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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第158話:2年生後期

「うわあ、焼けたねー」

「まあ、色々とあってね」


 夏休みが終わって教室に入ると、懐かしい顔が。

 ジョシュアだ。

 こんがり小麦色……とはいかないが、色白だった彼がなかなかに健康的な肌の色に変わっている。


 それに少しだけ痩せて、筋肉も付いている気がする。

 なかなか、良い夏休みを送れたみたいだ。


 彼の実家のマックイーン家は、僕を誘拐しようとしたこともあるちょっと過激な家なのだが。

 ジョシュアはそんな親についていけないらしく、自分の道を歩き始める事を考えている。


「一応高等科までは出るつもりだけど、その先の自分の拠点をいまのうちに探そうと思ってあちこち旅してたから」

「ええ、早くない?」

「早くないよ。いつどこで、なにがあるか分からないし」


 ジョシュアとしては、自分の親がなんらかしらの不正で落ちぶれないかも心配しているらしい。

 何故に彼はこんなに心配性なのだろうか?

 いつも、割と先の事を考えて行動しているし。


「おはよう!」

「あっ、ベントレーおはよう」

「ベントレーも、ちょっと焼けた?」

「ああ、一応毎日ルドルフ相手に訓練はしていたが、最近では自主トレで筋肉をつける事も始めたから」


 ベントレーもなかなかに、締まってきている。

 というかベントレーの場合って……


「その訓練ってさ?」


 訓練内容を聞いたらカブトから手ほどきを受けた筋トレを、金に物を言わせて器具を揃えて行っているらしい。

 そして、内容もきっちり管理者の空間でやった行程を3日1回3セット。

 お……おおう。


 食べ物にも気を遣ってる?

 大豆と鶏肉とサラダがメイン?

 

 う……うん。

 この子は凝り性というか、ストイックというか。

 自分の興味をひいたものにはとことん、のめり込むタイプだ。


 他にも工房での、色々な社会体験もきちんと続けていると。

 親方衆にはベントレー坊っちゃんには出家して貰って、うちに是非欲しいと言わせているとか。


 うーん……ベントレーは、学校を卒業したら新しいギルドを立ち上げたら良いかも。

 工業関係と商業関係を繋ぐような。

 伯爵家の息子だから、彼自身がそれなりの後ろ盾にもなるし。

 最近は街の人達からの知名度も高い。


 知名度が高いうえに、評判はおそらく貴族子弟の中では断トツだろう。

 ある意味、ジョシュア以上に将来安心のコネを作っていってる気がする。


 ヘンリーが抜けたので、一応これで貴族科の主な活動メンバーは揃った。

 あれこれと夏休みの事を話して、盛り上がる。


「おはようございます。皆さん元気そうですね」

「おはよう、ディーン」

「おはよう!」

「あ、おはよう」


 あまり一緒に放課後に活動することはないが、ディーンも学内で仲の良いメンバーだろう。

 ディーンの後ろに目をやる。

 誰も居ない。 


「はは、今日は別々で来てますよ」

「良かったの?」

「ええ、何やら最近のセリシオ殿下は、フレイ殿下のお相手が忙しいみたいでしてね。クリスとケイ様が付いてますし、私も割と自由にさせてもらってるんですよ」


 それで良いのか側付き候補と思いつつも彼の場合はある程度自由にさせていた方が、良い働きをしそうな気がすると思えるのも事実だったり。

 出来れば、あまり自由にさせて欲しくないけど。

 この子の情報網って、本当に恐ろしいんだよね。

 まあ、蜂や蟻を使って情報を集めてるマサキには敵わないだろうし、その情報を渡されている僕ほどではないだろうが。


「それにしても、マルコもこの夏は大変だったみたいですね」

「あー、色々とね」

 

 フレイ殿下に聞いたのか、ディーンが同情したような目を向けてくる。


「何があったの?」

「ああ……」


 ジョシュアが身を乗り出して、聞いてくるがベントレーは僕から話しているので納得の表情。

 それを見て、ジョシュアが頬を膨らませる。


「ええ? 知らないの僕だけ?」

「フレイ殿下がベルモントに観光に行かれてたんですよ」

「あー……それは、大変だったね。あの人って本当に活発だから一緒に行動するだけでも疲れるのに、ましてや自分の領地だったら何かあったらって気も遣うしね」

「うん、そうだね」


 実際には何かあったんだけどね。

 神様達と揉めてる何か絡みで。


 いまだにマサキの調べたノーフェイスの事は、殆ど分かっていない。

 どこでどういった活動をしていたのか?

 いま、何をしているのかも。


 本気で人に化けて溶け込んだら、発見が神様でも難しいらしいし。


「おはよう皆!」

「おはようございます」


 そこにエマとソフィアも登校してきた。

 この2人は相変わらず、仲が良いみたい。


「おはよう、エマ、ソフィア!」


 それから皆で、和気あいあいと久しぶりの再会を懐かしむ。

 たった3ヶ月、されど3ヶ月……てか、3ヶ月って長くね?


 ちなみに今年はソフィアは、2ヶ月近くトリスタ領に行っていたらしい。

 エマの祖父のトリスタ辺境伯の領地だ。


 国境沿いにあることもあって、色々と珍しい物も多いとか。

 あと、異国の人も。

 といっても、同じ大陸なのでそこまで見た目の差は無いみたいだけど。


「ディーン……たまには、お前も姉上の相手を手伝ってくれないか?」


 それからまた扉がひらく。

 入って来たのは若干疲れた表情のセリシオと、相変わらずキリッとした表情を浮かべているクリス。

 セリシオはディーンを見つけると、スタスタとこっちに近づいてくる。


「「「「おはようございます」」」」

「あっ、ああおはよう皆」


 すでにクラスメイトとして慣れてきているので、今では皆座ったまま挨拶をしている。

 セリシオより遅く登校することも、そんなに気にならなくなってきたみたいだし。

 最初の頃のような、是非顔を覚えて貰いたいというギラギラとした自己アピールも鳴りを潜めているし。


 こうして、バタバタと騒がしい学園生活が始まると、王都に戻って来たんだなとホッとするやら嬉しいやら。


 放課後は皆で街に繰り出す。

 珍しく、ディーンも一緒に。


「セリシオのことは良かったの?」

「構いませんよ。フレイ様は私が居ても居なくても、気にされませんし」

「いや、フレイ殿下が気にしなくても、セリシオが気にしてるよね?」

「そんなことよりソフィア、久しぶりのトリスタ領はどうでしたか?」


 すぐに話題を逸らされた。

 ちなみにヘンリーも来たがったが、ガンバトールさんが王都に付いて来ているらしくすぐに帰らないといけなかったので不参加だ。


 ヘンリーが参加することを、エマも嫌がらなくなった。

 心優しく気の良い友達から、気が付けば近くに居る不気味な子に変わって、いまは暑苦しいウザい子にジョブチェンジしている。

 精神的な被害は相変わらずあるが、不気味な子の時とは全然違うらしい。

 なんていうか……殺意と疲労が時折沸く程度の事と。


 相変わらずエマは歯に衣を着せない。

 本気でそう思っているだろうことも分かる。

 

 が、しっかりとした目標と向上心を持って頑張っている姿には、少なからず好感を持っているとか。

 あと、ある意味でノーテンキともいえるその性格に、呆れつつも楽しませてもらってる部分が本当にちょっとだけあるとも言っていた。

 親指と人差し指で尺を表しながら。

 それ……ほぼ、引っ付いてるよね? と突っ込んだら。


「本当に、その程度って意味よ!」


 と言って、顔を背けていたが。

 どうやらヘンリーに対するトラウマは、殆ど取り除かれたらしい。

 それに前よりも彼女の中のヘンリーの占める割合が増えている気がして、少しだけホッとする。


 こうして、平和な学園生活が始まった。


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