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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第134話:動き出す者達……主にマサキ(なお、悪魔たちは表立って動いてない模様)

「何か、街の様子がおかしい?」

「ええ、昨日だけで強盗が3件、傷害が6件、窃盗が12件、喧嘩が18件と犯罪が集中的に起こっております」

「ふーむ」


 ベルモントの冒険者ギルドでジャッカスが、ギルマスとサブマス相手に地味ながらも異常な件数をあげた犯罪を報告している。

 街を警戒していた蜂達も、どこか街の住人達や観光客の気持ちが荒ぶっているのを感じている。


「他にはジャジャの森で、多くの魔物が森の入り口付近で目撃されております」

「スタンビートの予兆か? それで、その魔物達は?」

「いえ、というより何かに森の深部から追い立てられたかのような印象が……ただ、C級以上の冒険者からすると街の近くでそれなりの魔物が狩れるということでボーナスステージ扱いですね」

「それは頼もしいな」


 そして、森の入り口付近で熊や大型の狼、大蛇などが目撃されていた。

 こっちも、虫達から報告があがっている。

 ベルモント自体に、なんらかの異変が起きているのは間違いない。

 

「取りあえず、新人たちには森に近づかないように言っておこう」

「ただ、そうなると彼等の生活の手段が……」


 ギルマスの提案に、サブマスが難色を示す。

 それに対して、ジャッカスは1つ頷くとギルマスの机の上の依頼書を指して2人の視線を促す。


「こういう時こそ、滞っている街の雑務を行ってもらいましょう。F級の新人(ルーキー)にこそ相応しい内容が多いですし……それと、E級冒険者の者達はC級以上の冒険者と組ませて、ジャジャの森で目撃されている魔物の討伐と調査を」

「なるほど……上級冒険者とE級を組ませて、上の戦いを見せつつも実地研修を行って全体のレベルの引き上げを行うと」

「加えて夢見がちな新人には、この機会に住人と触れ合わせつつ住人の抱えている問題を解決させて、伝手を繋ごうという事ですね」

「ええ、私達の仕事は住人の方々の協力と理解あってのことですから。彼等に対する感謝の気持ちを忘れた冒険者など大きな意味では役立たずでしかないですからね」


 ジャッカスが色々と考えて提案したことを、2人とも前向きに捉えている。

 すぐにでも取り掛かれるように、受付の主務の男性に指示を飛ばす。


 ギルドのロビーにはまだ多くの冒険者が集まっていた。

 特に新人達が一日の収入を確保するために、掲示板の前で依頼書の写しを吟味している時間。

 そこにギルド職員が割り込んでいくと、ジャジャの森関連の依頼を全て片っ端から引っぺがしていく。


「おい! 何をしてるんだ」

「なんで、依頼書を剥がしてるんですか?」


 ルーキー達から批難の声があがっているが、職員は彼等を一瞥しただけで無言で作業を続けていく。


「くそっ!」


 慌てて手を伸ばして、まだ剥がされていない依頼書に手を伸ばす者もいる。

 が、


「って! 何しやがる!」


 すぐに職員がその手を肘で払い落して、その依頼書を剥ぎ取る。


「すぐにサブマスターの方から説明があります。取りあえず、ジャジャの森関連の依頼は全て撤回します。もし、ジャジャの森で自由依頼の採取を行ったとしても、一切買取は致しませんので悪しからず」


 今の騒動でズレてしまった眼鏡の端をクイっと指の腹で上げると、依頼書に手を伸ばしていた冒険者を睨み付ける。


「ひっ」


 その迫力に、新人の冒険者達は顔を青くして棒立ちになる。


「取りあえず、すでに出て行ってしまった者達は私の方で回収してきましょう」

「頼めるか?」

「町の犯罪の方は?」

「そっちは、衛兵の管轄です……が、たまたま居合わせたなら、手伝うようには伝えておいてください。衛兵からの報告書があれば、臨時報酬も約束すればいいかと……そっちの方は、マルコ様の伝手で伝達しておきます」

「ああ、何から何まですまんな」


 ジャッカスは話は終わりとばかりに、席を立ちギルド長室を出てそのまま外へと向かって歩き始める。

 その姿を見た数人の冒険者が、ジャッカスの周りに集まる。


「やっぱり、偶然じゃ無さそうなのか?」

「こっちの情報筋じゃ、ジャジャの森には取りあえず何かしらの災害級の魔物……もしくは、人為的な工作が行われている可能性が高いとの事だ」

「概ね、こっちで集めた情報と一緒ですね」


 ジャッカスに話しかけて来たのはキアリーをはじめとした、B級以上の冒険者達。

 彼等も敏感に町の異常を感じ取っており、独自に調査を始めている。

 これはジャッカスの影響というよりも、マルコがこれまでギルドを相手に培ってきた町と冒険者ギルドとの関係が大きい。

 

 マルコは自身でも様々な依頼を、そして自身が発案したことはマイケルを通じて公共事業という形で冒険者ギルドに対して依頼に落としていた。

 彼等の中には、そういった仕事のお陰で食えない時期を食いつないでいた者も多く、またその際に知り合った街の住人とも親交を深めていた。


 街に恩義を感じ、また街の住人に対しても温情や愛着を持っている彼等は、他の街の冒険者と違い街に何かが起こったら自発的に情報を集め、依頼があろうが無かろうが自発的に動くようになった。


 結果として、冒険者自体の街の中での地位も向上し、この街は冒険者といい関係を築いてきた。

 そしてそれが形として、いま動き始めている。


 その事を誇らしく思いつつ、マサキがジャッカスに指示を飛ばす。


『取り敢えずこっちからも色々と動く。犯罪の予兆があったら、例の隠れ家に指示を飛ばすから動ける者を数人待機させておいてくれ』

「はっ!」

『一応、前回同様悪魔の線も考えられるから、マハトールと虫達もマルコに送らせておいた』

「ありがとうございます」


 街の犯罪に関しては、何らかの精神的支配が住人に行われている可能性が高い。

 とはいえ、犯罪を起こさせるようなレベルじゃない。

 そういったスキルを得意とする女王蜂や女王蟻、さらには意外と性フェロモンを扱うエキスパートのダニを使って精神感応系のスキルの出所を探ってもらっている。


 蛾や蝶にも協力をお願いしている。

 が……現在分かったのは、負の感情を同調増幅させる精神波は感じ取れてはいるが、数か所から発せられているとの事。

 また、共鳴、反射などを使って出所を巧妙にカモフラージュすることで、特定を妨害されている。


「マハトールの頑張り次第ってところか……」


 マハトールの方に画面を移す。

 街の近くに潜む蝙蝠達を眷族化して、街の中を虱潰しに探させている。

 蝙蝠達の飛行を阻害する気配を探らせているとのこと。


 こっちも、もう少し時間が掛かるだろうとの事。


――――――

「このような状況です、今日は殿下達には宿で大人しく過ごして貰うようにお伝えください」

「うん、分かったよ」


 ベルモントの屋敷の警備長のヒューイの言葉に、マルコが神妙な顔で頷く。

 が、内心では1日とはいえ、フレイ達の相手をしなくて済んだことにホッと胸を撫でおろしている様子。


「マルコ様、ちょっと宜しいですか?」


 丁度ヒューイとの会話が終わった頃に、アシュリーの教育係のメイドのキャロが部屋を訪れる。

 

「どうぞ」


 キャロの声しか聞こえない事に、ちょっとした不安を覚えつつも中に入るように促す。


「失礼します、それがアシュリーの事なのですが」

「彼女がどうかしたの?」

「いえ、朝から体調が優れないらしくて、今日はお休み頂きたいとのことで」


 ただの体調不良ということに、不謹慎ながら少しだけ胸を撫でおろす。

 とはいえ、そっちはそっちで不安だったり。


「体調が優れないって?」

「軽い頭痛と発熱、ただの風邪かと。キャンプ等での疲れが出たのだろうことでした。ただ、感染るとまずいので大事を取ってお休みしますと伝えてくださいと彼女のお父様から言われました」

「うん、分かった。後でお見舞いに「行ったら、彼女が休んだ意味が無いでしょう」


 まあ、確かにそうなんだけど。

 そういう問題じゃないんだけどな。

 マルコがモヤっとした顔をしている。


「これは、領主とメイドじゃなくて、その……僕の大事な人だから行くんだよ」

「まあ……でも、そうですね。だったら、一応マスクなど色々と準備してから午後にでも、お伺いするように伝えておきましょう」

「宜しく」


 ちょっと照れた様子で言い切ったマルコに対して、キャロがにんまりと微笑む。

 それから、パタパタと部屋から飛び出して……すぐに戻ってくる。


「失礼しました」


 挨拶もしてなければ、扉も締めていなかった。


「ああ、お見舞いの品はこっちで適当に見繕っておきますので、マルコ様はフレイ殿下達に今日は宿で暇をつぶして貰うよう伝えて来てもらっても良いですか? そういうのは流石にホスト本人が行くべきかと」

「分かってるよ」

「それと、一応こちらの都合で足止め致しますので、暇を潰せるような物や企画をお届けしてください」

「げっ」

「げってなんですか! マルコ様のお客様ですから」

「うう……なんか、キャロがちょっとずつマリーに似てきているような」


 それから、キャロが優雅に一礼して部屋を出るとゆっくりと扉を閉めてパタパタと走っていった。

 足音が……


 まあ、可愛らしい奴といえばそれまでだけど。


―――――

 準備を整えたマルコが、フレイ達が宿泊している宿へと向かう。

 馬車を宿の前に止めて、中に入るとクラークの男性に声を掛ける。


「ごめん、ちょっとフレイ殿下に用事が」

「えっ?」


 マルコの言葉に、クラークの男性が首を傾げる。


「あの殿下達なら朝方、マルコ様の専属のアシュリー様がお迎えに来てましたが」

「えっ?」

「なんでも、ジャジャの森で冒険者体験の続きと卒業試験を行うとの事で」

「……いや、そんな」

「護衛の方も用意されていたじゃないですか」


 意味が分からない。

 アシュリーは今日は体調不良で、屋敷での仕事は休んでいる。

 それに護衛に当てられるような人材は全て屋敷に揃っていた。


「マルコ様はジャッカス様と森の奥に居るから、そこに辿り着くことが最終試験と……そしてキアリー様とローズ様が森の入り口で待っていると」

「えっ、あっ……ああ、そうだったっけ?」

「ですよね?」


 ……

 いやいや、おかしいだろ。

 なんで、このクラークはそんな詳しい内情を知っているんだ?

 そして、その説明を受けたマルコがあっさりと受け入れてしまっている。

 誤魔化すという意図があるのだろうが、それ以前の問題だ。


 まるで、ここでマルコがすんなりと引き下がるように誘導されているかのような。


 いや、それよりもまずは殿下達の方が先だ。


 最悪な事に、今日のこの宿までの護衛はファーマとローズ。

 ジャッカスは森に、新人冒険者達を回収に向かっている。

 が、こっちは不幸中の幸いとも取れる。


 慌ててジャッカスに指示を飛ばす。


『そっちにフレイ達が向かった、アシュリーが連れて行ったらしい』

「えっ?」

『それと得体のしれない護衛も一緒に居るとのことだ、気を付けろ! 何者かが介入しているのは間違いないが……たぶん、人じゃない』

「はっ、分かりました! 直ちにフレイ殿下の捜索に当たります」

『ああ、他の冒険者達の回収は?』

「一応、登録のあった者達の回収はあらかた。あと2組だけです」

『そうか、そっちは虫達に全力で捜査に当たらせろ』


 それだけ伝えるとジャッカスとの回線を切って、マルコに話しかける。


『マルコ、あの受付の男もたぶん操られている』

「えっ?」

『取り敢えず、あの男の対応は後回しでも良いが、誰か人を付けておけ』

「うん、分かった」


 急に慌ただしくなってくる。

 今回は失敗は出来ない。

 なんせ、王族が救出対象だ。

 何かあったらベルモントはもとより、アシュリーに確実に危害が加えられる。

 その事をマルコに伝える訳にはいかない。


 このまま冷静さを失ってしまったら、相手の思うつぼだ。

 王族が害されたとなったら、手引きしたアシュリーは確実に手打ちだな。

 子供だからといって、許されるようなものじゃない。

 仮に操られていたとしてもだ。

 

 にしても、ケイもユリアも気付かないとか。

 他の護衛達は何をしてるんだ!

 クソっ!


 その時虫達から、犯罪に関する詳細の内容が伝わってくる。

 その傷害で捕まった6人全員が、王都から来たフレイの護衛。

 町民に肩をぶつけられて、ちょっと生意気な態度を取られただけで頭に血が上ってつい?

 何故、そんな事をしたかは本人達も分かっていないと。

 

 今朝になって急に隠し持っていた身分証を提示して、彼等が滞在している本当の目的と昨日の行動についての自供があったと。

 どこかフワフワとしていた様子が一転、かなり焦った様子で釈放を求めているとか。


 役立たずどもが!

 思わず悪態をついて、椅子の肘置きを叩きそうになるのをグッと堪える。


「マハトール! なんでもいい! マルコの護衛のファーマって曲刀使いをマルコから引き離せ!」

「えっ? あの人無茶苦茶強いですよね? そんな無茶な」

「手段は問わんと言っているだろう!」

「……」

「マルコを強引に攫えば良いだけじゃねーか! その首の上に付いた飾りを少しは働かせろ! 誘拐対象が協力的なら簡単だろうがっ!」

「はいっ!」

「マルコとローズには協力させる! 精々悪魔の仕業として、それらしく振る舞えグズがっ」

「ひいっ」


 おそらく街に悪魔が数体放たれているはず。

 奴等が尻尾を出さないなら、こっちの手持ちの悪魔を投入して街に悪魔が居るという危険性を周知させる。

 誘拐が成功したなら、街の衛兵達も捜査に本腰をあげるだろうし。

 スレイズベルモントの護衛が証言したなら、悪魔が侵入した説もかなり真実味を帯びるだろう。


 悪魔の対処は取り敢えずこれでどうにか出来るとして。

 それまでに、犯罪を大量生産されて衛兵達の動きを阻害されても困る。


 ジャッカスの手立ての者達に対しては……ローズを当てるしかないか。


「これから悪魔が僕を攫いにくるから、ローズはうまく演技してそれを手伝って。それから、それが終わったらジャッカスの隠れ家に居る人員に、街の警備に当たらせて」

「えっ?」

「宜しく」


 マルコが小声でローズに伝えると、ファーマから少し距離を取る。

 タイミングは宿から出て、馬車に乗り込む瞬間。

 馬車の馬を操って、ファーマが御者台に乗った状態で馬車を出発させる。

 そしてマルコを掴んだマハトールが上空に移動。 

 ファーマの視界から外れた隙に、マルコには転移を使ってこっちに来てもらう。

 

 同時にマハトールには一度戻ってもらって、ファーマの足止め。

 数分で良い。

 悪魔の仕業だという事がしっかりと伝われば。

 

『いまだ!』

「ヒヒーン!」

「なっ!」


 ファーマが御者台に乗りこんで、ローズが踏み台を用意している隙に馬に向かってマハトールが魅了(チャーム)を飛ばす。

 そして、一気に駆け出す馬。


「ちっ!」


 ファーマが必至に手綱を引いて、馬車を止めようとする。

 そして……


「きゃっ!」

「ローズ!」


 マハトールが軽くローズを突き飛ばす……振り。


「マルコ様っ!」

「敵襲かっ!」


 そして、マルコを抱きかかえて、一気に翼を羽ばたかせ上昇するマハトール

 ファーマが一瞬で馬を捨てようとして……

 躊躇う。


 いま暴れた馬のコントロールを手放せば、街の住人に被害が出る。

 かといって、ここでマルコを見捨てる判断はあり得ない。


「すまんっ!」


 一瞬の逡巡の末に、馬の側頭部を剣の柄で思いっきり叩き付ける。

 そのまま横倒しになる馬と、コントロールを失って壁にぶつかる馬車。

 なんて、馬鹿力だ。


「ローズ立てるか」

「頭が……」


 なんらかしらのスキルの影響で、意識が混濁しているような演技をするローズ。

 うん微妙に大根だけど、ファーマも気が焦っているのか気にした様子もなく舌打ちすると空を見上げる。


「逃がすか!」


 嘘だろ!

 そのままマハトールの翼目がけて手に持った曲刀を投げつけると、止まった馬車の屋根に飛び乗って建物の屋根まで一気に駆け上がる。


「ひいっ!」


 翼に当たる直前で、蜂の風操作によって軌道がそらされたそれが……マハトールの頬を掠める。

 これで尻に火が着いたのか、マハトールも一気に加速する。


 が、ファーマがあり得ない。

 凄い速さで建物の屋根を移動して、一気に距離を縮めてくる。

 これじゃあ、視線が切れねーじゃねーか!


『マルコ! マハトールごと転移しろ! マハトールはそれらしいポーズを取って、適当に煙幕を作り出せるか』

「ええ、えっと……ああ、無理です! なんにも思いつかない」

『だあっ、役立たずが!』

「捕まえたぞ!」


 そしてマハトールのすぐ後ろにまで肉薄するファーマ。

 が、ナイフを投げる直前でファーマの動きが鈍る。

 まるで何かに足を引っかけたかのように。


「粘糸だと!」


 見るとベルモントの街に忍ばせている中型の蜘蛛が、数匹ばかりで粘糸のスキルをファーマに向かって放っていた。

 伸びきった糸の反動で、一気にマハトールとの距離が引き離されるファーマ。


『お前の得意属性は闇だろうが! 闇の球体でも作って目くらまししとけよ!』

「!」


 はっ! じゃねーんだよ!

 聖属性に触れさせ過ぎた弊害がここで出てくるなんて。


「フハハハハ! よくぞここまで着いて来たな! 楽しい鬼ごっこだった!」


 マハトールがマルコを宙に浮かせて、高笑いしながら巨大な闇の球体を作り出す。


「待てっ!」


 その中にマルコを放り込むと自身も左手を伸ばして、ゆっくり手の先からその闇の球体に潜り込んでいく。

 うん、落ち着いた途端にこれだ。

 この調子の良さでいつも失敗している癖に。


 徐々に体の半分が球体に隠れ、そして……


「また、遊びましょう」


 ニヤリと笑って球体に完全に体を隠すと、残った右手をパタパタと振って……球体が中心に一気に萎んで消える。

 まあ、マルコが左手で全て吸収したわけだが。

 ファーマから見たら、マハトールがマルコをどこかに連れ去ったように見えるだろう。


「くそがっ!」


 ファーマが地面に叩きつけられる瞬間に糸を切って、身体を捻って壁を数回蹴って勢いを殺すと地面を転がって衝撃を完全に消す。

 そしてそのまま、膝をついて地面を悔しそうに殴る。


「あの悪魔……絶対に殺す……」


 うわぁ、物凄く恨まれてますよマハトールさん?


「マスター……」


 横でタブレットごしにその様子を見ていたマハトールが、物凄くげんなりしている。


「次に会ったら、いきなり殺されないように気を付けろよ?」

「その時は、心の底から恨みますからね? 毎晩化けてでますから」

「大丈夫、その時こそ完全に左手で吸収してやるから」

「……人でなしですね」

「悪魔に言われたくねーな」


 思わず大笑いしてしまいそうになったが、それどころじゃない。

 まずはフレイ達の場所を探さないと。

 ベルモントの街の方は、ファーマとジャッカスの手下達が上手い事どうにかしてくれるだろう。

 悪魔たちの処置はあっちに任せたいところだが。

 一体、何体の悪魔が忍び込んでいるのかもまだ明白じゃ無いし。


 厄介な状況は変わらず。

 それでも、最悪だけは回避できそうだ。


「マルコ……今回は俺が動く」

「えっ?」

「ちょっと、たまには俺も働かないとな」

「うーん……」

「なんとなく、今回の相手とは俺も因縁を感じてるし」


 なんか、心に引っかかるものはある。

 それに、今回の黒幕とは初めてじゃない気もするし。


 心当たりは全く無いのだが。

 マルコから渋々と身体の主導権を譲り受けると、取り敢えずタブレットでジャジャの森を映し出す。


「マサキ様……これ相手に、ちょっと1人じゃ無理っぽいです」

「あー……取りあえず姫様助けなきゃだから、もう少し頑張って」


 森の奥で激しく土煙が上がっていた。

 そっちを見ると、ジャッカスが紫電を走らせる巨大な蛇に追いかけられていた。

 鎧がところどころ焦げているし、髪が一部チリチリだ。

 もっと早く、助けを呼べば良かったのに。

 こっちも、それどころじゃなかったけど。


 それに……雷って虫達もあんまり好きじゃないんだよね。

 まあ、頑張れ!

 てか他にも上位冒険者が森に向かってるんだから、そいつらに助けを求めろよ。


 さてと、フレイ、フレイっと……

ようやく普通の文量、急がずに書ききりました♪

さて、盛り上がって参りました(*´▽`*)


感想等々、お待ちしておりますm(__)m

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