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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第214話:スタンピード

「へえ、結構時間掛かるもんだね」


 蝶達にカモフラージュを掛けてもらいながら、上空から眺める。

 先頭の魔物はすでに外壁の付近にまで近づいているが、本隊はだいぶ遠くに見える。

 見た感じ熊や虎の魔物から、なんとも形容しがたい魔物まで。

 多くの種類の魔物がいる。


「こいつら、普段からこんなに仲がいいのか?」

「私に聞かれましても」

「そうか……」


 独り言のつもりでつぶやいたのだが、返事があったのでそっちに目を向ける。


「で、なんでお前がそこに居るんだジョウオウ?」

「あらやだ、つれないお言葉ですわ。それは、主をお守りする以外の理由が必要でして?」


 キラキラとした複眼を向けられ、思わずため息が出る。

 こいつはジョウオウ。

 一応うちの配下の蜂たちからなるスーパーコロニーの女王蜂だ。

 他にも何匹か女王蜂がいるが、こいつはいわば全ての蜂のトップだな。

 

「俺は本陣を叩くように言ったつもりだが?」

「配置は完了しております。あとは突撃の合図を待つのみです」


 なるほど……言ってる意味がわからん。

 別に直接コンタクトで命令は出せるから、側にいる必要もないのだが。


 カブト達もそれぞれ森の奥深くに潜り込んでいるようだ。

 外壁の周りを虫達に守らせるわけにもいかないので、そこは流石に人型を集めている。

 ジャッカスとクロウニ、そして人に擬態したマハトールとリザベル。

 この4人を四方に配置した。


 うーん、リザベルはうまいことやりそうだが、マハトールが正体をぽろっと出してしまいそうだ。

 スライムによる外装の加工は完璧だが。

 本人の口からぽろっと。


 リザベルは魔法剣士っぽい感じにしてある。

 もともとが小柄で可愛らしい感じなので、中性的な感じで。

 マハトールは武闘家だ。

 辮髪のいかにもな。

 この世界に辮髪は……個性的なファッションでしか存在しないみたいだが。

 他にも多くの冒険者が居るが、一人だけ浮いている。


「なぜか注目を浴びているのですが?」

「うん? おしゃれだからだろう」

「ですよね」


 今の会話のどこで納得したのか分からない。

 分からないが、最近のマハトールは洗脳発動した? ってくらいに俺に従順だ。

 昔はもう少しこう、生意気というか……

 なんか普通に気安い感じで、ポロリと本音をこぼしたりしてたのだが。

 そのたびに蟻達に折檻されてたな。


 いや、こいつ本気であの髪型を気に入っているのか?

 まあ、悪魔だし個性的な趣味もあるのだろう。

 いや地球人的感覚からすれば、見慣れてはいないが映画なんかで見る機会もあるからそこまで気にならないが。

 この世界的には長髪自体が、あまり男性には見かけない。


「私はあの髪型は遠慮したいですよ」

 

 そんなことを考えていたら街の西側に居たリザベルがこっちに視線を送って、脳内に直接語り掛けてきた。

 どうやら、マハトールがおかしいようだ。

 いや、俺に対して全肯定(イエスマン)になった結果か?

 まあ、マハトールだし考える時間が無駄だ。

 

「それでどんな感じだ?」

「うーん、ピンキリですが主の周囲の人ほど強い方はいませんね」


 今も西の外壁付近で魔物狩りをしているリザベルが、俺の質問に簡単に答える。

 俺の周囲の人ということは、ベルモント家の人達のことだろう。

 あれと比べるのもどうかと思うが。

 無論、ちゃんと強い人たちもいると。

 ちゃんと強いの意味が分からないけどな。


 しかし烏合の衆だな。

 パーティー単位で固まっているようではあるが。

 連携という意味では……連携する気無さそうだ。

 だから必然リザベルはソロで戦っている。

 強い。

 流石アークデーモン、普通の人じゃ相手にもならんな。


 今も虎の魔物の突進をひらりとかわすと、剣を振るって簡単に首を斬り飛ばしている。


「なんだあの娘」

「いや、男だろう」

「女じゃないのか?」


 残念なボディをしているからか、そこも注目されている。

 本人はニヤニヤとしているが。

 実際は女の娘だった。

 俺もどっちかなと思いつつあえて触れなかったが。

 一度俺の寝室に裸で忍び込んでたことがあった。

 布団に入ったらこいつが居てびっくり。

 しかも……


「きゃー! やめてください!」


 なんて叫ぶものだから子供たちやら、土蜘蛛やらが慌てて駆けつけてきて酷い目にあったよ。


「こういう悪戯なら許されるかなと思って」 


 と言っていたし、子供たちが理解していなかったから、俺も苦笑いで済ませようとした。

 だが土蜘蛛がブチ切れて、どこかに連れて行ってしまった。

 しばらくは神殿に近づかなくなってたっけ。


「恐ろしく切れ味の良い剣だ」

「それに剣筋も淀みがない」


 あー……剣を振ってはいるが、アークデーモンの膂力に任せて真っすぐ振り下ろしてるだけだからな。

 見た目がかなり細いからそんなに力があるように見えないかもしれないが、片手で150kgくらいなら簡単に持ち上げるぞその子。

 なんていったら、場が混乱するだろうから何も言う気はないが。

 というか外壁周辺の乱戦に参加するつもりもあまりなかったり。


 東側ではマハトールが調子に乗っている。


「チョワ! アチョー!」

「なんか、変な掛け声やめろ! 力が抜ける」


 俺の言ったことを忠実に守って、裏声でチョワチョワ言ってる。

 そして、こいつもやっぱり強い。

 いまも蹴りで熊の魔物の顎を粉砕していたし。

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら、蹴りを主体に戦わせているが。

 時折不自然に滞空時間が長い。

 いつか、突っ込まれそうだな。


「おいっ、あれって……」

「剣鬼流か?」

「なんで肩を斬って、わき腹から血が噴き出してるんだよ!」


 南側はクロウニに任せている。

 一応じじいの剣を俺が教えている形だが。

 ようやくモノになってきた。

 血の滲むような努力の末に。

 俺から言わせたら、あれだけ頑張ってこれかって程度の結果だったが。

 何よりも工夫が苦手なせいで、剣鬼流同士の戦いなら間違いなく誰にも勝てないだろう。

 教科書通りの剣ってやつだな。

 ベルモントの剣に教科書はないはずだが。


 そんなクロウニが振るった剣は、魔物たちに対して当たった場所と斬れる場所がかけ離れた結果になっている。

 いやいや……魔物にそんな高度なフェイントはいらないだろう。

 というか見せてる剣にすら反応できてないんだから、体力の無駄だと思うが?

 こういうところだ……

 こういうところが、こいつの美点でもあり欠点でもある。

 良く言えば基本に忠実で手を抜かない。

 悪く言えば力を抜くのが下手くそ。

 まあこんな人だから、騙されたりもするんだろうな。


 とりあえず、街に魔物が入ってくることはなさそうだ。

 ジャッカスも……いや、粘鉄蚯蚓(ビスカスワーム)鉄甲毒百足(アイアンセンチビート)も頑張っている。

 

「あの人背中に目でもついてるんじゃないか?」

「てか、狙いが的確過ぎて怖い」


 正解。

 背中どころか剣にも篭手にも目がついてる。

 周囲には無数の目も。

 相変わらず虫達に頼った戦い方だが。

 知らない人が見たら、達人の剣に見えるらしい。

 ジャッカスの基本も剣鬼流だしな。


 あれ? 

 ジャッカスとクロウニって素でいったら、どのくらい強いんだ?

 今度剣1本でどっかの武闘会にでも送り込んでみるか?


 そんな感じで周囲の戦いを見ていたら、遠くで土煙があがる。

 どうやらカブト達も動き出したらしい。

 よし、俺も手伝いに行くか。

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