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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第198話:成長を感じる

「そこ!」

「はっはっは、まだまだ反応が遅いぞ!」

「もうっ!」


 クコが指をさしたところに向かって、蜂が2匹ほど飛んでくる。

 その先には腕を組んで立っている俺の姿が。

 蜂がこっちに突っ込んでくるが、残念だが俺の身体は霧のように霞んで消える。

 蝶による幻影だ。

 蜂が突っ込む一瞬前に、少し離れた場所に移動している。


「今度こそ!」

「おっと、中々に良い動きだ」


 と思ったら、間髪入れずに上からマコが振って来る。

 足には土蜘蛛の眷族である大型の蜘蛛の糸が巻き付いており、その先は太い木の枝に繋がっている。

 俺に向かって手を伸ばしてきたがしゃがんでそれを躱すと、彼の身体を支えている木に思いっきり蹴りをいれる。


「そっち!」

「甘い!」


 すぐにクコが蜂をこっちに送り込んでくるが、風の魔法で彼等の進路を妨害してその真ん中を突き進む。


「まず、1人!」


 そして彼女に急接近して、頭に巻いたリボンを取る。

 

「クコ!」

「足元に注意だな」


 足の糸を切り離して、こっちに向かおうとしたマコが地面に着地すると同時に沈む。

 少し浅めの落とし穴を掘っておいただけだから、怪我の心配は無いだろう。

 彼の頭の上に蹴りを放つと、足の親指と人差し指でリボンを挟んで奪う。


「あー! 取られた!」


 頭を抑えたマコが、悔しそうに穴に座り込んでから半分顔を覗かせる。

 ジッとこっちを見つめる恨みがましい視線が、なんとも可愛い。


「かなり成長したな2人とも」


 俺が手を差し出すとマコが穴の中からその手を掴んで来たので、ひょいっと引っ張りあげてやる。


「まだまだだよ。マサキ兄には当分敵わないわっ!」

「おにい! 凄い! カッコいい!」


 笑いながら頭をかいているマコを突き飛ばして、クコが俺に抱き着いて来る。

 大分体重も増えて、力もついているから結構衝撃が来る。


 クコもマコも6歳になったので、本格的に色々な訓練も始めている。

 主にクロウニが武術関連も見ているが、暇なときは俺もこうやって遊びを交えながら相手をしている。

 いつも暇だろうと思われるかもしれないが、色々と忙しいといえば忙しい。

 魔族関連で。

 あとは、世界中に蜂や蟻を放ってノーフェイスの情報を集めさせているが、そちらはどうも芳しくない。

 ノーフェイスをノーフェイスだとして、認識している存在が少なすぎるのだ。

 居なくなったら記憶から消えてなくなるという存在の、なんと厄介なことか。


 いまはそれらしき存在が起こしただろう事件の洗い出しなどをしている状態。

 過去の情報を調べているだけなので、今後の事に関して役に立つかは分からないが。


「マコは大分背も伸びたし、そろそろ訓練用の木剣を新調しないとな。なんだったら、刃を潰した鉄製の剣でも良いか」

「本当? やったー!」

「いいな、マコだけズルい!」


 横でクコがほっぺを膨らませているが、物をやる代わりに頭を撫でてやる。

 普通なら流石にそれで誤魔化されるような歳でもなくなってきただろうが、彼女の場合は割とそれだけで満足してくれる。


 今日彼等とやったのは、鉢巻きを取るだけのゲーム。

 俺から鉢巻きを取ったら、なんでも一つだけ欲しい物をあげようと言っていたから、彼等も本気だったが。

 訓練の一環なので、手を抜くつもりは無い。

 抜くつもりは無いが……


「まあ、2人とも凄く頑張ったから、敢闘賞として何か用意しよう」

「かんとーしょーって?」

「頑張ったで賞かな?」

「やったー!」

「よっしゃー!」


 俺の言葉に2人が飛び上がって喜んでいる。

 やっぱり、まだまだ子供だ。


 背も大分伸びてきたし、マコなんかは割とシュッとしてきた。

 身体が締まってきているのも分かる。

 これは、将来が楽しみだ。

 

 マコほどじゃないがクコも身長は伸びているし、最近じゃクロウニの授業も真面目に聞いているらしい。

 クロウニといえば娘のパドラが今年初等科卒業だからか、なんとなくそわそわしていたな。

 一応今まで頑張って来たご褒美に、卒業式の日には会いに行っても良いとは伝えてある。

 そしたら、さらにそわそわとして落ち着きが無くなったが。

 まあ、彼だけじゃなくパドラの方も頑張っていたからこそのご褒美だ。

 色々と細工をして現実味は無くすが、あくまでそれは演出。

 実際に会って、話して、触れ合う事も出来るからいいだろう。

 それを夢と思うかどうかは、あとは個人の自由だ。


「マサキ様、マコ、クコ! 食事の準備が出来ましたよ!」

「うん、すぐに行こう」

「分かった」

「やった、今日は何かな?」


 トトは完全に敬語をマスターしたし、クコの話し方もしっかりとしてきている。

 こういった小さな成長が嬉しい反面、とても寂しい。

 いつまでも小さくて可愛いままで居て欲しいと思うのは、親のエゴか。

 親じゃないけど。

 

 早く大きくなった姿を見たいと楽しみに思う自分と、少しでもゆっくりと成長して可愛いさかりを堪能させてもらいたいと思う自分。

 どっちも俺だが……俺が子供を持ったことがないからそう思うのか、それとも人の親もこんな風に思うのか。

 分からないけど……子供ってのが良いものだってことだけは分かる。

 嫁を持ったこともないけど、これでも割と満足だ。


「おにい! 行くよ!」

「ああ、分かったから手を引っ張らないでくれ」


 うーん……やっぱり、ずっとこのままが良いなぁ。


 トトは13歳になって、随分とおとなびてきた。

 立派なお姉ちゃんになっている。

 今までが栄養失調気味で成長が遅かったのもあるだろうが、成長期に栄養豊富な物を食べることが出来たからだろうかグングンと背が伸びた。

 体つきも丸みを帯びて来て、女性のそれっぽくなってきている。


 少し胸が膨らんて来たのが恥ずかしいのか、温泉に行ったらしっかりとタオルを胸まで巻いて入るようになった。

 だからか、俺も気を遣って腰にタオルを巻いて入るようにしたが。


 いずれは、男湯と女湯を分けようか。

 俺は気にしないが、彼女が気にするお年頃になり始めたし。

 これから本格的な思春期になってきたら、パパとはお風呂に入りたくないとか……

 パパの後はやだとか……

 洗濯物一緒にしないでとか……

 うっ……辛い。

 パパじゃないけど。


 そんなふうに妄想を膨らませて足取りが重くなり過ぎたのが悪かったのか。

 クコにお願いされた土蜘蛛に糸でグルグル巻きにされて、背中に括り付けられて食堂まで運ばれてく羽目になった。


「馬鹿なこと考えてないで早くいかないと、せっかくのトトの料理が冷めてしまいますよ」


 と言われてしまえば、何も言い返せないが。

 おかんポジションではあるが、お前は俺の嫁ポジションにはなれそうにないな。

 そんなことを考えながら、ジッと土蜘蛛の後頭部を見つめる。


「失礼なことを考えているようですが、私は永遠のお世話係です」

「ごもっとも」


 何を考えていたかバレバレだった。

 そして木の影からジッと俺を見つめるジョウオウ。

 悪いがお前も対象外だからな?

 そう思いながら見つめ返すと、これまた心を読み取ったのかおよよとしなを作って崩れ落ちた。

 姿形が蜂だからか、ちょっと動きがキモイ。

 

 それにしても彼女達が来て、もう2年も経ったのか。

 月日の流れのなんと早いことか。


 それなりに彼女たちは成長したが……


 ジッと虫達を見つめる。

 2年の間にさらに色々と合成を施した虫達。

 一周回ってスッキリとした姿形の者達も居れば、より一層凶悪度を増し……かっこよさを増した者達も。

 

 目の前の土蜘蛛とジョウオウもその1人だが。

 割愛させてもらおう。

 いずれ披露する日が来るだろうし。


「今日のご飯はなにかな」


 遠くで巨大な爆発が起こっているのを見て、現実逃避。

 最近のカブトとラダマンティスの訓練風景で、日常の一コマだ。

 今日はマハトールも参加しているのか。

 久々に休養でこの空間に戻してやったのに、災難だな。

 あんなに高くまで舞い上がってるが……リザベル助けてやれ。

 あれ気を失ってるから、そのまま落下するぞ?


 そう念話で指示を出す。

 助けるかどうかは、彼の気分次第だろう。

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