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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第34話:ワルコ……中編

「パドラ・フォン・ベニスねー……」


 蜂情報では、パドラはすでにサロンに行っているらしい。

 彼女は割と足繁く通っている方で、他の貴族との顔つなぎに一生懸命だとか。

 とはいえ、もっとも気に入られるべき相手の1人であるディーンには敵認定されてたりするんだけどね。


 まあ、いくらサロンに通ったところで、貴族科の生徒は専用サロンに行っている場合が多いからね。

 一部は、普通のサロンを利用しているらしいけど。

 

 理由としては普通のサロンは高等科も一緒のため、より幅広い交友関係を築けることかな?

 あとは、派閥の関係とかもあったりするけど。

 まあ、ベルモントはベルモント派だから関係無いけどね。

 ベルモントの他に派閥のメンバーは居ないけど。


 武力による中立とか、究極の独立とも呼ばれているけど。

 何故か、どこの派閥からもお声は掛からない。

 昔は引く手数多だったらしい。


 実家に古くから仕えていた、エドガー爺が言ってた。

 まあおじいさまが対応すると、同じ貴族からの二度目は無かったらしいけど。

 別に鼻つまみものって訳じゃないから、問題無いし。

 派閥には属してないけど、交友関係は広いらしいし。


 などと考え事をしていたら、サロンに着いてしまった。

 取り敢えず、顔だけ確認しておこう。

 今日は、これ以上何かする気無いし。

 というか、サロンで騒動を起こす訳にもいかないし。


 何食わぬ顔でサロンの中に入る。

 コンシェルジュが2人と、給仕が8人か。

 多いのやら、少ないのやら。


 いや、1人あたりの対応人数からすれば少ないのかな?

 まだ、高等科の生徒が来ていないから、少し余裕がありそうだけど。

 そういえば、高等科の生徒はクラブ活動とかもあるから、来ない子も多いんだっけ?

 まあ良いや。


 パドラはどれだろう。

 そう思って室内を見渡していると、蜂が教えてくれた。


 窓際に座っている集団の1人か……

 あれっ?

 なんか、なんだろう……


 パドラを見ていると、ちょっと物悲しくなってくる。

 何故かって?


 明らかに浮いているからだよ。

 基本的に相槌を打つだけだし。

 周囲に意見を求められる事も、あまりない。

 たしかに可愛い子ではあるけれど。


 もっとこうお姫様というか……周りにチヤホヤされて天狗になってる子をイメ―ジしてたんだけど。


「子爵家のグループの中にどうにか入り込んだみたいですけど、実家の経済力の違いであまり話に着いていけていないみたいですよ」

「そっか……」

「何より彼女の領地はここ数年、干ばつやら魔物の被害で経済的にも傾いてますし、民の生活が苦しくなると盗賊に身をやつす輩も居ますから……」


 ベニス家ってのはそんなにヤバいのか?

 だからといって、クルリを苛めて良い理由にはならないし。


「まあ本人は知らないみたいですけどね。父親のクロウニ・フォン・ベニスが娘に惨めな思いをさせないようにと、彼女の前ではそれなりに贅沢をしているみたいですし」

「彼女の前では?」

「ええ、今は自身の生活を切り詰めて、多くのお金を仕送りに当てているようです」


 泣けてきた。

 父親は娘思いの立派な人だというのに。

 おたくの娘は学園で色恋に現を抜かして、同級生を使っていじめをしてますよ?


 だからか……

 着ているものもそれなりに良い服だけど、周りと比べたら明らかに劣る品質だし。

 何より、センスが一昔前だ。


「フレグランス家以外からも借金をしているようですしね。そのお金も領民への食糧支援と、娘への仕送り、さらには使用人の賃金で殆ど消えてます。領内の不作が続けば、破綻する日も近いかと」


 というか、よくもまあそこまで詳しく調べ上げたものだ。

 感心してしまう。


「マスターと一緒に、あちらの地図を使って調べましたので」

「ああ……」


 納得。

 分かり辛いけど、管理者の空間に居る僕に手伝って貰って調べた訳ね。

 管理者の空間の地図なら、遠くの様子も確認できるし。

 というか、そんな出来た親を持ちながらのこの体たらく。

 ちょっと、ムカついてきた。

 

 いや、クロウニさんの思いを踏みにじるようで少し心が痛むけど、そこは心を鬼にしてパドラにお灸を据えた方が良いだろう。


「おや……マルコ殿ですか?」


 集団に近づいて行くと、中心に居た爽やかな男の子がこちらに気付いて声を掛けてくる。


「珍しいですね……貴族科のサロンには行かれないのですか?」

「やっぱり、子爵家じゃ馴染めないんじゃない?」


 代表をして話しかけてくる男の子の後ろで、他の女の子がボソリと呟いているのが聞こえる。


「ベルモントは確かに名家かもしれないけど、やはり本物の中に入ると馴染めないんだよ」

「親が無理して背伸びすると、子供が苦労する典型ね」

「可哀想に……ちょっと、気持ちいいけど」


 あっ、やっぱりこいつら全員敵だ。

 聞こえてないつもりかもしれないが、蜂が彼等の会話を全て念話で伝えてくれる。

 

「今日は何か御用でもあったのですか? もしよろしければ同じ子爵家同士、交流を深めませんか?」


 目の前の少年は、裏の無い柔和な笑みで話しかけてくれている。


「貴族科のお話とかも聞いてみたいですし」

「そうだね……でも、ちょっとここに居る子に用があってね。それはまたの機会に設けさせてもらうよ」

 

 本心でそう思っているのだろう。

 少し興奮した様子で、椅子を勧めてくれる少年……チャックというらしい。

 本当になんでも知ってるね、うちの()達は。

 チャックを手で制して、パドラの方を見る。


「チャックって本当に優しいよね」

「ご両親も立派な方みたいで……それに引き換え、力でしか地位を得られない野蛮なベルモントは」

「素直に、貴族科に居場所が無いから来ましたって言えばいいのに」


 ほうほう……聞こえてないと思って言ってくれる。

 

「他の皆さんも、野蛮なベルモントが来て戸惑っておられるようですので、手短に済ませますか」

「えっ?」


 野蛮なベルモント発言をした男の子を睨みながら言うと、ビクッと肩を跳ねさせる。


「うちが名家だとは思って無いけど、まあみっともなく反論する気もないから貴方達とは後程、ゆーっくりとお話させてもらうとして……」


 僕の陰口を叩いていた面々を1人ずつ睨むと、パドラでその視線をピタリと止める。

 おじいさまは野蛮だけど、父上はとっても優しくておおらかな人だからね。

 おばあさまや母上も、落ち着いた野蛮とは対極の存在だし。

 

 家族を侮辱した罪はすぐに償ってもらうとして、まずはパドラだ。


「今日は、パドラ嬢にお話があって来たんだ」

「わたし……ですか?」

「そう、君」


 僕の発言に対して、パドラが怯えたような態度をみせる。

 そしてその射線を遮るように、チャックが間に入ってこっちを見てくる。


「あの……パドラが何か粗相でも?」


 仲間を庇うという、強い意志が感じられる。

 彼の周りに人が集まるのが、なんとなく理解できる。

 まあ、チャックに何かするつもりは無いけどね。


「ええ……私の大事な友人に、友達をけしかけて色々とやってくれましてね」

「な……なんのことでしょうか?」

「あれっ? 白を切るつもりかな?」


 心当たりがありすぎるのか、視線が泳いでるよ?

 まあ、他のメンバーと違って男爵家の娘だからね。

 子爵家のしかも貴族科の生徒に睨まれるのは、さぞや怖いだろう。


 まあ、僕は理由があってのことだけど、彼女は勝手な嫉妬心でそれをクルリにやったわけだ。

 許すつもりはない。


 本当は2人っきりでゆっくりと話して聞かせるつもりだったけど、あまりにも彼女の両親が不憫だった。

 それと、周りの子爵家の子供達にもムカついたのもある。

 全員纏めて、ここでぶった切ってやろうと思った訳だ。


「本人は心当たりが無いようですが、何かの間違いでは?」

「間違いは無いかな? 実行犯からは裏も取ってるし」

「本当に「ディーン様の周りをウロチョロする便所蠅には、お似合いの場所ね……でも、水くらい与えないと死んじゃわないかしら」

「何を突然?」


 パドラがペニーに言った言葉を、そのままなぞらえただけなんだけどね。

 チャックが心底不思議そうなものを見る目をしているが、後ろでガタガタと震えている友人の反応で分からないかな?


「もしかして……」

「ああ、クルリとかって貧乏人がマルコとディーン様と一緒のグループで授業受けてるって言ってたっけ?」

「彼女、ディーン様の事狙ってたから、面白くないと思ってたんじゃない?」

「ええ? 馬鹿すぎるだろ」


 チャック以外の面々は思い当たる節があったらしい。


「ペニーね……彼女がそんな嘘を吹き込んだのですね……彼女、虚言癖があるから。大体、たかが開拓民の子供に何かしたからって、貴族であるマルコ様がお気になさるほどの事ですか?」

「そうなんだ……でも、今日のはやりすぎだよね?」

「彼女にはあそこがお似合いの場所ですわ」

「あそこ?」

「ええ、トイレで一生過ごしていれば良いのよ」


 そんな中で、何かを誤魔化すように必死で弁明を始めるパドラ。

 うんうん……

 親が現実を見せなかったから、歪んで育っちゃって。

 早めに気付いて良かったね。

 8歳なら、まだまだ矯正可能だし。


 自分は、さぞや裕福な家庭に生まれたと思ってるんだろうね。

 クロウニさんが必死に、子供に優雅な生活を提供してるからね。


「随分と詳しく知ってるね?」

「えっと……彼女達が話しているのを聞いたんです。マルコ様も彼女たちに聞いたんじゃないですか?」

「あー……あまり舐めない方が良いよ? こう見えて、意外と情報通なんだよ……僕って」

「ひいっ!」


 なんでだろう。

 悪戯っぽく笑いかけたのに、悲鳴を上げられた。

 僕が笑いかけると、女の子が悲鳴をあげることが多いのはベルモントのせいだろうか?

 いや、おじいさまのせいだろう。


「あの、全く話が見えてこないのですが」

「あー、そこの彼女がね、取り巻きの女の子を使って、僕とディーンの友人のクルリを苛めてたんだ」

「パドラ! それは、本当か?」

「誤解ですわ! マルコ様はきっと、実行犯の女の子達に騙されているのですよ!」

「ふーん、幼馴染なんじゃないの? その、ペニーとは」

「か……彼女は、うちの御用商人の娘というだけで、昔から知っていただけで、そこまで深い仲ではありませんし」


 平気で友達を売るとか。

 本当に、酷い子だ。

 ちょっと、きつめにお仕置きしないと。

 二度と、クルリに近づけないレベルで。




中途半端ですいませんm(__)m

仕事が詰まってまして、明日は更新すら危ういかもです(-_-;)

一応、キリが良い所まで仕上げれたら投稿する予定ですが……時間が取れないと思います。

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