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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第231話:トトの悩み

「おっ、いつもありがとうな」


 そう言って、マサキ様が私の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 せっかく早起きして一生懸命セットした髪の毛がぐしゃぐしゃに。

 さっき褒めてくれたはずなのに。


「おっ、今日は前髪をあげてるんだな。その方が顔が良く見えて可愛いぞ」

「有難うございます」


 ニコッと爽やかな笑みを浮かべて、頷いてくれるマサキ様。

 どう考えても女性に対する賛辞ではない。

 娘に対するそれだ。

 しかも、まだ幼い娘に対する……


 私ももう15歳になったというのに、いまだに子ども扱い。

 温泉に誘われることもあるし、マサキ様がそういう目で見てこないことを痛いくらいに実感しているので恥ずかしさというものも感じない。

 情けないものはあるが。

 もちろん、タオルは巻いて入っているけど……


 私をそっちのけで、クコやマコとお風呂ではしゃぐマサキ様。

 普通に私やクコたちの髪を洗ってくれるマサキ様……

 このままじゃいつまでたっても、子ども扱いされるか。

 これでも栄養のあるものを食べて、身体だって女らしく育ってきたはずなんだけどなぁ。


 くしゃくしゃになった髪の毛をとかしていたら、マサキ様と目が合う。

 どうした? って感じで首を傾げられた。


「何をすねてるんだ」

「拗ねてません」

 

 思わず頬を膨らませてしまって、慌てて取り繕うとしたらそのほっぺを指でつつかれた。

 また、つい頬を膨らませてしまった。


「えい!」

「ちょっ!」


 また、指で突っつかれた。

 口の中の空気が押されて出て行ったが、ため息だったのかもしれない。


「家事がまだ残ってますので」

「ごめんごめん、そんなに怒るなって」


 ちょっとだけイラっとしたのでその場から離れようとしたら、後ろから抱きしめられて膝に乗せられた。

 なにこれ。

 いや分かってる。

 マサキ様が完全に私を子ども扱いし始めたのは、うっかりお父さんと彼を呼んでしまった日からだ。

 あの時の嬉しそうな、それでいて悲しそうな表情を見てしまったら、マサキ様に私の思いを伝えることなんて到底不可能なことのように思えた。

 きっと、いつまでたっても私は子供のままなのだろう。

 でも、マサキ様は私を本当の娘のように思ってくれているというのは、物凄く嬉しい。

 

 男女としてマサキ様と本当の家族になりたい私。

 このままマサキ様の娘として、本当の家族のように付き合いたい私。

 なんて我がままなのだろう。

 純粋なマサキ様を見ていると、自分が醜い存在のようにすら思えてくる。


「本当に忙しいので、失礼します」

「ああ、呼び止めて悪かったな」


 そうじゃない。

 あー、モヤモヤする!

 でも、膝に乗せられてマサキ様の体温を感じて頬が熱くなってるのを見られるくらいなら、このまま逃げ出すしかない……

 もう少し、あのままで居たかったけど。


***

 トトの様子がどこかおかしい。

 何かしたか?


 慌てるように俺の膝から逃げ出したトトに、首を傾げつつタブレットを開く。

 だいぶこの空間の改装も終わって、ほぼほぼやることがなくなってしまった。

 自然環境も、居住区域も必要以上の状態に仕上がっている。

 が、住人が相変わらず虫だけという。

 そろそろ本気で、配下を増やすべきだろうか。

 人型の。

 とはいえ、罪悪感を感じずに取り込めるとなったら悪魔くらいしか。

 それはそれで、魔王に対抗する勢力としてどうなのだろうか?

 絶対に救世主ではないよな。

 かといって、天使なんていないし。

 そもそも、魔王と敵対すらしていない。

 むしろ、協力関係というか、良い隣人的な付き合いをしているし。

 

 邪神様は俺に何をやらせたかったのか。

 魔王の脅威とはなんだったのか?

 可能性の一つに行き当たったが、その対象の動向や目的がいまひとつ見えてこない以上、積極的に動くこともない。

 またも潜伏してしまったようだし、一部魔族と人の仲が険悪になったが。

 そこまで大きな影響も無さそうだったし。


 やることがあると言ってたトトがちょいちょい、見切れてるのが気になって考えがまとまらない。

 そもそも邪神様も善神……様も、ノーフェイスのことについてはあまり話したがらないんだよな。

 善神……様に至っては、凄く辛そうなオーラを出すだけだし。

 逆に邪神様からは何の感情も読み取れないのが、かえって不気味だ。

 あえて、感情を抑え込んでいるようにしかみえないし。


 この辺りはノーフェイスがどう動くかで明らかになってくるのだろうけど、いまのところ……


「トト、そこさっきも掃除してなかったか?」

「えっ? そうでしたっけ?」


 トトがぼーっとした表情でさっき箒で掃いた場所を、また箒をもってうろうろしてたのでつい注意してしまった。

 この子はこの子でどうしたものか。

 何か悩みでもあるのだろうか?


 かといって、俺には何も打ち明けてくれないし。

 

「マサキおにい! 戻ったよ! クコ参上! キラッ!」


 そう言ってピースサインを横にして、人差し指と中指で右目を挟むような形でこっちに笑顔を向けてくるクコ。

 誰だそんなの教えたやつは!

 まあ、可愛いから許す。


「マサキ兄! 俺登場!」


 マコはロンダートからのバク宙で俺の前に現れるし。

 本当に、誰だよ。


「可愛いぞクコ! それにマコもかっこいいぞ!」

「でしょ?」

「かっこいい? やった!」

「ああ、で誰から教えてもらった?」

「白い人!」

「俺も、俺も!」


 善神(あいつ)か……

 だから、最近あの人に敬称をつけるのが嫌になってきてるんだよな。

 たまにこの空間に来ているのは知ってたが、ろくなことをしない。

 いや、ある意味では評価するけど。


「おぬしがあまり相手してくれんからのう」

「いきなり現れる……現れないでくれませんか?」


 不満に思っただけで、いきなりやってきたりするし。

 特に最近はよく来るようになった。

 何か不安でもあるのだろうか?

 まあ、敢えて聞くようなこともしないが。


「それに邪神のやつも忙しそうにしておってな、暇なのじゃ」

「神様が暇ってのは良いことだと思いますが、邪神様が忙しそうってのが凄く気になりますけどね」

「奴の使徒と頻繁に連絡を取っておるようじゃが、中身まではさっぱりじゃ。奴はわしのことをなんでも知っておるくせに、わしには教えてくれんとは本当に酷い奴じゃと思わんか?」

「いえ、それは人それぞれかと」

「最近わしらの使徒が冷たい」

「えっ? 手伝うとは言いましたけど、いつから私が使徒に?」

「……」


 あっ、善神様の機嫌があからさまに悪くなった。

 とはいえ、権限は貰っても給与は貰ってないし。


「神の神託を受けただけで、泣いて喜ぶものもおるというに」

「その人たちは、神様方の人となりを知りませんからね」

「まるで、お主が冷たいのはわしの人格に問題があるみたいな言い方じゃな?」


 自分の胸に手を当てて考えてみて欲しい。

 そもそも俺を殺したのは誰だと!

 そのくせに俺が欲しがりそうな機能には、法外なポイントを要求するし。

 まあ、そのポイントをくれるのは目の前の神様だけど。

 お供えしてくれたらポイント増やすよ? って言われても、お供えするまでもなく定期的なメンテナンスの保証ポイントとか、連続ログインポイントとかで使い切れないほどのポイントがたまってるというのに。

 

 まあ、ポイントで武器や防具が手に入らないのは、流石に神様も不味いと思ってるからだろうね。

 アダマンタイトとか、オリハルコンとか、ヒヒイロカネとかが交換商品に出てるけど。

 高額とはいえ手に入れられなくもない。

 それをジャッカスに買わせた特殊素材の魔剣とかと合成したら……

 武器に困ってないからやらないけど。

 そんなのに使うくらいなら、虫達に使うわ。

 

 そろそろハデスの鎧を返しに行った方が良いかな?

 調子にのって色々と魔改造しちゃったけど。

 闇属性しかなかったから、聖属性を合成したら罅が入った時は本気で焦った。

 ポーションを各種合成したら、何故か自動修復機能がついたから良かったけど。

 本当にポーションってすごいよな。

 合成素材にしたら、なんでも治せる。

 ちなみにうちの果樹園の木にはポーションが合成してある。

 その結果、実をもいだ瞬間に回復してまた実がなる木が出来た。

 いずれ魔王にあげようと思うけど、世界に及ぼす影響を考えると表には出せない逸品だな。

 

 いつかアンデッドが配下に加わったら、是非ポーションを合成してみたいなと。


「いや、まだわしがおるのによそ事を考える出ない」

「えっ? あっ、はい」

「……ぬぅ」


 あっ、怒りを通り越して悲しみの表情になってるっぽい。

 仕方ない。少しばかり接待をするか。

 


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