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58 地下の礼拝堂



 二階の隠し通路から、俺たちは地下の礼拝堂へと向かう。


 狭い通路は建物の端を通っている。本当にRPGのダンジョンみたいな造りだな。


 階段を下り、いよいよ地下へと入る。


 あたりは暗いながらも、あちこちに明かりが灯されているので周りが見えないということはない。


「何だか不気味なところだね……。妙に空気が冷たいし、幽霊でも出るんじゃないのかい?」


 ぶるっと身を震わせて、ジャネットがそんなことを言う。やはりこういうスピリチュアルなものには弱いのか。


「今からそんな調子でどうする。我々はこれからその幽霊を使役しているかもしれない邪教徒を狩りに行くのだぞ」


「わ、わかってるよ。仕事はちゃんとやるさ」


 サラの言葉に、むきになってジャネットが返す。この調子なら多分大丈夫だろう。


「それにしても、こんな空間があったとはな」


 半ば感心したような口ぶりでサラがつぶやく。


「まったく同感だな。こんな地下室を作り上げるとは、邪教徒とやらの勤勉さには頭が下がる」


「通路には誰もいないようだな……。奴ら、礼拝堂に集結しているのか」


「そうだろうな。まとめてかたをつけようというつもりなんだろう」


「ナメた連中だね。いいさ、そっくりそのままお返ししてやるよ!」


 ジャネットが叫ぶと、狭い通路に声がこだまする。それに対する反応はない。


「誰もいないのなら好都合だな。このまま一気に行くぞ!」


 そう言ってサラが駆け出す。俺たちも後に続いた。





 少し進むと、大きな扉の前に着いた。


 扉には、この建物のあちこちで見かけた奇妙な紋様が描かれている。この邪教の紋章なのだろう。


「この先に立てこもっているのかい?」


「多分そうだろうな」


「敵も我々を迎え撃つべく待ち構えているはずだ。油断するなよ」


「当たり前さ。あたしを誰だと思ってるんだい?」


「いい返事だ。――行くぞ」


 そう言うや、サラが扉を勢いよく蹴飛ばす。とても王国の第三王女とは思えない振る舞いだな。


 扉は意外とあっけなく開き、俺たちの目に礼拝堂の様子が飛びこんできた。



 礼拝堂は意外と広く、薄暗い中あちらこちらにかがり火が灯されている。


 敵がたくさん潜んでいるのかと思っていたが、人影はそれほど多くはない。奥の祭壇のあたりに何人か集まっている程度だ。急な襲撃で、ここまで逃げおおせた幹部がほとんどいなかったのか。


 ローブの連中に囲まれて、一際装飾の多い中年の男が目に入る。あれが教祖だろうか。見た目には冴えない顔をしているが。


 と、少し視線をずらした俺の目に、何やら大きな塊が飛びこんできた。


 よく見ればそれはローブを着た女のようだった。床に寝そべっているその女の胸には――一本の剣が突き立っていた。


 それに気づいたサラが低くうめく。


「あれは……」


「生贄、か?」


「そうなのだろうな……許せん!」


 サラの顔が、怒りで赤く染まる。


 見れば、女のほかにも二人、床に死体が転がっていた。どちらもローブをまとっている。外部の人間を調達できないので、平信徒でまかなったといったところか。邪教と言うだけあって、なかなか胸クソの悪い連中のようだ。


 サラが邪教徒どもに向かい叫ぶ。


「王国騎士団遊撃隊長、サラである! 貴様らの悪行もここまでだ! 抵抗は無駄である! おとなしく投降しろ!」


 その言葉に、しかし連中は特に投降の意思を見せようとはしない。まあ、それは当然か。


 教祖とおぼしき男が、妙にしわがれた声で話し始める。


「王国の第三王女か……これは都合がいい、この娘を捧げれば、メデイラ様もさぞお喜びになるだろうて」


 そう言うと、連中はそろって何やら念仏のようなものを唱え始めた。いったい何をするつもりなのだろうか。


 何かに気づいたのか、サラが叫ぶ。


「まさか、生贄を使った術を使うつもりか!? どこまでも下種なマネを!」


 その言葉に前を見ると、礼拝堂の広い空間に妙な妖気のようなものが漂い出す。


 次の瞬間、目の前に驚くべき光景が展開される。礼拝堂の何もない空間から、次から次へと武装した兵士が現れたのだ。


 その兵士たちも、ただの兵士ではない。一目見て死体とわかる連中だった。これは……ゾンビか?


 死者の兵団は、目の前の空間から次から次へと現れる。その真ん中に、一際巨大な怪物が現れた。頭部の角に、背中の翼。2メートルを超える巨体は、明らかに上級魔族であった。


「驚いたな、こんな化け物のゾンビまで用意しているとは」


 俺のつぶやきに、教祖が嬉々として叫ぶ。


「愚か者どもめ! おとなしく我らの贄になるがよい!」


 その声と共に、死者の群れが襲いかかってきた。





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