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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第152話:モンロード観光……外からの視点

 私はクレオ・フォン・パトラ。

 南の大陸にあるリバーサイド王国の、貧乏男爵家の6女だ。

 お金は無いのに、兄弟は沢山いる。

 8男8女で、上から数えて13番目の娘。

 当然貴族としての恩恵なんて受けられるわけもなく。


 それでも親のコネで、この国有数の大都市モンロードにある長い歴史を持つ由緒正しきホテルに就職出来た。

 その名も、リバトンホテル。

 うちの親と、ここの支配人が何度かパーティで面識があったらしい。


 ふふふ……親の威光を借りてここで、悠々自適に出世街道まっしぐら!

 となんて行くわけはない。


 紹介状を書いて貰っただけ。

 面接をしてから、採用するかどうか決めますとのことで、全力で頑張った。

 幸い母親譲りの美貌と、姉たちからくすねた化粧品のお陰で肌の張りにも自信があったからね。


 入ってみたものの苦労の毎日。

 なんせ似たような木っ端貴族の、まあ跡目には天変地異が起こっても継げないような人たちがいるわいるわで完全に実力社会だった。


 家格や家柄での争いなんて、当の昔の先輩方の時代に無意味なものと判明している。


 だから、頑張った!

 物凄く頑張った!


 基本的に裏方も良いけど、出来れば涼しい場所でのんびりと働きたい。

 となると狙い目は……部屋付きのお世話係。

 勿論、性的なサービスは一切なし。


 厳格な高級ホテルだからね。

 

 お客様が外出されている間は、基本的に室内の仮自室で色々と雑務や接客接遇のサービスを考える時間。

 とは名目上で、お休みタイムだ。


 なんせ、彼等が居る間はずっと傍に控えているわけだし。

 夜中に何かあったら、必ず起きて対処しなければならない。

 だから、休めるうちに休んでおく。

 これ、この部署の鉄則。

 

 そんな私がこの度、担当することになった人達。


 マサキ様御一行。

 事前情報では、絹織物を扱う西の大陸の問屋さんの跡取り息子との事。

 今回の旅の目的は……単純に観光らしい。


 部屋に入って来た一行を見て、思わず固まる。

 小さな獣人の子供達は窓に駆け寄って行って、外を眺めている。 


 うん……えっと……

 あー、そんなに窓に引っ付くとお召し物が。


 思わず息をするのも忘れて見惚れてしまいそうな、綺麗な色に染められた絹の服に身を包んでいる子供達に頬が引き攣るのを感じる。

 あれがうちにあったら、即行で売り飛ばされているだろう。


 軽く見積もって、大金貨3枚(300万円)くらいはするんじゃ。

 そんな彼らを暖かい眼差しで見つめる1人の青年……

 目を擦る。


 どう見ても10歳くらいの少年。

 彼等とそう大差ない歳のように思えるが、妙に落ち着いている。


 今も窓から見える景色というよりは、窓にはめられたガラスを品定めしているかのような。


「夜に外の灯りをぼかすのには、曇りガラスも悪くないか……」


 そして中々の慧眼の持ち主のようだった。

 割とこの部屋から見る夜景は人気だったりする。

 彼がいう通り、外の灯りがぼやけて幻想的な輝きを産むからだ。


 うん、間違いなくこの人が代表のマサキ様だ。

 他の人達は……


 あらやだ、ワイルド。

 ソファにどっしりと座った無精ひげの、いかにも護衛の恰好をした男性。

 中々にカッコいい。

 この一行の中にあって少し浮いているが、それでも同行しているということはかなり腕が立つのだろう。

 

 そして、一緒に入って来たもう1人の護衛の男性が、テキパキと荷物を片付けている。

 あら、いけません。

 おっしゃってくださったら私……が……


 声を掛けようと足を踏み出そうとした瞬間に目があいます。

 そしてニッコリと微笑みかけて来られました。


「こちらは私の仕事ですので」


 先に言われてしまった。

 そう言われてしまえば、こちらからはこれ以上は何も言う事が出来ない。

 深く頭を下げて、一歩下がる。


 それにしても荷物を片付けながらも、私の僅かな動きを見逃さないなんて。

 相当に優秀な護衛だと思う。


 只者じゃない人を護衛につけて、それでいて凄く慕われているのが分かる。

 これは……気合を入れて対応しなければ。


 あー、あちらの女性陣には癒されます。

 まさに、欲望の塊。

 言葉が悪かったですわ。

 純粋で、素直そうな方達。


「ここ……普通に凄すぎだろ」

「いえ、マサキ様にはこのくらいが相応しいかと」

「わぁ! これ食べても良いですか?」


 見たまんまの言葉が、3人から飛び出してきて安心する。

 どうやら、それなりに人間味のありそうな人達で良かった。


 たまにちょっとした動作だけで、剣を抜く護衛の方もいらっしゃいますし。

 その点、彼等は大丈夫そうですわね。


 見たところ、女性の方は護衛の1人のようですが。

 護衛対象そっちのけで、テーブルの上の果物に目が釘付けです。

 そして小さな獣人の女の子も。

 ああ、涎!

 涎が超高級なおべべに!


 この人たちはそういったことは気にしないのでしょうね。

 服と同じ素材っぽいハンカチで、姉と思われる獣人の娘が拭いてあげてました。

 ああ……いけないけない。


 彼等にとっては、ただのハンカチなのでしょう。


 それよりも、私もきちんと仕事をしないと。

 恐らく代表で間違いないだろう少年に近づいて頭を下げる。


「長旅お疲れさまでした、今日から3日間、皆様のお世話係を務めますクレオです」

「よろしくクレオさん」


 なんとも落ち着きのある涼やかな対応。

 思わず、くらっと来てしまいました。

 大分歳が離れているだろうに、私ったら。


 これ以上、この子の笑顔を見ているのは危険ですわね。

 そうだ、子供達の為に果物を剥いてさしあげないと。


「よろしければ果物をお剥きしましょうか?」


 そう思って、小さな女の子に声を掛ける。


「ああ、そうだね。クコ、好きなのをクレオさんに教えてあげて」


 すぐ後ろから少年の声が聞こえて、思わず胸が高鳴った。

 近い、近いですって。


「うんっ!」

「マッ! マサキ様、私も!」

「ああ、ローズも」

 

 なんと! 

 クコ様の可愛らしい返事に、思わずにんまり。

 と思ったら、私より年上と思われるローズ様まで、マサキ様におねだりを。

 本当に、この人って子供なのでしょうか?


 その後も、何か手伝えることはないかと必死に様子を伺う。

 だが、そのことごとくを獣人のトト様と、護衛のジャッカス様に奪われてしまう。


 良いです……

 マサキ様を手伝えなくても、クコ様とマコ様、ローズ様がいっぱい頼ってくれますし。


 ひたすら、果物の皮むき人形と化してますが。


 取り敢えず果物の皮むきの合間を縫って、ソファでぼんやりと天井を眺めているルドルフ様にお水を差し出す。


「ども」

「ふふふ、お気になさらずに」


 ちょんと指先が触れたが、こんなことは日常茶飯事。

 お客様によっては、グッと指を重ねて来られる方もいらっしゃいますし。

 これは、事故の範疇ですわ。


 あらやだ、お顔が真っ赤ですわよルドルフ様。

 意外とワイルドな出で立ちとは裏腹に、初心なのですね。


 少しだけ気分が落ち着く。


 先ほどからジャッカス様の、不審な行動が目立つ。

 やたら壁を触っていたり、テラスに出て何かを確認している。

 何をしているのだろう?


 この疑問は同行していた、獣人の男の子が解消してくれた。


「ジャッカスさんは、何をしてるの?」

「ああ、マコか。まあ、隣の部屋との壁の厚さを確認したり、窓やバルコニーに侵入出来るような穴が無いか確認しているのですよ」

「へえ……それ、いま必要?」

「いかなるときも、油断は禁物ですよ。貴方達が何も気にせず楽しむためなら、このくらいはしても損は無いですから」


 護衛の鑑だった……

 

 その後はマサキ様の会話を盗み聞き……

 といったら言い方が悪いですが、言葉から情報を読み取ってお客様の先回りをするのがプロなのです。


「凄い部屋ですが……高かったんじゃ?」

「うーん? 特に問題無いかな? トトが着てる色付きの絹のチュニックで2泊くらいは出来るかな?」


 トト様の質問に対して、なんでもない風に。

 本当になんでもない風に応えるマサキ様。


 よ……余裕が違い過ぎますね。

 あと、恐らくですがこの国でその絹織物を売れば、7泊は出来るのではないかなと。


 部屋付きになって3年。

 ベテランを自負してましたが、翻弄され続ける3日間になろうとは……

 この時は、予想もしませんでしたわ。


――――――


本当は2人分くらいいきたかったのです、眠気が限界なので寝ます(;´・ω・)

起きられたら、続き書きますが……仕事まで爆睡かなと(=_=)

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