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60 上級魔族のなれの果て





 上級魔族のなれの果てのゾンビと対峙すると、俺たちはお互い視線を交わす。


「さて、どうしたものかな」


「魔法などを使ってくるとやっかいだ。私が様子をみようか?」


「いや、それなら俺の方が適任だ。隙を作るから、お前たちは左右から一気に決めてくれ」


「あいよ。リョータ、うっかり一発もらうんじゃないよ?」


「おいおい、俺を誰だと思ってるんだ」


 お互い笑い合うと、俺たちは三方に散開する。


 案の定、魔族ゾンビは真正面から突っこんできた俺に向かい何かを放とうとしてくる。ゾンビになっても魔法を使えるのか。面倒な奴だ。


 そうこう言っている間にも、魔族の手に何やら魔力が集まっていく。先ほどまで相手にしていた邪教徒どもとは比較にならない力だ。これをまともに食らうときついかもしれんな。


 魔族の手元に集まる黒い禍々しい力は、まだ距離があるにもかかわらず俺のところまで嫌な空気を放っている。


 その様子を見て、後ろの狂信者どもが声を上げる。


「見ろ! 我らが守護神の力を! お前たちなど全てこの場で滅ぼしてくれるわ!」


 さあ、滅びるのはどちらだろうな。


 不気味な咆哮を上げながら、魔族は魔法を俺に向かい放ってくる。


 うむ、これは避けた方が賢明か。


 一瞬で判断を下すと、俺は少しばかり横に転移する。


 俺目がけて飛んできた魔力の塊は、一瞬前まで俺が立っていた場所を通りすぎ、そのまま地面に激突した。


 轟音と共に、部屋の中が鳴動する。思ったよりも強力な魔法だったようだ。避けたのは賢明な判断だったようだな。


 敵の攻撃をかわし、間合いを詰めた俺は手にした聖槍で魔族の足を一突きする。


 聖槍の威力は凄まじく、俺の放った一撃は見事に魔族ゾンビの膝を粉砕する。膝から煙を吹き出し、魔族の体が大きく揺らぐ。


「今だ!」


「うおおおっ!」


 好機と見たサラとジャネットが、左右から一気に迫る。


 振り回される腕をかわすと、二人が腕に剣を振り下ろす。聖剣と神剣の前に、魔族の腕はあえなく切り飛ばされた。


 だが、魔族はまだ戦意の衰えない目で俺を睨みつけてくる。どうやらまだ奥の手があるようだ。


 次の瞬間、魔族の口から黒いガスが放出された。これは……毒ガスか?


 まあ、当たらなければどうということはないがな。


 放たれた毒ガスは俺を捉えることはなく、空しく四散していく。


 その時には俺はすでに魔族の頭上へと転移していた。そのまま魔族目がけて降下し槍を突き出す。


「秘技・落槍撃」


「ギャアアアアアア!」


 例によって適当な技の名前をつぶやくと、俺の槍が魔族の頭部を貫く。勢いそのままに手元まで串刺しにすると、魔族は不気味な絶叫を上げる。


 槍を引き抜き着地すると、頭部から煙を上げながら魔族の体が崩壊していく。


 やがて、魔族の体は灰とも炭ともつかない何かとなって散っていった。


 部屋の奥の狂信者たちから叫び声が上がる。


「ば、馬鹿な!? 元は上級魔族だぞ!? Sクラスを何人も集めないと倒せないような化けものを、あんな女子供がなぜ倒せるのだ!?」


 残りの化けものたちを片づけると、俺たちは連中に迫る。


「さて、おとなしく投降してもらおうか」


「ひっ……」


「こ、殺さないでくれ! 頼む!」


 切り札を破られた途端、先ほどまでの威勢はどこへやら、幹部連中が命乞いを始める。何とも浅ましいことだ。


「黙って投降すれば殺しはしないさ。だろ?」


「ああ、そうだ。さて、教祖はお前で合っているな?」


「はっ、はぇ!」


 サラの問いに、教祖が息も絶え絶えに答える。何人も生贄にしておきながら命乞いとは、何とも虫のいい話とは思うが、まだ使い道があるというのならしかたあるまい。


 まあ、残りの連中はどの道死刑だろうし、教祖にしたところで用がすめば処刑されるのだろう。後はサラに任せるとしよう。





 アジトの制圧を終えた俺たちは、捕らえた連中を大部屋に集めると隊員の一人を町へと派遣して応援を待つ。


 あらかた仕事を終えて一息つく俺とジャネットに、サラが近づいて声をかけてきた。


「ご苦労だった。さすがの働きぶりだったな、お前たち」


「なに、大したことじゃないさ」


「何を言う。あの魔物、相当な強さだったぞ。最初の魔法を回避したことといい、あの毒ガスをかわしたことといい、まったくお前はいつも私を驚かせてくれるな」


「あのくらいのことならいつでもやってやるさ。とにかく今回は敵を取り逃がすこともなくてよかったな」


「まったくだ。後はこのまま無事に帰るだけだな。これで邪教も壊滅、この国も少しは平和になるだろう」


「だがお前の任務はまだまだ続くんだろう?」


「そうだな、お前たちにもまだまだ働いてもらうことになるだろう。これからもよろしく頼む」


「こちらこそ」


 そう言って、俺たちは互いに笑い合った。






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