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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第175話:ギガントバジリスク一家

 あれから1週間。

 管理者の空間で、子バジリスク達は今日も元気いっぱい森を駆け回ってたらしい。

 ……うん。


 本当にね。

 一時はどうなることかと思ったよ。

 

 どうにか誤魔化した。

 誤魔化し切った。


 強引な力技で。


 森に巨大な雷を落として貰った。

 爆炎と共に。

 

 誰にって?

 1匹だけ別行動を取っていた魔狼にだ。


 彼女はすでに森の奥深くにまで潜っていた。

 理由としては、全ての魔獣達を支配下におくためと。


 現状の魔狼達のボスは白い毛並みの光属性を持つシャイン。


 そして、森の支配者になったのが変幻自在の毛並みと、全属性を操る魔狼だ。

 名前は、全てという意味を込めてオールと名付けた。


 一応、年経たジャイアントホーンボアと、デスキングボアを押さえることで森の全域の支配者となったらしい。

 ちなみに前者はボアー、そう猪だ。

 ジャイアントが巨大な角なのか、身体が巨大なのかは分からないが強そうだ。

 後者はボア、巨大な蛇だ。

 

 こいつらが森を東西に割って支配していたらしい。

 ちなみに狼達は機動性を活かし、隙間を縫うように自由に生きていたらしいが。


 手始めにオールは各種の狼の魔物から、普通の野生動物の狼までを支配。

 これは、姿を見せるだけで全て屈服したと。


 次に西を収めるジャイアントホーンボアと対談。

 なんと!

 このジャイアントホーンボアは、300年生きているらしく知性がかなり高いらしく意思疎通が可能との事。

 人語を理解しているわけではないので、思念波によるやり取りがメインだが。


 対する東の王者、デスキングボア……1300歳らしい。

 自称だが。

 もしかすると、ふかしてるかもしれないが。


 こちらとも対話が可能。 

 だが突如現れた魔狼如きに、対等な対話をするつもりは無かったらしく。

 上から目線で、あれこれと挑発的な言葉を投げかけて来たと。


 イライラしつつも既存のリーダーを配下に治めることで、円滑にこの森の統治を行おうとオールは頑張っていたらしい。


 が、突如シャインに任せていた、ギガントバジリスクの石像の気配が消えた。

 さらに俺の気配を、森から感じたと。

 これに焦ったオールは、冷気を全力でぶつけてデスキングボアの首から下を氷漬けにして、取りあえずこっちに来たらしい。


 こちらに向かおうと踵を返した瞬間に、何やら情けない声と言葉が聞こえてきたらしいがそれどころじゃないと無視して空気を蹴って空を移動してきたと。

 それでも掛かった時間は1時間半。

 

 いやこの広大な森を東側から中央まで1時間半で移動したというならば、これは驚異的な速度ともいえる。

 まあ、バジリスクと共に俺も管理者の空間にすぐに戻ったから、30分だろうが1時間半だろうがさして意味は無いのだが。


 取りあえず吸収出来てしまったものは仕方ない。

  

 ちなみにアースも雷を操ることは出来るが、彼の場合は雷を落とすというよりも電撃を放つといった感じだ。

 それに引き換えオールは、様々な魔石に竜の素材もふんだんに使っているので、空中に駆け上がりそこから雷撃を放てば雷が落ちたように見える。


 まさに雷獣。


 明け方にオールが巨大な電撃を放ち、さらには管理者の空間からギガントバジリスクの身体を覆っていた石の欠片やら、なんやらを大量にぶちまく。

 それだけだと、なんのこっちゃなので大量の血痕やら黒こげの肉片も。

 タブレットで購入した鰐皮と鰐の肉と、蝮の血だ。

 これで誤魔化せるかなと思ったが……誤魔化せた。


 大量のごつごつした鰐の皮と肉の焦げた残骸に、周囲に飛び散った血痕。

 その場に佇む、迸る稲妻を身にまとった巨大な魔狼。


 周囲に6匹の魔狼が伏せて、中央で遠吠えする金色の魔狼を見たビスマルクを含めた騎士達は神獣と崇め奉ったとか。


 神獣は言い過ぎだが、それに準じた力はあるだろう。

 それにしても……


 この森の生態系が大きく狂ってしまった。

 これも全部、虫達のせいだ。

 いや、俺の為を思ってのことだから責めるつもりはない。

 むしろ褒めるべきだろう。


 タブレットから下を覗くと、跪いて両手を組んで祈るようにオールが立ち去るのを見送る騎士達。

 ビスマルクすら、呆然と佇んでいる状態だ。


 無計画な合成強化はほどほどに……しないけどね。


 それが2日後。

 一応、騎士達からは森の守り神の力で、災厄は去ったとの報告が王城にあげられたが。

 代わりに、森に強大な力を持つ狼の集団が居たことが報告された。


 今回子供達のキャンプを襲ったのはバジリスクの王の復活が迫り、その石像が漏れ出た瘴気に当てられた狼達が暴走したということになっている。

 その件については、オールから直接ビスマルクに謝罪があったとも。


 ただ……普通の狼や魔狼については、野生に従って生活を送ることを許可しているため悪戯に縄張りに入り込んだ場合は、普通の野生の狼の性質にしたがって危害を加えるだろうと。

 だから、あまり好き勝手な行動を森で取る事は慎めと警告がされた。

 

 そうだね。

 元々は、狼達が子供達を襲ったことが森の調査の発端だ。

 そのしりぬぐいを魔狼達がすれば、おのずと不信感が募るものだろう。


 うまく誤魔化せたのかな?


「なんと無責任な!」

「所詮は獣の類、いっそのことその魔狼を狩ってしまえば、森の危険はぐっと下がるのでは?」


 などといった意見が、王の下に届けられたと。

 この辺りの利権をむさぼる貴族たちから。

 商人繋がりか。


 商人の方は……


 まあ、ベルモントから釘を刺されていたら迂闊な行動はとれないか。

 今回は、スレイズの名前でも報告をあげている訳だし。


 田舎貴族まではじじいの威光は通用しないのか。

 良いんだか、悪いんだかって感じだな。


「だったら、私兵団を送り込むことを許可しようか?」


 という王の提案を宰相のゲルト侯爵がそのまま下知したところ、一斉に口を閉じたらしいが。

 確実に不満は溜まっただろうな。


 まあ、関係無いし。

 たぶん、最終的にはじじいに丸投げになるだろうし。

 じじいが噛んでる以上、少々の理不尽は問題無いと王城が判断しているふしもあるし。


 最終的にはじじいの武力と威光で黙らせると。

 うん……法治国家で、そんなことがまかり通って良いのかとも言えなくもないが。

 

 まかり通るのが、じじいの恐ろしいところだ。

 伊達に現国王から王子まで、弟子に取っているだけのことはある。

 

 そして昨日……わーわー言ってた木っ端貴族からの直訴が、彼等を寄子としている大貴族の下に届いた訳だが。

 一致団結して、その貴族様を代表としてそこから王に直訴にと……いくわけがない。

 貴族としての爵位が上がれば上がる程、ベルモントの名は避けては通れない。

 

 前国王から全幅の信頼を寄せられており、いまだに一人大隊と呼ばれることもあるじじい。

 これとぶつかろうと思ったら、一貴族では太刀打ちできない。

 いや、純粋なじじいの武力だけじゃなくて、その武力によって得た人脈。

 王都の名だたる貴族が、彼の弟子なのだ。


 幸い彼自身が役職や内政、財に興味を示さなかったから王都は平和なのだが。

 下手したら一人クーデターなんてことも。

 現に、そんな不敬な絵空事を物語にした悪書も出回っていたらしい。

 禁書になっているが、根強い人気があるとか。


 なんせ身近なリアルチート無双物語で、そのモデルとなった人物が王都に住んでいるのだ。

 しかも接したものなら、その物語を読んでも……「ああ、マスターが無欲で本当に良かったよ」といった感想しか思い浮かべることが出来ないのだ。


 人としてこれはちょっと無理だろうといったスレイズ大暴れな物語なのに、知っている人が読んだら馬鹿にするどころか納得されてしまう。

 そのうえで、ホッと心底安心した表情を浮かべるのだから、その反応の噂も相まって男なら憧れるのも仕方がないだろう。


 過去に国王陛下がそれを読んだうえで、ばかばかしいとその場に放り出した。

 スレイズが謀反をおこしたなら、即座にエリーゼに報告をすると漏らしていた。


 謀反を起こした配下に対して、騎士を差し向けるでもなく、衛兵を送り込むでもなく奥方に報告すると。

 国王曰く、まともに武力で対抗すれば国が傾くと漏らしていたとか。


 流石に冗談だろう。

 俺もそう思った。

 スレイズを知らない人も皆、そう思っただろう。


 だが、彼を戦場で見たことがある人達は全員、目を閉じて深く頷くだけだったらしい。

 手の込んだ冗談だ。

 うん……


 まあ、話が大きくそれてしまったが、結果としてスレイズのお陰で全てが丸く収まった。

 

 ワンマンアーミーとか……流石スキルのある世界ダナー……


 とにかくだ。

 バジリスクの王は、封印が解ける前に神獣が殺しました。

 めでたしめでたしでこの騒動は幕を下ろした。


 だから、目の前のバジリスク達をどうするか。

 ジッと考える。


 森で暴れ回って疲れたのか、土蜘蛛にまとわりついて各々が好きなポジションを確保してスヤスヤと眠り始める。

 それを見つめる母蜥蜴の心中やいかに。


 ちなみに母親のギガントバジリスクにだけは、名前をつけておいた。

 マザー。

 うん、ネーミングセンスがとか、生意気にもトトとマコに言われたが。

 仕方ないだろう。

 それ以外に思いつかなかったわけだし。


 彼女の方も、着実に回復してきている。

 いまじゃ、他の虫達のお手伝いが出来るほどに。


「まさか、出産をしたうえで生きて子供達の成長を見られるとは」


 とは彼女の言葉だ。

 大体のこの種のバジリスクは出産と共に、その役目を終えて長い眠りにつくらしい。

 永眠とも言うが。


 一応、1匹で生活が出来るくらいまでは卵の中で成長するらしいが。

 それでも10匹産んで、無事大人になるのは2~3匹、運が良ければ5匹らしい。

 今回産まれたのは12匹らしいが、この空間内で過ごせば全て大人になれるだろう。

 しかし多いな。

 

 この時点で、名付けは諦めた。

 声を掛けると全員が一斉に振り返るが、キラキラとした円らな瞳で期待した様子で見つめられるとほっこりしてしまう。

 それは土蜘蛛たちも同じらしく、この可愛らしい赤ちゃん蜥蜴たちを可愛がってくれている。

 ちなみにクコとマコもメロメロだ。


 

 


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