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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第208話:ヨドの森の異変(未然解決)

『主、怪しい蛇共が何やら森でおかしな動きをしておりました』


 管理者の空間でぽやっとしていたら、話しかけられる。

 森か……

 誰だ?

 意識を向ける。

 えっと、あそこはっと……

 声の主の気配を感じ取って、タブレットの地図を寄せていく。

 そこでは、白くて大きな狼がこっちを見上げている。


 あれだ、ヨドの森に居た狼。

 魔狼の1匹だな。

 確か魔狼のリーダーで……


「シャインか、どうした?」

『はい、森で2匹の蛇がなにやら、怪しげな魔力を周囲にまき散らし卵のようなものを置いていこうとしたので、声を掛けたのですが』

「逃げられたか?」

『申し訳ありません』


 と言われてもなー。

 別にそのヨドの森は俺にとって、何かあるわけでもないし。

 領地を持ってるわけじゃないからな。

 国有地というか、どこぞの貴族の領地にはなるのだろうが。


「別に、良いんじゃないか? オールはどうしてたんだ?」

『オール様は現在他の森に行っておりまして』

「なんでまた」

『この世界の全ての森を主に捧げるとおっしゃってました』

「いや、そんなこと頼んじゃいないんだけどさ」


 手を広げすぎて、足元が疎かになる典型だな。

 オールってのは、この森の支配者で魔狼のトップだ。

 っていうと、シャインは? っていう話になるのだが。


 まあ、オールが社長でシャインが部長というか。

 早い話が中間管理職だな。

 でそれぞれの魔狼の下にさらに、この森の魔物がついていると。

 俺? 俺は会長みたいなもんか。


 収益は……物納で素材が。

 思ったほど集まらない。

 それもそうだ。

 この森の魔物は殆ど支配下にある。

 

 支配下にしてしまった。

 オールが。


 いわば、全員部下。

 部下を殺して、その皮を剥いで素材にしろと?

 うんうん……無理だな。


 というかだ、人の領地や軍を持たない俺が、虫や魔物の軍勢を率いているってどうなんだ?

 いやまあ、クロウニに支配させてるクエール王国があるにはあるが。

 あれは、成り行き上そうなったというか。

 クロウニの物というか。


 あれ? 

 よく考えたら、俺って国を1つと森を1つ支配下に置いているってことか?

 へえ、偉くなったな俺も。


「思ってたのと違うがな」


 久しぶりに善神様から突っ込みが入った。

 とりあえず、笑って誤魔化す。


 それよりも、社員の話……違う、シャインの話の続きを。


「何をしようとしてたか分かるか?」

『この卵の正体が分からないことには。それと、蛇共はライダ、レイダと名乗っておりました』


 どこかで聞いた名前だな。

 大顎の眷属の百足が、ファイルをそっと差し出してくる。

 そうだ、ノーフェイスの奴の使い魔だ。

 まだ、チョロチョロしてたのか。

 そういえば、ノーフェイスっていま何してるんだ?


 まあ、分からないやつのことを考えても仕方ない。


「今夜にでもマルコに身体を借りて、取りに行くよ」

『はっ』


 おお、物凄く尻尾を振っている。

 何が嬉しいんだ?

 まあ、良いか。


 その日の夜森へと向かう……

 ははは、目立つから散れお前ら。


 目の前にはシャインを先頭に、シャドー、アクア、ヒート、アース、ウィンドが。

 それぞれ属性にちなんだ名前を付けた魔狼だ。

 そして、その後ろにそれぞれが支配している魔物たちが。

 種族別で担当を分けているのか。


 そしてアースの後ろには大きな蛇が。

 こいつは、ライダ、レイダじゃないな。


「初めまして王よ。以前この森の東を納めさせて頂いておりました」

 

 デスキングボアという種族らしい。

 この程度でデスキングとは……うちの蜂達ならどうにかできそうだな。


 そしてヒートの後ろには立派な角を持つ猪。

 これは西を納めていた、ジャイアントホーンボアらしい。


 目立つから声を掛けただけで、そこまでの興味はない。 

 こともない、蛇からは鱗を猪から角を貰う約束をした。

 角は折ってもまた生え変わるらしい。


 良い素材になりそうだ。


「みんな元気そうだな」

「ええ、主のお陰でこの森の生態系は安定しております」


 どうやって?

 やっぱり同じ軍勢でも食物連鎖は成り立ってるのかな?

 生産調整をさせてるとは思えないし。


 その辺りはやはり、普段の暮らしを優先させているらしい。

 無益な殺生や争いは厳禁とのことらしいが。

 もともと、食事以外で他の動物を襲うようなものはあまりいないとのこと。


 そうか……

 仲間でも食うのか。

 いざというときは、協調する?

 親の仇でもか?

 野生で生きていたら、そんなものは世の常?

 ドライだな。

 いや、それが自然か。


「オールは戻ってきてないのか?」

「いま、ちょっと海の向こうに」


 どうやって?

 ああ、空を走りつつ、疲れたら海に浮かびながら。

 なんでもありだな。


 で卵を受け取る。

 なるほど……

 分からん。

 分からんけど、禍々しいものを感じる。

 嘘だ、そんな気配は読めない。


 ただただでかい。

 人間の大人くらいある。

 ライダ、レイダの卵……って感じじゃないな。

 まあいい、貰ってかえる。


 目玉焼きにしたら、何人前かな?

 卵焼きにでもした方が良いかな?


 で、持って帰ったらところで、なんの卵か判明。

 雷竜の卵だった。

 本物のドラゴン。

 ランドのような地竜もどきの蜥蜴の亜種じゃない。

 純粋なドラゴン。


 ため息が出る。

 あの森にドラゴンを放ってどうするつもりだったのか。

 というか、生まれたばかりのドラゴンに何をさせるつもりだったのか。

 目的が分からない。


「どうしたら良いと思う?」


 思わず土蜘蛛に質問する。

 彼女も首をかしげて、考える。


「産まれてから考えたら良いかと」


 ああ、卵焼きにするか、目玉焼きにするかって意味だったんだけど。

 確かに産まれてから考えても遅くないか。

 産まれたら確実に情が沸く気しかしないが。


 特に土蜘蛛あたりが。

 そう思っていたら、マザーが慌てた様子で神殿にやってくる。


「ここに、王の気配が」

 

 王?

 マザーに詳しい話を聞く。

 どうやら竜種は爬虫類を支配下におけるらしい。

 ということはこれを使って、森の爬虫類に何かをさせようとしていたと認識。

 そんなものはあれだな。

 国を襲わせるとか、そんなろくでもないことくらいしか思いつかない。


 早めに発見できて対応できたのは良かったが。

 ますます、扱いに困る。


 そもそも、孵化するのかな?

 俺は温める気はないぞ?


 ドラゴンの卵の殻は相当に硬いらしく普通の魔物じゃ傷もつけられないし、放っておいても勝手に孵化すると。

 凄いな。

 試しにカブトに体当たりさせる。


「罅入ったけど?」

「えっ?」


 小さな罅が入ったので、マザーの方に視線を向ける。

 本気でびっくりしてた。

 ということは、カブトが強くなりすぎたのか?

 いや、普通の魔物じゃということだから、普通じゃない魔物なら傷は入れられるのだろう。

 凄いんだか、そうでもないんだか。

 この殻を素材にするのも面白そうだけど。

 もう少し育つまで待つか。


***

「なんなのさ、あの狼どもは!」

「かなり厄介な狼達でしたね」


 森からだいぶ離れた場所で、ライダとレイダが荒く息をしながらため息を吐く。


「また失敗です」

「いや、うまいこと孵化してくれたら、ワンチャンありますよ」

 

 森で悪さをしようとした蛇こと、ライダとレイダ。

 ノーフェイスの使い魔である。

 

「大体、氷も雷も使えるって被りまくりじゃないですか」

「しかもこっちは2匹しかいないのに、相手は6匹もいる上に対属性まで」


 2匹とも体の至る所から血を流し、ところどころ焦げている。

 それに歯形も多数ついている。


「本当に忌々しい」

「とりあえず、雷竜が目覚める頃にもう一度いってみましょう」

「それまでに、主は回収に来てくれますかね?」

「さあ? たぶん、今回の失態も知っていると思うから」


 そんな会話をして、再度深いため息を吐く。

 そして、彼女たちは知らない。

 その頼みの綱の卵はすでに、マサキによって回収されていることを。

 その卵から孵化した雷竜の様子を見に行って、その雷竜自身に襲われて逃げかえることになる未来を。


 彼女たちの目的は、ろくでも無いことだけは分かるが。

 未然に完璧に防がれたとは、彼女たち自身知る由もなかった。

 

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