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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第3章:高等科編

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第17話:オーガジェネラル

「えいっ!」

「ちょっ、お前なにしてんだ!」


 おもむろに、オーガスカウターを縛っていたロープを斬ると、ジェームスさんが怒鳴りつけてくる。

 その横で、オーガスカウターが胸を押さえて荒い息遣いを。


「どうしたの?」

「き……斬られたかと思った」

「いや、そんなへましないし」


 いきなり剣で斬りつけてしまったので、殺されるかと思ったらしい。

 それは、悪いことをしちゃったかな。


「無視するな! なにしやがる!」

「あー、オーガジェネラルが向かってきてるみたいだから、いきなり襲い掛かってこないように」

「なにっ!」


 僕の言葉に、ジェームスさんが辺りを警戒し始める。

 

「流石にいくら人数が多くても、オーガレッド様には敵わないことくらいは分かってるのか。まあ、お前は俺を助けようとしてくれてたみたいだから、見逃してもらうようにお願いはしてみるが……」


 僕がオーガジェネラルにビビってると思ってるみたいだ。

 違うけど。

 そして、僕は助けてくれるみたい。

 うん、律義で優しい……優しいのかな?


「だが、お前らは駄目だ! 特にお前! お前だけは殺しておかないとまずい気がする! 本来なら無益な殺生は好まないが、群れを滅ぼそうとするような奴は」

「ちょっ、ちっ! 先にそいつだけでも殺すぞ! 合流されたら不味い!」


 ジェームスさんが剣を抜いて構える。

 見ればソーマさんと、キーンさんもこっちに来ている。

 

「ストップ! まあ落ち着いて」

「これが落ち着いていられるか!」


 なだめるように両手を前に出して、どうどうと落ち着かせようとしたが失敗。

 さらに、大きな声で怒鳴られてしまった。

 しかし、もうおしまい。

 マサキが盛大に興味を持ってしまった。

 このオーガスカウターだけじゃなく、オーガの群れ全体に。

 そして、ここはシビリア王国とはまったく関係のない大陸、土地。

 うん……自重の必要は全くない。

 ヘンリーもいないし、何も遠慮する必要もない。

 

「いまのうちに、自分の浅はかさを呪い後悔すると「うるさいよ」


 オーガスカウターが調子に乗ってきてたので、黙らせる。

 クイーンの威圧を使って。


「グッ……なんだ、この圧は……」

 

 うーん、便利だな。

 オスに対して絶大な威力を発揮する、【女王の冷笑(クイーンデリジョン)】。

 ついでに、前に吸収したゴブリンキングの【王の威厳(キングイグニティ)】も使っておこう。


『キングの速度が著しく落ちてます』


 あっ、気配を感じ取ったのかな?

 覚悟はあっても、しょせんは臆病な性格。

 

『後ろのオーガ達に、隠れるように必死で説得してますね。読み違えたと……確実に自分もスカウトも死ぬと伝えてます……いや、むしろスカウトの死に目には間に合わないと』


 ……


『せめてスカウトの亡骸だけでもと思ったが、気付かれたからには私も殺されるだろう……できることなら身体の一部だけでもいい……血でもいい……私とスカウトを里に連れて戻ってくれと』


 ……


『うっ、ぐっ……と、嗚咽をこぼし涙を拭って、オーガ2人が頷いて茂みに隠れました』


 いやあ、そこまでは言わなくてもいいかな?

 いいよね? 

 とりあえず、ジェームスさんとオーガスカウターをどうにかしないと。


「オーガジェネラル如きに、僕が後れを取るとでも?」

「馬鹿な……これではまるで王種ではないか……人に種族としての王がいるなど聞いてない……」


 なんか、盛大に勘違いしてるけど、まあ王種のスキルを使ってるから仕方ないのかな?


「坊主……お前……」


 ジェームスさんも、驚いている。

 

「なんか、強そうだな」


 そうでも無かった。

 というか、いうに事欠いてそんな感想?

 この人、長生きできそうにないけど……ここまで、順調に育ってるってことは長生きできるのかな?

 あっ、冒険者ギルド経由で情報が……

 ということは、虫達には頼れないのかな?


『私達に頼るまでもないと思いますが、姿を消せるものを何匹が呼べばいいかと』


 姿を消せる……蛾とか蝶かな?

 まあ、十分な……めっちゃ管理者の空間から、ライムがアピールしてるのが伝わってくる。

 確かに、景色に溶け込みそうだけど。

 さっきから、耳鳴りがうるさいのでスカウターを睨みつける。

 ジェネラルを逃がすために、スカウターが必死でメッセージを飛ばしているからなんとなく拾っちゃって。

 でジェネラルは?

 あっ、説得が終わって速度を上げて、こっちに来てると。

 凄く穏やかな笑顔で、スカウターや他のオーガとの思い出を思い出しながら、こっちに向かってる。

 ……そうか。

 

「来るよ」

「分かってる!」


 そりゃ、足音も隠す気もなく凄い速さで来たら分かるよね?

 茂みから飛び出してきて、いきなり僕に向かって肩から突っ込んでくる。


「坊主!」

「いや、危ないから!」

「ばか、俺のセリフだ! キーン!」

「とっくに、準備出来てるわよ!」


 ジェームスさんが、僕の前に剣を構えて立って、受け止める姿勢。

 いや、剣で?

 両手を交差して受け止めたりした方がよくない?

 僕のせいで、絶対に避けられないならなおさら。


 しかし、すぐに横からキーンさんが火球を放ったので、オーガジェネラルが少しよろめいて速度が落ちる。


「ソーマ!」

「言われるまでもない!」

 

 そして、ソーマの槍がオーガジェネラルの脇腹に突き刺さる。

 

「くっ、硬い。そこまで、深く刺さってない」

「ガアッ!」


 脇に刺さった槍を掴んでソーマさんごと片手で振り上げると、思いっきり地面に叩きつけようとする。

 振り上げたところでソーマさんは手を放していたので、少し高く飛ばされているが器用に受け身を取っている。

 鎧を身に着けてるのに、凄いな。


「オーガレッド様、お逃げください!」

「はっはっは、私もそうしたいのだがな……そこの小僧に気付かれた以上、もう手遅れだ」


 この状況で、大きな声で笑えるのか。

 ちなみに、オーガの言葉で喋ってるからか、他の人達には伝わってない。

 伝わってないどころか、ジェネラルが笑ったことでさらなる緊張感と、若干の恐怖心が出ている。


「なんだ、笑ってやがる」

「くそっ、俺の槍じゃ痛くもないってことか」


 いや、脇から血をドクドクと流してて、かなり痛そうだけど。

 確かに、骨にすら届いてないのだろうけど。

 刺されたら、痛いよね?


「あっ!」


 そして、マッチ棒でもおるかのように、脇に刺さったソーマさんの槍を両手でへし折ってた。

 

「くそっ」

 

 すぐに、予備の剣を抜いているけど。

 下手ではないが、得意ではなさそうなのが構えでよく分かる。

 そして、妙に悲壮な表情。


「こないだ、修理から戻ってきたばかりだったってのに」

 

 ああ、前も壊れたのかな?


「しかも、色々と強化してもらったのに……」


 だいぶ、お金を掛けたようだ。

 可哀そうに。


「あの子供は駄目です……私でも歯が立ちませんでした」

「そうか……お前で歯が立たないなら、私じゃどうにもならんな」


 オーガスカウターの言葉に、またもオーガが苦笑気味に笑っている。

 なんか、風格あるな。


「まあ、もとよりお前を助けに来たわけじゃない……いや、初めはそのつもりだったが」

「オーガレッド様?」

「共に死にに来たのだ。武器を構えよ……最後に、一矢報いてやろうではないか! 我を殺そうとも、我らの誇りまでは傷つけさせんよ」


 かっこいい。

 なかなかに、かっこいい……

 うわあ、マサキがマハトール連れてきて、めっちゃ見せてる。

 

「お前、こういうの好きだよな?」


 とか言ってるし。

 マハトールも、若干の嫉妬も持ちつつも、素直に楽しんでる。

 人の決死の覚悟を。

 やはりマサキは性格悪いし、マハトールは良い性格してると思う。

 性格が良いと違って、良い性格は……皮肉だよマハトール?

 褒めたわけじゃないからな?


「我が名はオーガレッド! 誇り高きオーガの長! そこの小僧! 我と立ち会え!」

「誇り高いのに、この中で一番ガキに一騎打ちを挑むのか? そこは、俺とだろ?」


 オーガレッドが唐突に、人の言葉で名乗りをあげた。

 ああ、スカウターのアドバイスね。

 人語を理解できると、少しだけ理解を示してくれる人間もいると。

 あと、とくに僕が甘いような気がすると。

 うーん、そういったのは伝えに来なくてもいいよ?

 いちいち、裏話まで伝えに来る蜂のお陰で、なんかちょっと……


「下がれ下郎が! 貴様如きが、オーガレッド様の相手が務まるわけないだろう!」

「おっ、おおう? なんか、急に強気に……」


 オーガスカウターに、ジェームスさんが怒鳴られて少し気圧されている。


「貴様より、そこのガキの方が何倍も強いことが分からない時点で、ここに立つ資格すらない」

「えぇ……」


 あっ、しょんぼりしてる。

 向こうで折れた槍を見てしょんぼりしてるソーマさんに続いて、2人目のしょんぼりさん。


「ここは、私の番ね……いい、マルコ。私が全魔力を込めた魔法を放つから、急いで逃げるのよ」

「あっ、大丈夫です。あの程度なら、問題無いです」

「えっ? あっ、そうなの?」

「はい、おじいさまの方が何倍も強いです」

「す……凄いのね、あなたのおじいさま」


 このやり取りを聞いていたオーガジェネラルが、少し落ち込んでいる。

 でも、事実……いや、違うな。

 おじいさまが、ジェネラルのしかもオーガジェネラルの何倍も強い?

 そんなことはないか。


「う……嘘吐きました。何十倍も強いかもしれません……」

「そ……そう」


 うん、なんかジェネラルが100人いても、おじいさま笑って帰ってきそうだし。

 じゃあ、100倍?


 あっ、オーガジェネラルがしょんぼりしてる。


「に……人間というのは恐ろしい生き物なのだな。鍛錬次第でそこまで強くなれるのか」


 素直に認めてくれたのに、それでもやる気はあるのか。


「いざ、尋常に……」


 ああ、引くに引けないのね。

 茂みに隠れて様子を窺っているオーガたちの手前。

 そういったプライドは誇りと一緒に捨てちゃってもいいんじゃなかな?



 

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カバーイラスト
― 新着の感想 ―
[気になる点] 最初の三行目 >>おもむろに、オーガスカウターを縛っていたロープを斬ると、 ~ 「ちょっ、お前なにしてんだ!」 までの部分が、この後にも続いて重複しています。
[一言] 冒頭部分が二重に書かれているで御座る
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