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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第3章:高等科編

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第22話:歓迎会前半

すいません、忙しくて文字数が……しかも前半、後半に分かれます。

 神殿の外から、子供たちのキャッキャという笑い声が聞こえる。

 クコやマコたちの声も混ざっている。

 

 そう……居住区についに、まともな住人がやってきたのだ。

 それも30人も。

 子供が男の子4人に、女の子2人。

 上が8歳で、下が3歳とのこと。

 成人男性が13人、成人女性が11人。

 

 まあ、鬼の一族なんだけどね。

 結局、オーガレッドとオーガスカウターはすべてを諦めて、俺の配下になることを認めた。

 諦めるなよ。

 希望に胸を膨らませろよ。

 そう言ってやりたかったが、途中で退場させられてしまった。

 余計なことを言いそうな空気を感じ取ったのだろう。


 そして、目の前にはオーガレッド改めガレッドと、ガスターがいる。

 ガスターはオーガスカウターだ。

 どっちも長くて呼びにくいから、俺が名前を付けた。

 特に名前にこだわりがないのか、


「わかりました」


 の一言だけで終わってしまった。

 別に名付けで従魔契約が結ばれたり、強化されたりはしなかった。

 まあ、合成の間で強化できるけど。

 意思のある人型の生物にはちょっと気が引ける。

 マハトールで成功してるから、問題ないとは思うんだけどな。

 ヴェネの核を埋める時に。


 そんなことを思っていたら、もう一人の悪魔がやってくる。

 いろいろと残念な悪戯好きのアークデーモンのリザベルだ。

 だいぶ、こいつも成長している。

 デーモンロードを簡単に倒せそうなほどに。


「これが、主の新しいおもちゃ?」


 おいっ!

 おいっ……いきなり、変なことを言うな。

 2人が怯えてるじゃないか。


「リザベルさん、あまりなことは言わないように。今は、まだ慣れるときですよ」


 そう言って、柱の陰から出てくるクロウニ。

 お前も、無駄に大物感を出して出てくるな!

 いろいろとやらかしの人生だったくせに、だいぶ立ち直ったなおい!

 悪い意味で。


「2人とも、主の御前です。戯れはほどほどに」


 マハトール、おまえ!

 はいつも通りか。

 通常運行だな。

 調子に乗ってるときの。


「……」


 ジャッカスは何かしゃべろうか?

 無言で柱にもたれかかって、腕を組んで目を閉じてどうした?

 お前は、そんなキャラじゃないだろう?

 もともとは、チンピラじゃないか。


 そして、奥の方から感じる視線。

 カブトとラダマンティス。

 何がしたいんだこの2人は。

 ジャッカス達に、演技指導までして。

 どこで、そんな知識を得てきた?


 ああ、勝手に書庫に入ったろ?

 割高でポイント購入した、地球産の本でも読んだか?


「お前ら、いい加減にしろ……今日は、親睦会だぞ」


 流石にこれ以上は俺も我慢できなかったので、割と静かな声で注意してしまった。

 こいつらと、あまり変わらなかったかも。

 そして、俺が地味に怒り始めたのを感じたのかカブトとラダマンティスが姿を消す。

 絶望の表情を浮かべる、マハトール。

 いやいや、別にお前をいじめたりしないよ。


「まずは、この地に住まうことを許していただいたことに感謝を」

「やめろやめろ、堅苦しい。もっと気楽に、していいぞ」


 あまり、こう下手に出られると、普通に会話がしにくい。

 俺はもっと、気安い関係を望んでいるんだ。


「ここでの、暮らしは慣れたか?」


 とりあえず、とりとめのない会話を。


「はっはっは、今までの生活とはまるで違って慣れるまで、まだまだかかりそうですな」


 俺の質問に、ガレッドが笑いながら答える。

 ガスターが少し焦った表情を浮かべているが。

 

「いやはや、最初はどのような恐ろしいお方かと思いましたが、よき主に出会えたようです」


 ガレッドの言葉に首をかしげる。

 主……になるのかもしれないが、良いか悪いかはわからんだろう。


「不思議そうですな。いえ、配下の方々が生き生きとして、あなたさまのためにお役に立とうと頑張っておられる。この姿を見ただけで、主がどのような人物か多少は見えてきました」

「そうか? そう言って、もらえると嬉しいな。まあ、飲め」


 ガレッドの飾らない誉め言葉に、気をよくして酒を注いでやる。

 それから、ほかのメンツにも。

 トトたちはトトたちで、居住区でほかの鬼たちと食事会だ。

 トトと土蜘蛛が、腕を振るった料理の数々。

 また、鬼の主婦たちも、それぞれの家庭料理やらなにやらを提供してくれた。

 もちろん、足りない材料はこちらで用意したが。

 里にあるものも、全部持ってきてあるから多少は食料はあったらしい。


 とりあえず、こいつらにもいろいろと働いてもらうことになるが。

 男性陣は、まずは戦闘訓練からだな。

 女性陣にも参加希望者は、参加可能といってある。

 オーガソルジャーの一人も女性だったしな。

 なかなか、みんな個性的な見た目だが、良い奴らばかりっぽい。

 マルコたちは、もうすでに家に帰ってゆっくりしている。

 冒険者ギルドの報告も、うまいこと誤魔化せたらしい。

 ソーマはガレッドの槍を持ったままだったが、ガレッドもあれはあげたものだから今更返してもらう気はないといっていたな。


 さて、俺はクコたちに呼ばれてるから、そろそろあっちに顔出すか。


「じゃあ、お前ら楽しめよ。仲良くしろよ」


 そう言って、神殿から出ていく。

 外は外で、楽しそうな声が聞こえていたからな。

 楽しみだ。

 俺がいったとたんに、静まり返らないことを願おう。


***

「でだ、あれがわれらの主だが……」

「うむ、わかる。決して逆らおうなどとは思わぬよ」

「諫言はいい。主も笑って許してくれるし、反省もしてくれる。明確に敵意を向けさえしなければいい」


 ジャッカスが、仰々しい様子でガレッドにくぎをさす。

 ガレッドも、そのことは感じ取っていたのか大きく首を縦に振る。


「へえ、姿を消せるんですね、とはいっても隠れきれてない感じですが」

「ああ、気配も消してるんだろうけど、ちょっと残念な感じだね」

「ですよね。なぜか、マルコ様にも簡単に見つかってしまって」


 その横では、リザベルとマハトール相手に、ガスターが相談をしていた。

 自身の持ち味である、隠密としての能力がマルコ達相手に全く通用しなかったからだ。


「気配を消して存在を隠したところで、物理的には存在してるからねー……ソナー型の魔力感知なら簡単に発見できるよ」

「蜂の先輩方が、得意とする気配探知ですね」

「……そうですか」


 対処法があると知って、ガックリと肩を落とすガスター。

 クロウニが、肩をたたいて慰める。


「いやいや、すごいですよその能力。姿を消して気配を消す。実に素晴らしい能力です!」


 おそらく、娘のパドラに気付かれずに、近くで見守ることへの光明を見出した感じだ。

 いかにも、訓練をつけてくれと言い出しそうな雰囲気だ。


「闇に紛れる方法なら、私もできるんですけどね。影にもぐったりとか。ただ、ガスターさんの場合は、どこでも使えるんですよね?」

「ええ、まあ」

「ふむ……」

 

 マハトールはマハトールで、また変なことを考えているのだろう。


(たしか、気配を消したり、姿を消す相手に対して、目を閉じて精神を集中し、呼吸の音、呼気による空気の揺らぎ、また障害物に対する空気の揺らぎや、音の反射の違いで相手の場所を見破る方法があるとかないとか……これは、また一歩成長できるかもしれませんね)


「是非とも手合わせいただきたいですね」

「えっ? いえ、そんな。マハトールさんに勝てるなんて微塵も思ってませんよ」


 マハトールがボソッと呟いた言葉を拾ったガスターが慌てて首を横に振っている。

 

「あっ、いえ聞こえちゃいましたか。いえいえ、一方的に攻撃していただくだけで結構ですよ。もしくは、場所を変えつつ気配を消してくれるだけど。気配探知の一つ上、存在認知を覚えられるかなと」

「存在認知?」

「ええ、360度、すべての範囲内にある物の存在を感知して、それが何かを判断する能力です。どうも、目に見えるものだと、視覚に頼ってしまうもので」

「は……はあ」


(やばい、言ってる意味がわからない。というか、これ以上強さを求めて……いやいや、悪魔が訓練? 馬鹿な)


 悪魔が訓練の手合わせをしてくれという、ありえない頼みごとにガスターの混乱に拍車がかかる。

 と……とりあえず、ガレッドの方へチラリと視線を送る。


「むう、そもそもわれら鬼族を魔物という分類にしておることじたい、人間というのは不遜な存在であると思うのだが?」

「まあ、それを言ったら、歴史を変えるしかないですね。鬼が基準の人になったら、人間は角無しとかって言われてそうですね」

「そうだな」

「エルフが基準なら、人は丸耳ですかね? 獣人基準なら、牙なしとか爪なし?」

「きっと、毛なしだな」

「それは、エルフも鬼も、魔族もいっしょでは?」

「きっと、有角毛無人とか、耳長毛無人とか……」


 なんの話をしているのやら。 

 訳の分からない愚痴からの、酔っ払い特有の意味のない議論に発展したガレッドとジャッカスを見てため息をもらすガスター。

 自分がしっかりしないとと、気合を入れてグラスの中の酒を一気に飲み干す。


「けっこういける口ですね。どうぞもう一杯」


 そういうつもりで呷ったわけではないのだが、先輩に勧められては空のグラスを差し出すしかない。

 そして、並々と注がれる焼酎。

 ネタで、オーガキラーと同名の焼酎を用意したのは、マサキの単なるしゃれだが。

 漢字を読めるのが、クロウニしかいないため誰も気にしていない。

 というか、ガレッドたちが酒の名前を知ったら、きっと深読みして不安になってカチコチに緊張するだろうとは考えていなかったのか。

 考えていなかったんだろうなと感じ取ったクロウニは、あえて酒の名前を教えていない。

 空気が読めるのだ、クロウニは。


「はい、ごちそうさまが聞こえない」


 そして、空気が読めないやつがここに一人。

 いや、読んだうえでクラッシュするやつ。

 いきなり、リザベルがガスターを煽り始める。

 一気コールを囀りながら。

 変な踊りまで付け加えて。


「えっ? えっ? あっ、はい」


 訳も分からず、注がれた焼酎を一気に飲み干そうとするガスター。

 夜は始まったばかりだというのにすでにいろいろと不安になっているクロウニをよそに、リザベルが魔法で焼酎を球体にして、傾けているグラスに次々と注いでいる。

 飲んでも飲んでもなくならない焼酎。

 違和感を感じつつも、酒が回り始めて飲み続けるガスター。

 はたして、どうなることか。 

来週は、年末年始でいろいろと多忙なので、投稿をお休みしますm(__)m

再来週には確実に投稿できますので、ご安心を。

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