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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第3章:高等科編

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第24話:新たな風とお調子者

気が付けば4万ポイント……本当に、ありがとうございますm(__)m

下に、短編のリンク貼ってますので宜しければ、暇つぶしにお読みください♪

 地竜のランドに乗って、ウキウキと畑へと向かう。

 たまには、ランドとも接してやらないと。

 

 久しぶりに俺を乗せて、ご満悦なランドがブフブフ言いながら通りを抜けて自然豊かな平野部を進む。

 鼻歌でも歌っているのかな?


 途中で、鬼の面々が立ち止まって頭を下げてくれるが。

 いちいち手を止めなくてもいいから。


「へえ、やっぱりいいものだな」


 畑で、普通の畑作業が見られる。

 待ち望んだ人型の住人がついに、この空間にもやってきた。

 都合30人の鬼たち。

 いま、畑で鍬を振るったり、雑草を抜いているのは成人の鬼たちの一部。

 10名ほどが、畑作業をしている。


 戦闘訓練を受けているものが、ガレッドとガスターを含め6名。

 マハトールを筆頭に、蜂たち相手に攻撃を当てる特訓をしている。

 まったく、当たってないが。

 最初は遠慮がちに剣を振るっていた彼らだが、蜂の一匹がそれを前足で受け止めて歯をカチカチとならした。

 それから首を傾げて、馬鹿にしたように顎をしゃくって見せた。

 流石、そこは戦闘民族。

 そこからは、本気で攻撃を当てにいってたが。

 まったく、当たる気配がない。


「はっはっは、私ですら掠らせることができないのに、お前らごときが手を抜くとは、ずいぶんと思いあがったものだな」


 マハトールが、ここぞとばかりに挑発してたが。

 こんなんでも、ここの鬼が全員で掛かってもマハトールには勝てないんだよなー……

 理不尽だよなー。

 レッサーデーモンのくせに。


 人型の手があるってのは、悪くないな。

 畑でせっせと働くオーガたちを見ながら、頷いて戻る。

 本来なら、雑草なんか左手で吸収してしまえばすぐに片が付くし。

 そもそも、生やさない方法もあれば、ワームたちによって根絶やしにすることもできるけど。

 ここは、彼らが食べるための野菜が植えてある場所だ。

 自分たちで世話をしてこそだろう。

 苦労があって、初めて収穫を喜べるだろうし。

 与えるだけじゃ、ダメなんだよな。


 全員が戦闘職なら、それもやぶさかではないが。


 とりあえず、全員に声を掛けて神殿の方に戻る。

 こっちではオーガの子供たち6人が、マコやクコたちに混ざってクロウニの授業を受けている。

 人の勉強ではあるが、オーガたちが習って損になることはないだろう。

 それに、お互いのことを知れば、今後の付き合い方も変わってくるだろうし。


 ……獣人とオーガ。

 純粋な人族はいないが。

 クロウニはそんなことは気にしない。

 意欲のある子供であることが重要なのだ。


 ジャッカスにも、この空間での役割を与えた方がいいかな?

 いまも、せっせと冒険者ギルドを渡り歩いて、様々な仕事をこなしつつノーフェイスの情報を集めて回っている。

 なかなか、思うように進んでいないらしい。

 進展なしという報告を、ずっと受けている。


 こういうのが、一番怖い。

 定期的にちょっかいを出してきてくれた方が、迷惑だけどまだましだ。

 水面下に潜られて動向が分からないとなると、不安でしかない。


 まあ、分からないことで悩んでも仕方ない。

 いまは、良いことを嚙み締めよう。

 住宅区に、人の暮らしを感じさせる雰囲気が出てきたのは嬉しいな。

 人の声が聞こえてきたり、庭に洗濯物が並んでたり。

 昼時や夕方には、良い匂いもしてくる。

 いないときは何も感じてないと思ってたが、もしかしたらある種の孤独を感じていたのかもしれない。

 周りには常に誰かいたが、実質にはこの広い空間に一世帯しかなかったわけで。

 彼らが住んで、初めて自分が寂しさを感じていたことに気付いた。


 まあ、虫たちのお陰で、それを自覚することなくここまで来れたが。

 だから、実際には孤独でもなければ、寂しくもなかった。

 そういうことにしておこう。


 そうだな、せっかくだし俺も少し彼らと触れ合った方がいいかもしれんな。

 そう思い、戦闘訓練を行っているガレッド達のところに。

 思いあがったマハトールがいるしな。


「これはこれは、マサキ様」

「ああ、手は止めなくていいぞ。なかなか精が出るな」

「はっ、まさかこの年になって、自分の未熟さを人生で一番痛感することになるとは、思いもよりませんでした」


 ガレッドが、俺を見つけて声を掛けてくれる。

 マハトールは、ガスターとの訓練に忙しいようだ。

 こちらに気付いて目礼だけすると、気配と姿を消したガスター相手に手合わせをずっと行っている。

 しばらくして落ち着いたのか、2人もこちらにやってくる。


「どうだマハトール。少しは目や気配探知を頼らない戦い方を覚えたか?」

「なかなか難しいですね。空気の流れを読んだり、匂いでと工夫はしているのですが……」

「ははは、戦闘能力が低い代わりに、そういった方向に全力で進化してますので。それが意味がないと、私の存在意味がなくなってしまいますよ」


 マハトールの言葉に、ガスターも苦笑いだ。


「とはいえ、何度も背筋が凍る思いをしてます。すぐにでも、居場所を見破られるようになるかもしれません」


 ガスターが、本当にそう思っているのが分かる。

 最近のマハトールの成長には、目を見張るものがある。


「マサキ様なら、どう対処されるのですか?」


 マハトールが、俺にそんな質問を投げかけてくる。

 うーん、姿と気配を消されても、感知する方法はいくらでもあるしな。


「それを言ったら、お前のためにならんだろう。それに、お前にできるとは思えんし」

「なるほど……マサキ様でも難しいのですね」


 ハイきたこれ、カチーン!

 とでも、なると思ったか?

 そんな安っぽい挑発には乗らんよ。


「簡単ではないかな?」


 俺の言葉に、マハトールが目を瞑る。


「ということは……私の方が先に完璧に分かるようになれば……マサキ様を超えたことに」


 本当に面白いやつだな。

 どこをどうやったら、そんな結論にたどり着くんだか。


「となれば、この空間最強の悪魔に……」


 凄い妄想がはかどってるけど、お前気付いてる?

 全部、言葉に出てるよ。

 おい、蟻と蜂たち、ユラリと近づくな。

 こいつの、唯一の楽しい時間(妄想タイム)なんだから。


「あの……マルコ様ですら、初めから私の居場所を把握しておられたのですが。おそらく、マサキ様には容易いことかと」

「……えっ?」


 ガスターが遠慮がちにマハトールに告げると、奴の動きがピタリと止まる。

 現実逃避終了か、

 おかえりなさい、マハトール。


「俺の配下にはバジリスクも、地竜もいるんだぞ? 熱感知くらい使えるわ」

「はっ! 熱ですか!」


 マハトールができなさそうな部分で、とりあえず方法を言っておけば大丈夫だろう。

 マハトールができそうな方法は黙っておこう。

 ソナー型の、気配探知とか魔力探知なんて方法だな。


「あとは、ダニーでも付けておけば、完全に消えるレベルの隠密でも見破れるぞ?」


 ちなみに、ダニーは昔マルコの布団にいたダニを吸収して配下にしたやつだ。

 物凄く有能なのだが、戦闘能力は皆無に等しいな。

 いや、普通の虫相手なら無双くらいするが。


「なんででしょう……強くなればなるほど、差が開いていってるような気がするのですが」


 まあ、仮にマハトールがどんな凄いスキルや魔法を習得したところで、それらは全部俺に還元されるからなー。

 マハトールが俺を超えるには、純粋にフィジカルの訓練をずっとするしかないわけだが。


 かっこいいことが大好きなこいつに、そんな地味な訓練なんてできるわけもないし。


「それでこそ、我が主ですな」


 本当に調子がいい奴だ。


「もし、マサキ様を超えることができたら、初めて護衛として……そして、下僕として役に立てると思ったのですが」

「いまも、役に立ってるぞ……少しは」

「本当ですか?」


 うん、本当に少しな。

 本音だから、そんなに嬉しそうにするな。

 ガレッド達が、変な顔になってるぞ?


「少しでもお役に立てているなら、嬉しいことこの上ないですな」

 

 なんなんだこいつは。

 こんな素直な悪魔がいるのか?

 悪魔って、もっとひねくれてるもんじゃないのか?


 もしかして、一周回って俺に皮肉を言ってるのか?

 ああ、皮肉とか好きそうだもんな。

 こいつ、演技掛かった言い回しが好きだからなー……

 その線も……


「全くの役立たずの私が、いまは少しでも役に立てている。これは凄い進歩ですよ? あなたたちも、私のように弛まぬ訓練を積めば、マサキ様のお役に立てるのです」


 うーん、ガレッド達が、困惑している。

 わざとか? わざとなのか?


 わざとじゃないから、こいつが面白いと思えるんだが……

 お調子者で卑屈で素直で馬鹿で聖属性を操る悪魔か……

 俺の中の悪魔の定義が、完全に宙ぶらりんだな。

 こいつのせいで。

一話完結短編ギャグファンタジー!

投稿しましたので、暇つぶしがてら御覧ください。

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