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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第197話:魔王城宝物殿

「用事は済んだか?」

「済んだけど、今日はもう帰らなきゃ……結局、バルログさんの書類整理の手伝いだけで終わった」

「ふふ、掛けられた迷惑と比べるべくもなく、楽な仕事ですよ」

「……」


 散々書類の分別から、優先順位による順序分け、はては経費や予算の計算までやらしておいて。

 感謝の一言も無いとか。

 こっちは謝罪したってのに。


 あいつの服に蜂でも仕込んでやろうか。

 

 まあ、疲れたので今度ゆっくりと仕返しをさせてもらおう。


 といっても今日は金曜日の夜。

 明日は土曜日の夜で、もうワンチャンある。

 しかも、マルコがベントレー宅にお泊りなのでまるっと1日。

 

「カイザーさん、カイザーさん」

「なんじゃ、また来たのか?」

「うん、バルログさんは?」

「ふふ、昨日奴が頭を痛めておいた案件が概ね片付いたでな、久しぶりに風呂に入って布団で眠っておるよ」


 それは好都合。

 バルログさんが居ると、色々と口うるさいからな。

 魔王が許可しても、あいつで却下されることあるし。

 もっと、魔王としての威厳を示して欲しい。


 まあ、一時期のボケ老人疑惑の頃よりは、だいぶ改善されたみたいだけど。


「今日は宝物殿がみたい」

「うむ、流石にそれは駄目じゃ!」

「ええ! アイテム精製の宝珠が見たかったし触りたかったんだけど?」

「何故、それを知っておるのじゃ?」

「ミスリルさんに聞いたから」

「誰じゃ?」

「別名カインさん!」

「……黒騎士か?」


 俺が発した名前を聞いて、一瞬逡巡したあと不安そうに聞いて来た。

 正解!


「そうだよ!」

「何故にミスリルさん?」

「ミスリルの鎧を着てるから」

「ん?」

「まあ、良いからさ! 僕がその宝珠を使ったら凄いアイテム出そうじゃない?」


 あわよくば借りようかとも思ったけど、流石にまずいと思う。

 思うだけで、実行するかどうかは別。


「あやつハデスの鎧をやったのに、何故ミスリルの鎧なんぞ……」

「勿体ないから、ここ一番で着るつもりなんじゃないかな?」

「そうか?」

「さ、宝物殿へいこ」

「うむ……」


 何やら考え事をし始めて魔王の背中を押して歩き始める。

 が、すぐに立ち止まる。


「いかんって! あまりに自然な誘導に、ついうっかり流されそうになってしもうたじゃないか」

「ちえっ」


 簡単にはいかなかったか。


「それに、まだ魔力が溜まっておらんぞ? 強引に何か作り出したところで、大したもんは出来んと思うが?」

「やってみないと分からないし。てか、秘策もあるし」

「やけに詳しいのう」

「だから、取りあえず試してみよう」

「うむ……うむじゃない! 危ないのう! お主、精神誘導か何か使っておらんか?」


 失礼な。

 そんなことしてないし。

 魔王が乗せられやすいだけだと思うが。


「あんなに野菜の相談乗ったのになー」

「むう……確かに」

「それに、大事な資料もいっぱいあげたし」

「うむ」


 地球産の農業の本を、魔族の言葉に翻訳したやつ。

 色々と重要な技術は、あとで高く売り込むために写してないけど。


「じゃあ、これあげるから!」

「ぬっ! これは!」


 モンロードで大量に買い込んだ香辛料。

 他にも調味料が色々と。


「これは、南国のスパイスか? 見たことも無いものも混ざっておるが、なんともかぐわしい」

「別に宝珠を取ろうってわけじゃないし、ちょっと使ってみるだけだから」

「むう……」

「じゃあ、これも付けちゃう!」

「なっ! 胡椒じゃと! 仕方あるまい! 来るが良い!」


 魔王陥落。

 これで良いのか、魔族の王よ。


 地下へと繋がる階段を降りると……昇降機のようなものに乗って、西の端にある塔の最上階に。

 そこから転移陣を使って移動と。

 意外と遠いな。

 そして、転移陣は登録者以外使えないと。

  

 まあ、俺の場合は直接転移出来るけど。

 あれ魔法じゃ無くて、結果というか。

 ある意味で物理的に移動先と管理者の空間を、点と点で繋ぐ移動方法らしい。

 だから、対転移魔法の結界とかってのはなんの役にも立たないらしい。

 ガチチートだった。


 そして辿り着いた場所は……あれ? そんなに宝物多く無くね?


「まあ不遇の時代になってから、色々と売ったりしたからのう」

「そうなんだ」


 くっ……外から食料を得るために、お金に替えたのか。

 魔王の口から聞くとなんとも、虚しくなる話だ。


「これが件の宝珠じゃ」

「へえ、普通の水晶玉みたいだね」


 その宝物庫の隠し扉の先の、さらに見えない通路の先にある小部屋にそれは鎮座していた。

 どういう仕組みか、台座から少し浮いている黒い水晶玉。


「本来なら、もっとオーラを放っておるのじゃが。こないだ、アイテムを出したばかりじゃからのう」

「何が出たの?」

「刃こぼれしない、手入れ不要の魔法剣じゃ」


 うーん……これまた地味なものが出て来た。

 いや、凄く便利だけどさ。


「ヘパイトスの加護がついておるらしいが……ヘパイトスって誰じゃろう?」

「あー……」

 

 これまた地球の神話シリーズか。

 鍛冶の神だかなんだかで、割と私生活でやってることはクズだったと記憶しているが。

 そうか、知らないのか……

 ということは?


「ちなみに、ハデスの鎧のハデスって?」

「さあ?」


 これらは、完全に善神様の悪乗りで作られたアイテムっぽい。

 まあ、この世界には邪神様と善神様しかいないだろうし。


「じゃあ、さっそく」

「あっ、こらっ!」


 せっかく面白そうなものがあるんだ、使わない手はない。

 そう思って宝珠に手を伸ばす。

 魔王が慌てて捕まえようとしてきたので、転移でかわしつつ。


 あまり魔力が溜まってなかったはずなのに、俺が左手を乗せると一気に輝きを増す。

 別に何かを吸収している訳じゃないけど。


「何をした?」

「えっ? いや、手を置いただけだけど?」


 慌てて手をのけると、その掌に何かが引っ付いて出てくる。

 これは……


「これって……」

「うーむ……こんなものまで生み出すのか」


 俺の手に引っ付いていたのは、丸くて黒くて透き通った水晶玉。

 全部出たあとで手から離れたそれは、宙にフヨフヨと浮いている。

 

「どうみても、それと一緒だよね?」

「うむ……そうじゃな」


 ランダムで溜まった魔力に応じたアイテムが出てくるらしいが。

 出て来たのは、どう見てもアイテム精製の宝珠。


「増えたね?」

「うむ……」

「良かったね?」

「うーむ……」


 何やら難しい顔をしているが、素直に喜んだらどうだろうか?

 貰ってもいいなら、貰うけど。


「持って帰っても良い?」

「うーむ」


 悩んでる。

 ということは、少しはくれるつもりがあるのかな?

 欲しいけど。

 でも、貰うのはなんか違う気がするし。


「無理言ってやらせてもらったから、別に貰いはしないけど……また今度、やってみても良い?」

「お主がそれでいいなら、こっちは有難いが」


 期せずして魔王軍の戦力強化をしてしまったわけだが。

 また、使わせてもらう約束が出来たのでよしとしよう。


―――

一ヶ月後


「もう1回!」

「よし、やってみよう!」


 ……これ、アイテム?


「すっごく強そう」

「うむ、強そうじゃな?」


 前身を黒い鎧で身を包んだ、巨大なゴーレムが出て来た。

 ちなみに、まだ動く気配はない。

 気配はないけど、主として登録した人の命令を聞くらしい。


「カイザーさん、主として登録する?」

「いや、なんか禍々しいし」

「魔王がそれ言う?」

「お主は、魔王をなんじゃと思うておるのじゃ?」


 ちょっと、ムッとされてしまった。

 黒い鎧の戦士は、カブトで十分だし。


 というか、使い道も無いし……


「取りあえず、必要になるまで宝物殿にしまっておくか?」

「だったら、魔王が主になって、ここの守護を任せたら?」

「そもそも、登録してないものは来れないからのう……」


 そうだった。

 動かすのが不安だったので、文字通りお蔵入りになった。



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