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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編
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第96話:クエール王国

「なっ! 何者だ貴様は!」

「通りすがりの偽善者です」


 目の前ででっぷりと太った、いかにも王様な王様が唾を飛ばしながら怒鳴って来る。

 それもそうだろう。

 俺がいま座っているのは、クエール王国の玉座。

 

 真昼間から後宮遊びに勤しんでいたクエール王国国王、フランク・ファット・フォン・クエールをお出迎えするために玉座の椅子に座って待っていた。

 両横には仮面を付けた大人の男性が2名。


 歪んだ笑みを浮かべた表情で涙を流している仮面をしているのが、クロウニ。

 憤怒の表情で口元だけが笑っている仮面を付けているのが、ジャッカスだ。


 玉座の間は氷の魔石と風の魔石を合わせた魔道具から出る風で、かなり快適だと言うのに汗をかいている目の前のデブに視線を送る。


 ちなみに今回俺は何も書かれていない、目のところにだけ穴の開いた仮面を被っている。

 ちなみに全部スレイズベルモント家の倉庫にあった。


 じじいは仮面収集の趣味でもあるのだろうか?


 デブは俺の答えに一瞬キョトンとした表情を浮かべたあと、慌てた様子で部屋の入り口に張り付き大声を出す。


「衛兵はどうした! であえ! であえー! 不審者が玉座の間に入り込んでおる!」


 呑気だなこのおっさん。

 見た感じ50代前半ってところだろうか?


 明らかに怪しい連中が目の前に居るっていうのに、逃げ出さずに室内に居たまま助けを呼ぶとか。


「ほうっ? 近衛を呼んでどうするんだ?」

「しれた事よ! 貴様らをひっとらえて、そうだな……虎の餌にでもしてやろう」

「ふふふ……お前も敵対するんだな?」


 虎の餌にされるのは、流石にやだよ。


「何を言っておるのだ?」

「いや、虎の餌になどされたら困るからな……抵抗させてもらおうと思ってな」

「たかが3人で何が出来る!」


 まだ衛兵が到着していないというのに、偉く強気だな。

 そもそも、いくら城内だからって王が1人で行動してんなよ。

 行先的に、無粋な野郎を連れて行きたくなかったのは分かるけど。


 まあある意味、無理やりでも付いて来てくれる従者が居ないあたり、こいつの人となりが分かる。


「どうしました! 国王陛下!」

「何をしておったのだ、このグズが! そこにおる不審者を捕まえろ!」

「誰だ貴様は!」

「いや、このブタの部下っぽいのが俺に無礼を働いたから、話をしに来ただけなんだけどな……何やら、ブヒブヒ怒り出したからこっちも困ってるんだ。お前が飼い主か? だったら、家畜の躾くらいちゃんとしとけよ!」

「なっ、無礼な!」

「プッ!」

 

 俺の言葉にブタが顔を真っ赤にして怒鳴っている横で、衛兵の男性が顔を真っ赤にして噴き出していた。

 笑いを堪えきれなった様子。

 


「ぬっ、お主いま笑わなかったか?」

「いえ、あまりに無礼な物言いに、怒りが堪えきれずについ吹き出してしまったのです」

「そうであろう! であれば! とっとと、引っ立てい!」

「はっ!」


 そして剣を持った衛兵が……目の前の豚に飛び掛かってロープでぐるぐる巻きにする。

 

「何をする! あっちだ! あっちの男をひっとらえるのだ!」

「あのお方をですか? それは無理な相談ですね……私は、あの方の忠実な僕ですので」

「なっ! 裏切ったのか?」

「先に国民を裏切ったのは、貴方でしょう? 国王陛下?」


 衛兵が兜を取って、素顔を晒す。

 その顔を見て、国王が首を傾げる。


「なんだ?」

「この顔に見覚えありませんか?」

「……無いな。衛兵一人一人の顔など覚えておるものか!」

「貴様!」

「ギャー! 耳が、耳が!」


 男が腰の剣を抜いて、豚の耳を斬り飛ばす。

 駄目だ……豚っぽくて、ミミガー! ミミガー! って叫んでいるようにしか聞こえない。

 

――――――

 遡ること5時間前。


 朝も早くに、普段と違うベッドで目を覚ましたマルコがベントレーと一緒に管理者の空間にやってくる。

 俺がお願いした。


 金曜日の夜に、マルコをお泊りという名目で連れ出してくれと。

 割と泊まりに行くことも多いので、ベントレーの家に行くことに関してはじじいもエリーゼさんも特に言ってくることは無い。


 最近はベントレーが色々と街の住民と触れ合っている噂も広がっていて、エリーゼさんの覚えも良いし。

 工房区が特にお気に入りで、色々な工房の親方に製品の質問をしたり、体験をお願いしたりして気に入られているらしい。


 最初はてやんでいな職人に「てめーみてーな、指の白いガキに何が出来るんだ!」と門前払いを受けたりもしていたらしいが、それでも自分達の仕事に興味を持ってくれたことで受け入れてくれる工房はあったとか。


 そこで、意外と集中して真面目に作業をこなす上に、割と器用なベントレーを気に入った親方の口コミで今じゃ色んな工房が顔パスだとか。

 お気に入りは銀細工と、革製品の工房らしい。


 銀細工のボタンと飾りを付けた、革のポーチが作りたいらしい。


 閑話休題。


 ということで、俺がマルコの身体を借りたいときはベントレーに頼むようにしている。

 今日は土曜日で学校も無いので、クエール王国の王都があるクエルマスに向かった。


 最近たまにこうやってクエルマスに足を運んでいる。

 主な目的は偽善事業の為だ。

 慈善事業じゃない、偽善事業。


 自身の生活にゆとりがあるから、気まぐれに行っているだけ。

 主な活動内容は孤児院をめぐって、魔法で大きな氷を設置している。

 孤児院に土属性魔法で地下に作ったプールのような場所に、数m四方の氷の塊を設置。

 それだけで室内が涼しくなるし、水を簡単に用意できるようになる。


 その地下室も、一応魔石によって空気を循環させて湿度と温度が上がらないようにしてある。


「あっ! マサキ様だ!」

「マサキ様!」


 孤児院に行くと、俺を発見した子供達が集まって来る。

 偉い貴族の子供だということにしてある。


 間違いじゃないし。


 ただ見た目10歳の俺に、上は14歳くらいの子まで目を輝かせて近寄って来るのはどうなのだろう?


「これはこれは、マサキ様。また来てくださったのですか?」

「ああ、院長先生、御無沙汰しております。特に、変わったことは無いですか?」


 院長と呼ばれた男性が、顎をさすりながら考える。

 この孤児院には30人程の子供とシスターが2人ほど住み込みで働いていて、運営費はシスターの治療魔法と孤児院で取れた野菜の売り上げ。


 正直、野菜を自分達で食べた方が良いんじゃないかというほど困窮していた。

 最近では湖が干上がった事で、野菜も育たなくなっていたらしい。


 まあ、俺のせいだけど。


 いくら身勝手な国とはいえ末端の国民にまでは罪は無い訳で、特に親の居ない子供にまで苦労を強いるつもりは無かったので心配になって見に来たのが始まりだ。


 順番に数件の孤児院を回っているが、街の浮浪児も回収してお金と一緒に孤児院に押し付けているので、こうやって時々様子見に来ているのだ。


 正直孤児院に入れた子供達はそれでもまだ幸せな方で、ストリートチルドレンともなると凄惨な生活環境だった。

 食事なんて数日に1度取れたら良い方で、ネズミが出たら御馳走だとばかりに襲い掛かる子供達に思わず目を背けたくなった。


 彼等の場合、湖が干上がる前からこのような生活を送っていたらしいが。


 だから病気も蔓延していて、すでに息を引き取ってしまった子供もいた。

 その子達は仕方ないが、あまりに可哀想なので回収して管理者の空間に墓を作ったりもした。

 自己満足だとは思いつつ。


 この子達に訪れるべき未来が、来世で問題無く過ごせるよう。

 善神様や邪神様の配慮に期待した部分もあったし。


 誤算が1つ……腐敗が進んでいる遺体もあったが、管理者の空間ではそれ以上の腐敗は進まなかった。

 もし魂というものが必要無ければ、いつか子供の脳を合成素材にしたら生き返らないかと墓地から保管場所と名を改めたけど。


 さてと、それはそれとして病気に掛かった子供達は、回復魔法で治療しつつ病原菌のみ回収して快復させることが出来た。

 が、それで放置したらまた同じ結果になる。


 ということで、孤児院にお金と一緒に押し付けた。

 見る人が見たら、反吐が出るような偽善かもしれない。

 ただ、それで子供達が笑顔になれるなら良い事だと俺は思う。


 最初は躾のなっていないガキだから大変かなと思ったけど、上下関係だけはしっかりと叩き込まれていたようで先に入っている子や、世話係の大人に逆らう事は少なく少し安心。

 彼等も、ここから追い出されたら先が無い事は分かっているだろうし。


「さて、今日はカレーを作ってもらってきた」

「いつも申し訳ありません」


 それと、土蜘蛛の料理を彼等に与えるのも目的の1つだ。

 今回はカレーを用意してもらった。


 子供ならきっと大好きだろう。


「わあ、良い匂い! ……えっ?」

「これって……」


 匂いに惹かれて集まって来た子供達が鍋の中を覗いて絶句する。


「ゲ……「言うなよ! それ以上先を言うなよ!」


 カレーが存在しないこの世界では、やはりかなり珍妙な食べ物らしい。

 見た目から、どうしても下品な想像をしてしまうのは仕方ないだろう。

 その単語を口にしようとした子供の口を押えて、首を横に振る。


「まあ、食べてみろ。きっと、ビックリするから」

「うん……もうすでにビックリだけど」

「メルオ! 失礼なことを言うんじゃない! マサキ様の持って来たもので美味しく無かったものがあったか?」


 メルオという12歳くらいの男の子が、顔を顰めながら突っ込んで来たのを他の子が止める。

 

「じゃあ、ラビ姉先に食べてみてよ!」


 メルオを叱った女の子が急に振られて、ちょっと困った表情を浮かべる。

 いや、そんな無理して食わなくても良いけど。

 ちょっと、ハードルが高かったかな?


「美味しい! これ、凄く美味しい!」


 そんなやり取りを苦笑いしつつ眺めていたら、横から小さな女の子の声が聞こえる。

 好奇心旺盛な5歳の女の子。

 ペペだ。


 彼女は産まれてすぐにこの孤児院に捨てられていて、意外と孤児院のメンバーの中では古参だったりする。

 名前も与えられてなかったので、院長先生が名付けてあげたらしいが。

 意外とそういう子は他にも居たりする。


「そうか、ペペはこれ好きか?」

「うん! マサキ様が持ってくる料理は全部大好き!」


 ニパッと前歯が抜けた間抜けな笑みを浮かべるペペの頭を、優しく撫でる。

 口の周りにベタベタにカレーを付けているが、それすらも可愛い。


「プッ、とうとう歯が抜けたか? こないだ来たときグラグラしてたもんな」

「うん! マサキ様に言われた通り、屋根の上に投げたよ! 丈夫な歯が生えてくるの楽しみなんだ!」

「そうかそうか、きっと立派な歯が生えるぞ!」


 ちなみにここの子供達の口の中から、虫歯菌は全て吸収している。

 だから永久歯が生えて来ても、軽くでもちゃんと歯磨きすれば虫歯になることは無いだろう。


 元々はちょっと口臭が気になったって部分もあったが。

 何より衛生環境をきちんと整えて、なるべく病気で苦しむことが無いようにと思った部分もある。

 お陰で管理者の空間には、有意義な使い方が出来そうな病原菌が俺の配下として命令待ち状態だけど。


 それから院長先生とシスターを交えて、いまの孤児院の状況と必要な物資の聞き取りを行う。

 一応、場合によってはクロウニに代理を行わせることもあるので同席させる。

 ジャッカスが稼いだお金や、管理者の空間で取得したものや生育したもので幸い懐は温かいし。


「なるほど……もうそんなに噂になっているのですか」

「ええ……子供を置いて行く親も増えてきましたが、最近では柄の悪い者達が付近をウロウロするようになりまして」

「幸い何故かそういう時に限って、蜂が群れで現れたりして大事に至ってませんが」

「その蜂達も院内には入って来ないので、何やら守られているようなそんな思いまで沸き上がってます」


 この孤児院の子供達の肌艶が良くなってきたことで、街で噂が立っているらしい。

 なんでも大富豪の後援者が付いたのではないかと。


 そこで子供をお願いしようとする親が増えて来たとか。

 それだけならまだしも、良からぬ事を考える者達まで。


 そういう事もあるかなと思って、蜂を配備しておいたのは正解だったらしい。


「土魔法で塀を少し高くしましょうか?」

「散々お世話になっていて、お手数までお掛けして本当に申し訳ない」

「いえ、子供達は国の宝ですから。彼等が立派に成長してくれたら、この国が豊かさを取り戻すかもしれませんし」


 まあ、膿を全て排除したら、街ごと救ってやるのもやぶさかではないし。

 湖を水で満たして、雨さえ降らせらばそれなりに変わるだろうし。


「こうやって話していると、マサキ様もここにいる子達と変わらない歳だというのを忘れそうになってしまいます」

「はは、私の場合は親のお陰できちんとした教育を受けられましたからね……ただ、親は選べませんし、たまたま貴族の子に産まれたというだけで、そうじゃない子達と生活に大きな開きがあることに疑問を持っただけです。努力の結果で得たものではなく、運よく生まれで得たものなら持つ者が持たざる者に分けるのは悪い事とは思いませんし」

「本当に親御様はさぞや立派な方なんでしょうね」


 ……脳筋とユルフワだけど。

 まあ、良いか。


 それから毎度のことながら、次がいつになるか約束出来ないので残していく保存食と、日用品、それから金銭の相談をしていたら、外が騒がしくなる。

 子供達の悲鳴が聞こえてくるということは、ならず者では無いと。

 ならず者に対しては、侵入を許さないよう虫達にあらかじめ指示を出していたので、それなりに身分ある人達が来たといことだろう。


「院長を出せ」

「院長先生はいま、大事なお客様とお話をしております」

「それは、王の直轄の近衛たる私達よりも大事か? 子供だと思って甘く見ておるなら、腕の一本は斬り落とすぞ!」

「きゃあっ!」

「メルオ! 院長先生を呼んできて!」


 そういった会話が聞こえて来た。

 いつか来ると思っていたが、意外と遅かった。

 噂が流れた時点で、すぐに出張ってくると思ったんだけどね。


「何やら外でもめ事があったようです。申し訳ありませんが、失礼します」

「いや、多分私に用事があるのでしょう。一緒に行きますよ」


 子供の悲鳴が聞こえて来たことで、気が気じゃないといった院長先生が立ち上がったので俺も付いて行く。

 外に出ると、孤児院の庭で鎧を着た男達がラビの腕を掴んで持ち上げていた。

 ラビの頬が赤く腫れている。


「院長先生!」

「何事ですかメルオ? ラビッ!」


 そして入り口で思わずぶつかってしまったメルオに話を聞こうとして、兵隊がラビを掴んでいるのが目に入ったらしい院長先生が叫ぶ。


「お前がこの孤児院の責任者か? 子供の躾くらいちゃんとしておけ」

「キャッ!」


 兵士が乱暴にラビを庭に投げ捨てる。

 急に投げられたことで受け身も取れずに小さく悲鳴をあげて倒れたまま、なかなか起き上がれない様子のラビを見て頭にカーっと血が上る。


「お前がこの隊の責任者か? 子供に乱暴を働くようなクズの親らしい腐った面だな?」


 その兵士の斜め後ろでマントを付けた男に一瞬で詰め寄ると、下から睨み付ける。


「マ「心配ご無用です……あと、無暗に相手に情報を与えないように」


 俺の名前を呼ぼうとした院長先生の口をクロウニが慌てて塞ぐ。


「ふんっ、ガキが偉そうに。貴様がこの孤児院に寄付をしているものか?」


 男が俺に掴みかかろうとしたので、一瞬でその場を離れてラビの元に向かい怪我を治療する。


「大丈夫か? 怖かっただろう? もう、安心して良いよ」

「マサキ様……」


 痛みが無くなったことで少し落ち着いたラビが、こっちを心配そうに見上げてくる。


「貴様! 無礼な……」


 一瞬で目の前から消えた俺を見つけた隊長っぽい男が、威嚇するようにゆっくりと力強く地面を踏みしめて近づいて来る。

 逆に俺から近付いてやる。

 一瞬で距離を詰めて、目の前に人差し指を立てる。


「無礼なのはどっちだ? 人の庭に土足で踏み込んでおいて」

「ふんっ! 我らは国王直轄の親衛隊。いかに貴族の子といえども、無礼は許されんぞ?」


 この国では近衛騎士団は貴族よりも偉いらしい。

 なるほど……


「そうですか……」

「今更ビビっても、先の態度は許せんな」

「私が団長の息子でもですか? 主任さん?」

「えっ?」


 俺の言葉にあからさまに顔色が悪くなる男。

 色々な事がいま頭の中を駈け廻っているっぽい。


「だっ……団長の御子息? いや、団長の子供ってまだ5歳とか……もしかして、隠し子?」


 考えが独り言になって、口から駄々洩れだ。


「団長に限って……でも、団長モテるから……無い話じゃ……隠し子相手でも、おれはこの国でも滅茶苦茶偉いんだーって自慢しそうだし」


 しかも混乱してるのか、軽くディス入っているし。

 大丈夫かなこの人?


「嘘だよ、バーカ!」

「嘘? 嘘ってなんだ? 団長もそういえば、小さな嘘を良く吐く人だし……まさか、本物?」


 本気で混乱しているらしい。

 嘘だと教えたのに、その嘘から間違った真実に答えが辿り着きそうだ。

 面白いから、ちょっと放置しよう。


 その間にっと……


「オラッ!」

「えっ! ぐあっ」


 ラビを放り投げた男の方に近寄って行って、思いっきり頬をぶん殴る。


「いきなり何を! ゲッ」


 そのまま腹を蹴り上げて、腕を掴む。


「痛い! 痛い! ちょっ、離……してください」


 どうやら、こいつも俺が団長の子供かもって思っているのかな?

 そのまま腕を持ったまま、グルグルと回転すると男の身体がフワリと地面から浮く。

 そして、ポーイッと放り投げてやる。

 

「ああああああ!」


 変な声を上げながら、4mくらい飛んでいって地面をすべるように転がっていった。


「あの腕力……まさか本物?」


 責任者の男がかなり間違った方向に考えが纏まっている様子。

 こいつ、面白いな。

 

「っていうか、何しに来たの?」

「はっ! 最近孤児院に物凄い額の寄付をする者の噂を聞き、その真相を確かめに来たであります」


 思わず笑ってしまった。

 どうやら、無難に俺が近衛騎士団の団長の隠し子として対応することにしたらしい。


「で?」

「その、余裕があるようであれば、是非国王陛下にも寄付を頂けないかと打診するように言われてきましたであります」


 なるほど……

 羽振りの良い貴族の息子が酔狂で孤児院に金を落としているから、余裕があるなら搾取しようって事か。

 これだけでっかい釣り針を用意しておいて言うのもなんだが、何も考えずに食いつくとは。

 流石は、短絡的に戦争を仕掛けようとしただけのことはある。


 愚王か……


 じゃあ、そんな王家は滅んでしまっても良いかな?

 頭の中で色々と考えていたプランがあったが、方向性は決まった。

 いやあ、でっかい拠点ゲット出来そうでワクワクしてきた。

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