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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第3章:高等科編

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第11話:冒険へ行こう

 マサキに相談したら、ヘンリーを管理者の空間に案内することになった。

 いやいや、そんなに簡単に決めていいのかな?

 良いらしい。

 今のヘンリーなら、一周回って大丈夫と。

 それと、僕が本気を出しやすくなるとか?

 絶対に秘密は守るだろうし、ヘンリーとベントレーの2人にフォローしてもらえたらとかなんとか。

 僕的にはヘンリーは不安があるのだけど。

 なんとなく、マサキ的にヘンリーとベントレーの方が信頼されているみたいでもやっとする。


「純粋培養の貴族子息様達だからな」


 純粋?

 ベントレーはともかく、ヘンリーも?

 とはいえ、ベントレーももはやただの貴族とは程遠い気が……


「ある意味で、素晴らしい為政者になると思うが?」

 

 まあ、マサキがそう思うなら、僕が考えるよりは信憑性があるか。

 ……僕って。


 そんなこんなで、ベントレー、ヘンリー、ルドルフさんを連れて管理者の空間に。

 そういえば、ヘンリーってあまり護衛の人と一緒に歩いてるところみないよな。


「ハハハ、マルコと一緒の時は俺の護衛なんて足手まといでしかないだろう。護衛対象が増えるから、そっちの方が大変だ」


 そっか……


「いまじゃ親父どころか、俺よりも弱いんだぜあいつら?」

 

 うーん、それはそれで不安だけどね。

 話半分で聞いてるけど。


 そして……


「はっ? えっ? マルコ、お前ってなんなの?」

 

 めっちゃ、驚かれた。

 ただ……


「なるほど……マサキさんってのは、お前を守護する精霊みたいなもんか。もしくは、祖霊とか……」

「死んじゃいるが、生憎とマルコとは魂は繋がっていても血は繋がってないからな? 祖霊ではないな」

「よく分からんが、分かった」

 

 一瞬で、色々と諦めたっぽい。

 普通に受け入れられてしまった。

 なんだろう。

 同級生たちの器がどんどん大きくなってきているように感じる。

 

「くっ、速すぎる! まだまだ、捉えるには遠いか」


 側ではルドルフさんが、一生懸命蜂達相手に剣の訓練をしている。

 というのもおじいさまが、ベントレーの護衛であるルドルフさんに興味を示し始めたからだ。

 最初は、そうでも無かったのだけど。

 ベントレーがメキメキと上達するのを見て、その護衛なら護衛足らんとするだけの実力があるはずだとかなんとか。

 これに焦ったのがルドルフさん。

 僕に泣きついてきた。

 この空間で、修業をさせてくれと。

 とはいえ、そうなるとベントレーとセットになるので、日が限られるんだけどね。


 ルドルフさんの振るう剣をなんなく躱す30cmクラスの蜂達。

 普通に襲われたなら、ルドルフさんならこの30分で40回は死んでそうだ。

 ルドルフさんが成長してないわけじゃないんだ。

 蜂達が進化してるんだ。

 だから、たぶん一生その背中を捉えることはできないんじゃないかな?

 ジトっとした視線をマサキに送ったら、悪戯っぽい……いやかなり悪い笑みを浮かべていた。

 何か思惑があってのことだと思うんだけど……いや、思いたい。


 最近のマサキは秘密主義というか……こっちの思考やら経験は勝手に同調してくくせに、あっちの情報は回してくれない。

 大人ってずるい。

 子供が知るには早すぎるとかって言われるけど、同調したらマサキ寄りに精神年齢があがるのに。


 この世界でマルコという人間がマルコらしさをもって生きるためには、マサキの知識や思考回路は不要だと言われても。

 まあ、僕をマルコという人間として割り切って、尊重してくれてるんだろうけど。

 自分が自分じゃなくなっていくみたいで、不安や寂しさもある。

 代わりに、この世界を謳歌してると思えば、マサキに対して申し訳なさもあるけど。


 そしてルドルフさんを放置して、そのまま他の国の町に。

 シビリア王国領だと、おじいさまの名が広まりすぎていてどこに行っても身バレするとか。

 僕は大丈夫だって言ったんだけどね、他の全員から反対された。

 マサキ、ベントレー、ヘンリーの3人。

 また少しだけ僕の評価が、マサキの中で下がった気がした。


 向かう国は、北の大陸の町らしい。

 よく分からないけど、マサキがよくいっている大陸だ。

 そこの海よりの国にある、町と。

 町の名前は、ガードというらしいけど。

 とんがり屋根の建物が多いけど、イメージ的には北欧っぽい感じかな?

 針葉樹が多くある。

 春先だというのに、若干肌寒い。

 マントを留め具でしかりと止めて、身体をすっぽりと包み込む。

 

「ほうぇー、本当に海を越えてきたんだな」


 初めての転移に、ヘンリーが目を丸くしてる。

 取り合えず、町の構造はタブレットで確認済み。

 だから、冒険者ギルドまでの道はばっちりだ。


「おいおい、勝手知ってるって感じだな」

「一緒に、地図を見てたじゃん」

「ヘンリーは、ルドルフと蜂の方ばかり見てたからな」


 どうやら、あまり地図を見てなかったらしい。

 ベントレーが少し呆れているが、こっちの友情も元通りになったみたいでホッとする。

 というか、当事者たちは実はヘンリーのことは、前のように受け入れている。

 ただ……ヘンリーが変わりすぎて、周りがついていけてないというか。

 他の貴族科のクラスメイトや、教師の人達が困惑してるというか。

 まあ、判断に困って、進学での貴族科復帰が見送られた形だ。

 

「おっ? てことは、ベントレーは俺を見てたってことだな? お互い様じゃないか」

「はぁ……地図を見てたら、横でチラチラとよそ見をしてるやつがいたら、気になるだろう」

「そんなことで気を散らすとは、まだまだだな」


 ヘンリーの言葉に、ベントレーが鼻で笑って僕の横に並ぶ。

 どうやら、相手にするのをやめたらしい。


「さてと、見るからにといった建物だな」

「うん、ここが冒険者ギルドだよ?」


 そして通りの突き当りについた僕たちの目の前に現れたのは、3階建ての大きな建物。

 剣と盾の看板が掛かっている、ガードの町の冒険者ギルドだ。

 冒険者見習いのギルドカードはシンプルな作りで、木の板にギルド共通の印が押してあるだけ。

 本人かどうかは、証明のしようがない。

 しようはないけど、カードが本物かどうかは魔道具を使えば簡単に分かるらしい。

 まあ、カードを持ってて、それ相応の年齢ならお手伝いには問題ないということ。

 というか、依頼を受けられるわけじゃないので、そこまで厳しくする必要がないとか。

 集めた素材の売買と、お手伝いのときに必要なだけと。

 あとは、お手伝いをした場合にはその働きに応じて、手伝ったパーティからの評価で木の板に印が押されていくとか。

 なんか、ラジオ体操カードとか、小学校の縄跳びカードみたい。

 スタンプを集めて、頑張りを親や教師に認めてもらうあれ。

 粗品がもらえることもあるあれ。

 別に良いんだけどさ。


 あとなんでこの町にしたかというと、割と強い魔物が周辺に住んでいるらしい。

 マサキが色々と下調べをしてくれていた。

 そして、何やら冒険者見習いでも、ちょっとした手伝いになら出られることも。

 出来るだけ、実力は隠さなくてもいいって言われた。

 どうせ、明日にはシビリアに戻るのだからと。

 だからちょっと、ワクワクしてる。


「討伐系の依頼を受けるパーティのお手伝いがしたいのですが?」

「えっと……見習いの子達よね? あまり、お仕事をした感じじゃないわね。それにこの町の子じゃないみたいだし」

「親が引っ越してきたので。ベスタ―領から来ました」

「そうなの? あっちでは、あまり仕事が無かったのかな?」

「まだ、登録して日が浅いので」

「それで、討伐系?」

「はい! 勉強のためと、少しは自信があるので」


 マサキに言われた通りに、受付のお姉さんの質問に答える。

 かなり訝し気だけど、大丈夫なのかな?

 お姉さんがチラッと、僕たちの後ろに視線を逸らした。


「あのね? 討伐系の依頼ってのは命の危険があるのよ? それなのに、貴方達のようなまだろくに仕事もしてない子を連れて行ってくれる人なんかいませんよ」

「ええ? 絶対に役に立つよ!」

「そういう子は、早死にするのよ?」

「大丈夫! 僕たちなら問題ないから!」


 せっかく心配してくれているお姉さんに対して、どうかと思うけど。

 これも、マサキが色々と調べたはずだから。

 ベントレーとヘンリーが空気だけど、何も言わなくて良いっていわれてるからね。

 この受付のお姉さんとのやり取りが終わるまでは、なるべく口を挟まないように言い含められていたし。


「どうしたんだ? お手伝い希望か?」

「ジェームスさん!」


 そんなやり取りを続けていたら、後ろから声を掛けられる。

 なかなかどうして、強そうな軽装備の男性。

 30代半ばころかな?

 受付のお姉さんが、ちょっとホッとした様子だけど。

 あなたが、さっき視線を逸らして目配せしたのは、この人達ですよね?

 少し離れたところに、彼のパーティメンバーと思われる人たちが5人。

 3人の前衛職っぽい人たちは剣士と槍士と、レンジャーかな?

 弓矢じゃなくてナイフを装備してるから、前衛だろうな。

 そして、魔法職っぽいのが2人。

 なかなかに、しっかりとしたパーティっぽい。


「俺はD級冒険者のジェームスっていうんだが、坊主たちは何を希望してるんだ? ポーターだろうが、採取系の依頼の補助じゃないのか?」

「それが、討伐依頼を受ける人たちはいないかって言って、聞かないのよ! 僕たちは大丈夫って頑なに」

「なるほどなぁ……」


 受付のお姉さんの言葉を聞いたジェームスさんが、僕たちを品定めするようにジッと見つめる。

 そして頷く。


「良いんじゃないか? 俺達が、ちょうどそこのオーガの討伐依頼を受けるところだから連れて行ってやるよ」

「ジェームスさん!」

「本当?」


 ジェームスさんの言葉に、受付のお姉さんが咎めるように強い口調で名前を呼んだ。

 いやいや、ちょっと頬がひくついているけど?

 まあ、マサキの言った通りかな。

 ジェームスさんは少し強面の感じだけど、腕はかなり立つのがわかる。

 どう考えてもD級冒険者に収まるような感じじゃない。

 装備も軽装とはいえ、品質の良さげなものだし。

 他のパーティメンバーの装備も、かなり質が良い。


 取り合えず、連れて行ってくれるということで喜んでみたけど。

 これはあれだ。

 マサキの言ってた通りだろう。

 そこそこの冒険者で手が空いてる人が居たら、ギルド職員からの特別依頼がいくことがあるとか。

 そして、その特別依頼の一つ……冒険者の仕事を甘く見て、調子に乗ってる子供達を脅す仕事。

 受けてもさして評価されたり報酬が良いわけじゃないのに、受けないと評価が下がる酷い依頼。

 あっ、冒険者としての査定が下がるんじゃなくて、ギルドの受付嬢からの評判が下がるだけだけど。

 快く受ければ、彼女たちの心証がよくなる。

 数字やお金で表すことのできない依頼ってやつ。

 ただ、日帰りで戻れる距離で、ちょっと強めの魔物に合わせてやるだけの簡単なお仕事。

 ではない、その状態で子供達に対する安全マージンをしっかりと取らないといけない。

 だから、かなり腕の立つ冒険者が選ばれる。


 うん、腕が立つと言っても、ジャッカスよりは全然下っぽいけどね。

 勿論、本気の僕よりも……たぶん?


 こうして、どうにか冒険者っぽいことが出来る希望が見えた。

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