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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第209話:雷竜の卵

「うわあ、本当におっきいなー。マサキおにい、これ食べないの?」

「大きすぎて、あまり美味しそうじゃないけど」


 クコが雷竜の卵を前におおはしゃぎしている。

 そしてキラキラとした目で、こっちを見てくる。

 その横にいるマコは、あからさまに嫌そうな表情を浮かべているが。


 前にマコが取ってきた大きな鳥の卵を食わせたことがあったが、食べ物は少し物足りないくらいが丁度いいことに気付いたらしい。

 なので、ウズラの卵を用意してやったら、これは足りなさすぎると口を尖らせていた。


 それにしてもだ……


 こんな卵から産まれた竜が俺に懐いたらと考えると。

 今から不安で仕方ない。


 とりあえず魔王の領地から竜の骨などの素材を大量に持って帰って、虫たちを強化しておく。

 思えば最初は虫ばかりなんで捕まえるのかとマルコに不満を抱いていたが。

 いまじゃ、これほどに優れた配下はいないと思える。


 まずその多様性。

 空を自由に飛び回り、森の中を自在に動き回り、糸を吐いたり穴を掘ったり。

 物を加工したりするのも、得意だ。 

 もちろん得手不得手はあるが、そんなものいくらでも補えるほどに種類が多い。


 そして、サイズも。

 サイズそのままで強化を施した連中は、どんなところにだって忍び込む。

 ダニやノミ、シラミなんかは本当にどこにでも侵入できる。

 そのうえ、彼らにとって弱点とされるものはすべて克服済みだ。

 日干しにされても日光浴を楽しむほどの適応性を持たせているからな。


 マザーや子蜥蜴どもも、虫に対しては対等、もしくは敬意をもって接している。

 チュン太郎くらいのものだろう。

 しょっちゅう虫にちょっかいを出して、返り討ちにあっているのは。


「この卵は食べられないぞ? 食べられないこともないが、どちらかというと子竜の丸焼きとかになるな」


 そしてこの卵。

 孵化まで間もないものらしい。

 だから割ったところで、目玉焼きも卵焼きも作れないと。

 というか、割ったら普通にドラゴンの雛が出てくるだろうと土蜘蛛が言っていた。


 幸いうちの領地には爬虫類は地竜とギガントバジリスクしかいない。

 だから、雷竜が生まれたところで影響はそこまでない。


「なんだ、ざんねん」


 クコが残念そうにしているが、まあすぐに忘れるだろう。


「ほらほら、今日は森にハイキングに行くんでしょ? 早く準備しなさい」


 そこにトトが手を叩きながら入ってくる。

 エプロン姿で。


 今日はトト、クコ、マコを連れて、森に出かけることにしている。

 トトは土蜘蛛と一緒に弁当を作っていたのだ。

 サンドイッチとかじゃない、本格的なお弁当。

 地球からポイントと引き換えに取り寄せた料理本を見て、そこに載っていたキャラ弁に目を輝かせていた。

 普通のお弁当を見て、そっちも魅力的だと。

 なかなか、分かっている。

 もちろん土蜘蛛もだ。

 しかしこの料理本最初はめちゃくちゃ高かったんだよな。

 それこそこの空間の家一軒分くらいのポイントを要求された。

 タブレットを一緒に覗いていたトトに、ちょっとこんなにポイントを払ってまでもらうようなもんじゃないぞ?

 というと、彼女はあからさまにがっかりしていた。

 表紙と、試し読みのページだけでかなり興味を持っていたからな。


 そして何度も俺にページをめくるように要求するトト。

 といっても5ページほど進んだら終了。

 また1ページ目からになる。


 それを5回ほど繰り返した時だろうか……急にピコンと音が鳴ってビックリマークが現れた。

 

「なになに? タイムセール? 今なら料理本がポイント1000分の1で交換できる?」


 どう考えても善神様が覗いていたに違いない。

 まあ、そのくらいのポイントなら。

 本にしては高いけど、よく考えたらこの世界じゃ本は高級品だ。

 しかも写真付きの本とかなら、貴族や王族が金に糸目をつけずに買ってくれそうだ。

 まあ、ここは善神様の心意気を、ありがたく受け取っておこう。


「違うぞ! わしは、お主のことだから、もう少しでそこの娘の熱意に負けて交換すると言ったのじゃ!」


 おお、善神様自らが配達してくれた。

 というわけじゃなさそうだな。


「あっ、先に渡しておこう」

「えっ? あっ、私が直接受け取っても宜しいので?」

「そやつの娘なら、わしにとって孫みたいなもんじゃ」


 そう思うなら、ただで寄越せ。

 とは、口が裂けても言えない。

 これでも、神様だからな。


「口が裂けても言えないかもしれんが、思うたことは筒抜けじゃからの? 本当にお主というやつは……」


 知ってる。

 おっと、知ってて考えたことまでばれてしまった。

 といっても善神様からはため息が返ってきただけだが。

 どうやら、俺のことをしっかりと理解してもらっているようだ。


「で、なんで値下げを?」

「いや、邪のやつがな……」


 そうか、邪神様がどうやらたしなめてくれたようだ。

 流石は邪神様だ。

 善神様が忌々しそうに空を見上げたかと思うと、本を置いてそのまま帰っていった。

 本当に本を届けに来ただけだったのか?


 と思ったらすぐに戻ってきた。


「何かありましたか?」

「流石にあやつは調子に乗りすぎじゃ。じゃからの……奴の分のおやつを取ってきた。ほれ、娘子よ食うがよい」


 そう言って善神様がお皿に載ったクッキーをトトに手渡す。


「いや、流石にそれは受け取れないですよ」

『構わんぞ、普通にそいつの世界で買ってきたものだからな』


 と思ったら善神様の後ろに、邪神様が立っていた。


『いつでも買ってこられるし、まだ残ってるからな』

「なっ、あれだけじゃなかったのか?」

『たくさんあると知ったら、お主のことだからどうせあるだけ食うだろう』


 驚いた様子の善神様相手に、邪神様がため息を吐いている。

 本当に、この善神様は精神年齢いくつくらいなんだろう。

 というか善を司る神が、そんなしょーもない悪戯をするなと言いたい。


 そんなこんなで、トトは最近その本を見てお弁当を作ることにはまってしまった。

 だからこうやって、定期的に外で食べる機会を用意しているのだ。

 まあクコもマコも喜ぶから良いけどさ。


 そしてクコの手を繋いで、神殿から出る。


 ゴロン


 ん?

 なんか変な音が。

 後ろを振り返る。

 トトとマコが驚いた表情をしており、俺と彼女たちの間になぜか卵が転がっていた。


「おいマコ、そんなのもって出かけるわけにはいかんぞ?」

「いや、俺じゃないよ!」


 俺の言葉にマコが慌てて両手を前に出して首を横に振っている。

 その横でトトも私じゃありませんと首を振っている。

 どういうことだ?


 ゴロン

 ゴロンゴロン


 嘘だろ!

 卵が一人でに転がって、俺の後ろまでくるとピタリと止まる。

 まさか連れてけってか?

 というか、卵のくせに自分で移動できるとか。

 おかしいだろう!


 追い払おうと手を振ったが、完全に無視をされる。

 そしてクコと歩き始めると、後ろを卵がついてくる。

 卵の時点ですでに懐かれてるとか。

 これもう、生まれてきたら大変な目にあうことが簡単に予測できるんだけど?


 結局その日は、卵も連れてのハイキングになった。

 本当にね……

 この先が不安でいっぱいいっぱいだ。

 


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