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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第133話:観光と幼馴染

 フレイ殿下が来て2日目に突入して、ようやくアシュリーも参加することになった。

 とはいえ、今日はオセロ村での工場見学。

  

 今回も工業体験。

 一応、これでオセロ村の産業を王族が知ることで、所謂元祖のお墨付きが貰えるに等しい。

 とはいえ、今回は時間の掛かるものを選ばないといけない。


 何故なら、少しでも彼等のこの街での滞在時間を削りつつ、良い思い出を残して貰わないといけないから。


 ということでカレイドスコープ作りに挑戦。

 流石に硝酸銀を使った鏡の作り方は、マサキも知らない。

 そもそも硝酸とはなんぞやといった話である。

 ところが、ここは不思議世界のファンタジー世界。


 謎の酸はいっぱいある。

 酸の毒沼なんてものもあるくらい。


 一応それらを集めて研究はしているが、それ自体に色が付いているため難しい。

 また、銀を溶かすにしても、完全に腐敗させたり。

 塗布したガラスが溶けたりと、いまだ難航中。


 銀を磨いた鏡でも良い気がするけど。

 そういえば、銀粘土の研究も実用化に成功したが、本当の意味での完成にまでは届いていない。


 取りあえずは、凸面鏡を作る体験から。


「ガラス作りなら、この間やったわよ」

「今度は、これを応用して鏡を作りたいと思います」


 ちなみに凸面鏡の技術は、すでにあったり。

 でも、ガラス製造においてはオセロ村は、他の地域より一歩前に出ている。


 僕の言葉に、フレイ殿下が首を傾げている。

 

「鏡を作るのよね? ガラスって透明じゃない」

「そうですね、透明ですね……だから、これを使います」


 そして取り出したるは、鉛のインゴッド。


「先生お願いします」


 そして、工房の親方にバトンタッチ。

 

「鉛ってのは、溶けやすいのはご存知ですよね?」

「そうなの?」

 

 そこから?

 いやいや、学校で習ったでしょ。

 あれ?

 習わないのかな?


 高等科にまでは習うかなと、思ったけど。

 だって、溶かした鉛って戦争でも使うよね?

 魔法があるから、使わないかな?

 

 まあ、いいや。


「溶けやすいのです」

「へえ」

「そうなんだ」


 ユリアも知らなかったらしい。

 が、ケイは腕を組んで得意そうな表情。

 どうやら、彼だけは知っていたらしい。


 アシュリーも……当然知っていると。

 いま、アシュリーはフレイ殿下の横に立っている。

 うん、僕の専属メイドなんだけど?


 フレイ殿下が離してくれない。


「それで軽く熱したガラスにこの溶かした鉛を掛けて、上手にならしたあと……」


 親方がガラスに鉛を掛けて、薄く均等になるようにガラスを傾けながら伸ばしていく。

 それを冷やして固めると……


 ほらっ


「おお!」

「鏡になった」


 鉛は溶けやすい分、冷めて固まるのも早い。

 あっというまに凸面鏡が出来上がる。


「あとは、薄い板を溶かした鉛に潜らせて表面に膜を作る方法などなど、色々と考えてはいるが」


 そう言って、鉛のプールを持ってくるとそこにガラスの板を潜らせる。

 確かに膜がはって鏡っぽくなっているが、そこまで綺麗に反射しない。

 どこか曇っている。


「どういうわけか、はっきりと映らねーんだ」

「難しそうですね」

「ああ、やっぱり銀の方が良いんだろうが……その銀を液体にするのに苦心しててな」

「親方、口調が……」

「はっ、申し訳ござりません」


 申し訳あるのか、ないのか良く分からない謝罪になっている。

 一応、敬語講座をしたのはしたが。

 早速、襤褸がでてしまった。


「別に気にしなくてもいいわよ。お忍びだし」

「まあ、慣れないことをして、説明があやふやになるのも困りますしね」


 フレイ殿下と、ユリアさんに言われて普通通りに話して良いと言われる。

 うんうん……見る人が見たら、大変なことになりそうだけど。


 まあ、当人達が良いと言っているのだから良いのだろう。


 それから、数時間かけて凸面鏡でカレイドスコープ、万華鏡を作る。

 鏡の質はいまいちだし、サイズや加工が難しいので大型なものになってしまったが。

 それでも、十分にみられる物になっている。


 筒状にしたガラスの内側にも鉛を塗ったのが良かったのか。

 ちょっとぼやけているが、それがなかなか幻想的な雰囲気を醸し出している。


「なかなか、面白いじゃない」

「あっ、殿下! それを見ながら歩かれると」

「あいたっ!」


 出来上がった万華鏡を回しながら歩いていたフレイ殿下が、案の定顔を壁にぶつけるというお約束をした。

 そして、目の周りに丸い跡が。

 誰も笑う事が出来ない……


 取りあえず、戻るまでに治るといいけど。


 工房を出た時に、通行人がギョッとした表情を浮かべていたが。

 そのうちの数人は、ちょっとだけ顔が青ざめていた。

 あと、怖かった。


――――――

「お疲れ」

「はい、いまからお茶を用意しますね」

 

 無事今日も1日乗り切った。

 フレイ殿下達を宿に送り届けて、アシュリーとベルモントの屋敷に戻る。

 

 部屋に入ると、アシュリーがお茶を淹れてくれる。


「2人の時くらいは、普通に喋っても良いのに」

「まだ、仕事中ですから」


 うーん。

 確かに丁寧な喋り方のメイド姿のアシュリーも可愛いのは可愛いけど。

 折角、久しぶりに会ったのだからもっといつも通りにリラックスしてもらいたい。


 部屋を出て行ったアシュリーが、少ししてお盆にティーセットを乗せて戻ってくる。

 紅茶の香りが部屋中に広がって、なんとなく気持ちが落ち着いて来る。


 それにしても……


 半年合わない間に……


「アシュリー、横に来て」

「えっ?」


 アシュリーを傍に呼ぶ。

 それから、僕も立ち上がってアシュリーも真正面に立つ。


 黙ってアシュリーをジッと見つめる。

 アシュリーが頬を染めて、首を傾げている。

 それから彼女も、こっちを見つめてくる。


 やっぱり……


 ちょっとだけ、アシュリーが僕を見降ろしている。

 

「アシュリー……背が伸びたね」

「えっ?」


 自分の頭の上に手を置いて、アシュリーの方に向けて水平に動かす。

 彼女の鼻と口の間に手が当たる。


 ……


「大きい女の子は嫌ですか?」

「いや、小さい男の子の方が嫌じゃないかなって……まあ、いいや。そのうち僕の方が大きくなると思うけど」


 取り敢えず、明日から牛乳をたくさん飲もう。

 それよりも、僕よりずっと背が高くなっていて恥ずかしそうにしているアシュリー。

 その彼女が顔の前に手を持って来たときに、それが目に入る。


 再開したときから、チラチラと視線に入って来て気になっていたそれ。

 自分で買ったとはちょっと思えないんだよね。


「その腕輪、よく似合ってるね」


 取りあえず牽制。

 こういう時に、ストレートに問い詰めたらいけない。

 マサキの経験にもあった。

 女性の装飾品に、勝手な憶測であれこれ言うと間違った時に大惨事。


 あと、ぶっちゃけていうと似合ってない。

 いや、それ自体は似合っているけど、装飾に嵌められた宝玉が禍々し過ぎる。

 正直、何かしらの何かが封じられてそうな雰囲気。


「あっ、そうそう……誰かに貰ったんだけど、誰に貰ったか覚えてないんですよね」

「えっ? 何それ? そんな昔に貰ったもの?」

「それが……昨日貰ったような気が……」

「大丈夫? 昨日のことなのに思い出せないの?」


 意味が分からない。

 こんな立派なものを、それも昨日貰って置いて誰から貰ったか思い出せないとか。

 あげた相手が不憫だ。


 それ以上に、そんな得体のしれないものを嵌めているアシュリーもちょっと……


「ええ? なんか不気味じゃない?」

「えっ? そう? 私は可愛いと思うけど」


 やばい……

 地雷を踏みかけた。

 彼女は、この腕輪を気に入っている。

 

 ということは、この腕輪を乏すのは得策じゃない。

 かといって、どういった切り口でいけばこの腕輪をはずさせることが出来るのか。


 ……


 気まずい沈黙。


「貰った人が分からないのって……」


 駄目だ。

 どう言い繕っても、気味が悪いという答えにしか辿り着かない。

 どうしたものか……


 もしかして、なんらかしらの呪いの効果でもあるのだろうか?

 いっその事、吸収して解析してしまおうか。

 でも、そんな事したらきっと彼女も不思議に思うだろうし。

 

 眠らせて……


 いやいや、いきなり僕の部屋でパターンと寝たら色々と疑われるのは僕だ。

 うん……


 どうにも出来ないね。


「マルコが気に入らないなら、外すけど」

「えっ?」


 やった!

 うん、気に入らない!

 とっとと、外しちゃって!


「いや、出所が分からないのが気になっただけだから、アシュリーが気に入ったのなら良いんじゃないかな?」


 とは言えない、ヘタレな僕。

 まあ、きっとチャンスはまだあるだろうし。


「ただ……その日来たお客さんがこれをくれたような気がするんだけど、パパも覚えてないのよね」

「うーん……本当に不思議な人だね」


 おいおい、マスター……

 ボケるのは早いよ。

 これで、マスターに聞いたら分かるかもという一縷の望みも途絶えた。


 取りあえず、これ以上気にしても答えは出ないし。

 うん、まあいっか。


「ベルモントの学校はどう? 楽しくやってる?」

「うーん、まあ友達も増えたけどね。ただ、皆がマルコの事を聞きたがってて、そのために友達になったのかーって感じ」


 腕輪の件で不機嫌になったのがきっかけで、前みたいな喋り方に戻っている。

 と思えば、その腕輪も悪い奴じゃない気が……いや、めっちゃ宝玉が怪しいから。


 うー、手に取って確認したい。


「あはは、まあ、この街の貴族ってうちくらいしかないからね。王都みたいに、あっち向いてもこっち向いても貴族って事はないしね」

「そんなに貴族様が多いの?」

「ごめん言い過ぎた……」

「というか、マルコの友達が皆貴族様だからだよね?」


 アシュリーの言う通りだ。

 貴族の通う学校の、上級貴族専用のクラスに通ってる訳だし。 

 そりゃ、どこを見ても貴族だらけだ。


「授業はどんなことをやってるの?」

「うーん、今は農業と工業についての職種とか、生産関係の事かな? どこで何を作っていてって話。覚える事が多すぎて、頭がパンクしそう」

「その辺りは、やっぱりこっちも一緒かな? メインの授業自体はそこまで変わる事は無いよね」

「そりゃ、教科書だって一緒のものを使っているもんね」


 基礎科目の教科書は、国内では統一してある。 

 といっても、大きな都市にある学校だけだが。

 流石に、村にあるような教会の開いている塾とか、小さな町の学校でまでは共通じゃないけど。

 教会は神父さんが教科書を作っていたり、教会が発行しているし。

 小さな町の学校は、都市部で使われた教科書のお下がりが回っているから。

 少しだけ、内容が古かったりもする。


「他には商業関連も習い始めて、算数もやってる」

「得意な科目は?」

「うーん……実技関係かな? 運動系」


 あー。

 昔から、アシュリーは活発な子だったからね。

 よく分かる気がする。


「そうそう、ヘンリー覚えてる? 彼が大分性格が変わっちゃってさ」

「あー、恋してるって言ってたもんね。恋は人を変えるっていうし」

「うーん……もはや、そういう次元じゃないというか……かなり、アレになったあとに真逆に触れちゃった感じで」

「アレって?」

「これ以上は、彼の名誉に「マルコから、言い出したんじゃない」


 当たり障りのない範囲で、軽めにヘンリーの遍歴を話す。


「マルコのおじいさまって、この国の英雄だもんね! そんな人に学べるなんて羨ましい」

「そんな、良い物じゃないけど」

「おじいさまが聞いたら、悲しむよ」

「あはは」


 知らない人から見たら、剣鬼スレイズに剣を学ぶのは栄誉のことなのだろう。

 なんせ、王族の指南役でもあるわけだし。

 ただ、身内から見ると……


 それに、彼の弟子達を見ていると、自分もああなることに不安を覚える。

 かといって、面と向かって否定できるのはエリーゼおばあさまくらいか。


「あっ」


 話がすっかり盛り上がってしまって、ポットの中身まで空っぽになっていた。

 外を見ると、まだ夕焼けが赤く空を照らしていたが今は夏。

 いくら明るくても7時は過ぎているだろう。


 流石に、マスターが心配するだろうし。


 まだまだ話足りないが、彼女を家まで送り届ける。

 その馬車の中でも、アシュリーとあれこれといっぱい話した。

 なんていうか、離れていた時間を取り戻すようにいっぱい色々な事を話せて良かった。


 気が付けばすっかり腕輪のことなんかどうでも良くなった。


「じゃあ、また明日ね」

「うん!」


 武器屋喫茶についたので、先に馬車から降りてアシュリーをエスコートする。

 馬車の音が聞こえたからか、マスターがお店から出てくる。


「今日は楽しかったかい?」

「ええ、とっても」

「僕も、久しぶりにいっぱいお話できてうれしくてつい、こんな時間まで引き留めてしまいました。すいません」

「いいって、いいって。たまにしか会えないだからな」


 そう言ってマスターが、笑ってくれてホッとする。

 それから2人に見送られて、馬車で屋敷に戻る。

 エスコートした時に触れた手が、まだジンワリと暖かい。

 幸せな気持ちを目いっぱい堪能しながら、家路へと馬車を歩かせる。


 この夏は、アシュリーともどこかに行けたらいいな。

タイトル修正しました(;^_^A

そんな異変起こって無いし(笑)

あと、昨日の夜に遅れながらも1話投稿してあったり……

見落とされてないかと、不安になって追記w


あとちょっとで、1万4千ポイント!

応援宜しくお願いしますm(_ _)m

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