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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第124話:色々な日常回

「流石に考案者ね! 手強いね」

「いや、別にそこまで得意じゃないけど」


 いま現在ミスリルの塔の、トクマの隠れ家的部屋でリバーシをしている。

 何故か、持ってた。

 聞いたらこの間、たまたまシビリアに行った時に仕入れてきたとのこと。

 ちゃんとした正規品。


「角をいかに取らせないかが重要ね」

「まあ、角を取ってしまえばってところはあるけど」


 トクマの部屋を見渡すと見た事も無い物もある。

 

「あれは?」

「魔界双六ね! 転移魔法やら召喚魔法が組み込まれている、ガチのやばいやつね」

「それって……ジュ……」

「魔界とは大げさね。本当は古代の魔法初心者用の基本魔法陣の教材ね! 転移されるのも隣の人と場所が入れ替わるとかね! 場所が入れ替わると、順番も入れ替わるね」

「なんだ! っていうか、転移魔法って結構使ってる人多いの?」

「今となっては高位魔法ね……人間は殆ど使えないね! 犯罪に使われる事が多いからね」


 なるほど。

 実際に転移魔法って、あっちゃ駄目な魔法だな。

 特に、制限の無い転移に関しては。


 チート中のチートは、これで間違いない。

 転移魔法あったら、間違いなく異世界で好き放題生きるよな。

 全言語理解と、転移魔法……


 基本的に豊かな生活に必要なものは、金だけだ。

 金さえあれば、人間幸せだもんな。


 男だったら金掛けて良い部屋に、おしゃれな家具を置いておくだけでもポイント高い。

 それと、金にものを言わせてオシャレな服を買って。

 金で雇った使用人に常に、身の回りを清潔にさせて。


 お金でトレーナーを雇って、スタイルや体調管理をしっかりして。

 多少みてくれが悪くても、きちっとした格好をして、髪型に気を使ってなおスタイルまで良いとなると、雰囲気イケメンの完成だ。


 髪が薄い?

 それを隠そうとしなければ、問題無い。

 オシャレ坊主と被り物でいけるいける!

 カツラじゃないぞ?


 脱線した……

 金を掛けて自分を磨けば、大抵の幸せは手に入ると。

 でもって、金を使って手に入れた幸せのメンテナンスさえしっかりしておけば、それは良い人生を歩めるはず。


 そのお金!

 転移と全言語理解があれば簡単に稼げるじゃん!

 旅行会社というまっとうな稼ぎ方から、拠点から遠く離れた国をターゲットにした怪盗までなんでもござれ!


 なのに、丁寧に人助けして、冒険する連中ってなんなんだろうな?

 ブーメラン。

 今の俺にも半分当てはまる。

 何故半分か?


 転生者の場合、家族のしがらみがある

 まかり間違って貴族の子供になんか転生しちゃった日には、他人の生活まで背負わされる。

 それはちょっと、勘弁してもらいたい。

 

 手遅れ。

 転生する前に、よく言って置くべきだった。


「マサキちゃん?」

「ああ、ごめんごめん! 転移って浪漫あるよねって思って」

「そんな事無いね。色々と制約が多いね」


 まあ俺が貰ったような、媒介も魔法陣も必要としない転移はまず誰も使えないとのこと。


 それから暫くして、管理者の空間に戻る。

 ベントレーとマルコが、仲良く手合わせをしている。


 週末に身体を借りる時は、こうやってベントレーがたまにきてマルコと色々と遊んでいる。

 最近は木剣を使った、模擬戦が多いが。

 どうやら、前の襲撃事件の時に足手纏いになったことが堪えたらしい。


 いやいや、9歳児なんだから大人相手に後れを取っても、当然だろ?

 そう慰めたけど貴族たるものいかなる時も、前に立って戦えなければならない?

 そんなのベルモントだけだと思うぞ。

 

 基本的に貴族は指揮系統だから、後ろに下がって広く戦場を見渡さないと。


 前に出た方がよく見えるし、自分で動いた方が遅れなく臨機応変に対応できる?


 マルコ、こいつスレイズのじじいと……違う?

 ヘンリーと仲直りして、たまにジョシュアを交えて3人で遊んでる?


 ……ようは、一周回ってじじいのせいか。


「まあ、そうだけど」

「ベントレー、ちょっとこっちに」

「えっ?」

「ここに、謎の仮面貴族が居る! 現在とある国の王様だ」

「現在とある国? ということは、それまでは王では無かったのですか? ……最近政権交代が行われた国は、この大陸のクエール王国と、西の大陸……あれは現王が謀殺されたけど、前王が健在だったからそのまま首謀者を捕まえて、孫に継がせて後見人として運営しているわけだから……」

「忘れろ!」

「えっ?」

「とある国の何某(なにがし)は忘れろ」


 ベントレー、意外と社会情勢に聡いじゃないか。

 子供だと思って、侮っていた。


「なるほど……」

 

 そう言って、ベントレーは顎に指を当てて首を傾げると頷く。


「分かりました」


 今の間は……

 忘れろって言ったのに、しっかりと考えて正解に辿り着いたっぽい。


「マサキ、どうしたの?」

「いや、謎の仮面貴族に貴族の基礎を是非議論してもらおうかと」

「それは私も興味ありますね」


 そして、クロウニとベントレーの勉強会。

 この機会に、マルコもお願いしておく。


――――――

「大将頭おかしいよね?」

「こらっ、そんな事は言ってはなりません」


 リザベルが後ろ手を組んで歩きながら、マハトールにそんな事を言っている。

 

「マサキ、新人さんがあんなこと言ってるよ?」

「良いって、どうせ聞かれてないと思ってるんだから」


 その後ろをマルコと大顎に乗って、音も無く追いかける。

 が、マルコが声を出した瞬間に2人が慌てて振り返る。


「私じゃありませんよ! リザベルが勝手に」

「ええ、先輩庇ってくれないんですかぁ?」

「ちょっ、おまっ! 悪魔としてなら貴方の方がよっぽど先輩でしょうが!」


 わざとらしく子供っぽい仕草をするリザベルに、マハトールが顔を青くしてアワアワしている。

 別に気にしてないけどね。

 

 ただ、嘗められるのは良くないと。

 蟻達がリザベルを取り囲む。

 

「ふふーん、先輩あと宜しくお願いしまーす」


 そう言って空に飛び上がった瞬間……

 とんぼの羽の生えた百足に、掴みかかられて落ちてくる。


「うそっ!」

「はあ……お前は無邪気という邪気の集まりっぽいな」

「えっ?」

「まあ、身勝手というか自己中というか……まあ、変な悪意よりもマシだが、性質は悪いな」

「言ってる事がわかりませんが、マサキ様がおっしゃるならきっとそうなのでしょう」

「そういう、調子も良いところを含めてだ」

「いやぁ……」

「褒めてない!」


 照れたような笑みを浮かべて、頭を掻いているリザベルを軽く叩く。

 横では、マハトールが正座して目を閉じている。


「どうした?」

「いや、いかなる罰が来ようとも耐えられるように覚悟を決めているところです」


 そうか……

 邪魔しちゃ悪いから、リザベルを回収してマルコと目的の場所に向かう。


「お待たせ」

「いえいえ、丁度準備が終わったところです」


 トトがテーブルにクロスを敷いて、その上にお皿を並べている。

 そして、横では簡易キッチンで土蜘蛛とクコが串に食材を刺している。


 今日は週末だから、家事はお休みにして外でバーベキューをすることにした。

 場所は、管理者の空間の川のほとり。


 湖はあったけど、川は無かったから大量に余っているポイントで購入した。

 というかログボだけで、凄くポイントが増えていく。

 必要な物だけを狙って使うとあれだな、多分侘び石とか配布石がドンドン溜まっていく感じの。

 

 やらなくなったソシャゲで毎日ログインだけしてたら、怪しい広告に出てくるような石の数になったりとか。


 基本的に虫達や、トト達が欲しいものに使うようにしているけど。


「ランドも元気か?」

「ブフォッ!」


 地竜の子供も、名前が決まった。

 ランド。

 命名はベントレー。

 何気に触るとヒンヤリ冷たい彼女の事を、ベントレーは気に入っている。

 特に訓練の後に、ランドの背中に抱き着いて寝るのが最近の彼のブームらしい。


 いや、その気持ちはよく分かるけど。

 チュン太郎も「ピーヒョロロー」と鳴きながら、空を旋回してから滑空してくる。

 もはや、雀要素はどこにも……身体は相変わらずずんぐりむっくりしているけど。


「チュンチュン! ホーホケキョ! オハヨウ! オハヨウ!」

 

 うん……うん?

 かなり器用に鳴けるようになって良かった。


「あるじー! ごはんまだー?」

「……」

「というわけで、そろそろ食事の時間かと」

「……」


 喋れる?

 もしかして、喋れる?


「喋れるようになったのか?」

「チュンチュン! ホーホケキョ! オハヨウ! オハヨウ! あるじー! ごはんまだー? というわけで、そろそろ食事の時間かと」


 なんだ、誰かがこの順番に言葉を教えていただけだったみたいだ。

 普通に可愛らしい声だったけど、喋る鳥とか正直いらないかな?

 ペット枠だし。


「チュン太郎、喋って無かった?」

「気付きました?」


 マルコが声を掛けると、普通に返事してきた。

 こいつ!


「こっちのコトバ……少しワカリマス」

「おまっ!」


 取りあえず、イラッとしたのでチュン太郎の頭を思いっきり叩いておく。

 

「マサキおにいだめ! チュンたろうはわたしとおべんきょうしてるの!」

「あー、そういうことか」


 どうやら、クコがチュン太郎と言葉の勉強をしているらしい。

 別に理由が分かれば問題無いんだけどね。


「ブフォッ!」

「だよね」


 期待の籠った目でランドを見たら、首を横に振っていた。

 言葉は喋れないけど、こっちが言いたいことは伝わる。

 十分にこいつらも変態だった。


「マサキ兄! 魚獲れたぜ!」


 マルコとクコとトトが仲良く、炭火で串を焼いていたらマコも駆け寄ってくる。

 手には、大量の魚の入った網籠が。


 これは、きちんと従属させてない魚たちだ。

 娯楽用に、懐いていない魚を大量に攫って来た。

 お陰で、こうやって狩りや釣りも楽しめるというわけだ。


 俺?

 俺はやらないよ?


 俺が釣りをすると、他の湖から水魔法で飛んでくる奴等が居るから。

 すぐに接待フィッシングになるし。

 

 某釣り好きなダメ社員と社長の映画の撮影シーンのようになってしまう。

 あれな……スタッフがダイビングスーツ着て水中で針に魚を、手ずから付ける的な……


 来週から、また夏休みが始まる。

 今年はフレイ殿下がやってくるとか。

 冬に来たばっかりだったのに。


「なんか、夏のベルモントも興味あるらしくて。それから、ラーハットでクルージングもしたいって言ってた」

「アグレッシブな姫様だな」


 まあ、第一王女と違って公務が忙しい訳でもないだろうし。

 将来的には国の為、王族の為と、政略結婚の駒に使われる可能性も高いわけだし。

 いまは、自由にさせたい親心的なものもあるのかもしれない。


 いや、男親からしたら1番目も2番目も関係なく娘は可愛いらしいが。

 知り合いの旦那さんも、そこは娘2人だけどどっちに何があっても、生きていけないとか言ってたらしいし。

 お姉ちゃん可愛い、妹可愛いって! でもって、それぞれの良さがあって2倍お得みたいな事言ってたな。

 中には、子供に全く興味を示さない奴も居たけど。


「なにこの紫の野菜」

「ああ、魔族領のお野菜だぞ」

「ふーん……美味しいの?」

「ふふふ! なんと! 味は、全くこっちの野菜と一緒だった」


 物凄くとげとげしい色をしているのに、味が全く普通とは。

 期待外れも良いところだ。

 

 味も尖っているかと期待したのに。

 いやいや、美味しいから良いんだけどね。


 そのあと皆で、魔界双六をやった。

 転移魔法……確かに横の人と場所が入れ替わるだけ。

 ショボい。

 けど、これ失敗したら某蠅の映画みたいに……


 それから、あれだ。

 召喚魔法は基本的にスライムだった。


 邪竜が復活したといって召喚されたのが、角と牙と木の皮で作った翼を刺された黒いスライムだった時はどうしようかと。


 しかし管理者の空間で召喚したらどうなるのかと思ったけど。

 普通に召喚出来た。

 というよりも、このボードの中に収容されてたんじゃないかと。

 でもって吸収して持って来てたから、この子も普通に配下になってたけど。

 まあ、普通の黒いスライムだけどね。


 ちなみにこの双六の結末はというと。

 マルコの駒が洪水の枠に止まったら、上空から滝のような水が降って来て…・・


 あれだ、古代の双六だったからね。

 大分劣化も進んでた訳で。

 そこに、大量の水が降ってきたら。


 トクマさんには、誠心誠意謝った。

 取りあえず、隠れ家じゃない方の部屋で。

 向かい合って座ると、思いっきり頭を下げる。


「もうあげたものね! それよりも、止まった駒の影響で壊れるとか欠陥品ね! せっかく楽しんでる途中だったのに、かえって悪い事したね」

「いや、歴史的遺物だから飾っておくにとどめておくべきだったんだよ」

「そんなことないね! 道具は使われてこそね! だから、双六にとっては子供達に使って貰えて良い最後だったね! それよりも、怪我は無かったね?」


 トクマさん、良い奴だ本当に。


「怪我は無かったけど、大量のスライムが出て来たから取りあえず適当に住んで貰ったよ」

「大量のスライムね?」

「なんでもボードの中に閉じ込められてたみたいで、召喚されないと出られなかったみたい。物凄く感謝されたよ? おじいちゃんにも外の景色を見せてあげたかったとかって、泣き出すスライムも居て大変だったけど」

「そ……そうね。スライムともお喋り出来るのね?」

「うん、なんとなく言ってる事が分かるんだ」

「結果、良い事したね!」


 トクマさんが頭を優しく撫でてくれた。

 その時誰かが、扉をノックする。

 

「トクマ様? この部屋からマサキ君の匂いがするのですが?」

「ミレイね! 入って来るね」


 サキュバスのミレイさんだった。

 というか、匂いって……


「トクマ! マサキっぽい気配がするが、来てるんじゃないだろうな?」

「ミスリルね? 今立て込んでるね!」

「おまっ!」

「嘘ね、カインね? どっちにしても、いま立て込んでるね」

「入るぞ!」

「駄目ね!」

「そうですよ! いま、大事な話をしているんですから」

「なんだ、メイド長代理も居るのか?」

「メイド長代理?」

「そうね! 彼女はこの塔内に限りメイド長と同じ権限を持ってるね」


 結局……


「なあ、いい加減鎧返してくれないか?」

「まだ、見つからないんだよねぇ……あっ、これだけならあったよ」

「……まあ、それだけでも返してもらえると」

「はい」

「良いのか?」

「うん」


 取りあえず、左のレッグガードだけ返してあげた。

 ミスリルをベースに造ったレプリカだけど。

 そっくりに出来てるから、多分バレないかな?


「カイン……馬鹿ね」


 トクマはすぐに見破ったらしい。

 なかなかに、目が良い事で。

色々ととっちらかしつつ、次話より少し物語が進行します。

そこが終われば、2年生も後期をあっさりと終えて進級かな?


多くの評価を頂き有難うございます(*´▽`*)

まだまだ受け付けてますので、是非宜しくお願いしますm(__)m



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