表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

216/304

第200話―3:第2章200話記念IFストーリー 未来のマサキ、マコ、クコ 後編

ようやく更新が出来ました。

「ねえ、パパ! あの魔物たちって操られてるだけだよね?」

「そうだぞー」


 クコが俺の袖を引っ張って、見上げながら聞いてくる。

 魔物が操られているということに何か感じることでもあるのか、尻尾がピコピコと上下に揺れている。 

 可愛い……


「じゃあ、あのガイコツをパパが捕まえたら、あれ全部お友達になるの?」

「はっはっは、ガイコツとは酷いなー、あれはリッチキングって言うんだぞ?」


 クコは一生懸命杖を操りながら、魔物をこちらに送り込んでいるリッチキングを指さして首を傾げた。

 あんな立派なガイコツをガイコツ呼ばわりするのはあまりなので、頭を撫でながら訂正する。

 それに冒険者なんだから、魔物の名前くらいきちんと言えないとね。


「リッチキングか……お金持ちの王様ってこと?」

「そうだぞー」


 なんか勘違いしてるが、財宝とかため込んでそうだし間違ってはいないだろう。

 うんうん、これでクコがまた一つ賢くなった。


「違うわ!」


 おっと危ない。

 クコと話をしていたら、リッチキングが指先から電撃を放ってきたので左手で吸収しておく。


「なっ! 只者じゃ無いなお主! おい、お前達! 本気で掛からねば足元をすくわれるぞ!」


 リッチキングが今もこっちに飛び掛かってきている魔物たちに、檄を飛ばしている。 

 でも、魔物たちって皆必死だからなー。

 本気じゃ無いのはリッチキングだけじゃないかな?

 ちなみにこのガイコツとのやりとりの間も、魔物たちは俺たちに襲い掛かっていたのだが。

 マコが一人で全部捌いているけど。


「父さん、こいつら全然弱いんだけど」

「……ワーウルフ、オーガバーサーカー、ダーケストボア、ダンジョンベア、どれもCからB級の魔物だぞ?」


 黒歴史のジャズが何か言っているが、マコには関係なさそうだ。

 この世界で過ごしてきて分かったことがある。

 B級どころかS級だろうとランク付けされてる魔物って、実は全然大したことない。

 だって、遭遇して生きて帰った人がいるからランクが付けられているわけで。

 誰も足を踏み入れたことのない秘境などに居た熊や蛇、蜘蛛なんかは正直言ってS級と呼ばれる魔物より強かった。

 ただ、うちの虫たちはその規格外の魔物より強かった。

 おそらくそういった凶悪な魔物を見つけた冒険者も居たのだろうが、きっと生きて帰ってこられなかったのだろう。

 だから、未発見ということになっているのかな?

 まあ、大森林の中心や、深海などに住んでいる魔物なので人の居る場所にまでは来ないが。

 空を飛ぶドラゴンなんかは、SS級とされているが実質はランク外だ。

 彼らもあまり人里にはこないが、もし現れたら村や町を捨てて逃げるレベル。

 彼らがいなくなったら、また戻ってきて復興作業……

 人を襲うことはあっても、建物を破壊することはあまりないらしいのが救いかな。 


 まあ軍での討伐記録もあるし、S級と呼ばれる冒険者の中にはドラゴンを殺して龍殺し(ドラゴンキラー)の称号を得た者もいる。

 ジャッカスもその1人だけど……

 倒したのは虫達だから彼の実力じゃないけど、実績にはなってる。


 ドラゴンは別として格付けされている魔物はその時点で、俺達からすれば正直言って雑魚でしかない。

 いやS級の魔物は、流石に多少は時間が掛かるけど。

 それでも冒険者ギルドで確認されていない魔物に比べると、やはり物足りない。


「クソガキが! 調子に乗るなよ!」

「うわっ、ガイコツが怒ってるけど、表情が分からない」


 リッチキングが杖をかざすと、その先につけられた宝玉が強い光を放って魔物たちが強化されたのが分かる。

 

「やばい、狂化だ!」


 ハモイの表情が青ざめているが、こいつは少し前の階層からずっと顔色が悪かったし。

 だめだな。

 ここまで来たら、もう黒歴史達は足手まといでしかない。


「マコ、油断するなよ?」

「はいっ!」


 マコの元に数匹のシャドーファングが飛びかかってきたので、それを土蜘蛛の糸で絡めとりながらマコに注意する。

 すぐに彼は表情を引き締めて剣を握りなおすと、他の魔物たちを見る。

 5体のダンジョンベアと、10体のオーガバーサーカー、シャドウファングの群れか。


「クコは俺の後ろに」

「やだ」

「……」


 クコがケガでもしたら大変だと庇おうとしたら、断られた。

 娘が反抗期……


「だから、いちいち凹まないでよ! 私だって戦えるもん!」

「でも、パパのかっこいいところ見てもらいたいし……戦ってたら見えないじゃん」


 せっかく、かっこよく決めようと思ってたのに。


「あの、私たちはどうすれば……」

「あー、ジョズさんたちは、私の代わりにパパの勇姿を見ててくれたらいいよ」


 ジョズ達黒歴史があたふたとしていたが、クコが彼らに俺の戦う姿を見てろと言い放った。

 俺は娘に見てもらいたいのに。


「この状況でも余裕を見せるか。よほどの強者か……ただの愚か者か」

「黙れガイコツ! 俺の子供が愚か者の訳が無いだろう!」


 リッチキングが何ら、子供達を馬鹿にしてきたのでイラっとした。


「もう良い、こうなったらマコにもクコにも手が出せない速度で、殲滅しちゃる」

「あーあ……クコのせいで父さんがムキになっちゃった」

「ええ? 私のせい?」


 俺は左手に剣を持ち替えると、首を左右に振ってコキリとならす。

 おおよそ構えとはいえない、完全なる自然体。

 それを見てマコもクコも、手を出すのを諦めた。


「調子に乗るなよ人間……が?」

「あ? お前こそ調子に乗るなよガイコツ!」


 さっきからだんだんと鬱陶しく感じて来たリッチキングに対して、カブトのスキル【聖神槍(ロンギヌス)】を放つ。

 牽制のつもりで右肩を狙ったのだが……

 いや、確かに右肩を貫通したのだが、その余波で上半身が吹き飛んでいた。


「あっ……」


 そのまま地面に崩れ落ちた下半身が、灰になって消えていくのを眺めて思わず声が漏れる。

 まさか、こんなに弱いとは思わなかった。

 黒歴史の人達があまりにも怯えていたから……


「グアアアアア!」

「ガアアアアア!」


 そしてリッチキングの支配から逃れた魔物たちが、狂化状態そのままに暴れ始める。


「きゃああああ!」

「やばい!」

「うそでしょー!」

「くっ、落ち着け皆! 俺は逃げる!」


 黒歴史の面々が軽くパニックに陥っている。

 統率を失った魔物たちは手当たり次第に、こっちに襲い掛かって来る。

 目に付いた者を狙って。

 当然、黒歴史にも向かって行くわけで。


「ちっ! 【神速(フラッシュムーブ)】!」


 すぐさまラダマンティスの敏捷超強化を借りて、黒歴史を回収する。


「父さんそんなに早く動いたら、クコが見えないって!」

「大丈夫、移動だけだから!」

「えっ? マサキさんが増えた?」

「分身? なに、スキルなの?」


 違うぞ?

 超高速で魔物の前に移動して視認出来る速度で斬ってから、次に移動してるだけだぞ?

 ちなみにくっきりと残像が残る様に、蛍のスキルを借りて攻撃が終わったポーズで全身を一瞬だけ光らせてみたり。

 だから、分身してるように見えるだろ?

 俺だって、色んな戦い方を勉強してるんだからな?


 そして元居た場所に戻ると、指をパチリと鳴らす。

 俺に斬られた全ての魔物が、次の瞬間細切れになってその場に落ちていく。


「ちょっと、意味が分からない」

「パパ、凄い!」

「俺も父さんは、本当に凄いと思うぞ!」

「だから、貴方達の父親意味が分からない」


 女剣士のミレーネが放心状態だ。

 ただきっちりと説明すると、大したことないので何も言わない。

 きちんと斬ってるけど、同時に蜘蛛の糸で吊ってるとか。

 で指ぱっちんともに、ラダマンティスの【真空刃(ソニック・ブーム)】でその糸を切ってるとか。

 口が裂けても言わない。


 マコは知ってるけど。

 クコも知らない、最近練習して覚えた俺の技。


『うちの剣術使えば、もっと簡単に終わるのに……無駄が多いよね』


 マルコも知ってる。

 五月蠅い。

 マルコはあれから必死にスレイズの教えを受けながら、冒険者の人達からも武技を学んでメキメキと強くなった。

 一応剣鬼流の皆伝を貰っている。

 性格が少しだけ、スレイズに似て来た気もする。

 戦闘になると無駄を嫌うところとか。

 でも、魅せる剣もあって良いと思うんだ。


 メルベル流の師範を……ああ、エランドじゃなくてその上ね。

 紳士なご老人だったけど、開始直後に相手が華麗な動作で剣を構えようとしたところに、持ってる剣を投げつけてたし。

 流石に相手も相当な手練れだから簡単に防がれてたけど、それすら織り込み済みで時間差の胴回し蹴りで首を狩って地面に倒して背中を踏みつけるのはどうかと思うぞ?

 いや、確かに剣鬼流は相手を敬うからこそ、たとえ目上に対して無礼な攻撃だろうと使用するのは分かるが。

 背中を踏みつけるのは違わないか?

 手っ取り早く、力量差を分からせた?

 いや、そうだけど……そうじゃないというか……

 その時に流石に放置し過ぎたことに気付いて、大分矯正したが。


 ただ、こういった遊びの剣に関しては割と五月蠅い。

 確かにスレイズに見られたら、ボコボコにされるかもしれないが。


***

「有難うございました」


 セーフエリアに閉じ込められていた風の調べを無事救出したあと、ダンジョンからとっとと街に戻る。

 マコもクコも少しだけ興奮気味だ。

 やっぱり俺の戦い方は間違って無かった。


 ただ、虫達からは不満の声も。

 いや、口には出さないが、呼ばなかったことに不満があるらしい。

 雰囲気で分かる。

 特にリッチキングを消滅させたことに対して、思うところがあるらしいが。

 魔操の杖含め、色々な素材を期待していたらしい。

 

「それにしても、流石は暗黒竜滅殺隊ですね。あのイレギュラーなリッチキングまで倒すなんて」


 風の調べのリーダーの言葉に、思わず二度見してしまった。

 いや、黒歴史が倒したと思っていることじゃなくて、パーティ名に。

 暗黒竜滅殺団だと思っていた。

 どっちでも良いか。


「いや、私達は何もしてません。全部マサキ様とマコ様とクコ様が」


 とうとう、格上の先輩冒険者に様付けて呼ばれるように……

 まあ、良いけどさ。

 たぶん、冒険者ランクが上がるかもしれないし。


「はあ……そうですか。D級とお伺いしましたが……」


 風の調べのリーダーが訝し気な視線を向けてくる。

 うんうん……ランクだけを見て人を見ないから、相手の実力が分からないんだぞ?


「何を隠そう、マサキ様は剣鬼流の皆伝です」


 そして俺の代わりにミレーネが自慢げに、俺の剣術について話す。


「あー……」


 これは言葉にはしないが、全てを受け入れて納得して敢えて反応したくない人の表情だ。

 そして、微妙に距離を取られた。

 別に俺はそんなに狂暴じゃ無いんだけどな。


「すいません」


 そして何も言ってないのに謝られた。


「言葉が悪かったようです、誠に申し訳ありませんでした」


 困ったような表情をしたら、ご丁寧に謝られた。 

 いや、助けに来たんだから普通に感謝してくれた良いだけなのに……


 それからギルドで報酬を貰って、管理者の空間に戻る。

 その前に、美味しい物でも……


「もうこの街の料理はこりごり」

「早く帰って、土蜘蛛のご飯食べよ?」


 ああ、そうですか。

 たまには外食も良いかと思ったけど、一度この2人とトトを連れてこの街で食事をしたら、ガッカリしてたもんな。

 一応、ここでは有名なレストランだったのに。

 土蜘蛛の料理と比べたら、それもそうか。


「また今度、トトも連れてモンロードに行くか?」

「賛成!」

「そうしよ!」


 モンロードの料理なら、文句は無いらしい。

 

「チャチャとまた一緒にお買い物とかしたい」


 香辛料のお店で働いている女の子だ。

 クコが物凄く懐いていたっけ?

 ケバブさんにも……






 



 

 

 

もう少しで、書籍作業から完全に手が離れると思います。

次から本編に戻りますので、よろしくお願いします。

次回更新こそ、なるべく早めにしますm(__)m


あー……腰が痛い(´;ω;`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリンの管理の仕事に出向する話

↓↓宣伝↓↓
左手で吸収したものを強化して右手で出す物語
1月28日(月)発売♪
是非お手に取っていただけると、嬉しいです(*´▽`*)
カバーイラスト
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ