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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第202話:西の四天王

「なんだ、また来たのか顔無し」

「おや? 以前に訪れたのはもう50年は昔だと思ったのですが」


 西の大陸の北部に位置する国、ウエウエスト王国にある街。

 ドラゴンタワー。

 ここは西の四天王である、竜人が住まう塔がある。


「せめて、扉くらい開けて入ってこい」


 その塔の最上階にある部屋で、3m近い体躯の男が入り口に背を向けたまま侵入者に声を掛ける。

 入り口に突如として現れたのは、黒いフードに身を包んだ細身の男性。

 いや、女性か。

 その声は中性的で、どちらとも聞き取れる。


「それは失礼。こうやって私のことを忘れない数少ない友人は、貴重ですからね。つい気持ちが逸ってしまって」

「抜かせ。貴様のような不気味な奴は、一度会ったら忘れぬわ」


 西の四天王のドラゴアは、状態異常無効というスキルに加えて魔法耐性が魔族の中でも突き抜けて高い。

 さらに、古の智者という自身の経験や知識を意識して消すまで憶えておくスキルまで兼ね備えている。

 故に、この正体不明の人物の使う記憶操作ですら、その記憶を操ることはできなかった。


 まあ、当人にとってはそういった人物もまた、稀有な存在として気に入っているようだが。


「まあ、名前も憶えててもらえると、なお嬉しいのですが」

「貴様を喜ばせるるもりはないが、ノーフェイスよ何しに来た?」

「まあ!」

「気持ち悪い声を出すな」


 ノーフェイスの問いかけにドラゴアが答えると、透き通った女性のような感嘆の声が漏れる。

 それに対して、すかさず顔をしかめるドラゴア。


 竜の顔を持つドラゴニュートの長でもあるドラゴアは青い鎧に身を包んでいるが、むき出しの皮膚は鱗で覆われており見るからに硬質だ。


「で、何をしに来た?」

「実は、あなたに耳寄りな情報を持ってきたのですよ」

「そうか……だったら、まずはその耳障りな干渉をやめよ!」

「っと! 危ないですねー。こんな狭いところで、いきなり槍を振り回すなんて」


 耳元に口を寄せて語り掛けてきたノーフェイスに対して、即座に槍を振るうドラゴア。

 躱されたことに思うところは無く、単純に耳元を飛び回る羽虫を追い払う程度のつもりだったらしい。

 それでも彼の振るった槍は、その余波で周囲に積まれていた書類を部屋に舞わす程度の速度はあった。


「我に精神干渉系の魔術は効かぬのは知っておろうに」

「ええ、知ってますよ」

「気持ち悪いから、やめろ」

「それも知ってます。ただの悪戯ですよ」


 そうのたまうノーフェイスののっぺりとした顔に口だけが現れて、舌をペロリと出す。

 ドラゴアが嫌そうに顔を顰めたのを見て、満足したのか三日月のように口を歪ませてそれも消す。


「相変わらず面妖な」

「では続きを……」


 それから何やら2~3言、ドラゴアに向けてノーフェイスが言葉を発する。


「ふん……魔王様もそこまで腑抜けたか」

「では?」

「くどいな、我は魔王様の牙。剥く先は魔王様の正面に立つ者に対してのみよ」

「果たして草食獣のようなあの魔王に、貴方のような獰猛な肉食の牙が必要ですかねぇ?」

「草食獣とて身を守るためには牙を剥くこともあろう?」


 ノーフェイスの言葉に対して、威嚇するように牙を見せつけるドラゴア。

 今の発言は面白くなかったようだ。


「ああ、怖い。では、その魔王様を惑わす者が、この大陸に居ると言ったら?」

「なにっ?」


 ノーフェイスに対して、初めて興味を示したドラゴア。

 そして、もたらされた情報に彼は牙を剥いて笑った。


「そいつは早いうちに、殺しておかんとな」


 そうつぶやいたドラゴアに、ノーフェイスは満足気に頷くと立ち上がる。


「なんだ、もう行くのか?」

「ええ、こう見えて忙しい身なものでして」


 それだけ言うと、現れた時と同じようにパッと姿を消し去った。

 今しがたまでノーフェイスが居た場所を見つめ、クックと笑うドラゴア。

 その目には、怪しい光を灯していた。


「報告はしないね?」

「なんだトクマか。カインのところに居たんじゃないのか?」


 そのノーフェイスと入れ替わりに部屋に現れたのは、手に箒を持った髪の長い魔族。

 

「するだけ無駄だろう……あやつは魔王様の記憶すら消してしまわれる」

「自分に関することのみが、精いっぱいみたいだけどね」


 過去にノーフェイスについてドラゴアは魔王に警告したことがあった。

 先代の時代にもだ。

 だが、時が過ぎ去ればすぐにその存在は、魔国の中から消えていった。

 他の強力な魔族すら憶えていなかったことに、ドラゴアは戦慄すら覚えていた。


 唯一、この目の前の掃除が大好きだという、一風変わった魔族は憶えていたようだだが。

 2人だけではどう対策を取ることもできず、決定的な動きがあるまでは静観を決め込んでいる。


 上位魔族ともなれば、誰かが何かをした程度は憶えているのだが。

 それが誰だというのが、どうしても思い出せないのだ。


「お主はどうするのだ?」

「どうもしないね……殺し方が分かるまで」

「そうか……まだ無理か」

「無理ね。あいつ知ってるだけで2回は死んでるね……でも生きてるね。その謎が分からない限りは……ね?」


 トクマもずっとノーフェイスについては、調べていた。

 その中で、ノーフェイスと思われる人物が、2度ほど死んだであろう出来事に直面している。

 だが、しばらくするとどこかに突如として現れる。

 残念なことに、どうやっているかはさっぱりだ。


「そういえば、面白い子供がいるね」

「ああ、なんだ? 農業参謀役とかってのを名乗ってるやつか? 話だけは聞いたが」

「あの子なら……もしくは」

「土いじりが好きそうな話しか聞かないが?」

「会えば分かるね」

「あっ、おいっ!」


 トクマはそれだけ言うと、その場から掻き消えてしまった。

 その様子を見て、ドラゴアがため息を吐く。


「どいつもこいつも、普通に扉から出入りできんのか」

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