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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第190話:子供らしさ

「このままここで考えてても、良い考えは浮かばないと思う」

「俺も、そう思う」

 

 結局僕とエマが相当に頭に来ていたのと、ヘンリーが暴走し始めたのを見てソフィアとベントレーが解散を促す。

 ちなみにセリシオは早々とディーンに連れていかれた。

 彼らは彼らなりに対策を考えると。

 正直、こればっかりは有難迷惑でしかない。

 その、親御さんの立場的なものが……

 けど、セリシオにとってもジョシュアは数少ない友達枠に入っているらしい。

 だから真剣に考えているつもりらしい。

 理由もちゃんとしたものなだけに、なんにも言えないのが痛し痒し。


 セリシオたちも僕たちも最初は良かったんだよ?

 わりと落ち着いて話し合いも出来てたし。

 途中からだんだんと方向性がおかしくなり始めて。

 セリシオが王族の権力全開で解決策を考え始めた辺りで、彼はディーンの英断によって退場となった。

 この時ばかりはディーンが頼もしいと思った。


 そしてディーンの判断は正しかったかもしれない。

 その後、残されたメンバーで色々と打ち合わせてみたけど。


「マックィーン伯爵の思惑がよく分からないんだよね」

「ああ、彼の息子でジョシュアの兄を王族の剣術指南役に付けたいらしいよ」

「そんな理由で? というか、ジョシュアのお兄さんてそんなに優秀なの?」


 マーカス、ルーカスの話では、一応ジョシュアのお兄さんは剣術をそれなり以上には納めているというか。

 才能は本物らしい。

 剣を振るうのも好きらしく、22歳という若さで国内にあるそれなりに大きな剣術道場の免許皆伝まで至ったとか。

 なまじ、普通以上のセンスを持っているから親の期待も大きいと。

 これで本人が大したことなかったら、本当に問題無かったんだけどね。


 そしてジョシュアのお兄さんが剣術指南役になるのには、大きな障害が2つ。

 まず1つめは、彼が剣鬼流の剣術を学んでいない事。

 もう1つは、おじいさまであるスレイズがバリバリの現役だということだ。


 正直、2つめの問題はどうにかするにはあまりにも高すぎる障害だと思う。

 だからこそ、おじいさまの推薦状が欲しかったのだろう。 

 マックィーン伯爵も、息子が最初から指南役につけるとは思っていないと。

 おじいさまの助手として、補助から入るつもりらしい。

 そのために、僕を利用しておじいさまとの顔つなぎがしたかったと。


 だったら、そのお兄さんに指南役としての力量が足りないことを、証明すればといった意見も出た。


「俺がちょっと行って、半殺しにしてきてやろうか? 剣鬼流を納めてないくせに調子に乗り過ぎだな」

 

 とかって、ヘンリーが言い出したけど……それ、負けフラグっぽいから大人しくしておいて欲しい。


「それこそセリシオに直接注意させるのが早く無いか?」

 

 これはベントレーの意見。

 たぶん、それ言ったらジョシュアの家での立場も相当に追い込まれると思う。

 それとマックィーン家の面目を完全に潰してしまうのも……

 お兄さんとは話したことないし、もしかしたらマックィーン伯爵の暴走かもしれないし。

 そしてあくまでもジョシュアに、ドルアの敵意が向かないような解決案を。


 そうやって、色々と話し合っているうちに白熱していき。

 終盤は、ジョシュアに対する愚痴や、不満を言い合うだけになったので解散となった。

 いや、主にエマと僕とヘンリーなんだけど。


「大体、ジョシュアって良い子過ぎるんだよ! 人のことばかり考えて、自分のことを全く考えてない!」

「分かる分かる! ヘンリーとは違う形で主体性が無いっていうかさ! 行きたいところとかも、こっちに合わせてばっかりだし」

「エマ?」


 エマの言葉に、少しだけヘンリーが昔みたいな顔になった。


「そうなんだよね! こないだもちょっと時間があったから、どっか行きたいとこないか聞いたらさ、マルコ実家に替えの手袋忘れたって言ってたよね? だったら、手袋買いにいかない? 僕も、少し防寒着見てみたいし、とかって言い出してさ! 結局ジョシュア、僕の手袋を選ぶの手伝って自分のは買って無いし!」

「そう! いつも付き合わせて悪いから希望を聞いてるのに、結局私達が必要な場所に行ってたり! もっとこう、自分のことも考えて欲しい」

「今回の件だって、僕たちの迷惑なんか考えなくて良いんだよ! ジョシュアが僕たちとどうしたいかが重要なのに!」

「本当よね!」

 

 といった感じで話がずれ始めたあたりで、ソフィアからストップが入り、ベントレーから家でそれぞれ考えようという意見が出た。

 ヘンリーだけは、なんか途中から落ちて行ってたけど。


 家に帰ると、おじいさまと剣の稽古をする。

 主にこの時間は素振りや、体力トレーニングがメインだけど。


 最後にちょっとだけおじいさまや、家の人と乱取りをして終了。

 だけど、今日は最初の素振りで終了した。


「もう良い」

「おじいさま?」

「全く気が入っておらん。何を悩んでおるか知らんが、時間の無駄じゃ」

 

 助かった。

 本当はジョシュアのことをずっと考えていたし、そのことについて色々と考えたかったから早く訓練を終えたいと思っていたところだし。


「なんじゃ、あからさまにホッとした顔をしおって。そこまで、重大な問題でも起こったのか?」

「うーん……子供同士の事だから、おじいさまには言えないけど。今じゃないと、駄目なんだ」

「そうか……じゃあ、それが片付いたらツケは払ってもらうが、それまでは存分にそっちに集中するがよい」


 おじいさまの許可をもらって、暫くは夕方の訓練は免除となった。

 後が怖いけど、いまはそれでも嬉しい。


 それから急いで夕飯を食べて、部屋でベッドに横になる。


「マサキ」

『なんだ? 話は聞いてやるが、手は貸さんぞ』


 むう……

 まだ何も言ってないのに。

 別に、手伝ってもらうつもりもないし。


「ジョシュアは、なんで僕たちを頼ってくれないのかな?」


 他の子達は、何か困ったら素直に話してくれるのに。

 ジョシュアは勝手に自分で結論を出して、僕たちに意見を求めることもなく離れていった。

 でも、それは彼が望んでいることじゃないのは、別れ際の彼の顔をみれば一目瞭然だ。


『ジョシュアは将来自分の親から離れて親の手の届かない場所、親に迷惑を掛けない場所、親の干渉を受けない場所で生きていく決意をしてたんだろ? それが、全てじゃ無いのか?』


 マサキがまた、意地悪な事を言う。

 こういう回りくどい言い方をするときは、だいたい彼の中では思い当たる節がある時だ。

 だからといって、いきなり答えをくれたりはしない。

 自分で考えろってことだ。


 ちょっと自分に厳しすぎじゃない?

 まあ、自分って僕のことだけど。

 彼は僕のことを、こうやっていつも子供扱いする。

 元は一緒なのに。


 前世の自分の大半を持って行ったことで、こうやってアドバンテージを取られるのが本当に納得いかない。

 いかないけど……こっちの世界のことを、殆ど任せて貰っているのは事実だし。

 彼に対しては管理者の空間で、長い時間を過ごさせてしまっている負い目もある。


 それが彼の役割であり、彼の選んだことだと言われてしまったらそれまでだけど。

 もう少し、こっちの世界を彼にも楽しんでもらいたいと思うのもまた事実だったり。

 

 いやいや、いまはそんなことよりジョシュアだ。


『余計なこと考えてないか? いまは、大事な友達とどうやって仲直りするか、考える時間じゃないのか?』


 丁度いま、気持ちを切り替えたところなのに。

 本当に、こういうのって萎えるよね?


 この本を読み終わったら片付けようって決めてるのに、勝手に部屋に入って来て


「あらあら、こんなに散らかされて。私が片付けておきますね」


 なんていうメイドさんの多い事。

 この本を読み終わったら片付けるつもりだったのにとなんか釈然としない気持ちになる。。

 

「いいよ、これ読んだら自分で片付けるから」

「はいはい、分かりましたよ」


 と口では言いながらてきぱきと部屋の片づけを始めるメイドさんに、「全然分かってないよ!」と大声で主張したくなる。

 マリーに至っては


「後で片付けるから、良いって」

「ほっほ、生憎とばあやは、後でとお化けにはあったことありませんので」


 といって、取り合ってすらくれなかった。

 

『本気で考えるつもりがないなら、もうコンタクト切るぞ?』

「ごめん」


 また余計なことを考えていて、マサキに叱られてしまった。

 大人ってズルい。

 僕も早く、大人になりたい。

 いや、本気出せば大人とだって変わらないはず。

 

 よし、ジョシュアはなんでそんなに僕たちに迷惑を掛けるのを嫌がるんだろう。

 さっき、マサキが言ってたことを考える。


 ジョシュアとしては、いずれは親から独立して自分の足で地面に立ちたいんだろうなって事は分かる。

 だから自分の事は、意固地になって自分1人で解決したがるところがあるのだろう。


 でも人は1人じゃ生きていけない……事も無いか?

 生きていくだけなら、出来るけど。


 いまは、そういうんじゃなくて。

 ジョシュアが僕たちを頼りやすくなるような、環境を作るのが大事なんじゃ。

 

 それって、どういうことだろう?


「ジョシュアが僕たちを頼ってくれるような、そんな方法ってないかな?」

『それはお前達が考えることだ。まあ、そうだな……1つ言えば、ジョシュアがお前達を頼ったところで、気を遣わなくて済むだけのメリットがお前達にもあれば良いかもしれんな』

「僕たちのメリット?」

『1つの取引と考えてみたらどうだ?』

「そんなんじゃやだ! 友達同士のやりとりに、打算は持ち込みたくないよ」


 マサキは時々、こういうドライな考え方をする。

 目的の達成のための、手段が直接的過ぎると言うか。

 ただ、今回のような場合は、もっとこうふわっとした感じというか。

 友達同士のやりとりに、論理的思考は要らないというか。


『プッ……はははは! だったら、もう答えなんて出てるじゃないか』

「出てないから、こうやって相談してるんじゃん!」

『お前の考えで合ってるんだよ! お前らみたいなガキの付き合いなんて、子供らしくシンプルで良いんだよ!』

「むぅ……」


 物凄く子供扱いされた気がして、不愉快な気持ちになる。

 答えが出てないって言うのに、考えが合ってるとか意味が分からないし。


『子供が貴族の考え方に染まって難しい事考えても、大人の掌で転がされるだけさ。相手の方が、この世界を何倍も長く生きて来てるんだからな』

「でも、慎重に対応しないと、ジョシュアの立場が」

『まあ、ここから先は1人で考えろ。答えはいつだってシンプルだ』


 そう言って、一方的にコンタクトが切られた。 

 呼びかけたけど返事がない。


 なんか、上手い事言われて煙に巻かれたような。

 そんな気分。

 

 仕方がないから、灯りを消して1人でじっくりと考える。

 考えても考えても、良い方法が思い浮かばない。

 明日また、皆の意見を聞いてみよう。

 

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