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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第159話:平和な学校

忘れられてそうな登場人物紹介

リコ……リッツバーク伯爵家 双子の姉 王都でのノーフェイス騒動でターゲットにされた少女。マルコに助けられた。ちょっと生意気な女の子(ソフィアが大好き)      

カール……リッツバーク伯爵家 双子の弟 リコの弟。姉に従って生意気な素振りをしているけど、歳相応に素直でマルコは可愛らしく思っている(ソフィアが大好き)

クルリ……マルコとディーンが受けている野営の講義で同じ班。とある村の村長の娘。


 2年生の後期に入って変わったことがある。

 それは……


「「おはようございます!」」


 ベントレーとジョシュアが、僕の早朝訓練に参加することになった。

 ベントレーは純粋に自分を鍛えることに、目覚めたらしい。

 逆にジョシュアは、独り立ちした時の為にと。


 初日に2人とも、授業料を払うようなことを言っていたが、おじいさまが断っていた。


「ふむ、自ら望んでこの門をくぐる者は少ないからのう。その気持ちが入門料よ」


 なかなかに良い事を言う。

 そして、始まる訓練。


「まずはマルコとヘンリー! 前へ!」

「はいっ!」

「はいっ!」


 おじいさまに呼ばれて前に出る。

 

「まずは基礎からじゃな! 行くぞ!」

「はいっ!」

「はいっ!」


 おじいさまが行くぞと言った瞬間に、ボスっという音がして地面が抉れる。

 そして凄い速さで肉薄してくる鬼。


「くっ!」

「ヘンリー! ナイス!」


 初撃はどうにか躱すことが出来たが、ヘンリーが避けずに受けた事でよろめく。

 そのお陰でおじいさまの剣が、一瞬止まる。 

 その隙をついて、足元に斬りかかる。


「あまいわっ! なっ!」


 と見せかけておじいさまの足より大分手前の地面を叩いて、剣先を跳ねさせて軌道を変える。

 足首を狙っていた剣が瞬時に太ももに目標を変えたのだが、それすらも超反応で剣を向かわせるおじいさま。


「ここだ!」


 おじいさまの注意が反れたことで、ヘンリーがおじいさまの首に向かって延髄蹴りを放つ。

 おじいさまの剣を受けたことで、両手が痺れているのだろう。

 剣では無く、蹴りだ。


「「えっ?」」

「惜しかったのう」


 が、ヘンリーの蹴りは簡単におじいさまが左手で掴んで受ける。

 勿論、そっちに視線なんか一瞬も送って無い。


 そして僕の剣も、あっさりとおじいさまの剣に防がれる。

 次の瞬間……


「ちょっ!」

「うわっ!」


 僕の頭上にヘンリーが降って来た。

 おじいさまが僕目がけて、左手で掴んだヘンリーを振り下ろしてきたのだ。

 

 しかしヘンリーも半年以上おじいさまに鍛えられているのだ。

 ただで、やられっぱなしになんかならない。


 右足を掴まれて振り下ろされながらも、左足をおじいさまの側頭部目がけて振り払う。

 ズシッという鈍い音がして……

 おじいさまは少しだけ頭を傾けて、太い首で蹴りを受けていた。

 ダメージは0と……


 僕はヘンリーを右肩で受けている。

 ヘンリー自身が剣をどうにか地面に叩きつけたお陰で、衝撃が大分緩和されて受けきることが出来た。


 が2人とも隙だらけ。

 とはいかない。


 そのまま左手でヘンリーを抑えつけて力を込めて身を捻らせながら飛び上がると、その勢いのまま身体を回転させて背を向けながらも裏拳で剣を振るう。

 地面に剣を突き立てて頑張って身体を支えていたヘンリーが、「うっ」と呻き声をあげているが気にしない。

 

「ぬおっ!」


 ヘンリーの身体が邪魔をしておじいさまに僕の攻撃が直撃……かに思えたが。

 おじいさまは側宙でその攻撃を躱しつつ、置き土産に僕に蹴りまでいれてくる。

  

「かはっ!」


 カウンター気味に喉に蹴りを叩き込まれて、地面を数回バウンドして吹き飛ばされる。


「マルコ―――――!」


 おじいさまの叫び声が庭に木霊する。

 そして、慌ててポーションを手に駆け寄る庭師のおじさん。

 

「エリーゼ様! マルコ様が!」

「大丈夫、この程度ならなんてことないから」

「マルコ様?」


 頭を軽く振って、手で庭師のおじさんを制止する。

 全身を使って衝撃を逃がしたので、大した怪我は……


「腕が……」

「えっ?」

 

 おじさんに言われて自分の腕を見ると、変な方向に曲がっていた。


「わぁーーーーー!」

「マルコォーーーーーー!」


 ……

 うん、ポーションって凄い。

 というかいつも訓練を見ていたおじさんが、特上ポーションを自腹で買って用意していたらしい。

 領収はおじいさまにね。


 次から先にお金をもらって、買いに行って良いよ?

 もちろん、おじいさまのお小遣いから出すから。


「じゃあ、次はベントレーとジョシュアじゃな」


 無かったことにされた。

 エリーゼおばあさまが来る前に、全力で庭師の人を言いくるめてた。

 口止め料を渡そうとして断られてたけど。


 契約書とか書かせなくていいから。


 そして、ベントレーとジョシュアが青い顔をしている。


「基礎って……」

「言うな……ベルモントってのはな、おかしいからベルモントって言うんだ」

「ああ……」


 納得しないでジョシュア。

 ちなみに、ヘンリーは慌てて僕に駆け寄って来たおじいさまに振り回されて目を回していた。


「あっ!」

「うわぁぁぁぁ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「「ベントレー! ジョシュア!」」


 僕たちと基礎訓練をして、子供の基本的な能力を見誤ったおじいさまに初撃で2人とも激しく吹き飛ばされていた。 


 今度はしっかりと近くで見ていた庭師のおじさんが、2人とも見事にキャッチしていたけど。

 ベントレーは庭の木を使って、ジョシュアは自ら。

 植物を自在に操るスキルを持っているらしい。


 うん……こんなんだから、ベルモントはおかしいって思われるんだよ!


――――――

「なんで、ベントレーとジョシュアはそんなに疲れてるの?」

「いや、ちょっと……」

「ベントレーのせいだから」


 エマが不思議そうにベントレーとジョシュアを見ている。

 ジョシュアはベントレーに熱心に誘われて、軽い気持ちで付いて来てただけらしい。

 可哀想に。

 ジョシュアがジトっとした視線をベントレーに向けていた。

 ベントレーも管理者の空間で、おじいさまの攻撃を避ける訓練をしてたから思い上がっちゃったのかな?

 

 それでも、彼等はその後もサボらずにうちにくるあたり、必死なのかな?

 ベントレーは純粋に、目覚めただけっぽいけど。

 

 日本でも趣味で無駄に資格試験受けまくる人とか居るよね?

 あんな感じで、色々な知識や経験、スキルを集める事に目覚めたんだよ。


「どうしたお前ら、死にそうだぞ?」


 マーク先生も、ベントレーとジョシュアの疲弊っぷりにびっくりしていた。

 まあ、これが毎朝の日課に加わった変化。

 今年の大運動能力テストは楽しみだ。


 ヘンリーはずっと訓練を受け続けてるからね。

 相当に強くなってるし。

 加えて今年は、ベントレーとジョシュアも改造されそうだ。


 ジョシュアの将来の夢って大商人だよね?

 商人に腕っぷしって必要なのかな?


 そのうち、護衛の要らない商人として名を馳せそうだけど。


 他にも変わったことといえば。


「ねえ、マルコは今日もサロンには来ないの?」

「うーん、まあサロンのお菓子も美味しいけど、僕は自分の時間を楽しみたいし」


 放課後になるとリコとカールが相変わらずソフィアとエマに会いにくるのだけど、僕にも話しかけてくれるようになった。

 そして……


「なんだ、マルコ先輩は来ないのか」

「マルコはどこかに行く予定はあるの?」

「今日はベントレーに誘われて工業区に、色々と見学に行ってみようかなって」

「分かった」


 予定を答えたのに、横から動かないリコ。

 

「ん?」

「私も付いて行く」

「えっ?」

「えって何よ! 嫌なの?」

「俺も付いて行く! マルコ先輩と居る方が、サロンに居るより楽しいし」


 リコとカールがソフィアだけじゃなくて、僕とも行動を一緒にしたがるようになった。

 カールは一応、僕のことを先輩として認めてくれているようだけど。

 リコは……


 まあ、良いけどさ。

 ちょっとエマとソフィアが寂しそう……ではないか。

 微笑ましそうにその光景を見ながらも、僕たちの周りから離れない。


「ん?」

「皆が行くなら、私も行くわよ」

「私も付いて行きたいです」


 エマとソフィアも付いて来るらしい。


 大体毎日がこんな感じ。


 他には……


「マルコ、ディーン……」

「今度の課題の件で話し合おうって言ったよね?」

「迎えに来ましたよ」


 総合普通科にクルリを迎えに行く。

 2年後期ともなると、選択科目もそれなりに本格的になってくる。

 課題を出されて、それを班でこなさなければならない。

 

 今回の課題は班での野外での2泊かけての訓練。

 土日を使っての課外学習。

 王都の近くの森で、実際に宿泊訓練を行うのだ。

 

 勿論、他の授業もこの日は宿泊訓練。

 乗馬であれば、遠乗りとか。

 調理なら王都の近くの街で、お店を借りての経営訓練など。


 宿泊訓練に持ち込めるものは、1人あたり総重量10kgまで。

 10kgまでだけど、実際に訓練を行うにあたってその荷物を持って歩けることが前提。

 無理なら、持ち込める量を減らして必要な物を絞らないといけない。


 そういった相談をすると決めていたので、クルリを迎えにいったのだけど。


 クラス内が妙にざわついている。


「あの……私が迎えに行くのが普通では?」

「女性に迎えに来させるなんて、男としては減点ですね」

「らしい」


 ディーンが言い出したのだけど、確実にこうなることが分かってて言い出したよね?

 クルリが物凄く迷惑そうだ。

 最近ではあまり気を遣わなくなってきてくれた。

 こうやって、嫌な事を嫌と顔に出せるように。


 でもね……


 そういう風に顔に出しちゃうと……


「わ……私が迎えにくると、クルリ嬢に何かご迷惑でも? もしかして、私のことがお嫌いですか?」


 およよと服の裾を噛んで、泣き真似をするディーン。

 やっぱり性格が悪い。

 

 よくよく聞いたら、ディーンが面白がっていることは総合普通科でも有名らしく、クルリも周囲から同情の視線を向けれらているとか。


「最近、皆が少しだけ優しくなった」


 とは本人談だ。

 

――――――

「なあ、マルコ……」

「なに?」

「何故に、お前はいつも私には冷たいのだ」


 そんな平和な日々を送っていたら、ある日帰る前にセリシオに呼び止められた。

 今日はリコとカールの誕生会に招待されているから、早く帰りたかったのに。


「ちょっと姉上の件で相談したいことがあるから、今週末うちに来てもらって良いか?」

「やだ」

「えっ?」

「外でなら良いよ」


 断ったら、セリシオが物凄くショックを受けた顔をしていた。

 が、行くわけないし。

 セリシオの家って王城だし。

 友達の家とはいえ、行きにくいし。


「そうか……だったら、朝迎えに行くとしよう」

「いや……王室の馬車とかで来られても困るし。上級区の入り口で集合ね」

「あっ、ああ……」


 あまり深刻そうじゃないけど、なんか疲れてたな。 

 少しだけ優しくしてあげよう。


 ちなみにリコとカールの誕生会では、やたらと主役の2人に引っ張りまわされた。

 家の中にあるお宝を自慢されたり、料理を自慢されたり。

 勿論、色々とこれでも学んできたからね。

 

「リコのドレス素敵だね、カールもどこかの騎士かと思ったよ」

「なによ急に、気持ち悪い」

「……」

「本当か? マルコよりも強そうか?」

「うん、僕よりもよっぽど強そうだよ! 何かあったら守ってくれるかい?」

「ああ、護ってやるぜ!」


 リコが相変わらず生意気な分、カールが物凄くかわいく思えてい来る。

 まあ、そういうリコも頬を真っ赤にして俯いているから、照れ隠しっていうのが分かって可愛らしいけどね。

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