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75 ガーネル軍の動き




 森に入り、日が傾いたところで俺たちは野営のために陣を張った。


 すっかり日も落ち、ジャネットと飯を食っているとサラがやってきた。かたわらには女騎士のリセもいる。


「明日はいよいよ戦いだな」


「そうなるな。お前たちには期待しているぞ」


「そのセリフ、何度聞いたかな」


「仕方ないだろう、嘘偽りのない私の気持ちだ」


 そう不機嫌そうに言う。まったく、かわいらしい姫様だ。


「ところで、俺たちに用事があるんじゃなかったのか」


「ああ、そうだった」


 そう言って、サラが地面に簡単な図を描き始める。


「我々は明日、ガーネル伯領に入る。敵も我々の動きを察知して、こちらへと兵を向けている。斥候の情報から考えれば、明日にはこの丘あたりまで進出してくるだろう」


 サラが手にした枝を滑らせて一点を指し示す。


「そこで決戦か」


「そうなるだろうな。連中にしてみれば、我々さえ叩くことができればしばらく時間を稼ぐことができる。この一戦に持てる戦力をつぎこんでくるだろう」


「敵の戦力はどのくらいかわかっているのか?」


「ああ、敵の数はせいぜい百を超えるかどうかといったところらしい。まあ、よく集めた方だな」


 ずいぶんと上からの目線でものを言う。確かにほとんど時間がなかったわけではあるが。


「ということは、大半はガーネル伯とやらが雇っている私兵か?」


「そういうことだ。今、各国で大規模な魔界への侵攻を協議しているところだが、そのときに後ろから乱でも起こすつもりだったのではないかな」


「そいつは聞き捨てならないね」


 黙って話を聞いていたジャネットが、少し怒った様子で立ち上がる。


「お偉いさん同士のケンカなら正直どうでもいいんだけどね、魔族の片棒を持つようなやり方は許すわけにはいかないよ。安心しな、姫さん。明日はあたしが連中を蹴散らしてやるよ」


「頼もしい言葉だな」


 サラの顔からも笑みが漏れる。


 と、隣に控えていたリセが無表情に言った。


「皆さま、油断はなされませんように。敵がどのような兵をそろえているか、我々は把握しているわけではありませんから」


「そうだったな。ガーネル伯が雇っている傭兵の中には、もしかすると高位の冒険者がいるかもしれん。そのあたりは注意しないとな」


「大丈夫だって。ここにはSクラスの剣士が3人もいるんだし」


「クラスだけではなく、相性というものもあるからな。いくら我々でも、周りを弓兵や魔術師に囲まれて攻撃されては手も足も出まい?」


「それはそうだな」


 サラの言葉に一応うなずいておく。俺一人であれば、囲まれても転移すればすむ話だし、魔法はどうかわからんが矢ならそのまま連中に向かって転移してやればかえって手間がはぶけるのだがな。


「そのあたりの情報はないのか?」


「残念ながら、そこまではな。もちろん魔法対策などの準備は怠ってはいないがな」


 考えてみれば、俺はまだ魔法士とは邪教徒狩りの時くらいしか戦ったことがない。その準備とやらに期待することにしよう。


 虫の音が鳴り響く中、立ち上がったサラが言う。


「明日は大仕事だ。こんなところではあるが、今夜はゆっくりと休んでくれ」


「ああ、ではまた後でな」


 そう言葉を交わすと、サラとリセは向こうへと去っていった。





「さて、姫様もああ言っていたことだし、あたしらも休むとするかねえ」


 食事を終えたばかりでまだ寝るには早い時間だが、ジャネットがそんなことを言う。


 それから、俺の隣に擦り寄ってきた。


「せっかくなんだしさ、今夜はあたしといっしょに寝ようよ」


「何がせっかくなのかわからんが」


「いいじゃないのさ。いっしょの方が身体も休まるって」


 ジャネットといっしょに寝ようものなら、明日の戦いよりも疲れてしまいそうなものだが。そう思った俺は、彼女の申し出を丁重に断ることにする。


「悪いがそんな気力も体力もない。寝るなら一人で寝るんだな」


「ちぇっ、明日は命がないかもしれないってのに、つれない男だよ」


 そんなことをぼやきながら、ジャネットはしぶしぶ自分の寝床へと去っていった。さっきは敵を蹴散らすとか言っていた奴が何を言うんだか。




 しばらくすると俺も眠くなってきた。明日の戦いに備えて、というわけでもないが、特にやることもないので俺も早めに寝ることにした。




先日発売された『この「小説家になろう!」がアツイ!』という本にて、私が連載中の『一年遅れの精霊術師』という作品が紹介されていました。落ちこぼれの主人公が実は最強という王道の作品ですが、ご興味がありましたらぜひご一読いただけると嬉しいです。

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