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82 王国の賢者




「ラファーネ?」


 サラの口から飛び出した聞きなれない名に、俺が眉を寄せる。


 すると、ジャネットが驚きの声を上げた。


「ラファーネ!? 王国お抱えの賢者様じゃないか! そんな大物を呼び寄せるのかい?」


「ああ。彼女ならおそらくはっきりしたことがわかるだろう。我々が帰還する頃には、ラファーネ殿も王都に到着しているはずだ」


「へえ、そりゃまたずいぶんと準備のいいことだねえ」


 感心したようにジャネットが言う。俺はそのラファーネとやらについて聞いてみた。


「そのラファーネって奴は何者なんだ? 話からすると、相当凄い奴のようだが」


 俺の問いに、サラとジャネットはそろって顔を見合わせる。


 そして、冗談だろう? という顔でサラが聞いてきた。


「リョータ、本当に知らないのか? ラファーネ殿を知らない冒険者など、この世界にいるとは思えないのだが……」


「いや、リョータならありえるね」


 サラの前にずいと出ると、ジャネットが肩をすくめながら言う。


「リョータはそういうことにはとんと疎いからねえ。憶えてないかい? 最初は姫騎士と名高いあんたのことさえ知らなかったんだよ? この男は」


「む、言われてみれば……」


 ジャネットの言葉に、サラもううむと口元にこぶしを当てる。どうでもいいが、自分が皆に知られているというところは全く否定しないんだな。


 そんな二人をみつめていると、ジャネットが俺の方を向いて人差し指を顔の前に立てた。


「ま、いつものことだし、仕方ないねえ。それじゃ、あたしがあんたにレクチャーしてやるよ」


「ああ、ぜひ頼む」


「いいかい? ラファーネ様っていうのは、この王国で最高の大魔法士の名さ。王国に仕える4人のSクラスのうちの一人だよ。あ、今はあたしとリョータもSクラスだから6人か。いや、あたしら王国に仕えてるわけじゃないからやっぱり4人か……」


「おいジャネット、話が脱線してるぞ」


「ああそうだった、そんなわけで凄い魔法士なわけさ。なんでも13歳の時にAクラス、15歳でSクラスになったって話だからね。とんでもない天才だよ」


「13歳でAクラスになった時に我が国お抱えの魔法士になり、それからもう10年ほどが経つ。その間、ずっと魔族の脅威から我が国を護り続けているわけだ」


「なるほど、それは大した女のようだな。もっとも、10代でSクラスというのは俺たちも同じだが」


「そう言えばそうさね。まあ、そのさらに上を行くのがそこにいる姫騎士様なんだけどさ。サラはSクラスになったのいつだったっけ?」


「私は13の時だったな。言っておくが、親の七光りではないぞ?」


「わかっているさ。あの時はすまなかったよ」


 初めて俺と出会った時のことを思い出したのだろう、サラが俺を見ていたずらっぽく笑う。俺は彼女に頭を下げると、ジャネットに聞いた。


「ジャネットはその賢者様に会ったことがあるのか?」


「まさか。話に聞いたことがあるだけさ。噂じゃ美人だって聞いてるけどね」


「そうなのか?」


「それは事実と言っていいな」


「そうか」


 なぜかサラが渋い顔でうなずく。するとジャネットも眉をひそめながら言った。


「そいつは困ったねえ。リョータに会わせたら、またライバルが増えちまうじゃないか」


「おいおい、俺はそんなつもりはないぞ」


「いや、それはどうかな」


 腕を組みながら、サラもジャネットに同意してうなずく。俺はそんなに女にだらしないと思われているのか。


 二人にそう言われ、一人黙って憮然としていると、サラがおかしそうに言った。


「冗談だ、お前にも会わせるさ。そのうち我々の作戦にも参加してもらうことがあるかもしれないしな」


「へそ曲げるんじゃないよリョータ。今さらあんたの女癖にケチをつける気なんてないよ」


 俺の女癖が悪いことになっているのは大いに不満だが、それはまあいいだろう。


 ジャネットに抗議するかわりに、俺はサラに聞いた。


「そんなに凄い魔法士なら、今回の作戦に参加してもらえば楽勝だったんじゃないのか?」


 サラが首を横に振る。


「彼女は遠くにいたのでな。それに、残念ながらラファーネ殿は馬が得意ではない」


「ああ、そういうことか」


「そうは言っても、今回みたいに強力な魔法士が敵方にいた場合は彼女の到着を待つしかなかったのだがな。幸いリョータがいてくれたおかげで、その必要もなくなった」


「なるほど、あの時俺が余計なことを言わなければもっと早く賢者様に会えていたのかもしれないんだな」


「リョータ、あんたやっぱり口説く気まんまんなんじゃないのかい?」


 ジャネットがジト目で俺を睨む。サラの視線もいつになく冷たい。


「そ、そんなことはないさ。ちょっとした冗談だ、冗談」


「どうだかねえ……」


 二人が俺に疑わしげな視線を向ける。これは余計なことを言ってしまったか。




 その後は針のむしろのような雰囲気の中、しばらく話を続け、やがて俺とジャネットはサラの部屋を出てそれぞれあてがわれた自室へと向かった。






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