59 死霊たちとの戦い
教祖どもを追いつめた俺たちに、死者の軍団が襲いかかってくる。
迫ってきた敵を、俺は冷静に切り伏せる。
うむ、どうやらさほど強いというわけでもないようだ。これならサラやジャネットが遅れをとることもあるまい。
そう思った矢先、両脇から怒声が上がる。
「ちょっと、何だいこいつら!? こっちの攻撃が効かないよ!?」
「何なんだこいつらは! 斬っても傷口がすぐに再生する!」
サラの方を見やると、確かに斬りつけた部分がすぐにふさがっていく。これはいったいどういうことだ?
「おのれ! この死霊ども、聖剣の加護がないと倒せないか!」
いまいましそうにサラが叫ぶ。
その言葉に、俺はこの剣が神様の加護を受けていることを思い出した。なるほど、意外に強力な加護じゃないか。
サラとジャネットも、敵を倒せないと判断するや足を斬り飛ばしたりして敵の行動を封じる作戦に出る。
しばらくするとまた足をくっつけて動き出すが、時間稼ぎにはなるだろう。
さて、これからいったいどうしたものか。俺の剣は効くのだから別に一人で片づけてしまってもいいのだが、それも面倒だな。
奥には魔族のゾンビもいることだし、雑魚はなるべくこいつらに片づけてもらいたい。
そうだな、せっかくの機会だし、あれをためすとするか。
方針を決めると、俺はサラに向かって声をかけた。
「サラ、これを使え」
そう言って、俺の剣をサラに向かって放り投げる。慌てて受け取ったサラが、俺に向かって叫ぶ。
「ど、どういうつもりだ!? これではお前が戦えないではないか!」
「心配無用だ。俺にはこれがある」
そう言うと、俺は近づいてきた死霊の一体に向かって手を突き出す。
次の瞬間、俺の手から放たれた槍が死霊を串刺しにした。
「グギエェェ!」
身の毛もよだつ声を上げて、死霊が粉々に弾け飛ぶ。地面に突き刺さった槍に近づくと、俺は何事もなかったかのようにそれを引き抜いた。
「リョ、リョータ! 何だ、その槍は!」
「まあ、聖槍といったところかな」
「せ、聖槍!?」
おもむろに槍を構える俺に、俺の剣に持ち替えたサラが死霊どもを叩き斬りながら言う。
「お前は剣士だろう!? 槍など使えないだろう!」
「それは見てもらった方が早いな」
そう言うと、俺は手元の槍を振るう。
俺の突きは迫ってきた死霊どもの胸を的確に貫き、あっという間に三体の敵を倒す。
それを見ていたサラとジャネットが、驚きの声を上げる。
「ま、まさか! その槍さばき、Aクラスに匹敵するレベルじゃないか!?」
「リョータって、槍も使えたのかい!? あんたいったい、どれだけ器用なのさ!?」
まあ、二人が驚くのも無理はないか。俺には神様からもらった『武神の加護』があるからな。どんな武器を持ってもAクラス並みに使いこなすことができる。地味に便利な能力だ。
おっと、このままだとジャネットが大変そうだな。俺は剣を一振り手元に転移させると、ジャネット目がけて放り投げる。
「ジャネット、お前はこれを使え」
「おっと! こりゃまた何だい?」
「聖剣とでも言っておこうか。それならこの化け物どもも倒せるだろう」
「本当かい?」
そう言って剣を振るうと、死霊が切り口から煙を噴き出して消滅していく。この槍といい、どうやら死霊に対しては俺の剣よりよく効くようだな。何だ、やっぱり大したことないじゃないか、神様の剣は。
ジャネットが興奮ぎみに俺に言う。
「リョータ! スゴいよこの剣! その槍といい、いったいどうやって用意したのさ?」
「説明は後だ。まずはこの死霊どもを片づけるぞ」
「任せなよ、攻撃さえ通じればこんな連中に負けやしないさ!」
そう言うと、水を得た魚のようにジャネットが敵を切り刻んでいく。サラの方も、俺のなまくら刀でどうにかがんばっているようだ。
「ここは俺も負けていられないな」
そうつぶやくと、俺も手にした槍を縦横無尽に振るう。槍を使うのは初めてだが、これはこれでおもしろいな。気分転換にはもってこいかもしれない。
俺たち三人が対死霊用の武器を手にしたことで、あれだけ湧いていた死霊の数もみるみる減っていく。
そして、残すはあの上級魔族のゾンビと何体かの死霊のみとなった。
「さて、後はあの化け物を倒せば終わりか」
「ああ。なかなかの大物のようだが」
「なあに、あたしらにかかればどうってことはないさ」
三人、視線を交わしてうなずくと、目の前の怪物に向かい武器を構えた。
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現在この作品とは別に、“職業『詩人』なんですが、どうやって戦えと? ~新章~”という作品を連載しています。
少し抜けたところのある主人公が仲間たち(主に女の子)と共に一人前の冒険者を目指していくという、コメディタッチな成り上がり系の作品です。興味がありましたら、よければ一度ご覧いただけると嬉しいです。