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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第235話:トリスタ冒険者ギルド

「じゃあ、出るか」

「おはようございます」

「早いですね」


 ようやくお日様が顔を出したくらいのタイミングで、僕たちの部屋にボッシュさんがやってきた。

 エマの一番下のお兄さんだ。

 昨日たまたま同じタイミングでお風呂に入り、その場のノリで今日は冒険者ギルドに連れて行ってもらえることになったのだ。

 エマは市場に連れて行きたかったみたいだけど、そっちはジョシュアだけが向かう。

 僕とベントレーはボッシュさんと一緒に、トリスタの街の冒険者ギルドに見学に向かうことになった。


「じゃあ、エマには上手に言っておいてね」

「まあ仕方ないと笑って許してくれる気がしますが、多少は何か言われるのは覚悟しといた方がいいと思うよ」

「はっはっは、大丈夫だ俺がちゃんと事情を話しておいてやるから」


 ジョシュアに言付けをお願いしたら、ボッシュさんが胸をドンと叩いて高笑いする。

 むしろ不安でしかない。

 昨日の様子を見る限り、あっさりとどうしてもって僕とベントレーが頼むから仕方なしにだなぁみたいな言い訳をしそうだ。

 

「本当に頼むよ」

「えっ? あれっ?」


 ジョシュアの手をしっかりと握ってお願いすると、ボッシュさんが横でこけていた。

 他の2人のお兄さんと違って、ノリが良いことがよく分かる。

 三男だからか、割と自由奔放に生きている感じかな?

 仲良くはなれそうだけど、信用は出来ないかも。


「へえ、結構早くから開いてるお店もあるんですね?」

「ああ、冒険者の朝は早いやつも多いからな。前日までにしっかりと準備したつもりでも、夜になって不足しているものに気付いたりもすることだってある」


 そんなにないと思うけど、そういった人のために早朝から開けている道具屋さんに連れて行ってもらった。

 やっぱりというか、マホッド商会だったけど。

 朝から働く人だけじゃなくて、朝に仕事が終わる人も寄ってるみたいだ。

 土気色の顔をした人が、ポーションぽい何かを籠に入れている。

 この籠も取られそうなくらいに良いものだけど、きちんとマホッド商会とアウトレットのロゴが入っている。

 それに入り口で籠代をしっかりと取られて、帰るときに籠を返したらそのお金は戻ってくる仕組みだ。

 保証金みたいなものかな?

 それでも籠を持って帰る人もいるみたいだけど。

 確かに買い物してそのまま持って帰るには便利だし、別に綺麗な状態だったら他の日に返しに来ても良いのか。

 なるほど、最近の日本じゃ多くのスーパーがレジ袋有料にしてエコバックを推奨しているけど、こういった仕組みも良いかも。

 それなりの質のお店のロゴの入った袋を100円で貸出みたいな?

 返しに来たら100円戻すでもいいし……いや、袋を見せたら10円引きとかにしたらどうかな?

 元を取ろうと思ったら10回は来るだろうし、来店動機に繋がるだろう。

 しかもお店のロゴがでかでかと入ってたら、他の店じゃ使えないし……あれ? なんかレジ袋有料よりもよっぽどエコに効果的な取り組みのような気がしてきた。

 勿論1000円以上お買い上げで10円引き適用とか、制約は必要かもしれないけど。


 話がそれた。

 そうそう、便利なお店の話だった。

 冒険に必要な道具から、各種回復薬が揃っている。

 それだけじゃなくて、お弁当やサンドイッチなんかも販売しているからここもマサキのてこ入れが入ってるんだろうな。

 しかも、飲み物の販売まで。

 流石にペットボトルまでは無かったけど、大きな樽から持ち込みの水筒に移すシステムか。

 そういったことは、ベルモントで流行らせて欲しい……けど、もともとはベニス領の為に作り出したシステムらしい。

 ここも本店はベニス領になってた。

 ちなみにここで稼いだお金は、全てベニス領の支援に当てているとか。

 マサキは何をしたいのだろうか?

 まあ、ベルモントじゃやりにくいことを、こっちで試験的にやっているのかなと思うことにしよう。


「で、何も買わなくて良いのか?」

「見てるだけで楽しいよ?」

「そうですね、実用的なものばかりで、あまりお土産に向いているものは無さそうです」


 ボッシュさんがただただ商品を見て回っている僕たちに声を掛けてきた。

 一応籠は持っているが、中にはまだ何も入れていない。

 正直必要なものが思いつかない。

 お弁当はエマの家の使用人さんが用意してくれているし。


「ポーションとか」

「ああ、自前のがありますので」

「僕も、持ってきてるよ?」

「弁当は、うちが用意したし……確かに、あまり買う物はなかったか」


 少し寂しそうだったので、何か買った方が良いかな?


「いえ、見てるだけでも楽しいですし、色々と考えるところがあったりと勉強になりますよ」

「そうそう、ジョシュアに良い土産話が出来た!」

「そうか? そうだな。何も形あるものだけがお土産とは限らないもんな」


 少しだけ元気が出たようだ。

 きっとここもトリスタ領では自慢のお店だったのだろう。

 もう少し気を遣うべきだったか……


 ぐるっとお店を一周して、冒険者ギルドへとようやく向かうことに。

 ボッシュさんがスープを奢ってくれたので、それで身体を温めながら進んでいく。

 野菜の味が良くしみていて、ほっとする味だ。

 

「ここが我が町の冒険者ギルドだ! どうだ、立派だろう」

「凄い大きい!」

「これは、確かに王都の冒険者ギルドよりも大きいかも」

「そうだろう、そうだろう」


 そして連れてこられた建物は建坪200坪はありそうな、大きな建物だった。

 裏には素材倉庫とかもあるから、敷地面積は相当ありそうだ。

 それに、すでに来ている冒険者の人達も色んな人種の人達がいる。

 特に驚いたのは、この世界で初めて見るリザードマンや有翼人だ。

 


「国境でもあるからな、国籍問わず多くの人が集まりやすいんだ。それにうちの領地には大きな湿地やダンジョンもあるから、他の大陸からも押し寄せてきてるぞ」

「へえ、ダンジョンの話なんてエマから聞いてなかった」

「そっちの方が、市場より興味あるな」


 本当にただの鍾乳洞のような洞窟から、いかにもファンタジーな感じの洞窟までこの世界には様々な種類のダンジョンがあるらしい。

 あれ?

 ダンジョン……

 もしかしてマサキが追いかけてるノーフェイスって人、ダンジョンに隠れてたり。

 なんか、良い感じに隠れられそうだし。

 まあ世界中に何百とあるダンジョンから、隠れ家を探し出すのはちょっとことか。


 それよりも今は冒険者ギルドかな?


「おうボッシュ、今日は子供連れかい?」

「一応俺領主の息子。今日は客を連れてるんだから、ちょっとは敬ってくれよ」

「あー、すまんな。と言っても、いまさらへりくだってももう手遅れだろ」

「まあな」


 どうやらボッシュさんの冒険者仲間かな?

 見た感じ20歳くらいの女性が声を掛けてきた。

 いかにも冒険者の女性って感じの口調だ。

 けっこう重そうな鎧を身に着けているし、かなりガタイが良い。

 ボッシュさんより、少し年上っぽいけど仲は良さそうだ。


「こっちの坊主がベルモントの跡取りで、あっちがクーデル伯爵家の跡取りだ」

「うはっ、マジもんの貴族かい」

「いや、俺も……」


 ボッシュさんが軽く紹介してくれたけど、女性は目を見開いて楽しそうに笑っていた。

 ボッシュさんの消え入りそうな呟きは、完全に笑い声に掻き消されてしまったけど。

 

「私はマチルダ。現役冒険者兼、ここトリスタ冒険者ギルドの臨時戦闘指導員さ」

「へえ、臨時戦闘指導員?」

「ああ、希望者に対人戦闘の訓練をつけてやってるんだ」


 うわぁ、見た目通りのイケイケの感じだ。

 かなり興味はあるけど。

 

「武器はなんでも使えるが、鎚や大剣を使うことが多いかな?」

「はは、マチルダにかかったらそこにある机や椅子だって武器になるわ」

「まあ、使えるものはなんでも使うから、間違っちゃいないが」


 うん、かなり乱暴な人のような気がしてきた。

 いや、椅子で戦うのも気になるっちゃあ、気になるけど。


「でだ、ベルモントってことは、あんた噂の剣鬼の孫の剣鬼子だね?」

「えっ?」


 噂のってなに?

 僕のことが、噂になってるの?


「なんでも、剣鬼様に贔屓目抜きでも最高の弟子だって言われてるらしいじゃん」

「そうなんですか? おじいさまは僕には甘いですから、贔屓目が入ってると思いますけど」


 なんだろう、ボッシュさんには気楽に話しかけることができたのに、この人に対しては自然と敬語になってしまう。

 圧が……凄い。


「じゃあ、早速地下の訓練所に行こうか?」

「はっ?」


 言ってる意味が分からないというか、分かりたくない……


***

 一方その頃のマサキ。


「やばいものが出来た」

「おぬし、いくらなんでもこれは」

「お倉入りかな? っていうか、善神いつの間に」

「いや、お主が納豆菌を合成の間に置いたあたりからかのう」


 マルコに身体を借りられないからと、暇つぶしがてら合成実験をしていたが。

 細菌類の有効活用を考えて、繁殖力や耐性に定評のある納豆菌を支配下において鉄を合成してみたら。

 自由自在に結合する、約2㎛の鉄の硬度を持つ生命体が出来た。

 しかも命令に忠実な。

 どういうことかというと……


「集まれ!」


 いや別に口出さなくても良いけど、意思を伝えた納豆菌が俺の右手に集まるとそのまま結合して硬化を始める。

 なんの抵抗もなく凄く滑らかに動かせる鉄の硬度の手袋が完成だ。

 勿論鎧にしたり、剣にしたり爪にしたり……

 ポーションも合成したからこれらの装備自体が自動修復機能があるし、万が一身体に傷を負ってもすぐに回復してくれる。

 そもそもが凄い勢いで増殖することも出来るから、ポーション無しでも自動修復に近いことが出来るのに。

 いやそれだけなら、ただかっこいいだけで済むけど……


「属性魔石まで合成しおってから。まあ、単体では魔力が不足して魔法は使えんみたいじゃが」

「集合して、集合魔法的な」

「やめい!」


 単体では無理でも、数億集まればきちんと魔法が使える。

 しかも相手の体内に侵入して……


「封印じゃな」

「ええ!」


 善神様の独断でリアルお蔵入りか……


「と言いたいところじゃが、自我も発生したようじゃし繁殖は自重するように。それと、管理者の空間のみで活動できるように制限をかけておくにとどめよう」

「まあ、それなら」


 こんなの地上に持ち込んだら、大変なことになりそうだもんな。

 まあ、たまにマコにでも貸して、変身ごっこでもさせとくか。



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