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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第3章:高等科編

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第40話:マルコとバドス

「で、お前らは自分で帰れるのか?」

「あー……この空間から出してもらわんことには……あっちの世界に送り届けてくれんかのう?」


 俺の言葉にマーリンが、面目なさげに答えてくる。

 ということは、あっちにいけばバドスの依り代に戻れるのか。

 しかし、善神はなんのつもりでアザーズというか、バドスの身体を用意したんだ?

 罪滅ぼしのつもりか?

 だったら、本当に安易な考えとしか思えない。

 ここまで底の浅い神様ってのも、いるもんなんだな。

 最初に会ったときに感じた威厳だの、風格だのってはほとんど消し飛んだな。

 あっ、本気で凹んでるっぽい。

 嫌なら、いちいちこっちの様子なんか、覗かなきゃいいのに。


「すぐに、送り届けた方が……」


 なんとなくマルコの方に意識を向けたら、バドスと飯食ってた。

 タブレットで、様子を確認

 ギルドの建物の横にある食堂で。

 ジャッカスのおごりというか、S級冒険者の特権というか。


「おい、近いぞ?」

「ちょっと、これは興味深いのう」

「へえ、こうやってあっちを覗いてるのね。普段は何を見ているのかしら? 女性の部屋とかも「お前と一緒にするな」」

「えっ? 覗き放題?」

「うっさい、黙れ」


 マーリン、パイドラ、ペレアスが俺の周りに集まってタブレットを覗き込んでくるか、狭苦しいし暑苦しい。

 いや暑くはないが、暑苦しい。


「ほら」


 仕方ないからタブレットを宙に浮かせて、画面をピンチアップして大きくする。

 70インチくらいに。


「おお!」

「凄い!」

「えっ? 大画面で覗き放題? ぶへらっ!」


 とりあえず、ペレアスを思いっきり殴り飛ばす。

 

「おいマハトール。 こいつ、結構昔有名な剣士だったぽいから、お前相手してみろ! 何か得るものがあるかもしれんぞ!」

「はい! それは、楽しみです。よろしくお願いしますね」

「私も付き合います」

「えっ? はっ? ちょっ! 俺も見たい! わー」


 ペレアスがマハトールとラダマンティスに連れていかれたのを見送って、再度下の様子を。


「大丈夫かなあ?」

「大丈夫だと思うよ? マサキ、ああ見えて優しいから」


 バドスがサンドイッチを口にもっていこうとして、止めて手を下すと深いため息を吐いていた。

 こうしてみると、普通のガキだな。

 マルコが、適当に気休めを言っているが。

 ああ見えてって、普段俺がどう見えてるんだ?

 俺のことなら、よく分かってるだろうに。


「いやいや、マルコ君の同居人すっごい怖いよ」

「うーん……そんなことないよ、子供好きだし」

「子供好きってことは、大人には容赦ないってこと?」

「いや、人付き合いはマシな方だと思うけど」


 こらこら、思うとかやめろ。

 きちんと大人の付き合いだって出来る。


「大人の突き合い?」

「黙れ下ネタ耳年増……いや、リアル年増のクソ婆だってマーリンさんが言ってたな」

「それは酷くない?」

「わしはそこまで言ってないぞい?」

「そうだっけ? とりあえず酷い目にあいたくなかったら、少しはその口を塞げ」

「マサキ君が私に酷い事するのかなぁ?」

「いや、うちの虫たちとさっきのとは別の悪魔かな? イザベル」

「はいはーい!」

「つぎこの若見せ婆がなんかくだらんこと言ったら、あっちで遊んであげなさい」

「イエスマスター!」


 俺の目の前でボーイッシュな小悪魔が、敬礼をしているが。

 お前、土蜘蛛と並んで俺のことあんまり敬ってない部下筆頭候補だぞ?

 まあ、土蜘蛛は俺とマルコの忠臣筆頭候補でもあるが。

 ラダマンティスは忠臣ではあるけど、イエスマン過ぎるからなー。

 あとあんな凶悪な成りしておいて、割と事なかれ主義というか。

 他の虫たちの争いごとに巻き込まれて、俺にまとめて叱られることもあったからな。

 途中から巻き込まれたら、すぐに俺に報告してその後は我関せずで知らん顔。

 流石にその丸投げはどうかと思うが、その気持ちは分かりすぎるから何も言わない。

 事なかれ主義の巻き込まれ体質って、本当に可哀そうな組み合わせだと思うしな。

 うん、お前はそのままで居ていいんだぞー。


「はあ……わしらのことそんな風に思っていたのか」


 虫達のことを考えていたら、色々と会話が進んでいたらしい。

 巻き戻せないのは不便だけど、幸いマルコが話し相手だからな。

 マルコの記憶から……


「そういうのも嫌だったわー」


 まあ、善神の中は男性比率高そうだしな。

 女性からしたら、プライバシーを多くの男性に共有されるのは嫌だろうな。

 うちは、男同士だから大丈夫だろう。


「あなた、デリカシーなさそうだし」

「マルコよりはあるぞ?」

「お前ら、仲いいのう」


 否定しない。

 ムキになるのもアホらしいし、マーリンのお陰で少し冷静になれた。

 相手にしない方がいいだろう。


「扱い、酷くない?」


 無視だ無視。

 あんまりうるさかったら、イザベルにとっととドナドナしてもらおう。

 急に黙ったな。

 それでいい。

 不満そうな顔してるけど。

 口を尖らせて横を向くの、気に入ってるのかな?

 何にも感じないけど。


「マルコ君も苦労してるんだね」

「バドス君ほどじゃないけどね。一人でも大変なのに、何人もいるなんて」


 おいおいマルコ。

 お前が言うな?

 いっつもお前の尻ぬぐいで大変な目に合ってるのは、俺だぞ?

 マーリン、パイドラ、こっち見んな。

 あっち見てろ。


「大人ってだけでそんなに偉いのって思うことも少なくないし」

「うん、僕も結構あれこれ口出されて、正直一人になりたいときもあるし」


 マーリンが見るかにショックを受けているのがウケる。

 きっと、本人としては可愛がってたつもりなんだろうな。

 まあ、こいつら被害者友の会って感じで、なんか結束力高そうだし。

 いや、被害者ってわけじゃないだろう。

 どっちかっていったら、当事者側だし。

 取り合えず言っておこう。


「お前らも、善神とあんま変わらんぞ?」

「グヌヌ」


 マーリンが悔しがってるから、少し溜飲が下がった。

 しかし、仲は良さそうだけどな。

 俺たちも、仲は悪くないと思うが。


「助けてもらってる部分も多いけどさ」

「結局そこなんだよねー。自分ひとりだったら解決できないことも多すぎて、やっぱり子供なんだなってことを痛感する時とかは結構自分のことを情けないって思うし」

「早く大人になりたいって思うけど、ああはなりたくないっていう思いもあったり」


 この2人、気が合うんだな。

 現在進行形で、会話の内容筒抜けだって分かってるのかな?

 もしかして、わざと聞かせようとしてるのか?


 それからなんだかんだと、お互いに愚痴を言い合って店から出て別れようとしてた。 

 おい、忘れもん、忘れもん。

 横見たら、マーリンとパイドラがすごい顔してた。

 分かれる直前に2人を送り返したら、バドスがちょっと嫌な顔してたのが笑える。

 あっ、ペレアス……は忙しそうだし、送り返すのはまたの機会でいいか。


 数日後に、マルコ経由でパドスに戻そうとしたら凄い抵抗された。


「嫌だ! 俺もここに住む! 飯も酒も美味いし、家は綺麗だし、変な虫やら動物やらオーガがいて楽しいし!」

「いや、俺は多少は構わんが、パドス達が心配してるぞ」

「嘘つけ! あいつら、俺がいなくても大丈夫だろう。俺の話題なんて全然出てなかったみたいだし」


 なんか面倒くさいから、気が変わるまで預かることにした。

 昔の話とか、結構役に立つ内容とかもあったしな。

 こいつ自身は、役に立ちそうにないが。


***

「2人とも仲直りしたみたいだな」


 学校に行ったら、ベントレーが早速声を掛けてきてくれた。


「いや、別に喧嘩してたってわけじゃないんだけど」

「そうか? でも、前よりはずっと雰囲気はいいぞ」


 本当に鋭い子だ。

 もともと、貴族の子供としても優秀だったし。

 というか、どんどん僕との差が開いていってる気がする。

 でもベントレーはそういう生き物だと思って、割り切るようにしてからは気にならなくなったし。

 なにより、友達としても凄いいい子だしね。


「それよりも2人ともエマとソフィアの誕生日プレゼントは大丈夫か? 来週の週末にエマの家でパーティをやるらしいぞ?」

「ソフィアの家じゃなくて?」

「ああ、結構な人数になるみたいだから、エマの家らしい」

 

 基本的にソフィアの家にエマがずっといるイメージだったから、ソフィアの家ででやると思ったのに。

 まあ、屋敷自体はエマの家の方が広いし、ほとんど使ってない部屋ばかりだから会場の準備もそっちの方がらくなのかもしれない。

 エマの家はあんまり行ったことないから、ちょっと楽しみだったりする。


「殿下達も来るからな……トリスタ家王都邸なら、セリシオだけじゃなくフレイ殿下達が来ることになっても対応できるだろう。護衛がどのくらい来るか分からないから、余ってる部屋は多い方が良いってことらしい」

「ソフィアの家も大きいけど、まあ護衛の休憩スペースとかを考えたらそっちの方がいいかな? 辺境伯邸でくつろげるかは別として」

「その辺りは、陛下も考えてくれるだろう。トリスタ辺境伯の寄子に連なる貴族子弟の騎士を選ぶんじゃないか?」

「それもそっか……それで、プレゼントかー。まだ決まってないんだよね」

「ヘンリーはもう用意したと言ってたな。呼ばれる気満々だったが、まあ今のエマの態度を見てたら誘うと思うけどな」

「エマも大概優しいよね?」

「ヘンリーもかなり頑張ったからな。あんなに変われるとは思わなかった。人の成長を間近で見られるというのは、良い刺激になった」

「……」


 目の前で目下凄い勢いで大人の階段を駆け上がってる子に言われると、なんとも微妙な気持ちに。

 そしてそんな急成長を遂げている友人を間近で見てるのに、自分の成長があまり感じられないのが辛い。

 嫌味かな?

 今のベントレーは素直だから嫌味じゃない分、余計にダメージが。


 はあ、帰りに町に寄ってみよっと。

 エマとソフィアに捕まらないようにしないと。


「俺は用意してるから、今日2人を勉強会という名目でサロンに誘ってみよう。そうだな、ジョシュアとクリスも誘おう」

「なんでクリス?」

「いや……流石にいくら戦闘肌とはいえ、今のまま成績が下がり続けてたら侯爵家の汚点になりかねないからな」

「ディーン?」

「セリシオ殿下からも、相談された」


 そっか……

 なんで、ベントレー?

 あー、そういえばベントレーって教えるのも上手いんだった。

 うん、確かな人選。

 もうセリシオの側仕え、ベントレーとディーンでよくないかな?


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