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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第3章:高等科編

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第33話:ジェラッと一同

「なんだマルコ、編入生と随分と親しくなったようだが」


 アザーズとベントレーと教室に入ると、セリシオが近づいてきてジロッとした視線を送ってきた。

 今日は早く来る日か。

 王族なんだから、皆より遅く来た方がいいと何度も言っているのに。

 お陰で、後から来た生徒が身体をビクッと震わせたあとで、慌てて挨拶しているのが気の毒だ。


 そうそう、アザーズも他国の重鎮の子供ということで、割と腫物を触るようなポジションだ。

 いい意味でいえば、他の生徒からも一目置かれていると言えなくもないが。


 お陰で、校内がさらに歩きやすくなってしまった。

 先輩方まで自然な形で少し距離を取ってくる。

 明らかに道を譲られているのだが、そう見せない辺り教育がよくなされているようで。

 皮肉だけど。


「たまたま登校中に一緒になっただけですよ」

「連れないことを言うねぇ、わざわざ探して声を掛けたというのに」


 僕の言葉に対して、アザーズが余計なことをいう。


「私の誘いは断るくせに」

「相変わらず不遜なやつだな」


 最近は当りがだいぶ柔らかくなったとはいえ、クリスからしても面白くないらしい。

 かといってあまりセリシオと仲良くしても機嫌が悪くなるから、こいつもこいつで面倒臭い。


「もう少し私たちとも交流してくれてもいいと思うのですが」


 ディーンも捕まったのか。

 最近はセリシオと一緒にいる時間が、心なし増えた気がする。

 流石に側仕え候補として、自覚ある行動をとらないといけない立場と年齢に近づいてきたということか。


「その顔、あまり気持ちいいものではないですよ」


 おっと、内心でほくそ笑んでいたはずなのに、バレたようだ。

 ベントレーが横で少し呆れた表情を浮かべている。


「そんなこと言ってもセリシオも忙しいみたいだし。本当なら王族として他国の貴族ともっと交流を図った方がいいと思うよ」

「そうか? なら、今度はマルコとアザーズも一緒に登校しよう。馬車はこっちで出すから」


 今度はアザーズが余計なことを言うといった感じで、呆れた表情をしている。

 そこは年相応に、もう少し反応のしかったがあったのでは?


「それは大変ありがたい申し出ですが、流石に恐縮いたします」

「遠慮するな。マルコの友達なら、俺の友達でもある」

「殿下……」

「私の友達でもある」


 そういえば、最近セリシオが言葉遣いをちょいちょいディーンに注意されている。

 そのたびにクリスがディーンを睨んでいるが、正しいのはディーンの方だからね?

 あと、セリシオはいい加減そろそろ大人になろうか?

 本気で陛下に子作りを頑張ってもらった方がいい気がしてくる。


「また、失礼なことを考えていそうですね」

「とんでもない」

「慌てているのが、ちょっと怪しいですね」


 ディーンが面倒な絡みをしてくる。

 あっ、いつものことか。


「最近は私ともあまり付き合ってくれませんし」


 おっと……からかってるのか本気なのか、いまいち分からないことを言い出した。

 とりあえずジョシュアやエマ、ソフィアも来たので挨拶をして、ホームルームまで談笑。


「マルコって最近、アザーズ君と一緒にいることが多いよね?」

「いつの間に仲良くなったの?」


 いやいや、そんなに仲いい素振りなんて、見せたつもりないんだけど?

 ジトッとアザーズに視線を送る。

 慌てて顔の前で手を振っているが。


「いやいや、そんな印象操作とかしてないですって」


 何も言ってないのに、小声でそんな言い訳をしてくるのが怪しい。

 ノーフェイスも記憶を改ざんする力があるようなことを言ってたし。

 本当かな?


「おはようございます」


 エルザ先生が入ってきたので、慌ててみんな自分の席に着く。

 思ったよりも会話に花が咲いたと思っていいのかな?

 いつもは、先生が入ってくる前にみんな席についているから。


「では、ホームルームを始めますよ」


 それから、朝のホームルームを受けて、授業に。

 流石にみんな授業は真面目に受ける子たちばかりだ。

 まあ、そんな幼くもないし……いや、入学当初からみんな真面目だ。


 そして、実技の授業。

 剣術の授業になるわけだけど、僕は先生の横。

 高等科にあがってから剣鬼流の使い手として、指導側に回された。

 それだったらベントレーもと思わなくもないが、まあ天と地ほどとまでは言わないがかなり差があるしね。


「私も、剣鬼流が気になります」

「そんな流派じゃないんだけどね」


 アザーズの言葉を受けて、手ほどきをすることに。

 実力不明のアザーズの能力確認のためと先生に言われてしまえば、反論はしにくい。

 

「手加減はするように」

「いやいや、もしかしたら滅茶苦茶強いかもしれないじゃないですか!」

「大丈夫、一般の滅茶苦茶強い子供なら、お前の足元にも及ばないから」


 先生の評価が正しいかどうかは別として、皆頷かないで欲しい。

 そもそもこの世代は異質というか、セリシオもベントレーもジョシュアも剣鬼流を習っているから剣の技術に関してはここ数世代どころか学校設立当初から数えてもトップクラスのレベルの高さだとか。

 お父様の世代も似たようなことを言われてたらしいけど。


「では、行きますね」

「あっ、うん」


 問答無用で先手はアザーズなのね。

 そんなことを考えていたら、想像以上に鋭い突きが来た。

 まさかいきなり突いてくるとか。


「うっ」


 そして左脇を押さえて蹲るアザーズ。

 突きを剣先を軽く当てて軌道をずらしたあとで、こっちも突きを放ち左脇を逆袈裟で切り上げるフェイント。

 横から見たらただ単に突きが交差しただけにしか見えないかもしれないけど、軌道を逸らした剣はしっかりと僕の身体を1cm程度隙間を開けて避けるように流れた。

 逆に僕の突きも、アザーズの頬の横をすり抜けたように見えているはず。


「えっと、何が?」


 生徒たちがざわついている。


「いつものことだろう」

「ああ」

「えっ?」


 セリシオの言葉にみんなが納得してたけど、アザーズだけが変な顔してた。

 うん、アザーズの反応が普通で、みんながおかしいことを自覚してもらいたい。


「マルコの剣の軌道を見るコツは、ひたすら目と気配探知を鍛える以外にはない」


 凄く偉そうにセリシオが何かいってるけど、そんなのコツ以外でもなんでもない。


「俺……私は三カ所までなら、同時多方面フェイント攻撃を見極められるようになったぞ?」

「三カ所?」

「ああ、上段打ち下ろしと見せかけて、実は袈裟斬りと見せかけて、横に薙ぎ払いといった具合のな。剣鬼流の恐ろしいところは見えるようになると、本当に同時にその3つの剣筋が見えるところだ」

「ほえー」

「流石、殿下です」


 自慢げに言ってるけど、僕は本気で集中しても五カ所までしかフェイントは掛けられない。

 マサキは八カ所、おじいさまは……その倍以上としか。


 殺気や剣気を具現化するとか言われても、分からないんだけど。

 それが出来るようにならないと、これ以上の成長は見込めないと言われていま頑張っているところ。

 

「ベントレーは四カ所半はいけるらしいが」

「真剣に集中して一回だけ防ぐなら……ただ、振るう方はいまだに三カ所同時攻撃の域を出てません」

「流石剣鬼様に直接習ってるだけのことは……」


 主役のアザーズそっちのけで、盛り上がっているけど。

 あー……注目を奪われて、面白くなかったのね。

 最近影薄いもんね、セリシオ。


「もう一回、良いですか?」

「……いいけど、君……」


 そんな状況の中で、アザーズが笑顔で剣を構える。

 顔はメイン人格のそれだけど、雰囲気が変わったというか。


『人格交代というより、憑依っぽいな。そんなこともできるのか』


 マサキがわざとらしく解説っぽい独り言を、わざわざ念話でボヤいている。

 気づいてたし……中身が違うっぽいことだけは。

 てか、憑依とか……


「行きますよ」

「っ!」


 鋭い突きが同時に2カ所に襲い掛かってきて、思わず慌てて対処する。 

 幸いにどっちも奇麗な真っ直ぐの突きだったから、両方の側面に当てて弾くことはできたけど。

 これがファーマさんが得意とする揺れる突きだったら、危なかった。


「はっ!」

「くっ!」


 引き戻しと突きが同時に来るとか、腕が増えてるんじゃないかと錯覚する。

 けど、対処可能。

 と思ったら、僕の剣が宙を斬る。

 まさかのフェイントとか、面白くない!


「ぐっ」


 次の瞬間、アザーズの左ひざが曲がって、バランスを崩す。

 膝の横にかなり強めに剣を当てたのに、膝を着かなかったのは認めざるを得ない。

 けどまあ……


「ひっ」


 そのまま撫でるように両肩、両脇、両頬に剣を触れる。

 そして最後に突きを胸の心臓部分に触れるか触れないかの状態で止める。


「凄いね! 流石としか言いようがない」


 ちょっと非難めいた視線を向けつつ、誉める。

 ある意味でズルしたと思わなくもないから。

 でも、本来の彼の姿だからズルとも言い切れないのかな?

 それなら、僕もスキルを使っても良いってことになるのか?


「参ったよ……思った以上に強い」

「剣だけは死ぬ思いで鍛えてるから」


 アザーズの手を引っ張って、起こしてあげる。

 周りから拍手が。


「すげー」

「アザーズって、実はかなり強いんじゃないのか?」


 そんな声が、生徒の中のあちらこちらから聞こえてくる。

 こら、セリシオ舌打ちしない。

 クリス、睨まない。

 ディーン、おもちゃを見るような視線を送らない。


 ジョシュアとベントレーは素直に感心した様子だけど。

 王子御一行が、ちょっと大人げないというか。


「アザーズもこっちよりか」


 先生の言ってる意味が分からない。

 僕やベントレー、セリシオ、クリスを見て頷いていたけど。

 こっちとか、そっちとか無いと思うんだけどなー。

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