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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第37話:そのころ管理者の空間では

「なかなか良さそうだな」

 

 俺はいま合成の間に居る。

 奥の魔法陣に居るのはダンゴムシ。

 祭壇の上には、蜘蛛の死骸。

 土蜘蛛の配下の蜘蛛が屋敷の近くから拾って来た。

 他の虫に食い散らかされて頭部のみ。

 

 ちょっと気持ち悪かったけど、祭壇に設置。

 この祭壇、俺のイメージに合わせてサイズが変わるからどんなに大きなものでも置ける。

 今度、小屋を作り出して置いてみようかな?

 蝸牛と合体させたら、リアル移動小屋とかできそうだし。

 まあいいや、いまはそれよりも目の前のダンゴムシ。


 他に虫の魔物も祭壇に置く。

 これも森で土蜘蛛が狩って来た。

 頭部に足がたくさん生えている、芋虫のような形をした魔物だ。

 この頭部に生えた前足で、凄い速さで移動するらしい。

 というか、そういう虫が居たら捕まえて来てと伝えておいた。


 イメージは蟲の王だ。

 成功してもらいたい。

 ゆくゆくは黄金の触手とかも……


 いや、少しは自重しないとまずいか?


 合成の準備が整ったので、祭壇の横の宝玉に触れる。

 輝き出す魔法陣。


 一瞬の間をおかずに、光が収まり現れる新型ダンゴムシ。


 ……あれっ?


 確かに目が4つ増えた。

 頭部に足も沢山生えている。

 けど、何かが違う?


 サイズか?


 いや……そうじゃない。

 毛が生えた!


 いや、それいらないから……


 頭だけ毛むくじゃらの四つ目のダンゴムシ。

 口から糸が吐けるようになりました! と嬉しそうに報告された。


 いや……そういった機能も別に求めて無かったんだけど。

 そもそも、イメージした虫は普段は身体の伸縮で移動して、怒ると前足を高速で掻きだして移動するあれ。

 ところが、このダンゴムシ。

 ちゃんと前のまま、身体の下にも沢山の足が。


 魔物を合成したことで、魔力の蓄積量も大幅に増えた。

 なるほど、地属性か。

 大きな石を作り出して、持ち上げてくれた。

 元のサイズがちょっと大きめの異世界産ダンゴムシ。


 合成したことで、20cm程にはなったが小さい。


 身体をおこしてえっへんと、腰に沢山の手を当てて胸を張っている。

 お腹……気持ち悪いから。


 正直に言うと、自殺するんじゃないかってくらい凹むから取りあえず拍手。


 手を振って応えてくれる。


 まあ、良いか……

 強化自体は成功したわけだし。


 そして外に出て実験。


 まず全力での移動……

 微妙だ。


 前のダンゴムシよりは遥かに早い。

 だけど、強化した蟻よりは遅い。


 装甲は鉄も合わせてあるからそこそこ。

 頭の毛が凄く気になる。


 なんだろう……

 

 絶対に彼には言えないけど……失敗だ。


 そんなくだらない実験をしていたら、衝撃の事実発覚。

 なんと、王都には獣人も住んでいるらしい。

 

 なんかマルコ達と一緒に居た女性が財布をすられかけたらしい。


 間一髪マルコが、それを防ぐことに成功。


 ご褒美に、ティータイムに喫茶店でエマにケーキを奢って貰っていた。

 美味そうだな……

 

 そう思っていたら、目の前のタブレットに映し出されたケーキと遜色ないケーキが百足によって運び込まれる。

 かぐわかしい香りの紅茶と一緒に。


 有難う。

 

 このケーキは?


 土蜘蛛が焼いた?


 えっ?

 

 どうやって?


 確かに最近管理者のレベルが上がって、地球産の商品も入荷出来るようになった。

 1日1個という制限はあるし、ポイントは凄く高いけど。


 地球クオリティの食べ物が食べたいと思って、日本のシステムキッチンを導入したりもした。

 ダカラスタンダードのボーローキッチンだ。


 たかが台所が山と同じポイントを請求してきた。

 まあ、再現するのに相当な魔力やら神力を必要とするのだろう。


「いや、プレミア感を出したくてのう。喜ぶと思うたし」


 善神様の裁量次第だった。

 ってことは、タダでも?


「まあ、コピーして設置するだけじゃから、大した手間はかからんのう」


 なんかぼったくられた感覚だ。

 まあ、いいや。

 山よりもよっぽど有意義だし。


 というよりも、蜘蛛が焼いたケーキとか……

 ふと百足の後ろをみると、不安そうにこちらを覗く土蜘蛛が。


 食べざるを得ない。

 もう一度言おう、食べざるを得ない。


 折角頑張って作ってくれたんだ。


 覚悟を決めた。


「なんぞこれ……」


 普通に美味かった。

 あの手でよくもまあ器用にこれを作ったもんだ。


 土蜘蛛に向かって笑顔で親指を立ててやると、満足そうに頷いて神殿から出て行った。


 ちょっとタブレットで追いかけてみる。

 うん……キッチンを設置した家に入って行く。

 君の巣……木の上だよね?


 ちょっと家の中に入ってみる。

 なるほど……


 身体の下半分を消毒液につけたちょっと大きな蜘蛛がそのままキッチンの上を移動。

 布巾で体を拭いて、材料を用意加工。


 調理器具を使った物は土蜘蛛が自分で行うと。

 ただ、細かい作業はちょっと大きな蜘蛛が行うのね。


 数匹の蜘蛛と巨大な蜘蛛が巧みなコンビネーションで調理をすると。

 正直……これを見ると食欲が。


 いや衛生面に気を使っているのは分かる。

 分かるけど絵面が……


 忘れよう。


 いや、それよりも今は獣人だ。

 蜂が追いかけていった獣人の様子を見る。


 スリが失敗したからか、次の獲物を物色中と。

 すっぽりと覆われたローブのせいで、大事な耳やら尻尾やらが見えない。


 顔が煤けているし、ガリガリだな。


 あまり良い暮らしぶりとは思わない。

 

 全身痣だらけだし。


「なんだお前?」

「あっ……」


 ターゲットにした女性に体当たりして財布を取ろうとしたが、すぐに腕を掴まれてしまっていた。


「ちっ……浮浪児か」


 そして地面に放り投げられる。


「っつ……」

「そんな腕で私から財布を取ろうなんざ、10年早いわ!」


 どうやらオフの冒険者だったらしい。

 言葉遣いもあまり宜しくない。


「まあ、上手だったらそんな怪我だらけにはならねーわな」


 どうやら、今までも失敗して暴行を受けていたらしい。


「どうせなら、あそこに居るようなトロイ爺とか狙えばいいのに」

「お年寄りは、労わらないと……」


 ……

 そうか……

 そんな常識的な事が分かるなら。

 いや、彼等はまともに働けないんだったっけ?


 たしかマルコ達がそんな会話をしてたような。


「本当なら今後の教育の為に腕の一本くらいいっとくとこだが……嬢ちゃん尻尾付きだろ?」

「えっ?」


 嬢ちゃん?

 女の子だったのか……


 マジでテンプレなイベント発生か?

 マルコが、この子と仲良くなったらあれか?

 マスコット的キャラが?


 おいおい……どうしたんだ急に甘えて来て。


 カブトにマスコットは無理だろう……デカいし。


 カブトが頭をグリグリと押し付けてくるので、取りあえず撫でてやる。


 そこで順番待ちしているラダマンティス。

 

 そんな凶悪な鎌を持ってるお前に、マスコットはもっと無理だぞ?


 ああ、俺にとっては可愛いけどな。


 料理という個性を見出した土蜘蛛がちょっと誇らしげだ。

 いつの間に戻って来た?


 土蜘蛛の勝ち誇った姿勢に、カブトとラダマンティスが攻撃を仕掛ける。

 おおっ!


 天井から糸を吊るしていたらしい。

 一気に天井まで駆け上がって、攻撃をあっさりと躱す。

 下で2匹が猛抗議をしている。


 降りてこいや! と言ってるみたいだ。

 微笑ましい。


 いや、それよりもあっちは……


「お……お嬢ちゃん可愛いな……その、尻尾を10分くらい触らせてくれたら、お小遣いあげても良いぜ?」

「ひいっ!」


 あっ、あかん……

 あの女、ちょっとヤバい奴だ。


 一生懸命掴まれた腕を振りほどこうと獣っ子が暴れているが、そんな事で簡単に振りほどかれるほど甘くはない。


 女性が獣っ子をちょっとずつ引き寄せている。

 

 おまわりさーん!

 コイツです!


 って言ったところで、スリを仕掛けた方が悪いのは明らかだしな。


 仕方ない……


「いてーーー! あっ、待ってー!」


 追跡させていた蜂に、軽く冒険者を刺させる。

 あまりの痛みに手を離した隙に、女の子が全力で逃げていくのが見えた。


 うん……スリを働くような子を助けるのが正しいとはいえないけど、これは致し方ないだろう。


 どうやら諦めて住処に戻るようだ。


「おねえ?」

「すまん……今日もごはんは無い」

「お仕事無かったの?」

「うん……」


 住処には女の子よりも、小さい子供が2人。

 この2人も獣人のようだ。

 可愛い……

 

「僕が早く大きくなったら、お姉ちゃんのごはんの分も稼いでくるのに」

「はは、それは楽しみだな。じゃあ、マコが早く大きくなれるようにお姉ちゃんが頑張らないと」

「おねえ……危ない事してないよね?」

「大丈夫! ちゃんとした仕事を探してるからさ……」


 ぶわっ……

 マルコと同じくらいの歳の子が危険を犯してまで何をしているのかと思えば、そんな事情が……


 これは、なんとしてもマルコに救わさせねば!

 マルコ!

 マルコーーー!


 


 

小生の拙作、チュートリアルと思ったら……がネット小説大賞1次審査を通過した模様。

実感が湧かないwww

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