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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第225話:新年祭再び

「結局初等科はディーンがずっとトップだったね」

「まあ、マルコが本気を出していたらどうなっていたことやら」


 宰相のゲルド侯爵とエヴァン国王陛下のお決まりのやり取りと、新品の絨毯のお披露目が終わったあと各々が歓談をする。

 今回はセリシオが初等科を卒業し高等科への進級もあるので、彼は陛下と一緒に多くの貴族から祝辞を受けている。

 クリスはセリシオのすぐ側に控えているが、ビスマルクをはじめとした近衛もついているのでディーンはそそくさとこっちのテーブルに来ていた。

 おばあさまはお母さまと一緒にテトラと居る。

 初等科最後ということで、子供だけでと気を使ってくれたのだ。


「うう、最後の最後でマルコに負けた」

「たまたまだよ。エマだって十分凄かったよ」


 初等科最後の冬の試験は流石にある程度の成績を取れるように、頑張った。

 というかもうそこまで自重しなくても、周囲から規格外と思われてるし良いんじゃないかとマサキから許可が出たからだ。

 筆記の方は満点は流石にと遠慮したが、ディーンとヘンリーがまさかの全教科満点で先をいかれてしまった。

 実技の方では本気で挑んだので、クリスを押さえてトップに立てると思ったんだけどな。

 いや実際にはトップだったんだけど、それでも総合でディーンの上を行けなかった。

 総合で4位……

 貴族科では2位、総合では間にヘンリーが食い込んできた。

 そしてもう一人、普通科の子に負けた。

 後で誰か確認、しない方が良いかな。


「それよりも二次会の準備は?」

「つつがなく用意できておりますよ」


 エマがにやりとした笑みを浮かべて聞いてきたので、敢えて下から答えてみた。

 王城での新年会のあと、街に繰り出すのは恒例行事になっている。

 そして今年は楽しみなことが一つある。 

 それはベルモントの街にある日本料理っぽい調理法を使ったお店の2号店が、ここシビリアディアにも出来たのだ。

 まあね……フレイ殿下とセリシオとディーンのおじいさまとうちのおじいさまからの圧力というか。

 ベルモントで食べた料理をここでも食べたいという、強い要望に対して忖度したとだけ。


 それに差し当たって、得をした人が。

 ガンバトール子爵だ。

 やはり海鮮は外せないので、ガンバトール子爵にお願いしてラーハットから魚介を輸送してもらっている。

 生け簀による移動がどうにか形になったので、試験もかねてうちのお店と専属で契約してもらった。

 

 なので王城でのパーティが終わったらというか、大人達が酔っ払ったらさっさと街に繰り出して適当に露店でお金をばらまいてからそこで食事会を開こうということになった。

 だから、目の前の友人たちの皿には料理がほとんど乗っていない。

 ジョシュアやベントレーに至っては、飲み物だけで頑張っている。

 

「なかなか楽しそうなお話をしてますね」

「マルコはいつも楽しいことばかり考えてますよ」


 そこに背後から凛とした女性の柔らかな声が、僕たちに向けて掛けられる。

 それとハキハキとした、よく通る声。

 思わず頭を押さえたくなったが、そんなことを出来るはずもなく。

 一人は良いけど、もう一人に興味を持たれるのは物凄く面倒な予感。


「アローナ殿下、フレイ殿下、おめでとうございます」

「皆さんそのままで、おめでとうございます」

「おめでとう」


 声を掛けてきたのはセリシオの姉のアローナとフレイ。

 アローナ殿下は流石に第一王女だけあって、しっかりとした教育を受けているのだろう。

 いつ見ても王族らしく立ち居振る舞いが美しい。

 フレイ殿下のお転婆な雰囲気が際立って見える。


「何か失礼なことを考えてないか?」

「なんだケイ藪から棒に、先に新年の挨拶もまともに出来んのか。みんな、おめでとう。弟が世話になっている」


 フレイ殿下のそばにいたケイが僕を睨んできたが、すぐに横に立っているイケメン騎士に咎められていた。

 ケイとクリスの兄のバルトだ。


「ディーンも楽しそうだな」

「ええ、お兄様も楽しんでおられるようで」

 

 その横ではディーンが兄のフェルトと仲良さげに会話をしている。

 いや物凄く仲の良い兄弟のように見えるけど、なんか本心からなのか疑いたくなるような……

 普段のディーンの言動のせいかな?

 でもフェルト様も笑顔が完璧すぎて、心がこもってるのか心配になる。

「ふふふ」「ははは」という笑い声での掛け合いがどこか白々しい。


「ユリア様、おめでとうございます」

「エマにソフィアもおめでとう」

 

 その点、こっちの3人は本心から微笑みあっていて、ほっとする。

 

「あっ、マルコ!」

「マルコ先輩!」


 アローナ殿下とフレイ殿下御一行との挨拶の途中で、元気な声で名前を呼ばれる。 

 

「とうとう私達より先にマルコが呼ばれるようになったか」

「もう、エマったら妬かないの」


 エマとソフィアも声の主に気付いたらしい。


「あっ、アローナ殿下、フレイ殿下おめでとうございます」

「おめでとうございます」


 それから小走りにこっちに駆け寄ってきたのは双子のリコとカールだった。

 悪魔の襲撃騒動で2人とは打ち解けることが出来たけど、特にカールは僕に懐いてくれているので可愛らしく思える。

 リコは素直じゃないけど、僕のこと嫌いじゃないと思えるし。


「おめでとう。えっとあなたたちは……」

「リッツバーク伯爵のご子息とご令嬢ですよ」

「ああ、双子でしたね。おめでとうございます」


 アローナ殿下が2人のことを思い出そうとしたのか、それとも心当たりがなかったのか考え込む素振りをすればすかさずディーンの兄のフェルトがリコとカールの素性を伝えていた。


「エマお姉さまとソフィアお姉さまもおめでとうございます」

「おめでとう」

「可愛いドレスね」


 両殿下との挨拶を終えたリコとカールが、エマとソフィアにも挨拶をしている。

 確かにエマの言う通りリコは淡いピンクのドレスが良く似合っている。


「ありがとうエマお姉さま」

「エマの言う通り、リコによく似あってるね」

「何よマルコのくせに……ありがとう」


 うん、相変わらず僕には素直になれないのかな?

 でもちゃんとありがとうって言ってくれたし。


「それよりも、二次会って何?」

「こらフレイ」


 皆が挨拶を交わしあってるさなかに、フレイが唐突に僕に話しかけてきた。

 アローナ殿下に注意されているが、その言葉は耳に入ってないらしい。

 グイっと目の前に顔が……まだ僕の方が背が低いから見下されている感じだけど。


 ディーンが言わない方が良いといった様子で首を横に振っているけど、子爵の子供である僕に公式の場で王家の方に逆らうのは流石に無理があるんじゃ。

 ベルモントだから大丈夫?

 いや、それはおじいさまの事だからね?

 僕はマイケルの息子でしかないし……

 ディーンが口パクでなんの根拠もないことを言ってきたので目をそらしつつ、誰か助けてくれそうな人はいないか探す。


「なに二次会って?」

「にじかいってなんだ?」


 うん敵が増えた。

 フレイ殿下の言葉を聞いたリコとカールまで興味津々だ。

 流石にこの2人のキラキラとした目に見られたら、黙ってなんていられない。

 最初こそ小生意気な感じだったけど、いや今もリコは少し生意気だけど素直になれないだけだと思ったら可愛らしくもあるし。


「うちの領地で僕がプロデュースしてるお店がこっちに二号店を出したから、この後そこで食事会をしようって話になってるんだよ」

「それって、私も行ったところ?」

「そうですよ」


 フレイが思いっきり食いついてきた。

 そして次のセリフがすでに予想できる。


「あら、ベルモントの……それは私も興味ありますわ」

「アローナ様!」


 と思ったら予想外の方が食いついてきた。

 アローナ殿下が興味を持ったことに、バルト様がちょっと驚いてる。

 もう少し余裕のある方……いや、もしかしたらリップサービスってことも。


「良いじゃない、どうせ今日の主役はセリシオなのですから」

「ですが、アローナ様の弟君ではないですか。流石にそのお祝いも兼ねた席を途中で退席なされるのは……」

「身内でのお祝いは先日済ませましたわ」

「公での場からいなくなると、姉弟の仲を疑う方も出てこられかねませんよ?」


 おお……バルト様ってクリスやケイの兄とは思えないほどにしっかりしている。

 正直驚いた。


「フレイやセリシオの話を聞いて、私がどれほど寂しい思いをしていたか貴方も知っているでしょう?」

「知ってますが、王都に店を開いたということですので今日じゃなくても良いじゃないですか!」


 アローナ殿下もぐいぐい行くけど、バルト様も食い下がるな。

 頑張れバルト様。


「どうせ止めても行くんでしょ?」

「あら、物分かりの良い側仕えをもって私は幸せ者ですね」

「私はだめだと思います」


 ケイはフレイ殿下に対して早々に諦めた様子だけど、ユリアさんはしっかりと窘めていた。

 けどこれは後々おばあさまや、王妃様に何か言われた時のポーズのように思える。

 だってユリアさんの目はどうせ無駄でしょうけどねといった色が濃く見えている。

 こうしてみると、姉妹、兄弟でもだいぶ性格が違うんだなと感心してしまう。


 そしてバルト様に頑張ってもらわないと、この後の行動がとても仰々しいものになる。

 もしアローナ殿下が同行するのを食い止めたら姉の権限で、妹の暴走を止められるんじゃないかとの淡い期待を抱きつつ。

 姉が我慢するのに、妹が行くのはおかしいよねっていう流れに期待。


 そして総勢14名と近衛6名を引き連れて街に向かうことになった。

 セリシオの恨みがましい視線を背中に受けつつ。

 クリスはセリシオを独占出来て嬉しそうだったけど。


 エヴァン陛下は……うん、マルコとバルトとフェルトが居るのに近衛は必要か? って、言ってる意味が分からない。

 筆頭に僕の名前が出るのも意味不明だけど、止めずに送り出すような言葉を掛けてくるのも意味が分からなかった。

 アローナ殿下はともかく、フレイ殿下が言い出したらなかなか意見を曲げないのは僕たち以上に知ってるみたいだった。

 陛下も大変なのかな?


 



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