「はぁ……」


 不安そうに声を掛けてきた少年に、優しく微笑んでちょっとおどけた様子で指示をするとウィンクする。

 力強い返事に、思わずため息。

 静かにしろと言ったのに。


 まあ、良いか。


「ではお嬢さん、魔力を」

「はい」


 少女が魔力を込めたのを確認すると、剣を抜いて茂みから飛び出す。

 相手はすでにこちらを捕捉していたので、私が飛び出しても特に驚く様子はない。

 むしろ、獲物が自ら出て来たことを喜ぶように、こちらを威嚇してくる。


「さてと……まずは、貴方達の処分からですね」

「グルァ!」


 剣を軽く握って、通じるはずもない言葉をかけると前に居た少し小柄な熊が雄たけびをあげて襲い掛かって来る。

 小柄とはいえ、それでも3m近い体躯は十分に脅威的だ。


「遅いですよ」


 熊の手を、握った剣で簡単に弾く。

 蟻様が掛けてくれた身体強化の効果だ。


 続けざまに手に持った剣で突きを放つが、グレイトベアは割と知能が高い。

 腕を弾かれた時点で、こちらの能力に上方修正を入れたのだろう。

 すぐに距離を取られて、躱されてしまう。


「グルルル」

「グルルル」


 そして、もう1頭の熊と何やら会話を交わすかのように、声をあげると2頭が私を囲むように移動する。

 私の周りを、様子を見るようにと円を描くようにゆっくりと移動し始める。


 なるほど1頭が正面を受け持って、もう1頭が背後から襲い掛かって来る算段ですね。


「ふぅ……本当に、嫌になるほど賢いですね? ただの獣の分際で」


 剣をしっかりと握り直すと、挑発するように笑いかけて見せる。


「グルァ!」


 馬鹿にされたのが分かったのか、正面を取ろうとしている熊が威嚇し返してくるのを余裕の笑みで受け流す。

 正直言うと、物凄く怖い。

 1人(・・)なら間違いなく、一瞬で殺されていると思える程に凶悪で狂暴な瞳。

 口から覗く牙は、簡単に私の身体などかみ砕いてしまうですしょうね……

 もし、私が1人(・・)なら。


「シッ!」


 素早く正面の熊に対して距離を詰めると、上段から剣を振り下ろして斬りかかる。

 先ほど衝突したときに、弾いた腕が傷を負わなかったことから受け止められると判断したのだろう。

 目の前の熊は、腕を上げてその剣を防ごうとする。


「グアッ?」


 剣が腕と衝突した瞬間に、グニャリと剣が曲がる。

 そして、熊の腕に巻き付く。


「すいません……この剣実は、生きてるんですよ」


 そう言って、一気に剣を引き戻すとギュルルという音を立て、次いでグシュルルという音が聞こえてくる。

 ドサリと音を立てて、地面に落ちる腕。


「ガアアアア!」

「背後から声を掛けて襲ってきたら、バレバレですよ? まあ、黙ってても防げますが」


 背後から襲い掛かって来るもう1頭の腕を、振り返らずに左手で弾く。

 次の瞬間に何かが爆ぜたような音がして、熊が後ろに吹き飛ぶ。


 右手に持っている剣は、マルコ様に遣わされた粘鉄蚯蚓(ビスカスワーム)様、左手の手甲は鉄甲毒百足(アイアンセンチビート)様だ。

 粘鉄蚯蚓(ビスカスワーム)様に両刃の台形の鉄甲を重ねたものを身に纏ってもらっている。

 収縮するとその鉄甲が重なり直剣として、伸長するとしなやかかつ自由自在に動く可動鞭剣になる。

 

 左手に纏っている鉄甲毒百足(アイアンセンチビート)様は【衝撃発生(インパクト)】のスキルを持っていて、相手に密着した状態で臨機応変に発動してくれる。

 絶妙なタイミングで。


「す……凄い。これがB級……」


 茂みから少年の声が聞こえてくる。

 自分の力が1つも含まれていないから、ちょっと複雑な気分に陥る。


「グウウ」


 無くなった自分の右腕を押さえつつ、ちょっと後ずさりを始める正面の熊。

 魔物とはいえ獣。

 彼我の力の差が理解出来たのだろう、この場から逃げようとする雰囲気が感じて取れる。


 背後の熊は目の前のそれよりも体躯が大きく、諦める気配は無いが。

 吹き飛ばしたところで、熊の皮下脂肪というのは馬鹿にならない防御力を秘めている。

 それが、魔物ともなればなおのこと。


「まずは1頭!」

「キャウ!」


 大分距離を取っていた為届かないと思っていたのでしょうね。

 残念ですが、先ほども言いましたがこの剣……生きているんですよね?


 横薙ぎに振るった剣は、振るった腕以上の速度で目の前の熊の首に巻き付く。

 その目に恐怖の色が浮かんでいるが、すでに手遅れ。

 剣を軽く引き戻すだけで、目の前の熊の首が胴から切り離される。


「ガッ?」


 一瞬で片が付いたことで、後ろの熊もようやくこちらの実力が見て取れたようだ。

 こちらというか、この剣と左腕の細工の事でしょうが。


「ガアアアアア!」


 これで諦めてくれるかと思ったが、目の前の熊よりも強そうな彼女はこちらに向かって突進をしてくる。

 正面から受けたら、こちら吹き飛ばされるのは目に見えて分かる。

 普通なら……


「ギャアアアアア!」


 頭から口を開いて突っ込んでくる熊の額に、左の拳で殴りつけると額から血を流しながら熊の方が弾かれる。

 バランスを崩し、私の身体からそれるように斜めに進んでいく熊。


 数歩いったところで、その場に崩れ落ちる。

 口から泡を出し、焦点の定まらない目でこちらを一生懸命見ている。

 

 その目からは恐怖故か、それとも苦しみ故か涙のようなものまで流れている。


 鉄甲毒百足(アイアンセンチビート)様が殴った瞬間に、鼻先に牙を突き立て毒を流し込んだようだ。

 確実に適切なタイミングでスキルを使ってくれるのは本当に有難い。


「申し訳ありませんが……獣に向けるような同情心など持ち合わせていないものでして。ただ、まあ苦しみの中で死ぬのは流石に可哀想だと思いますからね」


 今度はこっちがゆっくりと1歩ずつ近づいて行く。

 先ほどとは、完全に立場が逆転していることに思わず苦笑する。

 これじゃ、どっちが魔物なのやら。


 そんな自虐めいたことを思いつつ、熊の目の前に立つとその胸に剣を突き立てる。

 驚愕に見開かれた瞳。

 胸に差し込んだ剣が、中で不自然に動くのを感じる。

 すぐに熊の瞳孔が開かれ、息が止まるのを確認すると剣を素早く抜き取る。

 

 そして、剣に着いた血を振り払うと、懐から布を出して綺麗に血油をふき取って鞘に戻す。

 この程度と言っていいものかわからないですが、所詮はそこら辺の魔物がちょっと強くなった程度。

 マルコ様に遣わされた虫様方に比べれば、ただの獣ということです。


 私にとっても、雷竜の使徒にとっても脅威が完全に去ったので、彼等の元にゆっくりと戻っていく。


「流石ジャッカス様です! B級のグレイトベア2頭を1人で討伐されるだなんて!」

「有難うございます。でも、反省が足りませんね? 何故、このような事になったのかの」

「……はいっ」


 無邪気に喜ぶ少年に、少し腹が立ったのでつい小言を言ってしまった。

 駄目だ、駄目だ。

 マルコ様には余裕をもって、生きるように言われたのに。

 とはいえ、子供が危険な目に合うというのは今も昔も心苦しいものがある。

 その子供だったマルコ様に危害を加えようとした、私の言葉ではないけれども。


 あの時はそういう集団に居たから、仕方ない部分もある。

 やらないと、ご飯も食べられない。

 貧しく、苦しい自分にとってはもう二度と味わいたくない暗い過去。

 

 そこから救い出してくれたのは、他ならぬ当時誘拐したマルコ様ですが。

 あの時、罪悪感からあれこれとお世話をさせて頂いたおかげで、今があるわけです。

 この感謝の気持ちをいつまでも忘れず、当時のマルコ様に対して……そして自分の罪に対して反省と罪滅ぼしの意味も兼ねて、多くの人を救う事が今の生き甲斐だったり。

 当時害した人達の100倍近い人を救った今となっては、ようやく空を見上げて太陽をまともに拝めるようになったかと感じてます。


「まあ、私個人としては、傷付いた仲間を見捨てず、諦めずに今まで生きていてくれたことを、本心から良かったと思ってますけどね」

「ジャッカスさまぁ~」

「まあ、ギルドに戻ったらしっかりと叱られてくださいね」

「はいっ!」


 それから右肩に傷を負った男の子、左脇に魔力枯渇で気を失った女の子を抱えて森の出口に向かう。

 先導はちょっと離れたところを、自然な様子でもう1人の少年に気付かれずに飛んでいる蜂様。

 ちなみに少年から見えない位置で、蜂様達が担いだ子達を掴んで飛んでいてくれるので、殆ど重さは感じない。

 

 どんな凶悪な魔物が居ても、この方達居る限り決して自分が死ぬことが無い事は分かる。

 至高なるあのお方の愛に感謝しつつ、いつかは自身の力でこの場所に立ちたいと思いつつも隣の少年と会話を弾ませてギルドへと戻る。


――――――

 ギルドの扉を開けると、周囲がざわつく。

 隣を歩く少年達が気恥ずかしそうに、一緒に付いてくる。

 そのまま受付に向かうと、書類に目を通していたエンラもこちらに注目していた。

 ギルド内のざわめきを感じ取ったのだろう。


「もう戻って来られたのですか?」

「ええ、これがお土産です」


 そう言って、私の後ろに隠れてしまった3人を前へ押し出す。


「3人とも無事だったのですね」

「ごめんなさいエンラさん」

「「ごめんなさい」」


 代表してリーダーの少年、ジャックが頭を下げると、大怪我を負っていたヤンと、魔法使いの少女ケイトも頭を下げる。


「まずは、無事で良かったです。ジャッカスさん有難うございます! それにしても、随分と早かったですね?」

「ええ、意外とすぐに見つかったもので」


 蜂様のお陰で。


「でも、彼等にとっては反省に足る程長い時間だったようですので、お説教はほどほどにお願いしますね」


 エンラさんにそう言って、3人に向かって微笑んでウィンクをする。


「ジャッカスさん」

「有難うございます!」

「カッコいいです!」


 3人から向けられる羨望の眼差しに、照れくさい思いを抱きつつも無事に助けることが出来て良かったと、本心から思う。


「流石、救命者(ライフセーバー)だな!」

「いやいや、どこで助けたかまだ聞いてないし。もしかしたら、森の入り口付近かもしれないじゃないか」

「いやあ、あの子の鎧の破れ具合からして、結構危険だったんじゃないか?」


 周囲からそんな声が聞こえてくる。

 ただ、皆彼等が無事だったことを喜んでいる様子だし、彼等が無事だったからこそあれこれ言えるということも分かっている。

 そんな温かい人達が多いこのギルドに出会う事が出来たのは、凄く有難い。

 本当に、マルコ様には感謝しかない。


「それに彼等のお陰で、今日のご飯は豪勢に行けそうだしね。これの買取をお願いしてきますね。査定の間に詳しい話をさせてもらいます」

「は……い? それって」

「ええ、彼等をご飯にしようとしてた方達の、お肉と肝、それに牙と爪と毛皮です」

「これって……グレイトべ……ア」


 私が受付でチラリと見せた素材を見て、エンラさんが言葉を失っている。


「貴方達、本当によく戻って来てくれましたね。無事で、本当に良かった……」


 彼等が本当に危険な状況だったのが伝わったのか、エンラさんの目が徐々に潤んでくる。

 それから、受付を飛び出して3人を纏めて抱きしめる。

 うんうん、この景色が見れただけでも良かったかな。


「もぅ……普通なら死んでるんですからね……うう……おかえりなさい」


 とうとう泣き出してしまった。


「うう、ごべんなざーい」

「エンラざぁーーーん」

「ごわがったよーーー」


 3人ともエンラさんにしがみ付いて、泣き始める。

 

「あれ、グレイトベア?」

「マジか……坊主たちよくもまあ、無事だったな」

「まあ、死の淵を体験したうえにジャッカスさんの戦いを見たとあっちゃ、俺達もうかうかしてられんな」

「もし、奴らに冒険者の素質があるなら、今日の出来事はきっと数段階は成長を引き上げてるだろうしな」

「でもまあ、無事で良かった」

「本当にな……」


 その様子を見て、他の冒険者達も本当に安心したようだ。

 ジャック達はこれで慎重という言葉を覚えただろう。

 あとは、少しでも人に助けられる、助けるということを考えてくれれば嬉しいですね。


「エンラさん? 私への報酬を」

「報酬?」

「エンラさんが支払うの?」

「駄目だよ! 僕たちが悪いのに」

「いくらなのエンラさん?」

「私達頑張るから! 薬草いっぱい集めるから! だから、ジャッカスさんちょっとだけ支払い待って貰えませんか?」

「お願いします! B級冒険者の方への依頼が安くない事は分かってるけど……でも、ジャッカスさんに命まで助けて貰って、エンラさんにまで迷惑かけられないです」


 3人が驚いたように声をあげている。

 それからエンラさんと私の間に立って、嬉しい事を言ってくれている。

 

「良いのよ貴方達……ジャッカスさん、本当に有難うございました」


 そう言って泣き笑いで、こちらにお礼を言ってくれるエンラさん。


「確かに、報酬受け取りました」

「「「えっ?」」」

「フフフ……ジャッカスさんったら、報酬は私の笑顔で良いって……」


 エンラさんの言葉に、3人がキョトンとする。

 そして、少し遅れてはあああと溜息を吐いて、ホッとした表情を浮かべて感心した表情に変わる。


「ジャッカスさん」

「もう、ビックリした」

「カッコいい……」


 3人も笑顔になる。


「貴方達まで報酬を払ってくれるなんて、本当にこのギルドは払いが良いですね? 今日は熊さんのお陰で臨時収入までありそうですし、皆で美味しいものでも食べにいきましょうか?」

「いやいやいや、それこそ本当に悪いっですって」

「勿論、他の方々も一緒にね?」


 そう言って、後ろを振り返ると周りの冒険者からも歓声が上がる。

 まあ、彼等を助けたのも熊を倒したのも私じゃないですし。

 独り占めしてしまうのは、どうにも心苦しいものがありますしね。


「流石ジャッカスさん!」

「俺も少しは援助するぜ! お祝いだもんな!」

「新しい英雄の卵が産まれるかもしれないし」

「雷竜の使徒がか? ありえるな……ジャッカスさんの全てをその目に収められたなら」


 周囲からのプレッシャーを受けながらも、3人がこっちをジッと見つめてくる。


「俺達……ジャッカスさんのように、誰かを助けられる冒険者を目指します!」

「もし、その時、その人達にお金が無かったら……報酬は笑顔でって言えるように」

「本当にありがとうございます」


 そう言って深々と頭を下げる3人。

 その頭を1人ずつ優しく撫でる。


「ええ、今の貴方達のような笑顔を、いつか誰かから向けられると良いですね。とても難しい事ですが、心意気次第です。貴方達なら、きっと出来ますよ」

「「「はいっ!」」」

「その前に……エンラさんからしっかりと叱られてきてくださいね」

「「「はい……」」」


 エンラさんや他の職員も食事に誘って、そのままギルドを後にする。

 冒険者になって良かったとしみじみと感じ、近々戻って来られるマルコ様に出来る報告が増えた喜びを噛みしめながらお店へと向かう。

 大人数になってしまったので、予約はしておかない。


 空を見上げると、1番星が輝いていた。

 まるで、マルコ様が褒めてくださっているようだ。


ジャッカス、カッコいいと思った方は最新話から是非評価をお願いしますm(__)m。


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