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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第200話―2:第2章200話記念IFストーリー 未来のマサキ、マコ、クコ 中編

「うわぁ! ジャイアントデススパイダーロードだ!」

「無理だろう! 災厄級じゃないか!」

「なんで、こんなところに」


 どうやら、このダンジョンの生態系に何かとてつもないことが起こっているようだ。

 普段ならここのボスは、ラージデススパイダーらしい。

 それが、その100倍は強くて凶悪とされる、ジャイアントデススパイダーに変わっていると。


 魔素がなんらかの理由で滞留したか、吹き出したかでこのダンジョン内の魔物が進化したのではないかとの見立て。

 まあ、黒歴史じゃなくて、魔物やダンジョンに詳しい魔王の言葉だけど。

 念話でダンジョンがおかしいって話をしたら、教えてくれた。

 ついでに、今年は白菜が豊作だったから、ミルフィーユ鍋をしようとお誘いを受けた。

 この依頼が終わったら、またマルコに空いてる日を用意してもらって身体を借りないと。


 こうなると身体が一つしかないのが不便だ。

 とはいえ精神を統合したら、あまり会う機会の無い魔王とか相手に人見知りを発動したりするし。

 地味に会話がしにくくなる。

 だから、それぞれの役割をそれぞれの意識でこなすように、なったわけだったり。


「ここは、撤退しましょう! これはもうA級冒険者の仕事です!」


 ジョズさんも焦った様子で、俺の裾を引っ張っている。

 クコとマコは……

 大きな蜘蛛に目を輝かせているが。


 2人とも蜘蛛が大好きだからな。

 俺もだけど。

 なるべく、無駄な殺生はしたくない。

 よしっ!


「俺に任せろ」


 黒歴史達を下がらせて、俺が前に出る。

 相手はここ25階層のボスの、変異種。

 なるほど巨大な体だ。

 それに、中々の迫力がある。

 だが、それ以上にタランチュラタイプの魔物だったので、毛がフサフサしてて可愛らしい。

 目もクリッとしてるし。


 ああ、配下に欲しい……

 つい、不用意に近付いてしまった。

  

 直後……ザザっという音を立てて、ジャイアントデススパイダーが後ずさる。 

 あんなに怯えた表情をして、なんて可愛らしい。

 蜘蛛たちと暮らすうちに、なんとなく彼等の表情が分かるようになった。

 あれは、不気味なものに遭遇した恐怖だな。

 可哀想に……

 いきなり、こんなにたくさんの人間に囲まれたら、そうなるよな。 


「大丈夫、怖くない……怖くないよ」


 精一杯の優しい声色で近づく。


「うん、パパは怖くないよ……優しいよ」


 ふと横から天女のような美声が聞こえたので、びっくりして振り返ったらクコだった。

 まさにエンジェルボイスだ!

 心が洗われる。


 そんな俺達の言葉を受けた巨大な蜘蛛が、さらに距離を取るかのように後ろに下がる。

 完全に怯え切っている。


「大丈夫……父さんを信じて……優しいから……怖く無いから……」


 気付けばマコも目を輝かせて両手を広げて、蜘蛛に近づいて行っている。

 流石に天使2人に声を掛けられたら、警戒心なんて消えて……


「キシャアアアアア!」


 何故か覚悟を決めた表情で巨大な蜘蛛が突っ込んで来た。


「マサキさん!」

「うわああああ!」

「だめーーーー!」

「いやあああああ!」


 黒歴史の人達が何やら喚いているが、ここまで混乱してしまった蜘蛛の方がよっぽど心配だ。

 俺は左手を前に突き出して突進してきた蜘蛛に触れた瞬間に、衝撃と運動エネルギーを吸収する。

 ピタリと巨大な蜘蛛が俺の前で静止する。


「大丈夫、怖くないから……な?」


 そのまま優しく首の辺りに抱き着くと、首の後ろをトントンと叩いてやる。

 うちの蜘蛛たちはみんなこうしてやると、大人しくなる。

 こいつも……おや? 何故だか小刻みに震えているな。

 よほど怖かったのだろう。

 俺は混乱している蜘蛛をさらに力強く、そして優しく抱きしめてやる。


「怯える必要は無いからな……あっちには仲間が沢山いるからさ?」


 真剣に言葉を重ねることでようやく落ち着い……なんか諦めたような表情に見えなくもないけど、大人なしくなった蜘蛛をそのまま吸収する。

 送り込んだ先で、早速土蜘蛛たちが出迎えているのが分かる。

 ジャイアントデススパイダーが物凄く低姿勢に挨拶をしているところを見ると、本当は礼儀正しい蜘蛛だったのだろう。

 あと、ちょっと臆病なのかもしれない。


「えっ? なんで?」

「消えた?」

「どいういうこと?」

「何が起きたの?」

「落ち着けお前ら」


 黒歴史の面々が混乱していたので、片っ端から頬を引っぱたいて正気に戻す。


「痛い……」

「なんで……」

「意味が……」

「はい? ……はい?」


 あまり効果は無かったようだ。

 まあ、無視して先に進もう。


「もう! パパったら、もう少し優しくしてあげてよ」


 クコが彼等を庇っているが、本当に心まで天使のようだ。

 娘が天使のように心優しいからって、調子に乗るなよお前ら?


 クコに庇われた黒歴史どもを軽くに睨み付ける。

 別に、羨ましいとか、妬ましいとかって思って無いから。


「こいつら、本当にC級なの? めっちゃ雑魚いんだけど」

「こらマコ! 先輩方相手に口を慎め!」

「いや、貴方達と比べたら雑魚どころか、虫けらですよ」

「虫か……だったら、滅茶苦茶強いってこと?」


 マコのあんまりな言いように庇ってやったら、そんなことを言って卑下していたが。

 悪いが俺達の間で虫というのは、物凄く強いからな。

 マコにその謙遜は通用しないぞ?


 そんな事を思いつつも、マコとクコと俺がいつのまにか先頭と殿を務めることになっていた。

 彼等は間で怯えたふりをしているだけ。

 だんだんと邪魔に思えて来た。


 とはいえ、それからもトントン拍子で探索は進んでいく。 

 次が救出対象の風の調べが目的地としていた30階層だ。

 ここまで人の生命反応はいくつかあったが、それも23階層まで。

 その辺りから、魔物が極端に強くなっていたので皆避難を始めていた。

 その後は人らしき気配は無かったので、恐らくここにいる……いた。


 偵察に向かわせていた蜂が報告してくれた。

 周囲の魔物が強すぎて、セーフエリアで怯えていると。

 すぐに助けないと。


「ここのセーフエリアから、気配を感じる」

「そうですか……」


 27階層から、黒歴史達の存在感が薄い。

 戦闘の度に物陰に隠れてサボるのは、格上の先輩冒険者としてどうなのだ?


「俺達って必要だったのかな?」

「てか、もうここら辺の魔物とか……傷一つ入れられる自信がない」


 などと、言い訳がましいことをわざとらしく呟いて戦闘から逃げてばっかり。

 ジャッカスが、最近の冒険者は骨が無いと言っていた意味がよく分かる。

 分かるが、ジャッカスもどちらかというと、最近の冒険者だからな?

 虫達のお陰で、そこまで上り詰めた癖に偉そうなことをと思ったが……

 まあ、後進の育成にかなり力を注いでいたりと、人間性は二重丸なので何も言わない。


 まあ黒歴史達がサボりだしたのは、厳密に言うとクコが1人でジャイアントコックローチの大軍を処理した辺りかな。

 管理者の空間のゴキブリは大丈夫なくせに、天然物は駄目らしい。


「だって、あの子達は私に嫌われないように涙ぐましい努力してるの知ってるもん!」


 とはクコの言葉。

 確かにあっちのゴキブリたちは、俺に淡くて綺麗な色の染料と合成してくれと頼んで来たり。

 専用のお風呂を作ってくれと言ってきて、毎日風呂に入って身体を隅々まで洗ったり。

 

 たまに……


「雑菌が付いてる気がするから、吸収してほしい?」


 こんな相談を受けたりすることもある。


「いや、ここの雑菌は俺の配下だから、付いてないと思うよ」


 と答えてやってるのに、不安そうな表情を浮かべるのがなんとも切ない。

 土蜘蛛に相談してシルクハットを作って貰ったり、バラハキリバチに板を加工して可愛らしい仮面を作って貰ったりと……本当に可哀想になってくる。


 だから、顔を引きつらせつつもクコは、管理者の空間のゴキブリ達とは仲良くやっているが。

 ただ、こいつらは別と。


 周囲の虫達に【魔素空間(マナ・プール)】を使わせて、全力の火炎魔法を放っていた。

 一気に周囲の酸素濃度が下がって、黒歴史の連中が死にかけたのは良い思い出だ。

 それでも意識を失う直前に、ゴキブリ達が蒸発したのを見て表情まで失っていたが。


 勿論虫から魔力を供給したので、クコはそんな大魔法を使ってもピンピンしている。

 それで、これなら俺達に任せたんで大丈夫だろうと思ったのだろう。

 帰ったらチクってやる!


 そして30階層のセーフエリア周辺。

 魔物たちが大挙としてセーフエリアに攻め込んでいた。

 そんなことで破られるようなら、セーフエリアとは呼べないが。

 あれじゃ、出られないだろうな。


 そして集団の後ろには、何やら強そうな装備を身に纏ったアンデッドが。

 リッチかな?

 あれ系って苦手なんだよね。

 だって、まんま幽霊だし。


「まさか、リッチキング!」

「しかも、魔操の杖を持ってやがる!」

「まずい! ダンジョンからこいつらが出てきたら、街が!」


 いっつもこいつら大袈裟なことを言ってるわりには、俺達に丸投げなんだよね。

 使命感が全く感じられない。


「ニンゲンガマタ来タゾ?」

「そんなに偉そうなのに、なんで普通に喋られないかな? 骸骨だから、脳みそないからか? それとも声帯が無いからか?」

「いや、こっちの方が強そうだろ?」


 なんか、機械的な音声で話しかけて来たから常々感じてる疑問を投げかけたら、普通に答えて来た。

 そんな理由だったのか。


「まずは、あいつらから血祭にあげろ!」


 演技をやめたリッチキングの命令で、セーフエリアを襲っていた魔物たちがこっちに向かって来る。


「すぐに救援を呼ばないと!」

「逃げましょう!」


 また、黒歴史達が帰ろうとする。

 本当に、ちょっと強そうな魔物が出てくると、すぐに帰りたがるのはどうなんだろう?

 めんどくさいのは分かるが。


「いやだよ……戻って、またここまで来るとかそっちの方が面倒臭い」

「そういう問題じゃ無いんですけど?」


 何故かハモイに怒鳴られた。

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