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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第25話:サロン

短めです

 気が重い……


「本当に行くの?」

「流石に行かないとまずいでしょ」


 授業中も横のエマから、凄く視線を感じた。

 チラッと横を見ると、すぐにプイッと目を反らす。

 で少しして、何? といった不機嫌な目を向けられる。


 というか、何? はこっちのセリフなんだけど。

 いや、まあ何が気になってるかは知ってるけど。


 刺すような視線を一日中感じたあげく、終礼の後のベルが学校の終わりじゃ無く、尋問会議の始まりの合図に聞こえた。

 

「はあ……」


 溜息が出る。

 ベントレーと仲直り出来たのは良い事だけど。

 代わりに、面倒くさい人の興味を引くことになったけど。

 絶対に、楽しんでるよな。

 ワクワクしてるのが、傍目に見てても分かった。


「大変だね」

「いや、ヘンリーこそごめんね。付き合わせちゃって」


 ヘンリーが憐憫の眼差しを送って来たので、苦笑いで応えておく。

 出来れば、忘れたフリをして帰りたい。


 シビリア総合学園の校舎がある場所は、五角形の形になっていて底辺の部分が校門、一番奥が職員棟、正面入り口から向かって右が高等科、左が初等科だ。

 さらに中央には1階に大講堂、2階から上に食堂や部室、研究室、サロン等がある特別室棟が建っている。

 運動場や武道場は正面入り口から、通りを挟んで反対側の敷地にある。

 運動部の部室は、そっちにクラブハウスという形で建てられている。


 サロンは特別室棟の最上階、5階にある。

 王都でも5階建ての建物は珍しく、その窓からは街の景色が一望出来る。


 重い足取りで階段を上る。

 そして、目の前に鎮座する大きな扉を前に溜息を吐く。


「いらっしゃいませ、特別室をご利用ですか?」


 扉の横にあるカウンターから、コンシェルジュの女性が声を掛けてくる。

 貴族科の制服は他と少し形が異なっている為、すぐに区別できる。

 制服の色自体は紺色を基調としており、他の生徒と形自体は変わらない。

 男の子であればまずボタンが金色で、金糸の意匠が制服の縁に使われている。

 女の子も同じように金色のボタンと金糸、そしてシャツのリボンの色が白だ。


 そして特別室を利用出来るのは、貴族科だけだ。


「ようこそ、マルコ様、ヘンリー様」


 そう言って出迎えてくれたのは、給仕の人だ。

 室内には既に何人かのクラスメイトが居た。

 往々にして1年生が最初に授業が終わるから、大体最初にくるのは1年生が多い。


 給仕は5人程で、1学年につき1人と全体を見る人が1人だ。

 子爵家や男爵家の次女や三女といった身分の人も居れば、代々貴族家に使える家のものも居る。

 全体を見ているのは、テンバーという初老の男性だ。

 タキシードに身を包み、白髪交じりのオールバックと、綺麗に整えられた髭が特徴的だ。

 

 スーツの上からでも良い体つきをしているのが分かる。

 

 特別室に入って来たマルコとヘンリーを出迎えてくれた男性だ。

 すでに1年生担当の女性は、仕事についている。

 部屋の真ん中にビュッフェのようなものがあり、専属の料理人がお菓子や軽食、飲み物を作ってくれる。


「エマ様とソフィア様が、あちらでお待ちですよ」


 テンバーに案内されて部屋の中に入る。

 階段を上って5階まで来たのに、扉の前を少し進むとすぐに下に降りる階段がある。

 そこまでの段数ではないが、少しモヤッとする。


 が、これは入って来た相手が中からでもすぐに確認出来るための工夫でもあるので、仕方がない。

 入り口から入って来た生徒は、中ですでに寛いでいる生徒や給仕達からよく見える。


 彼女達が居るのは、左奥の仕切りのついたテーブル席だ。

 

「ご利用は初めてですね、ヘンリー様、マルコ様」

 

 そう言ってテンバーの後を引き継いだ1年生担当のシシリーが、2人を奥に案内する。

 肩で切りそろえられた栗毛色の髪はよく手入れされているようで、キラキラと輝いて見える。

 20歳前後くらいだろうか?

 メイド服をきっちり着こなしていて、出来るメイドっぽい。

 綺麗な人だなと思いながら、周囲にも目をやる。


 真っ赤な絨毯。

 煌びやかなシャンデリア。

 壁や衝立にも豪華な意匠が施されていて、目に痛い。

 調度品も高そうなものばかりで、とても学園の中だとは思えない。 

 こんなところで走り回って壺の1つでも割ったら……

 まあ、そんな子は居ないか。


 というか実家よりも立派なじゃない?


「ふふ……今年は殿下も入学されるので、大掛かりな清掃と改修を行いましたので」


 ボケーッと部屋を見渡していたら、こっちの気持ちを察したのかシシリーが説明してくれる。


「そうなんですね。いや、凄いなと思って」

「僕も、家よりも立派です」

「そう緊張なさらずとも大丈夫ですよ。お家の方にされるように、気安く接してください」



 窓際の陽が良く当たる場所に彼女達は座っていた。

 すでに紅茶を飲んでいる。


 ソフィアは立ち上がって、スカートの裾をチョンと摘んでにこやかに微笑みかけてくれる。

 可愛らしい仕草にほっこり。

 

 その横に座っていたエマは、立ち上がりもせずにニヤリと口角を上げると椅子に座るように促してくる。


「お飲み物は何をお持ちしましょう」

「えっと、紅茶を」

「僕はお茶で……」


 僕は紅茶を、ヘンリーはお茶を頼む。

 シシリーの後姿を見送って、エマが咳払いをする。


「で……マルコは何をしたの?」

「えっと……」


 さてと、困った。


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