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桝田空気雑文集

バカな小説

作者: 桝田空気

バカな小説を読んだ。

面白かったんで紹介しよう。



「あの娘ぼくがこんなシネマ撮ったらどんな顔するだろう」河原雅彦(キネマ旬報社)



ジャンルは前書きによると、「とある映画製作会社を舞台とした『机上の空論キャステング小説』である」とのことで。



まあ、あらすじを説明していこう。



主人公はあずさ君。映画製作会社に就職した、映画をこよなく愛する新入社員である。彼が働く「アトミック・シモンズ」という映画製作会社が、まあムチャクチャな会社で。例えばこの会社が製作した唯一のヒット作のタイトルがこれだ。



鉄道員ぽっぽやVSメカゴジラ」



内容を本文からの引用で紹介。



「なにせ主演が高倉健とメカゴジラである。ここまでアナーキーな作品は、これまでの邦画史上まず類を見ないであろう。ハイライトで広末涼子が敵方の宇宙人に捕まり、メカ広末となって泣きながら東京タワーを破壊するシーンは、かって日本中が胸を熱くしたものだった。」



……オイオイオイ、いいのか、これ?




さて、こんなアトミックシモンズにて、次にどのような映画を作るか、という会議が開かれた。主人公あずさ君も、その会議に出席することになった。



プロデューサーである満田が開口一番にこう言った。



「アニメや漫画の実写版リメイクがくると思うんだ」



会議に出席した旗畑という社員はそれに賛同。あずさ君も賛同しつつ、こんな意見を述べる。



「とはいえ、作品選びはデリケートに進めないと。それとキャスティング。話題性はもとより、今という時代にリメイクする必然性がないと……」



まっとうな意見である。しかしこの会社、あずさ君以外は全員バカだった。



「『Drスランプ』なんて、いいんでねえ?」



なぜか会議に出席しているプロデューサーの愛人ミミが適当に言った。



それを聞いたプロデューサー満田は、



「……イケるな」



「ちょ、ちょっと待って下さい!なぜにこのタイミングで……」



あずさ君のまともな疑問は無視され、他の社員は、



「うっほほーい!めちゃんこ賛成!」



とテンションをあげる。



こうして半ば強引に、「実写版Drスランプ」の製作が決定する。





さて、次にキャステング。

三時間におよぶ会議にて、配役が決められた。

ホワイトボードに書かれた配役を見て、あずさ君は頭を抱えて机につっぷしていた。こんなのだ。



則巻千兵衛……西田敏行

ガッちゃん……佐藤蛾次郎

空豆ピースケ……爆笑問題の田中

「朝だぞーい」って言う太陽……市川海老蔵

山吹みどり……米倉涼子、メグ・ライアン

皿田キノコ……寺島しのぶ

スッパマン……松平健

Drマシリト……葉加瀬太郎

ニコちゃん大王……上島竜平

ニコちゃん大王の部下……松村邦洋

オボッチャマン君……マコーレ・カルキン(ヤク中以前)





このキャステングに対する、あずさ君と満田のボケツッコミの応酬を、まんま引用しよう。



「このキャステング、メガトン級に無理ありますよ」



「そうかなあ。西田敏行の則巻千兵衛は絶対にハマり役だぞ。『釣りバカ』のハマちゃんを越えるやもしれん。海老蔵、米倉カップルも、ワイドショー的に話題十分じゃないか。そもそも爆笑問題の田中はあずさ君が推したんじゃないか?」



「あの役はビジュアル的に彼しかいません。けど皿田キノコは……」



「馬鹿だなあ。寺島しのぶはブランドとして絶対外せないんだ。これは最近の邦画事情では必須だぞ。ここはひとつ、後頭部をざっくり刈り込んでもらって、『イモね』『ナウね』を連発してもらおう。考えてもみろ?日本アカデミー賞最優秀主演女優がはみパンしながらキーコキーコ三輪車を乗り回すんだぞ?圧巻じゃないか!」



「圧巻です。ある意味圧巻ですけど(中略)ガッちゃん役って他にいないの?いくらアフロで『ガッちゃん』でも、佐藤蛾次郎ってあんまりだろ?あんなの宙に浮いてたら、ハンパなく恐えよ。あと、マツケンサンバは踊っても、さすがにスッパマンはやらないだろう……松平健。葉加瀬太郎にDrマシリトやられても、見てるこっちがとまどうし。ニコちゃん大王とその部下は……まあ、いっか。マコーレ・カルキンはやっと更正したんだ。(ヤク中以前)ってくくりは切なすぎるだろ……」



あずさ君のツッコミもむなしく、キャステングはこれで決定。

そしてアラレちゃんの配役。



「泣く泣く篠原ともえ」

「もたいまさこで大博打」



といった異様な意見が飛び交う中、プロデューサーの愛人ミミが、またもやとんでもない一言を発する。



「『Drスランプ』……スランプといえばヨシキでね?」



「……その手があったか」



何も考えずに乗っかるプロデューサー満田。



「そうですよ!Xジャパン解散後のヨシキは迷走を繰り返してますしね!」



賛同するバカ社員。



「ちょ、ちょっと待って下さい!そんな艶かしいアラレちゃん、不気味過ぎますよ!」



慌てふためくあずさ君を無視して、ヨシキ主演の「実写版Drスランプ」の製作が決定する。





ほとんど引用になっちまいましたね。



かなり省略しましたけど、まあ、こんなあらすじの小説です。ムチャクチャなキャステングでの映画作りに悩まされる新入社員あずさ君の苦労話ってわけです。



小説はこのあとも続き、ヨシキ主演「実写版Drスランプ」のクランクインの様子がつづられます。



そう、前記の無茶なキャステングのオファーを全ての方が受けてくれたという怒濤のファンタジーな設定で話が進むわけです。



いくら活字とはいえ、アラレちゃんを演じるX‐JAPANのヨシキの描写は、読んでいて、ゲラゲラ笑い転げてしまいました。



キネマ旬報で連載されていたそうで、よくもまあこんな小説が許されたもんです。

素晴らしい妄想小説ですので、もし古本屋などで見掛けたら、ぜひ立ち読みしてみてくだせえ。




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