表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/304

第44話:そして夏休みへ

「それでは君たち、宿題が無いからって勉強さぼらないように!」

「「「「はいっ!」」」」

「僕たちの予定は、勉強以外決まって無いけどね」

「息抜きに、せめて3日で良いから避暑地に連れてってもらえないかな」


 約2名、夏休み前にこっちまで悲しくなるような事を呟いているが。

 まあ、自業自得としか……結構、真面目に勉強してた子達なんだけどね。


 終礼が終わり、マーク先生から成績表を受け取ったらそのまま解散の流れだ。

 それにしても、宿題が無いのは嬉しい誤算だった。

 宿題が無い夏休みとか、それなんてご褒美状態だ。

 こっちだと、割と当たり前らしいけど。


「じゃあ、マルコの家に行くのは8月1日だね」

「そこで3泊して、ヘンリー君のところですね。楽しみです」

「うん、僕も待ち遠しいよ」

「引率はベントレーの家からルドルフさん、エマの家からアリーさんだね」

「それとうちからはビスマルクと近衛から数人を連れていく」

「当然だよね……」


 セリシオが来ることがほぼほぼ確定してしまった為、護衛が近衛騎士団一個小隊という大げさな物になってしまった。


「お願いだから、フルアーマーとかでこさせないでね」

「分かってる」

「マルコはあまり好きになれないが、テトラと会えるのは楽しみだ」

「別に、クリスは来なくて良いんだけどね」

「殿下の側を離れる訳には、いかないからな」


 クリスも来る。

 口ではそんな事を言っているが、常にセリシオといるせいで同世代の家に行くことが無い為、意外とワクワクしているらしい。

 ディーンが教えてくれた。

 そして当然、ディーンも来る。

 これは問題無い。

 むしろ、ディーンが居てくれるから、殿下やクリスが来ても少しだけ安心できる。


「で、ラーハットに向かう時に、マルコの家からローズが参加と」

「まあ、彼女は僕の専属護衛を希望しているからね。ファーマさんも、お目付け役で来るから安心して」


 周囲から、とても目を引く団体になることは間違いない。

 が、この集団を見て手を出そうなんてことを考えるのは、魔物くらいだろうね。

 その魔物ですら、手を出す事を躊躇しそうだけど。


 だから、取りあえず8月までは実家でのんびりと出来る。

 スレイズベルモント家を出るのは7月3日。

 それから2日掛けて、ベルモント領に戻る予定にしてある。

 途中の温泉宿場町で、ゆっくりとする事も予定に組み込んであるし。


 今から、ワクワクする。


「ただいま!」

「おかえりなさい、マルコ! 迎えに来ましたよ」


 何故かお母さまが居た。

 いや、一言も聞いてないんだけど。


「おばあさま?」

「おかえりマルコ。 私もさっきマリアさんがいきなり訪ねてきたから、驚いたところです。本当に愛されてますね」

「そういうレベル?」

「途中で、マーキュリーの家にも寄りましょうね」

「……おばあさま?」

「もう、お義母さまよりも、私を見なさい」

「ふふふ、マルコ。久しぶりに、お母様がいらっしゃってるのですから、今日はマリアに甘えてもいいのですよ」

「……おばあさま?」


 なんらかの大人の取引があったのかもしれない。

 おばあさまがお母様サイドに立って、僕を後押ししてくるなんて怪しい。


「彼女に、マルコと2人っきりで里帰りしつつ、観光旅行も兼ねて連れて帰りたいって泣き付かれたのよ」


 まさかの正攻法、泣き落としだった。

 流石に、父方の実家に住まわせているという負い目があるのかは分からないけど、マリアの実家にも気を使ったらしい。

 まあ、あっちは伯爵家だしね。

 多少は顔を立てないといけないのかもしれない。


「分かりました……」


 色々と、予定がポシャッた。

 さようなら、ぶらり気ままな一人旅。

 こんにちは、過保護なマリアの馬車ツアー。


「あーん」

「いえ、それは流石に……というか、もう9歳ですよ?」

「もう、マルコのいけず」

「マリアさん、そこまで甘やかすのは「お義父様はいつもマルコと一緒に居るんですから、今日は私にマルコを好きにさせてください」

「う……うむ」


 あの強面のおじいさまに、ピシャリと言うお母様。

 母の愛は強し。

 って、こういう意味だっけ?

 個人的には母の愛は重石だ。


 でも、実際にお母様に会えなくて寂しいと思ったことは何度かあったので、純粋に嬉しい気持ちもある。

 照れくさいけど。

 

 取りあえず明日、お母様が乗って来た馬車でマーキュリー家に向かうらしい。

 早くないですか?

 もう少し、おじいさまとおばあさまとの別れを。

 それよりも、母との再会を喜びなさい?

 ……はい。


 ちなみに、お母様の護衛にはトーマスさんと、新しくベルモントに入った人が3人付いていた。

 ここから、ファーマさんとローズが増えるので護衛の人数は6人。

 実際には僕も戦えるから、なかなかの武装集団だ。


「マルコは全力で私が守りますので、皆様は私の元に危険が及ばないようにしてくださいね」


 デジャブ。


「明日は朝には出ますからね、早く寝るのですよ?」

「うん、そうですね……で、お母様はなぜ僕の布団に入っているのしょうか?」

「あら? 母と子が寝るのは当たり前のことでしょう」


 客室、用意されてたよね?

 えっ?

 されてないの?


 どうせ客室に入っても朝には僕の部屋にいるなら、もう最初から無くていいんじゃないかって結論になった。

 家人の人達にはもっと、頑張って欲しかったかも。

 

「そういえば、貴族科で6番になったんですって?」

「うん、結構頑張ったんだけどね……最前列にはいけなかった」

「まあ! でも、全体でも一桁なんてすばらしいですよ」

「ありがとう」


 ……


「殿下とは、あまり仲良く無いのですか?」

「いや、かなり仲が良いと思う……正直、面倒くさいけど」

「殿下の事になると、マルコがおかしくなる」

「殆ど、彼のせいだと思います」


 ……


「へえ、ヘンリーはエマ様が好きなのですか」

「うん、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい」

「まあ、マルコも見てて分かりやすいですけどね。武器屋喫茶の子……なんて言いましたっけ?」

「知ってるくせに」


 ……

 早く寝ろって言ったの、お母様ですよね?

 ずっと話しかけて来られると、眠れないのですが?


 そんな事を思っていたら、突然質問が止む。

 ふと視線を向けると、涎を垂らして寝息を掻いてた。


 ……なんて、自分勝手な。

 そう思いつつも母の温もりを感じている間に、僕も気付けば夢の中だった。



――――――


 そっとタブレットの画面を閉じる。

 マリアさんの行動力には、驚かされるばかりだ。


「マサキおにい!」

「こらっ! マサキ様でしょ!」

「良いさ。俺もおにいって呼ばれたいし」


 クコが俺に何やら用事があるよう。

 横に立って、こっちに向かってキラキラとした視線を向けてくる。


「どうしたんだい?」


 管理者の空間の神殿の椅子に座ったまま、クコの頭を撫でてやる。


「これっ! 新作」

「ほおっ、これは旨そうだ」


 その手にあるのは、真黒な黒い団子。

 大丈夫だよな?

 泥団子とかじゃ……大丈夫?

 そうか。


 神殿の入り口で土蜘蛛が不安そうに、こっちを見ていた。

 どうやら、土蜘蛛監修クコ料理らしい。


 手に取ってみる。

 口に近づけるとチョコレートの甘い香り。

 どうやらチョコレートを作ってくれたらしい。


「うまいな、トリュフか?」

「トリュフっていうの? 蜘蛛おねえが教えてくれた!」


 俺の反応に、クコの顔がぱあっと華やぐ。 

 そして、満足そうに頷く蜘蛛。

 いや、本当に上手に出来てる。

 ちなみにトトもマコも土蜘蛛を蜘蛛様と呼んでいるが、クコはいっつも土蜘蛛を手伝っているからか蜘蛛おねえと呼んでいる。

 というか、土蜘蛛が呼ばせている。

 彼女は土蜘蛛のお気に入りでもあるのだ。


 そして褒められて嬉しいのか、クコの頭にある犬のような熊のような耳がピコピコと動いている。

 さらに、尻尾がブンブンと振り回されている。

 分かり易くて助かる。


 どうやら、3人は狼と熊の獣人のハーフらしい。

 ちなみに父親が熊の獣人で、母親が狼の獣人とか。

 父親はまんま熊みたいな見た目だったらしいけど。

 母親は、人間の女性に狼の耳と牙と尻尾がある形とか。


 必ずしも人間に近い形になるわけではなく、中にはまんま動物の獣人も居るらしい。

 二足歩行の犬とか。

 二足歩行の馬とか……馬の二足歩行はちょっとやだな。


 クコとマコは背中から腰にかけて毛がびっしりと生えている。

 ということは、トトもだろう。

 何故知っているかって?


 そりゃクコとマコと一緒に、お風呂に入ったりもしたからな。

 2人とも父親の記憶があまりないらしく、俺に父や兄に近いような感情を抱いているらしい。

 嬉しい。


「マサキ様、あまり妹をあまやかさないでくれです」

「いい加減、敬語を使うのを諦めたらどうだ?」

「今は、仕事中だからです」


 相変わらず言葉遣いはおかしいが、トトも十分に可愛い。

 別に下心があるわけではないが、トトもお風呂に誘った事もあるが顔を赤らめて固辞された。

 子供相手と思って普通に誘っただけなんだけど、そんな反応をされると2度目は誘えないよね。


「マサキ兄! 見て見て!」

「こらマコ! マサキ様と呼べって言ってるだろ!」

「良いってば」

「もう! マサキ様は優しすぎる」


 今度はマコが嬉しそうに、こっちに駆け寄ってくる。

 その手には木剣が握られている。


「これ、ラダマンティス様が作ってくれたんだ!」


 どうやら、ラダマンティス作の木剣らしい。

 うんうん、カッコイイけどさ……その木剣の材料って。

 タガヤサンね。

 そんな木、植えたっけ?

 ああ、山に生えてたと。

 タガヤサン……漢字で書くと鉄刀木と書く。

 文字通り、とても固い木だ。

 そして、板目模様が美しい銘木。

 割と、高値で取引されている材木だ。


 高級木刀だな。


「カッコいいな、良かったじゃないか」

「うん、ちょっと重くて訓練にもピッタリなんだ」

「そうか、丁度マルコが夏休みに入ってベルモント領に帰るから、今度暇を見て森に狩りに行く予定だし付いてくるか?」

「良いの?」

「マコ、あんた敬語を使いなさいって言ってるだろうです!」


 そういうトトも全然ダメだけどな。

 可愛いから、注意することはしないけど。


「まあ、そういったことはこれからゆっくりと覚えていけばいいさ! 子供のうちは興味のある分野を伸ばしてやらないとな」

「まあ、マサキ様がそう言うならです」


 マルコもハベレストの森に行く予定だったみたいだし、まあうちの子達を護衛につけておけばまず危険も無いだろうしね。

 地元に戻ってからの楽しみは、割と自由が利くって事だよなあ。

 ヘンリー達が来ている間と、ラーハット領に行っている間はマルコに目いっぱい楽しんでもらうとして、たまには身体を借りて俺が楽しむのも悪く無いだろう。

 マルコも、管理者の空間で虫と戯れるの嫌いじゃないしな。

 

 というか、最近は土蜘蛛の料理の腕を知って、たまに夜食やおやつを食べに来てるし。

 その分、身体を動かしているから太る事は無いけど。


 マコの為に、ベルモント領でカブトムシを捕まえるのも悪くない気がしてきた。

 トトには、なんの虫が良いかな?

 彼女のお気に入りはチュン太郎だから、虫よりも小動物の方が良いか。


 クコは土蜘蛛と離れる気は無さそうだし。

 そういえば、ベントレーもここに来たら土蜘蛛にべったりだよな。


 取りあえず、夏休みの計画を立ててマルコに提案しよう。



ここまでお読み頂き、ありがとうございますm(__)m

ブクマ、評価頂けると嬉しいです。


そのブクマや評価の手間数秒、その笑顔プライスレス(* ´艸`)

あっ、笑顔になるのは私です……


そーのひとてま~が~♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリンの管理の仕事に出向する話

↓↓宣伝↓↓
左手で吸収したものを強化して右手で出す物語
1月28日(月)発売♪
是非お手に取っていただけると、嬉しいです(*´▽`*)
カバーイラスト
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ