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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第46話:帰郷の準備

 管理者の空間から、マルコ達の様子を眺める。


「そっかー、王都の学校って貴族ばっかりなんだ」

「いや、そうじゃなくて僕のクラスが貴族科だから」

「いやあ、やっぱりマーキュリーの学校にしておいて良かった」

「そうだね。おじいさまは伯爵だから、タクトは専門を選ばなければ間違いなく貴族科行きだもんね」


 マルコの従兄のタクトがマルコの言葉に、ホッとした様子でしみじみと漏らしている。 

 人見知りが激しく気弱な彼のことだから、セリシオと同じクラスって胃をやられそうだ。


「でも、友達が居るのは羨ましいな」

「あー、タクトは変な事言ってたね。家来がいっぱい出来たとか」

「そうなんだよねー、皆領主の息子だからって気を使って普通に話しかけてくれないし」

「……まあ、普通はそうだよね」


 ベルモントの学校に通っていたら、今頃はマルコも似たような状況だったかも。

 いや、あまりタクトが喋らないから周りも余計に遠慮するんじゃないか?


「僕が教室に入ると、それまで騒がしかったクラスが急に静かになったりしてさ……それで、特に親しいというか僕をいつも手伝ってくれる子達が駆け寄って来て、鞄を持ってくれたり椅子を引いてくれたりして」

「うわあ……王様だね」

「うん、僕はそんな事一言も頼んで無いんだけどさ……家まで迎えに来ようとしてたから、流石にそれは止めたけど」

「一緒に話をしながら通った方が、距離が縮まったんじゃ無い?」

「あっ……いや、そんな事無いかな。皆、僕なんかと話してても楽しくないと思うし」


 駄目だ。

 教室で浮いていて、完全にウジウジモードに入っている。


「マサキおにい、何見てるの?」


 そこにクコが近寄って来て、興味深そうに手元のタブレットを背伸びして覗き込む。

 手元といっても、実際に手に持っている訳では無く宙に画面だけが浮いている状態だけど。

 タブレットてのは変かな……プレートディスプレイとか?

 いや、まあタブレットみたいだからタブレットで良いや。


「ああ、ちょっとマルコの様子をね」

「マルコおにい? 見たい見たい!」

「いいよ、おいで」


 そう言って、自然な動作でクコを膝に乗せる。

 尻尾がピコピコと揺れて鼻先を刺激してくすぐったい。


「クコ、尻尾」

「あっ、ごめんなさい」


 まあ、気持ち良いから良いんだけど、当たってる場所が鼻だからむずがゆくてくしゃみが出そうになる。


「ほらっ、あれがマルコのお母さんのお兄さんの子供のタクトって言うんだぞ」

「おかあさんのおにいさんのこども?」

「ああ、従兄だ」

「いとこ? タクトじゃなくて?」

「ああ、親の兄弟の子供のことを従兄って言うんだ。名前はタクト」

「そっか、よくわかんないけど」

「そのうち、分かるようになるさ」


 大きなベッドに、タクトとマルコが並んで横になっている。

 上手い事、マリアさんから逃げられたみたいで良かった。


「もう寝るみたいだし、クコも寝る時間かな?」

「うーん、まだねむくないよ?」

「大丈夫、布団に横になったらグッスリ眠れるさ」


 そう言ってクコを部屋に連れていく。

 マコは訓練で疲れたのか灯りをつけっぱなしにして、すでに横になっていいびきをかいている。

 まあ、まず風邪をひく事はないが、腹を出して寝ていたので寝間着を下ろして布団をかけてあげる。


「マコのいびき、うるさーい」

「いっぱい頑張って、疲れたんだろう。さっ、おやすみ」

「おやすみなさい」


 灯りを消して、部屋を出たところでトトに出会う。


「あのマサキ様、クコ見なかったかです?」

「ああ、クコならさっき俺のとこに来たから、いまここまで送ったところだ。もうすぐ、寝ると思う」

「もう、あの子ったら! わざわざ、ありがとうございます」

「いや、ここの生活は慣れたか?」

「……天国だですね」

「そうか、なら良かった」


 恥ずかしそうに、嬉しそうに答えてくれたトトの頭を撫でてやる。


「むう……子供扱いしないでです!」

「子供なんだから、甘えとけって」


 そのまま髪の毛をクシャクシャにしてやると、笑いながら椅子のある部屋に向かう。


「おやすみなさいです」

「ああ、おやすみ」


 見送ってくれるトトに振り返らずに手だけ振って応えると、そのまま進む。


「ふう、ハベストの森の深部に向かう訳だから、虫達も少し強化しときたいかな」


 椅子に座って、タブレットを操作して素材のページを見る。

 厳密に言うと、アイテム交換のページだけどね。

 管理者のレベルが50を超えたので、素材の種類も大分豊富になった。

 ポイントは、ログボっぽいご褒美だけでも使い切れない程溜まっている。


「うーん属性付与された魔石は、まだ小のままか。無属性だったら中までいったんだけどな」


 魔石の項目を見るが、特に目新しいものは無い。


「ありがとう」


 スッと、横からコーヒーが差し出されたので受け取る。

 百足の大顎がお辞儀をして戻っていく。

 無駄に便利だなあいつ。


 大顎のスキルの1つに【体積縮小(リダクション)】というのがあった。

 隠密系のスキルらしいが、自分の身体のサイズを最高で10分の1まで小さくできるらしい。


 今は2mくらいの大きさだけど。

 40cmから4mの間で、身体の大きさが変化出来るとか。

 40cmの百足でも、十分に怖いけどね。


「鉱物とか、増えてないかな?」


 鉱物のページを見るが、ああ加工済みの金属がいくつか増えてる。

 玉鋼か……鉄よりは堅そうかな?

 他にはウーツ鋼とダマスカス鋼。


 ウーツ鋼とか、大顎に良いかも。

 弾力性があるから、身体を覆っている装甲の強化にもってこいかな。


 玉鋼をカブトに合成したら、刀剣のような美しい角になったりして。

 でも、うっかり握って指が落ちるのも嫌だし。


 まあ、そんな都合よくいくわけないか。


 こないだの、ダンゴムシは失敗だったしな。

 あっ、でも玉鋼だったらラダマンティスと蜂の針に丁度良いか。


 取りあえず大顎用にウーツ鋼と、ラダマンティスと蜂用に玉鋼を交換しておこう。

 それから……普通のアイテムコーナーや魔物素材も色々とあったので一通り集めて、蟻達に運ばせる。

 魔法陣の上にいるのはカブトだ。

 やっぱり、まずはコイツからだよな。

 

 でもって祭壇に乗せるのは、まずは玉鋼と黒曜石。

 やっぱり、カブトムシは黒い方がカッコいいという結論に至った。

 黒曜石だと硬度に問題がありそうなので、玉鋼の分量を多くしておいた。 

 お願いだからマーブル模様になりませんように。


 それを合成したあとは、祭壇に風の魔石小を設置する

 それと、フッ素樹脂。

 撥水効果を期待してだ。


 祭壇が光を放ったかと思うと、カブトの全身が淡く輝く。

 そして現れる、黒光りしたカブト。

 良かった、マーブル模様にはなって無かった。


 自分の身体を見たカブトの反応は、ちょっと不満そうだったけど。

 銀色の方が良かったのかな?

 たしか、前は森の蟲王グランディオスビートル(変異種)って種類だったっけ?

 種族名を見てみる。

 

 王角甲殻虫(キングス・ブレード)(支配種)


 うん、カブトムシ要素どこ行った?

 まあ、良いか。

 こっちに降りて来たカブトの角を触ってみる。

 良かった、刃物みたいにはなって無かった。


 それと支配種って、なんか物騒。

 なになに?

 同種族に対して、威圧を発動させることが出来る。

 なるほどね……暴君?


 角の形自体は変わっていないが、メインの角が大きく伸びている。

 太さは変わらず。

 全身のサイズは、少し小さくなったかな?

 その分、力が凝縮された感じ?

 強そうだ。

 光をキラキラと反射している黒い身体も、良い感じに堅そうだし……

 いや、ツルツル滑って座りにくいとかって事は……

 あとで、試乗してみよう。


スキル:王の槍(ロイヤル・ランス)

    王の盾(ロイヤル・シールド)

    筋力強化(マッスル・ブースト)

    魔素空間(マナ・プール)

    超回復(セルフ・ヒール)

    風操作(ウィンド・オペレート)

    水属性無効


 ……おおう?

 水属性無効ってなんぞ?


 いや、撥水効果を期待してフッ素樹脂を素材に選んだよ?

 地球素材だから、ポイント物凄く割高だったけど。


 水魔法(・・・)や水操作系のスキル()の影響を一切寄せ付けない。

 なるほど……違う!

 

 いや、水全てを受け付けないよりは良いけどさ。

 だって、水飲めなくなっちゃうもんね。

 カブトが。

 それ以前に体内の水分とかどっかいっちゃったりして。


 干からびてるけど、元気いっぱいのカブト君。

 身体が軽くなって、色々と早くなりそうだ。

 滅茶苦茶スリムになったりして……


 現実逃避はこれくらいにして。

 

 そうじゃない!

 そうじゃないんだよ!


 思わず膝と両手をついてしまった。


 水魔法限定だと、雨に対しては今まで通りじゃん。

 風操作があるから、空気抵抗とかってのは完全にどうにか出来るようになったと思うけど。


 雨の日対策も施した万能の乗り物にするつもりだったのに。


 まあ、風圧も空気抵抗も関係ないなら傘さして……ダサイだろ!


 要検討だ。


 と思ったら、土蜘蛛が蚕から絹を受け取ってサササと何やら加工する。

 頭からすっぽり覆うタイプのコート?


 と残ったフッ素樹脂……

 これを合成して着ろと?

 いや、確かにそれで万事解決かもしれないけど……


「大丈夫です、風を操作してなるべく雨を寄せ付けませんから」

「……うん、有難う」


 カブトも気持ちを察して、慰めてくれた。

 ただ、フッ素樹脂の意外な効果は他の虫にも是非付けておきたい。


 ポイントは山ほどあったので、大量購入しておく。

 それから、ラダマンティス、土蜘蛛、大顎、蟻、蜂の順に合成。

 マハトールが期待した目をこちらに向けているが、人型で試す気はまだないので無視する。


 変な進化してグロ系になっても嫌だし。

 あんまウザかったら、腐肉でも合成してデーモンゾンビとかにしてやっても良いかも。


 ラダマンティスは能力的には期待を裏切らない進化をしてくれた。


 ただ……死を運ぶ(ヘルティック・)鎌を持つ者(ラダマンティス)(変異種)から、剣刃胴長甲虫(ブレード・マスター)(支配種)へ。


 やだ、種族名がダサくなってる。

 本人は、逆三角形の複眼で嬉しそうに自分の進化した鎌を見ているが。

 全身が黒鉄色になって、ちょっとカブトと被ってる。

 今度また緑色のものでも、合成しておこう。

 

 なんとなく三度笠とか乗せたら、似合いそう。

 その鎌も、より鋭く波紋の浮かぶ鎌に。

 種族名のどこにも鎌が無いけど。

 しかも鎌の進化3形態に。

 鋭い鎌、ギザギザの鎌、そして両刃の鎌……

 もう、物騒すぎて物騒すぎて。


 あっ、でも刃を斬れなくすることも出来るみたいだから、普段触れ合う分には問題無い。

 身体が重そうで、より飛ぶのが下手くそになってたり。

 そうでもない?

 全体的に力が増してて、今までより速く飛べると…… 


スキル:斬鉄鎌(サムライ・サイズ)

    千刃真空刃(ソニックブームズ)

    敏捷強化(スピード・ブースト)

    超回復(セルフ・ヒール)

    威圧(ハイプレッシャー)

    心眼(ヒューチャー・サイト)

    水属性無効


 うん……スキル名までダサくなってる。

 サムライ・サイズとか……なんか、身長の事とかかな?

 昔の人って背が低かったから、そんな感じの印象を受けてしまう。

 

 あと千ってついてるのに、ブームがブームズって複数形になっただけとか。

 語呂が悪くて、ダサい。


 えっ?

 ラダマンティスから聞いたら、どう頑張っても同時に発動出来るのは一撃で7発が限度らしい。

 名前負けも良いとこだ。

 150回くらい連続で放ったら……出来なくはないけど腕があがらなくなりそう?

 そうか……


 あとゲシュタルト崩壊する?

 難しい言葉知ってるな。

 偉いな、ラダマンティス。


 頭を撫でてなぐさめてやる。


 土蜘蛛は、不可避の(デスストーカー)追跡者(・スパイダー)(変異種)から、神の間の守護者(ゴッズ・ガーディアン)(守護者)に。

 うん?

 

 守護者?

 仕える者や同族の前に立つとき、全ステータスが上昇。

 仕える者の窮地に対して、さらに全ステータスが大幅に上昇。


 うん……まあ、土蜘蛛っぽい称号だね。

 でも、彼女の場合守護者ってより保護者だけどね。

 見た目はそこまで変化無しと。

 なになに? 

 体毛が撥水になった。

 

 そっか……

 君が撥水になったんだね。

 カブトじゃなくて……


 ここの合成システムに若干の悪意を感じる。


 足も進化したの?

 爪先が二つに分かれて、物が足一本で掴める。

 ふーん……


 地味だ。


スキル:鋼鉄の網(アイアン・プリズン)

    猛毒付与(ラスト・ポイズン)

    土操作(クレイマン) 

    鉄網加工アイアン・ファブリック

    超回復(セルフ・ヒール)

    威圧(ハイプレッシャー)

    調理(クッキング)

    水属性無効 


 1つ言いたい。

 調理はスキルじゃなくて、技術だ。

 調理は技能だからスキルであってる?


 いや、そういう意味じゃなくて。

 この場合のスキルって、異世界の不思議能力のことじゃ?

 

 努力の結果を否定しないで欲しい?

 そうですね。

 すいません。


 土蜘蛛に怒られた。

 従順なはずの部下になるはずだけど、土蜘蛛はある意味で良い方向に良い従者として育ってる。

 何を目指しているかは知らないけど。


 合成の結果じゃなくて、努力の結果か……

 やっぱ、スキルじゃなくね?

 努力が実れば神様が授けてくれる?

 そんなの聞いてないし。


 確かに、料理が上手になるような素材合成してないもんね。


 百足、蟻、蜂達もなんか思ったのと微妙にズレた進化をしていた。


 チュン太郎が地竜の背中に乗ってこっちに向かってきてたけど、そそくさと合成の間を離れて暗にお前たちはそのままだよと態度で示す。


 チュン太郎に頭を突かれた。

 

 あれ?

 なんか、従属の効果薄くなってないですか?


 マハトール?

 寂しそうにこっちを見てたけど、進化したシロアリ達に運ばれていったよ。

 なんか、彼等が特定の陣形を組むと聖属性の結界が発動するらしくて、囲まれたマハトールから煙が出てた。

 

 やりすぎじゃないか?

 殺さなければ、すぐに再生するから大丈夫?

 そっか……

 そういうものか?

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