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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第164話:野営宿泊授業 その後

「ということで、お疲れさまでした」

「「「「お疲れさまでした」」」」


 無事?

 無事と言っていいかは別として、皆揃って学校に戻ることが出来た。

 担当の冒険者さんに、それぞれの生徒がお礼を言っている。

 

 ちょっと強面の冒険者も子供達にキラキラとした笑みを向けられて、はにかんだように笑みを浮かべている。


「マルコ様」

「あっ、2日間お疲れさまでした。ありがとうございました」

「えっ? あっ、いえ」


 僕たちを担当していた冒険者の人が声を掛けて来たので、他の子に倣って素直にお礼を言っておく。

 ちょっと、面食らった顔をしていたが。


「こちらこそ、学生の立場でありながら手伝ってもらって、すいません」

「えへへ、良いですよ気にしなくて」

「そうですね、クードさんは気になさらなくてもいいですが、マルコ君? 君は気にしてくださいね? 一応、君も護衛対象なのですから」


 両手を振って冒険者の人に断っていたら、ゲイズ先生に後ろから声を掛けられた。 

 やっぱり、かなりの問題行動だったらしい。


 ただ流石に危なかったらしく、僕のお陰で全員がほぼ無傷ということもあり軽めの説教で終わったけど。


 テトラ……じゃなくて、クルリが心の底から呆れ顔なのが気になる。

 

「いくらマルコ君でも、狼に向かっていくのはおかしいと思います!」

「ええ? だって、僕の方が強いし」

「普通の子供は、狼より強くありません!」


 何やら、少しだけ機嫌が悪そうだ。


「マルコが勝手に飛び出してから、クルリさんはずっと心配してましたよ」


 そこにディーンも近づいて来て、話しかけてくる。

 どうやら僕が狼の居る外に出たことで、クルリが心配していたらしい。

 戻ってからあまり近づいてこなかったし、そんな素振りもなかったから全然気が付かなかった。

 なんか、ちょっと嬉しい。


 クルリって僕に対して結構距離を取っていたから、そういった感情は向けられないと思っていた。

 かなり、意外。


「えっ? あっ、そうなの?」

「あっ、そうなの? はあっ? どれだけ皆が心配したと思ってるの!」


 思わず素の反応をしたら、クルリに怒鳴られた。

 ふと周りを見ると、他の子供達も困ったような視線をこっちに向けていた。


「私はともかく、他の子達はベルモントが実際にどれほどかというのは、想像でしか知りませんからね」


 ディーンがやれやれといった様子で話をしているのが、妙に鼻につく。

 まるで僕が変な子みたいに言わないでもらいたい。


 みんなと同じただの10歳児……てことはないけど、ほぼただの10歳児なのに。


 ちなみに森で倒した狼の素材の売り上げは、ゲイズ先生と冒険者の6人、それと僕の8人で山分けらしい。

 ゲイズ先生は子供を守るためであって、素材を得てお金を稼ぐためじゃないと辞退していたが。

 僕の家はお金に困っていないけど、僕は小遣いが欲しいから辞退しないけどね。


 と思っていたけど、ディーンから無言で駄目だよと指摘された。

 貴族ががっつくものじゃないと。

 そんなはした金を受け取って喜んでしまったら、その金額分安く見られますよと。


 無言だけど、視線と表情と仕草だけで何が言いたいか分かった。

 分かりはしたけど、仕草が腹立つ。


 まあ、良いけどね。

 マサキにお願いしてみよ。

 結構頑張ったし。

 あいつ、ため込んでるみたいだし……

 こないだ、旅行で散財してたのしっかり見たし。


 くれるかな?


――――――

「はあ……」

「クゥーン」


 目の前でお腹を見せて寝転がっている狼を見て、溜息を吐く。

 マルコのやつが勝手に狼を送り込んで来た。

 それも7匹も。

 

 その後ろには大量の毛皮やら爪やら牙やら肉やらなんやらかんやら。

 こんな微妙な強さの狼の素材をどうしろと。


 それこそ自分で冒険者ギルドかどこかに持ち込めば良かったものを。


 そう言ってやったら、視線を逸らされた。

 どうやらそうしようと思っていたらしいが、蜂や蟻達からまずはマサキ様にと言われたらしい。

 なるほど、だったらいくつかは有効活用しないとな。


 それにしても、マルコはなんだってそんなに小遣いに困っているのやら。

 スレイズから貰っているはずなのに。


 気が付いたら無くなっている?

 そうか……何を買ったか思い出せる範囲で書いてみろ。


 ……

 まあ友達とお茶を飲みに行ったりするのは、まだいい。

 テトラに可愛い文房具や、おもちゃを買ったのもまあ良いだろう。

 アシュリーに送る小物を買ったのもまだ許せる。

 

 ただ……これ、要るか?

 木彫りモンスターシリーズ?


 ゴブリンとオーガ、オークにスライム。

 うん……こんなの買ってどうするんだ?


 他には……入れた物が消える箱?

 台座の上に箱がある。

 箱の底板は片方の端を下から弱めのバネで支えられていて、台座の中は空洞と……


 尾を叩くと羽ばたく鳥の人形。

 

 怪しい道化師の人形。


 謎の木の棒……ああひっくり返すと中に入っている小石か何かが移動して音がなるのね……


 ガラクタだ。

 何故買ったのだろうか?


 買った時は本当に楽しそうに見えた?

 それは売り手の人が、楽しそうに魅せるプロだからな。


 脱力。

 そして、がっかり。


 まあ、子供の買い物なんて、そんなものか。


 狼の素材は一応半分ずつに分けて、マルコの分を買い取る形にした。

 ただしこのお金で買い物をするときは、何か相談するように。


 マルコが不満げだ。


「マサキだって、勝手に買い物してるくせに」

「勝手に買い物はしているが、無駄な物は買っていない。子供の買い物と一緒にするな」

「僕だって、あの時は必要だと思ったんだよ?」

「いまは?」

「……たまに……使ってるような、使ってないような……」


 取りあえず来月の小遣いから半分は自由に、残りの半分はこっちで預かって必要な時に渡すようにした。


「ええ、さらに使えるお金が減っちゃうの?」

「後先考えずに使うから、必要な時に足りないんだろ? 今後は必要な時には足りないことが無くなるんだから、逆に余裕が出るはずだぞ」

「なんかよく分からないし、別に良いのに」


 グチグチと何か言っていたが、最終的には納得させた。

 いやお金の心配は全くないけれど、少しは経済観念を持たせないと。

 

 それはそうと。

 マルコの事を思い出して現実逃避していたが、未だに目の前には7匹の狼が寝そべったままだ。


 素材は有り難く頂いたが、生きた狼をどうしろと?

 まあ、森に返せば良いだけの話だが。


 そうだな、森に返そう。

 どうせなら、強化して他の狼を従えるくらいにして。


 そしたら、森の安全性も増すし。


 そうしよう!


 そしてワクワクした様子でブンブンと尻尾を振っている狼達を、合成の間へと連れて行く。

 種族名はクワイエットウルフだったっけ?

 銀色の毛並みが美しく見えるし、顔も凛々しい。

 割と頭も良いとか。


 取りあえず全ての狼に共通で合成する素材は、ポーションとマジックポーション、それから解毒剤などのステータス異常に対する薬各種。

 


 まず1匹目。

 

 合成素材は地竜の牙と、火の魔石。

 おお、燃えるような真っ赤な毛並みに。

 ていうか、尻尾が若干燃えているような。

 それに、立派な牙まで。

 大きさも体高が70cmくらいだったのが、1m30cmくらいにはなったんじゃないかな?

 強そうだ。


 2匹目は地竜の爪と、水の魔石。

 サイズは1匹目と同じくらいだけど、色が青色に。


 3匹目は鷹の羽と、風の魔石。

 羽は生えなかったけど、かなりの高さまで飛べるようになったらしい。

 毛並みは緑色で、ちょっとなんていうか……

 でも、森で身体を隠すにはこのうえない色だ。


 4匹目は地竜の尾と、地の魔石。

 堅い鱗に覆われた大きな尻尾の生えた、茶色い狼が。

 尻尾による攻撃も、それなりに強烈っぽい。


 ちなみにこの個体だけ、体高が1m50cmくらいある。

 巨大だ。

 迫力も凄い。


 5匹目はボーンボアの角と光の魔石。

 6匹目はボーンボアの角と闇の魔石だ。


 それぞれ白色の狼と、黒色の狼に。

 角も生えていて、かっこいい。

 体高は1m30cmと、茶色い狼以外の狼と同じサイズか?


 最後の1匹はこいつらのリーダー兼、狼達のとりまとめも出来るようにと魔石全種とドラゴンの骨を。

 魔王の領土にあった竜の墓場で拾ったドラゴンの牙に、爪に、角まで付ける。


 聖光石や、雷石も。

 

 ……

 体高が2mを優に超えている。

 それに角も牙も爪も、引くくらいにごつい。

 まあ、良いか。

 体毛の色は自在に変えられると。

 今は黄金色だ。 


 顔も凛々しさが増して、どこか知的に見える。

 なにやら、大神として祀られていそうな雰囲気まで。

 やり過ぎたかもしれない。


 しかし、気にしない。

 どうせ、森にリリースするわけだし。


 ということで、マルコに身体を借りて早速リリース。


「仲間の狼達に、人間は襲うなって叩き込むように。むしろ、困って居たら手助けしなさい」

「ワオーン!」


 純白の大狼が代表して吠えると、頷く。

 うんうん、賢い子になってよかった。


 それから1匹ずつ俺の手を嘗めてから、森に散っていく。

 後の事は知らん。

 知らんけど、この森が平和になっただろうことは分かる。


 来年からは宿泊訓練は、安心して行えるだろう。


 狼達を見送って、管理者の空間へと戻る。


 狼が居なくなっても、大量の素材はまだそこに残っている。

 なのでその素材を整理しつつ、毛皮を蟻に合成してみたり。


 ……頭から背中、お尻に掛けて毛に覆われた蟻が。

 まあ、有りか無しかっちゃあ、有りか。


 何か変わったか聞いてみる。

 

 ポカポカしますという当たり前の答えが返って来た。

 夏とか、暑くないかな?


 毛の間に空気と水を含めば問題無い?

 なるほど、それなら良いか。

 

 毛皮に含ませた水の気化熱で、快適に過ごせるかも?

 難しい事を知ってるんだな。

 偉いぞ。


 頭を撫でてやる。

 蟻なのに、モフモフ……

 凄く不思議だ。


 はっ!

 時間を忘れて撫でていたらしい。


 気が付いたら、クコやマコが同じように蟻を撫でていた。

 

「蟻さん気持ち良い!」

「うん、このけフサフサ!」


 狼の艶やかな毛皮をベースに作られた毛を纏った蟻は、子供達にも好評のようだ。


 部屋の入口でジッとこっちを見つめている土蜘蛛が怖いから、そろそろやめようか?


 蟻を外に出すと、土蜘蛛とすれ違う時に一瞬だけ固まっていた。

 そして、俺には聞こえていた。


「毛皮が出来たからって、調子に乗らないように」

 

 とボソッと土蜘蛛が蟻に耳打ちしていたのを。


 怖いよ、土蜘蛛さん。

 でも、君には合成しないからね?

 毛皮。


 土蜘蛛はいまくらいの毛足の長さが丁度良いし。

 土蜘蛛サイズで、モサモサの毛皮とか暑苦しいし。

 鬱陶しいし。


 抜け毛も気になるし。


 とドストレートに伝えたら、手に持っていた毛皮を元の場所に戻しに行っていた。






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